2009/09/30
週刊マガジン・ワンダーランド 第159号
【目次】 ◇南河内万歳一座「S高原から」 青年団プロジェクト公演「青木さん家の奥さん」 舞台における俳優の役割と魅力 青年団・南河内万歳一座共同企画から 水牛健太郎 ◇劇団どくんご「ただちに犬 Deluxe」 喜劇的造形の見事な達成 夢幻的なスペクタクルの舞台で 柳沢望 ▽連載【レクチャー三昧】 第59回 情報掲載基準について 高橋楓 ◆編集後記 編集長が変わります! □web wonderland から===================== http://www.wonderlands.jp/ ◇少年王者舘「夢+夜~ゆめたすよる~」 「ノーベル精神分裂症」が漱石を砕く 杵渕里果 ◇The Vagina Monologues (ヴァギナ モノローグス) 「ヴァギナ・モノローグス」にみる社会と身体 志賀信夫 ◇Bunkamura20周年企画「桜姫」 新たな『桜姫』の世界を紡ぎ出す 現代版と歌舞伎版が共鳴して -コクーン歌舞伎15年目の挑戦- 田中綾乃 ◇ワンダーランド支援会員を募集中! http://www.wonderlands.jp/info/members2009-1.html ===================================================================== ◇南河内万歳一座「S高原から」 青年団プロジェクト公演「青木さん家の奥さん」 舞台における俳優の役割と魅力 青年団・南河内万歳一座共同企画から 水牛健太郎 芝居にかかわる人間は数多いが、私たちが舞台の上に見出すのは役者だけだ。 当然のことではあるが、しかしそれが再確認される時点で、既にそれ以外の人 たちが舞台の隠れた「主役」となっている事態を示唆しているといえる。演劇 の設計図を書く劇作家、そしてそれを舞台の上に実現していく上で、主導権を 握る演出家。ことに日本では「作・演出」という形で両者を兼ねるのが、小劇 場を中心に一般的な形式になっている。何よりもまず、「作・演出」個人の作 品として、芝居が理解されているゆえんだ。 この点をぎりぎりまで突き詰めたのはやはり青年団の平田オリザだろう。 「役者は私にとって将棋の駒」という有名な発言は挑発を意図したものだとい うが、「『役者一人ひとりの存在はかけがいのないものだ』といった幻想から、 私たちは早く脱却しなければならない。戯曲家にとって、役者は交換可能な存 在である」(平田オリザ『現代口語演劇のために』p.84)といった言葉を待つ までもなく、平田作品がもっぱら作・演出の表現の媒体として俳優を見ている ことは、動きと発話のタイミングに細かい指示を加えた彼の戯曲を読むだけで も明らかである。実際にこれを演じるにはかなりの専門的訓練を経た技量ある 俳優が必要なことは確かだし、それぞれの役に対して、その技量や外見・声の イメージなどから、よりふさわしい役者を選ぶことも重要だが、その俳優の 「唯一無二の個性」が必要とされているのではないこともまた、確かだ。こう した俳優観が必然的に行き着くところとして、平田は最近ではロボット演劇を 手がけてもいる。 青年団と南河内万歳一座(以下南河内)の共同企画として、南河内が平田オ リザの「S高原から」を、青年団が南河内の主宰内藤裕敬の作品「青木さん家 の奥さん」を上演した。この上演は舞台における俳優の役割や魅力といったこ とについて考える絶好の機会になった。 まず見たのは南河内による「S高原から」だった。沖縄の海岸の海の家といっ たイメージの、雑然とした印象を与えるセット。ジャージを着た、いかにも大 阪のおばちゃん風の人(鴨鈴女)が出てきて、冗談を交えながら上演前の注意 と物販の案内をした。そこから既に人間臭い感じである。 上演が始まると、癖の強い役者が次々出てきて、医者は看護婦のほっぺたを つねりまくるし、取っ組み合いも起こる。しかし台詞の流れを見る限り、戯曲 はほぼ変えていないようだ。後日戯曲で確認したが、事実その通りだった。 南河内の役者は、台詞に強いアクセントをつけたり、無理やり不自然な間を 入れたり、表情を変えるなどしてひねりを加えていた。その意図が見えすく場 合もあったが、一度見たら忘れられない個性の強い役者たちにそれがよく似合っ た。舞台の上に三人以上の人がいる間はどたばた調、しかし二人になると舞台 がきゅっと締まる。光が強いだけに影もまた、色濃い。