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2009/11/08

恋愛講座 「蒼い友情」~ブルー・まぁだらぁ~ vol.153 (前) 友を抹殺する、minakoの元へ行くために。

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┃           ブルーシリーズ           ┃
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「ふたまわり」第三部が再開できる間、<ブルーシリーズ>を
お楽しみください。
 ━━━━・━━━━・━━━━・━━━━・━━━━・━━━━
共感していただけるか、
はたまた、反感をもたれるか、・・・・・
時代背景や事象には、多分にフィクションを交えています。 

     (友を抹殺する、minakoの元へ行くために。)
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       『優しい社会に しませんか?』
    ( http://www2.ocn.ne.jp/~toppy/appeal-0805.htm )
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[ 第七弾 「蒼い友情」~ブルー・まぁだらぁ~ ] (前)

それは、快い朝の目覚めだった。昨日の朝のことが、まったく嘘の
ようにさえ思える。これ程にも土地柄の違いというものが、人間に
影響を与えるのであろうか。今にして街での空しさを知り、また街
での処し方がいかに難しいかを知った。

それは次に来るべき明日の予測を誤った者が味わう、惨めすぎる程
の挫折-仮に想像の域を脱しないものだとしても-が、多大な不安
を与える。

真っ青な空に、二つ三つの白い雲。その間をぬって風は流れ、その
風の流れに雀も飛び交う。今、畑のあぜ道を、鍬をかついで歩く腰
の曲がった老人がいる。
*その間=そのはざま

春にはれんげ草が咲き乱れ、多くの子どもたちがそこに寝転び、
蝶々と戯れるのだろうか。しかし今は、老人が歩いている。十年前
の自分に戻りたいとは思わない。しかしもう一度、故郷のれんげ草
のにほいを嗅ぎたいとは思う、自分だ。

私は心の命ずるがままに動いた。そのつもりであり、今もそう確信
している。が、友人の新一は、“踊らされている”と言う。私とし
ては、思うがままに動き思うがままに言葉を発し、そして結果を得
ている。しかし新一は、“踊らされている”と言う。

私が新一といついかにして知り合ったのか、二人とも明確な記憶を
持っていない。新一は、ある日突然、私の前に現れた。そして今で
は、どこに行くにもいつの時も、二人一緒だ。家族よりも、その間
柄は濃密だ。しかし新一のことは、家族の誰にも話していない。

新一は、人生を否定的に考える癖がある。人間は決して満足しない
生き物だと考えている。それ故に、人間は不幸でしかあり得ないと
言う。私とは相容れない。そのことから、あの“踊らされている”
という言葉になっていると思える。

昨日の早朝、窓の中にどことなく白々としている街並びがあった。
柄にもなく早起きをした私は、テレビにかじりついていた。現在を
賑わしているヒッピー族と称する若者のインタビューに耳を傾けて
いた。

コメンテーター三人が一人のヒッピーに対して、矢継ぎ早に質問を
している。平然とそして冷然と受け答えしていた若者が、ものの五
分と経たない内に態度が粗雑になり始めた。

若者の言葉が荒くなり、刺々しくなる。コメンテーター達の質問も
辛辣さを増していく。明らかに苛立ち始めた若者。その光景は、見
るも無残なものだった。

一匹の子羊が、血に飢えた狼と腹を空かせた熊と猛り狂う猪とがい
たぶっているった。結局のところ単に世の中に拗ねているだけの、
ヒッピー気取りの若者をこらしめるといったことなのか。

近所のご隠居さまを演じているのだろうか、コメンテーター達は。
それにしても、マスコミという化け物の餌食となった若者も哀れだ。
カメラワークも相まって、若者は次第に色を失っていく。

とどのつまりが
「あんた達に何が分かる!」と怒鳴り散らして、スタジオを後にし
た。コメンテーター達の勝ち誇った顔がアップとなるに至って、私
を嫌悪感が襲い反吐が出そうになった。

「あのヒッピーもどきが、つまり君だ。コメンテーター=マスコミ
に、マスコミの意のままに踊らされているんだ。ヒッピーがそのこ
とに気付いて逃げ出したのか、唯単に頭に来て飛び出したのか。

