2009/08/09
恋愛講座 ~ふたまわり~ vol.144 淋しいなんてものじゃないぞ。ぼくは、生きる気力さえ失ったぞ。
┏Mail_magazine 恋愛講座━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ ふたまわり ┃ ┗━━━━━━━━━━ http://www2.ocn.ne.jp/~toppy/ ━━┛ vol.144 [原始女性は太陽であった] この一文に、小夜子の全てが始まった。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 他人を非難しても、己を正当化することはできない。 ──────────────・────────────── 『優しい社会に しませんか?』 ( http://www2.ocn.ne.jp/~toppy/appeal-0805.htm ) ============================= (百三ニ) 正三の泥酔ぶりは、翌日を二日酔いのために欠勤したことからも分 かる。とに角手に負えない状態に陥った。ひとみに対する執着心が 店中のひんしゅくを買ってしまったほどだ。 駄々をこねる幼子のように、ひとみを片時も離さない。手洗いに立 つ時ですら、その戸口まで付きまとった。更には、中に入ろうとす るに至っては、ひとみも穏やかではなくなる。 「堪忍え、正坊。やんちゃばっかり言う子は、嫌いになるでぇ。お 願いやから、大人しぅ待っててぇな。」 「いやだ!秘密の扉があって、さっきの奇術でもって、他の場所に 行ってしまうだろうが!」と、譲らぬ正三だ。 大きな箱の中に入れられたひとみが、ほんの数秒後には箱から忽然 と消え失せていた。拍手喝采をマジシャンが受けた後、ステージの 裾からひとみが現れ出るに至って、割れんばかりの拍手が沸いた。 しかしメインの胴体のこぎり切断ショーでは、又してもひとみの独 壇上となった。 「それではこれから美女が、棺桶に入ります。無事この世に生還で きましたら、是非とも拍手大喝采でお迎えを~!」 「なに、この床は。お布団かなんか欲しいわぁ。お尻が痛いやん。 ちょっと、待ってて。心積もりもありますさかいに。」 「あぁ、あ、あ、のこぎりの刃が、うちの白玉のような肌に当たっ てるぅ。」 「あっ、あっ、痛い!あっ、あっ、閻魔はんがお迎えに。ちゃう、 ちゃう、天使はんがお迎えに・・」 そして一旦離された箱が再び戻されると、 「あの世から戻りましたえ!」と大声で、ひとみが叫んだ。マジシ ャンに手を取られての折には、更なる拍手と指笛が鳴り響いた。 にこやかに笑みを浮かべつつ、ひとみがマジシャンに。 「血ぃがどばっと出ると、もっと盛り上がるんとちゃう?」 小声で話しかけた筈が、マイクロホンに拾われてしまった。 「そうだ、そうだ!ひとみの言うとおりだ!」 二階から、正三が大声で叫んだ。 「ひとみちゃんは、すごい!」 「若いの、あんたは偉い!」 万雷の拍手で迎えられたひとみ、得意満面のひとみ。苦虫を噛み潰 していたマジシャンも、最後には拍手で送った。 指名客が来た折などは、ひと悶着だった。どうしても離そうとはせ ずに、終いには正三もそのボックスに行くと言い出した。これには さすがのマネージャーも困り果てた。 「お客さま、お客さま。必ず、必ず、戻ってまいります。ほんの少 しだけ、ひとみさんをお貸しください。」 ことここに至っては杉田としても、放っておく訳にはいかない。 正三の嬌態を面白がりやんやと囃していたいた面々も、さすがに他 の客からのひんしゅくの声に耳を貸さないわけにいかない。 「ちょっとやり過ぎか?」 「出入り禁止なんてことにならんだろうな?」 「新聞沙汰になりでもしたら、とんでもないぞ。」 「いやそこまでには、ならんだろうさ。」 「いやいや、客の一人が面白おかしく喋ったら・・」 「佐伯君、局長の立場を考えなくちゃね。」 杉田の耳打ちに、やっとひとみの手を離した正三。じっとひとみを 見つめる虚ろな正三。力なく離れ行くひとみに手を振りつづけた。 「何を言ったんです?課長。」 「なに、大したことじゃ。佐伯君の急所を突付いただけさ。彼を黙 らせる唯一をね。」 「何です、それは。後学のために教えてくださいな。」 「いやいや、こればかりはね。さぁさぁ、飲み直そう。」 「そうおっしゃらずに。我々だって手に負えなくなった時の、対処 法を知っておきたいんですが。」 食い下がる山田だが、杉田は素知らぬ顔で興に入った。 「薫ちゃ~ん。薫ちゃんは、どこにも行かないよね~。」 「は~い!行かないわよ、ターちゃんの傍に居るわよ~。ターちゃ んも、浮気しちゃだめよ~。」 やたらと語尾を甘ったるく伸ばす様は、聞かされている身としては 辛いものがある。 「わたしとしては、ありきたりの美人には飽きたんだ。良く言うだ ろ?『美人は三日で飽きて、不美人は三日で慣れる』って。更には、 『醜女の深情け』ともね。」 しっかりと薫の肩を抱き寄せて、真底の思いを語ったかの如くに、 満足げな表情の杉田。 「安らげるんだよ、薫の傍だとね。」 “こんな痩せぎすのおばさんの、どこが良いんだよ。” そんな思いを抱いていた面々だが、杉田の言葉に妙に納得させられ ている。 “確かに、美人相手だと気を使うかもな。” “鼻っ柱の強い女が多いからな。” “プライドの高い女は、確かに、ある意味疲れはする。” “すぐに指名が入って、じっとしていない。けしからん!” “キョロキョロして、落ち着きがない。” と思いはするが、それでも、 “グラマーな美人がいい。”が、本音ではあった。 ひとみと言う女。年のころは二十代前半か?痩せぎすの体型が若く 見せるきらいがあると考えると、後半かもしれない。