どたばたに向けられて いたエネルギーが二人の関係性という一点に絞られ、緊張感で胃が痛くなりそ うな場面がしばしばあった。特に男女関係が絡むとそれが顕著である。 「S高原にて」には多様な男女の姿が描かれている。サナトリウムに入所し ている男に別れを告げに来る女、逆に連れ戻しに来る女。八年も療養を続ける 若い女性吉沢貴美子と熱心に看病を続ける兄茂樹の関係は密接で、他の入所者 の興味を引き、またたじろがせる。プレイボーイ福島和夫と面会に来る藤原友 子、福島の友人鈴本春男と坂口徹子の二組の男女。鈴本はかつて福島に友子を 取られ、福島の死を密かに望んでいる。以前結婚をも念頭においていた福島と 友子の関係は、細やかな機微を含んでいる。一方で福島は吉沢貴美子にも思い を寄せているようだ。そしてあと一年の命と噂される前島明子と画家西岡隆の 入所者どうしの関係。いわゆる男女関係ではないが、医者松木と看護婦藤沢の 組み合わせも強い印象を残す。 もともと戯曲に丁寧に書き込まれていた男女の愛憎は、南河内の役者の個性 と癖の強い演技によって輪郭を与えられた。青年団の上演では劇全体の構図の 中に静謐さをもって自ずと浮かび上がってくるものだったが、南河内では、ま るで高原から日差しの強い亜熱帯に舞台を移したかのように、すべてがくっき りと光と影を持って観客に示される。まさにそれこそが「沖縄の海の家」調の セットの寓意でもあろう。 特にラストシーンの前島明子と西岡隆の場面は、西岡を演じる木村基秀のな みなみならぬ格好良さもあって、実にキマっていた。限られた命を「何も考え ないで」生きていこうとする男女の姿。「S高原から」という戯曲の質の高さ を確認すると同時に、頭の中ではそれぞれの役がすっかり南河内の役者の顔で イメージされてしまうことにもなった。今後青年団による再演を見る機会があっ ても、南河内の役者と比べてため息をついてしまうことになりかねない。 続いて上演されたのは青年団による「青木さん家の奥さん」である。ちなみ に、もともとの南河内による上演は見たことがないし、戯曲も手元にない。 どたばたと笑いの多い愉快な上演であった。もっとも、その笑いのかなりの 部分が、関係者席と化しているらしい最前列の座布団席から率先して起こって いるのが少し気になった。細かいことだが、最近アゴラで感じるここらへんの 「内輪な感じ」は、青年団という劇団のあり方とは本来相容れないものではな いか。少し気を付けた方がいい。 ビールケースが山と積まれた酒屋のバックヤードで、酒屋の店員と娘、時々 訪れる妙な女性客らが繰り広げるどたばた。取っ組み合いのけんかが繰り返さ れ、客たちはこっそりとビールの栓を抜いて乾杯。店員に見つかるたびに走っ て逃げていく。店員どうしのけんかは主に配達先を巡ってのもので、特に美人 の奥さんのいる青木さん家への配達を巡って伝票を奪い合う。 このどたばたぶりは、南河内を強く意識したものだったように思う。楽しい ことは楽しかったが、青年団がやるとちょっと無理している感じが出てしまう のは否定できない。一方で、女性客の登場場面や「どうして誰も配達に行かな いのか」「伝票に『青木さん家』と書かれている」(いずれも記憶によるもの で、大意)といった自己言及的な台詞は平田オリザの不条理への傾倒を感じさ せた。 この上演の大きなポイントは、「青木さん家の奥さん」その人が舞台に登場 する場面だろう。劇場で配られた平田オリザと内藤裕敬の対談によると、「青 木さん家の奥さん」が登場する場面は南河内の舞台にはなく、平田がオリジナ ルで付け加えたもののようだ。それまで数十分に渡って素晴らしい美人として 噂され、そのために取っ組み合いのけんかが繰り返された「青木さん家の奥さ ん」が実際に登場するというこの設定は、演じる役者にとってはとんでもなく ハードルが高い。もっとも、必ずしも前評判どおり素晴らしい美人である必要 はない。例えば池谷のぶえのような人が出てきて、こんなとんでもない人だっ たのか、という落とし方もあるし、笹野鈴々音が出てきてこんな小さい人だっ たのかというのもアリだと思うが、ともかく何かは期待される。 ところが、出てきたのは「普通の人」だった。普通の人と言っては失礼かも しれない。背も高くきれいで、おそらく日常生活で会ったらかなり印象的だと 思われる女優さん。だが、舞台上において「こんな人だったのか」という驚き を生み出すものはなく、したがって「青木さん家の奥さん」にはなりえない。 そして、観客の受けた肩透かしの印象を裏書するかのように、「あれはどうも 青木さん家の奥さんではなく、偽者らしい」という話の展開になっていった。 