どっちかな?気付いていないとしたら、これ程バカな男もいない。
気付いてのことなら・・いや、テレビに出た段階で、若者はヒッ
ピー失格さ。」

私に向かって投げかけた言葉かと思い、身構える私だったけれども、
新一の目は私を見ていない。テレビに視線は向いていたけれども、
見ているようには感じられない。そう、ブラウン管に映っている新
一自身を見つめているような、そんな風に感じた。

「大人に分かるわけがない!そう主張するのなら、答える必要はな
い。そもそもテレビに出るなど、言語道断だ。文明社会を捨てて、
大自然の中に戻るヒッピーなのに。

文明社会の最たるもののテレビに出るなど、だ。明らかにギマンだ。
あいつはヒッピーじゃない!単なるスネ男だ。ヒッピーはすでに人
間失格なんだろ?文明社会においては、生存の場はないんだろ?

だったら、唯黙って、大自然に帰ればいいんだ。トンボめがねをか
けて、布袋を背にして、ゴム靴をひきずって。もどきだ、もどきだ
よ!淋しい、淋しいぞ、バカめが!」

誰に話しかける風でもなく、さりとて私を意識していた風でもない。
やはり、新一自身にむけてのことだったのか。自身に対するメッ
セージなだったのか。

新一の瞼が閉じられる一瞬間、新一の目に憎悪の炎が燃えているよ
うに感じた。けれども次に溢れ出た涙で、すぐに消えてしまった。

暫く続いた沈黙の後、今度は私が。
「若者だって、その位の計算はしているんじゃないか。獰猛な獣に
なぶられる小動物然として、世論の同情を買ったのじゃないかな。

第一君をして、マスコミに対し悪感情を抱いたじゃないか。若者の
ために涙を流したじゃないか。同世代の純朴な若者が攻撃されたの
が、たまらなかったんだろ?

それにだ。僅かではあっても、ヒッピーに対する偏見を取り除けら
ればと思ってのことかもしれないぜ。ひょっとして、、、」
「その物分りの良さが、だめなんだよ。」

新一が私の言葉を遮って言う。
「流されちゃだめだ。物の本質が変わるわけがない。原則が大事な
んだ。踊らされちゃだめだって。」

そんな新一の言葉に、私は黙した。独善的な新一に反論は許されな
い。一の反論に対して、十の再反論が返ってくるのが常だ。私が黙
りこくると、新一は満足げに頷く。

正直癪に障るが、新一と口論しても始まらないと私がいつも矛を収
めてしまっている。相反する意見の二人の間に、友情というものは
存在し得るのだろうか。

果たして、同一行動を取る二人だからと、友情が存在しているのだ
ろうか。私と新一のような従属的関係でも、それは友情と呼ばれる
のだろうか。私は新一が好きだ、尊敬もしている。新一もまた、私
が好きだと言ってくれる。

新一は言う。
「愛憎の間に、人は住んでいるのじゃないだろうか。感情を持たな
い人間など居るはずがない。もし居たとしたら、その人は超人だろ
う。全てを超越して論理的に思考する・・ぞっとするね。『超人た
ちの国』なんて、『人でなしの国』だろうさ。」

「一つ目人間の国に迷い込んだ男が、年月が経つにつれて二つ目の
己を不具者と見てしまう。恐いことだけれど、いつの時代でも起き
ている。

真理なんてものは存在していないのさ。そんなものは時代時代で変
わるものだ。『後世の歴史家が判断してくれる』って言い訳するけ
れども、あんなものは詭弁だね。

だってその時代に生きた者にとっては、後世の人間なんて関係ない
だろうが。人間誰しも、幸せになる為に生きてるんだろ?その為に
一所懸命頑張るんだろ?

