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カリフォルニアの総合病院、癌病棟でナースとして働く著者が、アメリカ医療最新情報をケーススタディー形式にお知らせします。アメリカでRNを目指す日本人ナースの皆さんを応援します。

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2007/12/16

ナースのお仕事 in California

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           ナースのお仕事 in California
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Vol. 29
December 15th, 2007
By Nadeshiko

◇◇◇ こんにちは ◇◇◇

読者のみなさま、こんにちは。
こんなにもきまぐれな不定期発行のマガジンですが
今月もご登録いただきまして、まことにありがとうございます。

今回の発行は、前回の後編ということで
大変めずらしく、1週間と開けずに発行です。
今週、義理弟家族とその子供たち10人が来れば年末年始のご挨拶でさえ
ままならないはずですので、この場をお借りして。。。

今年一年、お世話になったみなさまへ
いろいろと有難うございました。

2008年がみなさまにとってよいお年でありますように。
そして、今後ともナースのお仕事をよろしくお願いいたします。

師走の忙しい最中ではありますが、心身ともに健やかに
充実した年末年始をお過ごしください。。。

◆◆◆ 疲労困憊の理由 後編 ◆◆◆

Kさんやその家族と友人関係にあるというDr Wが、Kさんの担当医だった。
朝の巡回にやってきたDr Wの顔をみて、Kさんが何か言った。

Take my name away from your list.
僕の名前をあなたのリストから外してください。
Get me out.
ここから出してほしい。

声はなかったけれど、Kさんははっきりとそう言った。

その後、研修医Dr S がやってきた。
Kさんは再び、何か言いたがったけれど誰も理解することができず
紙とペンを渡してあげると、何か書き始めた。
どうやら、自分の名前、住所、郵便番号が書かれているようだった。

Kさんが、家に帰りたいのだということは皆が確信した。
今後も、癌の治療(放射線治療)を続けたいのかどうかは
確認することはできなかった。

1時間につき50mLの流動食を継続的に摂取しているので
それが適切な量であるかどうかを4時間ごとに確認するオーダーが出ていた。

腹部から胃に直接入れられたチューブを流動食からはずし
大き目の注射器で、胃の中にどれだけ流動食がたまっているのか
吸い取って確認する。100mL以上たまっていれば、2時間流動食はストップ。
2時間後に再び、胃の中の流動食を確認。そんなオーダーだった。

朝8時には40mLだった。流動食を続けた。
昼12時には10mLしかなかったので、流動食を続けた。

午後3時になってKさんは暴れだした。

混乱しているのかと思っていたけれど、噴水のように嘔吐され
はきそうになっていたことが大暴れの原因だったことが分かった。
大暴れするKさんを抑え、大声でナースステーションにヘルプを要請した。
3人のベテランナースが駆けつけてくれて、アシストしてくれた。

Airway 確保のためにTrachの吸引。
嘔吐をとめるために腹部からの吸引。

ナースJTが、G-tube のキャップをはずした瞬間
すごい勢いで胃の中の液体が飛び出し、私のパンツにかかった。
ゲェ〜!!!などといっている場合ではなく
しばらくはそのままの状態で、4人のナースが黙々と作業を続けた。

Kさんのケアーに関わる研修医Dr Dに電話をかけ
すぐに嘔吐を抑える薬を処方してもらった。

Kさんはしばらくしたら落ち着きを取り戻し、眠っていた。
前日の夜の嘔吐の後、何の薬もオーダーされていなかったことに気がついた。

そして、その後も同じように一時間につき50mLで流動食を入れられていたことに
いまさらのように疑問を感じた。

病院のスクラブに着替え、落ち着きをとりもどしてからDr Dに再び電話をかけた。

こんなに大量に嘔吐したのは昨夜から2回目であること。
Residual(胃の中の残量)はほとんどないのに
あんなに大量に嘔吐する意味がわからない。
4時間、流動食を抑えても消化を助ける薬やなんかをあげなければ
また嘔吐するのじゃないか。
Trachから、嘔吐物が肺に入った可能性が高いので
胸部のX-rayをしたほうがいいのではないか。