この一連の流れには、とてもシニカルなものを感じた。もともとなかった登 場シーンをわざわざ設けてまで、「青木さん家の奥さん」を演じられる女優は 青年団にはいないということを観客の前で明らかにしてみせる平田オリザ。身 についていないどたばたシーンの強調も相まって、個性ある役者の不在という、 青年団の弱点を故意にさらけ出すかのような上演であった。フランス公演との 重なりから新人を多く起用したという事情もあったと聞くが、そもそも原理的 に、青年団の俳優の苦手な部分を強調する仕組みになっていた。 しかし本来、青年団において、個性ある役者の不在は「弱点」ではないはず である。平田オリザは革命家である。革命家が一般人から見て極端と思われる 見解を持ち、それをかたくなに推し進めたとしても当然のことで、それを弱点 とは言わない。平田の現代口語演劇は1980年代までの演劇に対する根本的な問 い直しであり、その一環として役者の個性の否定もあった。それに疑いを持っ て役者のあり方を見直すのは後から来た世代の務めで、平田自身は役者を見直 したりする必要はないのである。役者の個性を伸ばさない青年団のあり方は役 者個人にとっては大問題だろうが、平田にとってはどうでもいいことである。 南河内の「S高原から」が、ある意味で青年団の上演よりも魅力的だったとし ても、それもそもそも平田の戯曲あってのものなのだし、平田が推し進めてき た革命とは何の関係もない他人事なのだから、自分の俳優への対し方を省みる 必要なんて一つもありはしない。 その平田が、どうしてこのような、「役者の個性の不在」をしみじみと感じ させる芝居を作ったのか。平田の演劇観の何らかの変化を表すものなのか。そ れとも単に、南河内のエネルギーに煽られて自分を見失っただけなのか。戸惑 いと疑問を感じた上演であった。 【筆者略歴】 水牛健太郎(みずうし・けんたろう) 1967年12月静岡県清水市(現静岡市)生まれ。高校卒業まで福井県で育つ。 大学卒業後、新聞社勤務、米国留学(経済学修士号取得)を経て、2005 年、 村上春樹論が第48回群像新人文学賞評論部門優秀作となり、文芸評論家として デビュー。演劇評論は2007年から。そのほか村上龍主宰の「ジャパン・メール ・メディア(JMM)」などで経済評論も手がけている。 http://ryumurakami.jmm.co.jp/ ・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/index.php?catid=3&subcatid=46 【上演記録】 青年団+南河内万歳一座 共同企画 ▽南河内万歳一座「S高原から」 http://www.banzai1za.jp/s/banzaidata.html 【大阪公演】精華演劇祭vol.13参加 精華小劇場(2009年8月17日-23日) 【東京公演】こまばアゴラ劇場(2009年9月2日-8日) http://www.komaba-agora.com/line_up/2009_09/minamikawachi.html 作 平田オリザ(青年団) 演出 内藤裕敬 出演 鴨鈴女 藤田辰也 荒谷清水 三浦隆志 前田晃男 重定礼子 木村基秀 福 重友 中津美幸 皆川あゆみ 岡ひとみ 鈴村貴彦 倉重みゆき 手嶋綾乃 松浦絵里 藤川央子 内藤裕敬 スタッフ 舞台監督:永易健介 美術:加藤登美子 照明:皿袋誠路 音響:堤野雅嗣 音楽:藤田辰也 大道具:(有)アーティスティックポイント 小道具:重定礼子 衣裳:高本章子 美術助手:三浦綾子 宣伝美術:長谷川義史 専属トレーナー:針・骨接ぎ野本 運搬:堀内運送(株) 制作助手:中津美幸・岡野礼音 制作:奈良歩 共催 精華小劇場活用実行委員会・精華演劇祭実行委員会・大阪市 主催 南河内万歳一座 ▽青年団プロジェクト公演「青木さん家の奥さん」 http://www.seinendan.org/jpn/info/info090528.html 【大阪公演】精華小劇場(2009年8月26日-30日)精華演劇祭vol.13参加 【東京公演】こまばアゴラ劇場(2009年9月11日-27日) 作:内藤裕敬(南河内万歳一座) 演出:平田オリザ 出演 申 瑞季 田原礼子 村井まどか 山本雅幸 海津 忠 木引優子 桜町 元 畑中友仁 スタッフ 舞台美術:杉山 至 照明:岩城 保 衣裳:有賀千鶴 宣伝美術:工藤規雄+村上和子 太田裕子 宣伝写真:工藤規雄 