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2009/10/18

恋愛講座 ~ブルーシリーズ~ vol.151  笑いながらしかし涙を流す少年が歩いていたのは、

┏Mail_magazine 恋愛講座━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃           ブルーシリーズ           ┃
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                                                     vol.151

「ふたまわり」第三部が再開できる間、<ブルーシリーズ>を
お楽しみください。
 ━━━━・━━━━・━━━━・━━━━・━━━━・━━━━
ニヒリズムに取り憑かれていた頃に書き上げた作品です。

1969年3月30日 パリにおける焼身自殺。
1970年。
大阪万博の大盛況。
前年の東大安田講堂陥落が与えた、学生間に漂う閉塞感。

これらの衝撃に突き動かされて、修正加筆を加えての作品です。
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       『優しい社会に しませんか?』
    ( http://www2.ocn.ne.jp/~toppy/appeal-0805.htm )
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[ 第二弾 :「ブルー・ふらあめんこ」 ~蒼い情熱~ ]

(後)

ミラーボールの光の中、身振り手振りよろしく大声を張り上げてい
るバンド連を盗み見しながら、そのリズムに乗るわけでもなく、否、
全くの不調和に指でリズムを取り始めた。

「おい!あのボーヤ、又来てるぜ!」
「あぁ、ホント。でもどうして?踊るわけでもなし・・。」
「へッ。どうせ、踊れねぇのさ。」

「あの坊や、男か?それとも男装の女か?」
「さあね、・・・わかった!中性よ!」
「こりゃいい、中性とは。いいぞ!」

「あの坊や、マキにまいってるって?」
「へーえ、あのマキにか?」
「そうなんだってね。でも、よりによって、マキにねえ。」

「何だい、マキなら誰とでもOKじゃないか。」
「それがね、あの坊やだめなのよ。じっと見ているだけなの。」
「ふーん、変わった奴ぅ。」

「でもさ、ちょっといいじゃん。淋しそうでさ、守ってあげたいっ
て感じ。」
「ハン!お前じゃだめさ!マキ一途って、話だ。」
「えぇえっ、もったいないなあ。」

「ネェ!マキにサ。この前教えたのよあの坊やのこと。あんたを見
てるよって。」 
「うんうん、どうなった?」
「こう言うの。あたしのファンなんでしょ、って。」
「えぇっ、ほんとにそうなの?」

「らしいわよ。沙織が声かけてもさ、ごめんなさいだってえ。」
「あの沙織をムシしたの?やるうーぅ!」

少年の目は、又二人の方に移った。
が、そこにはもう二人の姿は無く、背の高いがっしりとした男が一
人、唯々踊り狂っていた。

慌てた少年は、キョロキョロと見回した。
と、少年の肩をポン!と叩く者があり、と共にプーンと甘い香りが
少年を包んだ。

「又来たの?坊や。」
「あ、いえ。・・・あの、・・・いえ。」としどろもどろだった。
「フフフ・・、いつまでも子供ね。コーラなんか飲んで。純情でか
わいいわ。」  

耳元で囁き、体をすり寄せてくるその女に、少年は弾かれるように
身を引いた。そして、しげしげと女を見つめた。

薄茶色に染められた髪を二つに分け、後ろで一本に束ねている。
描かれた眉毛は細く、半円のように滑らかだった。
その下の瞳には、コンタクトのブルーレンズが入っている。

つけ睫毛がとても長く、スラリと伸びた鼻と呼応して、エキゾチッ
クさを醸し出している。
その唇は、真っ赤に塗りたくられている。
そのくせ能面に近い程の無表情さを漂わせている。 

少年がしげしげと見つめていることにバツか悪くなったのか、照れ
くさくなったのか女は、目を落として言った。
「今夜、あたいヒマなんだ。付き合ってもいいよ。」

その声には、どことなく暖かい響きが感じられる。
投げやりな言葉ではなかった。
そしてそう呟いた時の女の目は、一瞬間ではあったが恥じらいに輝
いていた。

が、少年の口からは、何も返らなかった。
ポッと頬を赤らめ、空のコップを見つめているだけだ。

女がそっと、指をからませた。
そして、胸元に引き寄せようとした時、信じられない痛みを頬に感
じた。
そしてその痛みに気付いた時には、少年はカウンターの席を立って
いた。

女は頬を叩かれた痛みよりも、物言わざる少年の目の光りの方が、
強くこたえた。
「わざわざ女から誘ってやったのに! なに様のつもりよ!」

「まだネンネの男の子なんだよ、勘弁してやんな。」
バーテンの差し出した水を一気に飲み干すと、女は踊りの中に身を
投じた。

店を飛び出した少年は
”こんな筈じゃなかった!”と、自戒の念も込めて呟いた。

憧れにも似た感情だった。
未知なる、大人の女性への好奇心もあった。

幼くして母親を亡くした少年には、異性が身近にいない。
ましてや、ネクラと言われる性格の故に、女友達もいない。
友人達のエロ話の輪にも、入れない。

不良のたまり場とされるあの店に行けば、異性と誰もが話をできる、
そう思いこんでいた少年。

話を・・・、どんな話を?
何を話せばいいのか?
逡巡していた時の、思いもかけぬ女からの言葉。
唯々混乱するだけだった。

17歳・・・Rolling Age 。

翌日の夕方、Go-Go-Snackの店先で、一人のフーテン娘
が焼身自殺を遂げた。

遺書の無いこの事件は、世界各地で頻発していた「ベトナム戦争へ
の抗議の自殺」と同列に扱われ、こぞってテレビで報道された。

白い埃だらけのこの舗道を、笑いながらしかし涙を流す少年が歩い
ていたのは、この事件が報道された夜更けのことだった。

月は、満月だった。

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*[ 第三弾 :「ブルー・わあーず」 ~ムサシ・ひとり~ ]は、
既にお届けしていますので、未だお読みでない方は、下記のHP
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