但し、但しだ。欲張ってはいけない。分相応って奴を考えなけりゃ。
戦争なんて、欲張りの人間が引き起こすものさ。仕掛けた方が欲張
りだと、断言はできないだろうけれどね。

じっと我慢の子だった方が、もう我慢ならん!となる時だってある
だろうからさ。」と立て板に水の如くに話す。いつもこの調子だ。
例え話を組み込まれては、妙に納得せねばならないような錯覚に襲
われてしまう。

新一はいつも言う。
「机上の論理をこねまわしてちゃだめだ。その前に、動いちゃえ。
若いんだ、行動あるのみだ。青春時代には、考える時間なんてない
んだ。走る時間だけがある。」

この新一の論理には、一もニもなく賛同した。そして常に行動する
ことを意識して、いわゆる走りながら考えることを実行した。と、
新一に微妙な変化があるように感じられ始めた。

思い過ごしなら、それはそれで結構なことだ。むしろその方が嬉し
い。しかし皮肉めいた新一の言葉が気になるこの頃だ。

新一流の人の分け方-愛と憎悪のどちらに位置するか-で判断する
に、今の新一は憎悪側に傾いたのか?愛に位置する人というのは、
余力を持って人と相対しているわけだ。

確かに、以前の新一は私を見下すようなところがありはした。しか
し、今はどうだ?ライバル心剥き出しといった観ではないか。新一
のアドバイス前に、事が運べている。

他人との接触において多分に尻込みしがちだった私が、積極的とは
言わないまでもキチンと対している。弟子が一人前になることは嬉
しいが、一抹の寂しさも感じる。そういった心境なのだろうか。

どうにも、そうとは思えない。‘可愛さ余って憎さ百倍’というじ
ゃないか。言葉を交し合う相手が私しか居ない新一にとっては、憎
悪の対象となってしまったのか。

だとしたら、私は以前の私に戻りたいと思ってしまう。新一の憎悪
の対象にはなりたくない。が、今の心地よさを失うということも辛
くはある。

思い出せ、思い出すんだ。以前の私は、どうだった?新一との口論
になると、決まって口をつぐんでいなかったか?議論を交わすこと
から、逃げてはいなかったか?

新一の気性を知っているから?恐ろしいことだけれども、新一を見
下していなかったのか?実のところは。

パタパタという軽やかなスリッパの音で、ようやく新一の呪縛から
逃れられた。昨日の回想から脱け出た。新一と別れてこの地に来て、
穏やかな朝を迎えた私だ。

空気の美味しさを、幾度となく繰り返す深呼吸で、堪能した。まる
で故郷に帰ったかと錯覚させられる。ふと思った。気心の知れた者
との、棘のある会話の中に見出す愛。

そして又、他人との穏やかな会話の中に見出す冷たさ。新一に教え
られる物事の裏表。知らずにいた方が、分からず終いの方が良いこ
とも多々あるだろうに。

夢を見ることしかなかった私が、その夢を実現すべく立ち上がる。
その為の勇気を、新一から貰った。そして夢が現実となった時、確
かに快感を得る。満足感に浸っている。幸福感に満ち溢れてもいる。

がしかし、一瞬間去来する空白感をも、味わってしまう。青春の真
っ只中にいる私の夢といえば、小さなことだと笑われるかもしれな
いけれども、やっぱり女性との交際につきる。

遠くからじっと見ているだけの私が、夢見てはため息を吐いていた
私が、当たって砕けろ!を。玉砕の憂き目にあったこともあるけれ
ども、デートにこぎつけられたことも。

二度三度とデートを重ねて、ゆっくりながらも階段を上がっていく。
手を握ることでどぎまぎした初デート、二度目は相合傘で肩を抱き、
そして三度目のデートで甘いキス。

思いが達せられたと歓びに満ち溢れつつも、一瞬間過ぎる虚脱感。
温かいぬくもりに包まれながらも、突如襲いくる空虚感。デートの
間中、一瞬の翳りも見逃さない。そしてその翳りに、どれ程に心を
痛めたことか。

相手に見せる笑いの中に、どこか暗さといったようなものが現れ出
ているらしい。そのニヒルさがたまらないという女性も居た。ネク
ラと称された眉間にしわを寄せる仕種が、今では男の顔だと称され
る。笑ってしまう、まったく。

新一と出会う前のような暗さとは違い、どこか慇懃さがある、と思
える。人間不信といったものではないと思うのだが。心の中に内在
しているーでんと居座っている新一を、消し去る為の一人旅だ。

別人格を育て上げて苦痛からの逃げ場を作ったことが、時に重荷と
なり障害となることに気付いた。遅かったかもしれない、或いは気
付かぬままの方が良いのかもしれない。
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