制作:服部悦子 協力:(株)アレス 企画制作:青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催 (有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 共催 南河内万歳一座 精華小劇場活用実行委員会 精華演劇祭実行委員会 大阪市 料金 (日時指定・全席自由・整理番号付)一般前売=3500円 一般当日=4000円 学生・シニア(65歳以上)=3000円 青春18歳差切符=5500円(年齢差18歳以上の ペア割引) セットチケット=6000円(青年団『青木さん家の奥さん』と南河 内万歳一座『S高原から』の2公演をご観劇いただけます)〈各会場20組限定〉 平成21年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業) 【参考】 ・内藤裕敬×平田オリザ対談「世界一静かな『青木さん家の奥さん』と世界一 やかましい『S高原から』」(全文) http://www.banzai1za.jp/s/taidan1.html ===================================================================== ◇劇団どくんご「ただちに犬 Deluxe」 喜劇的造形の見事な達成 夢幻的なスペクタクルの舞台で 柳沢望 今年の5月から、移動テントで全国各地をツアーしている劇団どくんごによ る舞台作品「ただちに犬 Deluxe」。その、埼玉(浦和美園)での公演を見た (9月20日)。私などは、テント芝居なんて聞くと、一昔前のものという風に思っ てしまいがちだけれど、移動するという条件において研ぎ澄まされるものもあ るのだ、と直に見せつけられた感じだ。 関東での公演は終わったが、9月末の豊橋に続いて、10月1日から三日間は大 阪公演、その後11月までかけて四国、九州を巡業する予定だそうだ。ぜひ、こ の機会を逃さず、見事に完成されたこの舞台作品を見届けて欲しい。 巡業というか、どさまわりというか、各地を移動しながら芝居を見せていく というのは、歴史を振り返れば古くからあるもので、シェイクスピアの作品で も、そうした旅の劇団が出てきたりする。フランス古典喜劇を代表するモリエー ルなんかも旅回りをしているし、その系譜を遡れば、いわゆるコメディア・デ ラルテの伝統がある。 どくんごのステージは、木の板を並べて作られただけの、能舞台より狭いく らいの簡素な舞台だった。そこで、道化めいた扮装をした老若男女5人の俳優 がところ狭しと飛び跳ね、動きまわる様子を見ていたら、コメディア・デラル テというのはまさに、こんな雰囲気のものだったんじゃないか、と思った。あ る意味、ストレーレルがミラノ・ピッコロ座でコメディア・デラルテの精神を 蘇らせた仕事に、肩を並べると言っても大げさでないくらいに見事な、喜劇的 造形の達成と言って良いと思う。 喜劇が舞台全体の基調をなしていて、冒頭から繰り返される探偵ものドラマ のパロディが舞台の展開のひとつの動機をなしている。舞台にずっと出されて いる、抱き抱えるほどの大きさの犬のぬいぐるみが、殺人事件の犠牲者に見立 てられていて、犠牲者の死体を前に犯人を指摘する場面を、役を入れ替え設定 を入れ替えて変奏しながら、繰り返していく。 舞台にあらわれるそれぞれの役者があるキャラクターを演じていて、でも、 そのキャラクターは、ある種の喜劇的な類型のようなものになっている。特に なにかひとつ特定の物語が進行するわけでもなく、断片的に場面が提示されて ゆくだけのように見える。 そうした喜劇的な構造は、まさしくコミカルに、軽妙に、ナンセンスに、進 んでいくけれど、犬が犠牲にされるという祭儀的な構造もまた、舞台に貫かれ ている。その二重性が、舞台に見事に貫かれている。その点において、喜劇的 な構造が常に上書きし、押し流し、忘却させるようなものとして、ある種悲劇 的なものが見え隠れする。喜劇的な運動の中に断片化された悲劇的なものとい う構造において、この舞台作品は一貫していて、統一した解釈を可能にする。 見事にゆるぎなく構成されている。 そう分析することができるとして、しかし、舞台に現れる言葉やイメージに 難解なところや晦渋なところはないし、とてもポップに楽しめるものだ。こど もも大人も楽しめる舞台として、全国各地の芝居などあまり見たことの無いよ うな観客からも支持されているそうだが、それもよくわかる話だ。 