私自身、たったの4時間で流動食を再開させろというDr Dが理解できなかった。
流動食をすくなくとも一晩はとめて
次の日に、腹部のCTなどをして、腹部でなにが起こっているのか確認をするべきで
Trach をつけたKさんが嘔吐をするということは
生死にかかわる危険があるということを
Dr Dは理解していないのじゃないかととても腹が立った。

こちらが何をしてほしいのか言わなければ
ドクターDはおそらく、何もしてくれないだろうと気がついた。

今は安定にしているけれど、かなり大量の嘔吐だったので
病棟にきて、Kさんのアセスメントをしてください。
それから、流動食を再開させて同じことが起こらないという確信がないうちは
私はスタートしたくありません。

Dr Dは分かりました。といい、流動食のスタートをこれまでの半分の
一時間につき25mLで再オーダーした。

ドクターも、ナースもKさんのケアーにかかわる人は
先の見えないケアープランに疲労困憊する。
決断するまではたとえそれがどんなに苦痛なものであっても
Kさんを生かさなければならない。
Kさんの治療レジメンはクリアーだ。
自身が決断できる状態になるように治療を施す。
それなのに、なぜだか全てがあまりに中途半端で
すべての人が疲労困憊するのだ。

同じような患者さんがいたことを思い出した。
自身のトリートメントプランの決断がしたかった患者さんの
意識レベルを取り戻すために痛み止めを変え
アクティブに治療を続け
その患者さんはとうとう、自分の治療プランを決断する前に
あっけなく事切れた。


メディカルテクノロジーが発達していなかった時代に生きていたなら
Kさんは、とうの昔にこの世にはいない。
自分の力で息をすることもできないのだから。

自身のトリートメント・プランを決定するまでは流動食を与えられる。
意識レベルを低下させるからと痛み止めを止められ
Kさんは生かされる。
Kさんの意識レベルが、自身の治療オプションを決断するまでに回復するのか
その保証はない。

仕事中、私は私を殺さねばならなった。
ロボットのように、何の疑問も抱くことなく
ドクターがいうままに動くことができれば
どれだけ楽なのかわからない。
ただ、そんな仕事をすれば患者さんの命にかかわる事故につながる。
ドクターのオーダーがこんなにも中途半端なのだから。

オーダーが中途半端なのはドクター自身も
彼らを殺して家族の意思を尊重しているからなのだろうか。
Kさんの大量の嘔吐に、なにも興味を示さない
何のオーダーもしてくれない、研修医Dr Dがとても歯がゆかった。

何年連れ添ったのかしらないけれど
夫の最後の意思もわからない、決められない、Kさんの奥さんを恨んだ。

愛する夫だろ?なんで分からんのだよ!!!

奥さんに腹が立った。
私はナースだけれど、それ以前に人なんだ。
私がKさんの妻だったら。。。
と、そんなことばかりを考えていた。

KさんのTrachの吸引をする。
流動食の残量を計る。
PICC Line が機能していなくて、取替えなければならないことをドクターに告げ
暴れるKさんの両腕をRestrain で縛る。
奥さんはKさんが嘔吐しているところを見たことがない。

生きるということ
そして、死について考える。

一日、風邪のひき始めのようにのどがイガイガしていた。
シフトが終わるころには、前頭葉が割れるように痛くなり限界になった。
帰宅したときにはもうフラフラで、なんとか着替えて横になり
目を閉じても辛かった。

ベッドで横になり、目を閉じたままフラフラな状態で
夫に話しがあるといい、横に座ってもらった。

「私が寝たきりになって自分で決断できない状態になって
自分で食べられなくなったら、絶対に流動食なんてしないでね。
息ができなくなっても、人工呼吸器にはつながないでね。
苦しがったら、苦しくないようにする薬があるから、それをたっぷりくれたらいい。
あんたのときも、それでええか?」

夫はそれでいいよといった。    
そのまま、私は眠りに落ちた。

今日は休みで、明日また仕事に行く。
Kさんはおそらく、明日も同じ病室で生かされていることだろう。

今夜のうちに、病棟に電話をいれて
もうKさんのケアーはできそうにないので
アサインしないでほしいと告げることにした。

私はナースだけれど、それ以前に人なんだ。

終わり



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