顔立ちは、不 美人ではないけれど、美人でもない。 正三の知る女性ー小夜子を除けば、年上ばかりだ。源之助の息がか かった女性で、正三の教育係りのようなものだ。痒いところに手が 届かんばかりの対応をしてくれる。 正三の目線の動きで察知し、口に出すまでもなくことが済む。選民 だと意識させられている正三にとっては、実に居心地の良い場所だ。 「いいか、正三。我々は選ばれし者なのだ。日本国民を正しい道に 導くために選ばれたのだ。ユダヤ民族が選民であるように、我々官 吏はお上に選ばれし選民なのだ。その自覚を常に持って行動をしな さい。」 そんな正三を認めない女性ーそれが、小夜子だった。そしてそれが 苦痛にならない正三だった。あの再会の日までは。 “小夜子さんも、今のぼくをどう見てくれるだろうか?もう一人前 の男として、認めてくれるだろうか?尊敬の眼差しをくれるだろう か?そしてそして、ぼくの伴侶と、意識してくれるだろうか?” それらことごとくが、裏切られた。官吏としての正三は勿論、男と しても認めはしない小夜子。どころか、非難の矢が矢継ぎ早に飛ん できた。そして除ける間もなく、その矢は正三の胸に突き刺さった。 しかし今、ひとみという女に出合って、正三の胸に激しく燃えるも のが生まれた。正三を見下すわけではなく、といって見上げるわけ でもなく、正視するひとみ。 「お待たせ~!正坊。美智子姉さん、ありがとうございました。」 嵯峨美智子ファンだと言う正三に宛がわれた女給は、確かに色気た っぷりではあったが、正三の興は戻らなかった。 襟をすこし緩めに着付けている着物姿に、 「ほぉー、色気ムンムンだね。」と声をかける者もいたが、正三に はだらしなさとしか映らなかった。 「正坊、どうかしたん?元気ないやん。」 「そんなことはない。」 「ウソ!あたしがおらへんかったから、泣いてたんやわ。よしよし、 もうどこにも行かへんから。」 「坊ちゃん!」と、津田が裏返った声で、言う。 「今夜、店がはねた後なんですが、寿司でもお摘みになりませんで しょうか?」 「おいおい、声が変だぜ。」 「いや実は、彼女に今、『ひとみさんと一緒なら良いわ』と言われ たものですから。」 「なんだなんだ、どうした口説き落としせたのか、おい。この野郎 が!ひとりで良い思いをするつもりか?」 小山が噛みつくが、他の者からは声がない。 「おいおい、ひょっとして、俺だけか?みんな約束、取り付けたの かよ。美佐江ちゃん、なんとかなろうよ。」 すがるような目を向けるが、 「ごめーん。今夜はどうしても、だめなの。次に来てくれた時には、 きっとお付き合いするから。」と、手をこすり合わせる。 「ひとみ、ひとみ!何してたんだ?淋しいなんてものじゃないぞ。 ぼくは、生きる気力さえ失ったぞ。だめだ、ひとみと接吻をしない と、ひとみの口を吸わないと、元気がでなーい!」 唖然とする一同を後目に、ひとみに圧し掛かっていく正三。 「はいはい。正坊、みんながびっくりしてるわよ。おいたが過ぎる と、お尻ぺんぺんよ。」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 今号は、いかがでしたか? 「おもしろかった」と思った方、ワンクリックを! http://clap.mag2.com/thounaphuc :::PR:::PR:::PR:::PR:::::PR::: 【ブログ開設のお知らせ】 ご案内が遅れましたが、ブログを開設しています。良かったらこち らも覗いてみてください。 新趣向の[ポートレート]なんぞもありますので。 *女性の皆さま、お待たせしました。 神が創り給うた奇跡!是非、ご照覧あれ!* Fruit Blog http://postman2008.fruitblog.net/ YAHOO! ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/toppy_0024 ──────────────・────────────── ┏━━wail情報:慟 哭━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ 安 神 編 スタートしました。 ┃ ┗━━━━━━ http://www2.ocn.ne.jp/~toppy/wail.htm ━━┛ ──────────────・────────────── ┏Mail_magazine 詩ャワー━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ やせっぽちの愛 ┃ ┗━━━━━ http://www.geocities.co.jp/wailman_2000/ ━┛ ──────────────・────────────── ┏Mail_magazine アダルト━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ 隷 従 ・三 ~ 恨みます・・ ~ ┃ ┗━━━━━━━━━━ http://batsuichi.web.fc2.com/ ━━┛ ───────────────────────☆☆☆ 発行責任者 postman 登録解除 http://geocities.co.jp/wailman_2000/regist.htm Home Page http://www2.ocn.ne.jp/~toppy 既刊置場 http://www.geocities.co.jp/wailman_2000/ お願い 無断掲載・コピーは、ご遠慮下さい 表示→文字のサイズ→「等幅」でお読みください。
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