対話劇的な展開は、おおむね喜劇的な調子で進むのに対して、舞台の展開に おいて、中盤以降、それぞれの役者が独りで語る場面がさしはさまれる。その それぞれのエピソードは、どこかノスタルジックな、童話や民話を思わせたり するようなものだったりして、それぞれ全く独立したお話として成立している。 喜劇的な展開がテンポ良く運動するのに対して、ゆったりと語られどこか叙情 的な味わいを残す。それぞれが、後悔を滲ませていたり、希望につながってい たり、劇的な動機を結晶化するような逸話となっている。 舞台装置の扱いも、祝祭的でありながらある種の狭さを感じさせる冒頭の状 態が次第に開放されていくというような、一貫した展開を持っている。そうし たなかで、舞台の周囲の空間が、ある種の夢幻的なスペクタクルの舞台に変容 させられることになる。フェリーニの映画が好きな人ならばたまらないだろう、 闇の中につかの間浮かび上がる、イメージ。 この進行において、簡素な道具立てをまるで魔術的な仕方で活用することで、 20世紀までに獲得された様々な演劇的技法があますところないほどフルレンジ で展開されるといっても良い。 役者それぞれのパフォーマンスも、極めて正確というべきだ。声の響き、ポー ズ、所作のそれぞれが、練り上げられ磨き上げられたものとしてあって、必要 最低限のところで成り立っていると思う。音として心地よいセリフを聴きたい と常々思ってきたが、どくんごの芝居は聴覚的にも理想的だろう。 もちろん、視覚的にも完成されている。衣装は一見小汚いようなものだった りするけど、それも含めてキャラクターが成り立っていた。そして照明がとて も美しい。持ち運び可能な範囲で最大限の効果を発揮するように、工夫が重ね られたあとに到達したベストな吊り方なのだろう。 はじめ赤を基調とした花飾りのようなものを吊って飾られていた舞台が、そ うした飾りを除いていった最後に、舞台の天井に青いパネルひとつが残される。 その青が舞台に対して視覚的な効果を与えるということもあるのだろうし、あ るいは、モノローグで語られる空をかたどってもいるのだろう。その青いパネ ルの下で、喜劇的な場面展開において、いれかわりたちかわり、白い犬のぬい ぐるみは、クッションのように愛らしく作られた赤い詰め物のひとつひとつを 抜き取られていく。青空の下に晒される臓物。その様子は、すこしだけ現実の 大参事を連想させるようなモノローグの内容とも関連しながら、ひそかに、犠 牲というテーマを響かせていたのかもしれない。 【筆者略歴】 柳沢望(やなぎさわ・のぞみ) 1972年生まれ長野県出身。法政大学大学院博士課程(哲学)単位取得退学。 個人ブログ「白鳥のめがね」。http://d.hatena.ne.jp/yanoz/ ・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/index.php?catid=9 【上演記録】 劇団どくんご「ただちに犬 Deluxe」 http://homepage3.nifty.com/dokungo/index1.htm#NakedDogTour 浦和美園駅前テント公演(2009年9月20日-21日) 全国公演スケジュール http://homepage3.nifty.com/dokungo/2009/ichiran.html 大阪・大阪城公園 太陽の広場(2009年10月1日-3日) 淡路島(兵庫)・洲本市防災公園(10月7日) 徳島・徳島中央公園 鷲の門広場(10月11日-12日) 丸亀(香川)・廃材天国(10月17日) 今治(愛媛)・唐子浜パーク跡(10月23日-24日)、以下年末まで各地を巡演。 出演:暗悪健太 五月うか 時折旬 丹生みほし まほ 構成・演出:どいの 演奏・撮影:プラスマイナスゼロ エグゼクティブ・アドバイザー:かえちん 制作:黄色い複素平面社 http://stage.corich.jp/stage_detail_2.php?stage_id=13281 =================================================================== 連載【レクチャー三昧】第59回 情報掲載基準について -------------------------------------------------------------------- 当【レクチャー三昧】も、おかげさまで連載1年2ヶ月と相成りました。 つきましては、掲載基準(9/30/09現在)についてご説明申し上げます。 1)原則「公共性」の高い機関(大学や研究所、自治体等)が催す、無料ある いは廉価(一回あたり 1,500円以下)の講演・シンポジウム・公演を中心にご 紹介しております。 2)研究者や学生でない「一般人」かつ成人が参加できる催しに限っておりま す。 3)私的機関に依る催しでも、一回あたり1,500円を上限にしております。大 学に於ける生涯学習センター等が開催する講座でも、一回あたり1,500円を超 える講座は原則掲載いたしません。1,500円は、高橋楓がここ三年間、舞台芸 術関連講座を通覧した中で出てきた金額です。今後変動する可能性もございま す。 4)当【レクチャー三昧】では、舞台芸術関連のみならず、映像・文芸・美術 ・政治・哲学・思想・社会問題など様々な分野に渉る講座を紹介しております。 舞台芸術に関わってゆくうえで他分野への関心をお持ちになった方々にもお応 えしたいという方針でございます。 5)観る側からの視点で情報を収集しておりますので、ワークショップは原則 掲載いたしません。ワークショップ情報掲載は、公的教育機関・自治体が催す 無料のものに限っております。 6)有料の映画・展覧会・写真展等は、舞台芸術や演劇人と関連があるものを 中心にご紹介しております。 7)ウェブサイトに情報が掲載されている催しのみに限っております。 掲載基準は、今後変更する可能性もございます。 皆さまのご理解とご協力を賜りたく、引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。 (高橋楓) *無料でも予約が必要なことがございます。必ずウェブサイトでご確認下さい。 *各情報の真偽・変更・取消・思想信条背景等につき一切の責任を負いません。 各自ご確認の上お越しください。 *【レクチャー三昧】カレンダー版(ウェブサイト)もご活用下さい。 ただし、当「マガジン・ワンダーランド」でお知らせした催しが全て転載さ れているわけではありません。 http://www.wonderlands.jp/info/lectures.html ▽追悼:ピナ・バウシュ アートを知るならこれを知れ ~ピナとブッパタール舞踊団が残したもの 2009年10月7日(水)20:00~21:30、開場 19:30 SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS店内 講師は 貫成人氏(舞踊批評/哲学)、紫牟田伸子氏(日本デザインセンター チーフプロデューサー) 1,500円(1ドリンク付)、要申込(要入会) http://www.shibuyabooks.net/commerce/special/lab.cgi ▽世界死刑廃止デー記念上映「サルバドールの朝」 2009年10月10日(土)18:00~ セルバンテス文化センター東京 無料、予約不要、先着順 http://www.tokio.cervantes.es/jp/default.shtm ▽坪内逍遥生誕150年記念連続講演会 新宿歴史博物館講堂 各400円、要申込(往復はがき)、定員各60名、申込締切10月2日(金)必着 ▽▽演劇の革新と創造にかけた逍遙の情熱 2009年10月11日(日)14時~16時 講師は 菊池明氏((財)逍遥協会理事) ▽▽逍遙と美術-舞台美術、役者絵、逍遙の絵心 2009年10月25日(日)14時~16時 講師は松山薫氏((財)逍遥協会理事・早稲田大学高田記念図書館) ▽▽文学者・教育者としての坪内逍遥 2009年11月15日(日) 14時~16時「」 講師は梅澤宣夫氏((財)逍遥協会評議員) http://www.regasu-shinjuku.or.jp/shinjuku-rekihaku/public_html/event.html ▽坪内逍遥生誕150年記念演奏会 2009年11月2日(月)第1回:14時~16時 第2回:19時~21時(同内容) 早稲田大学総合学術情報センター井深大記念ホール 500円、要申込(往復はがき)、申込締切10月15日(水)必着 公演と演奏 講師は菊池明氏((財)逍遥協会)、作曲・演奏は福原徹(邦楽囃子笛方)、鶴澤 津賀寿(女流義太夫三味線)、小早川修(観世流能楽師)の諸氏 http://www.regasu-shinjuku.or.jp/shinjuku-rekihaku/public_html/event.html ▽大学の建築フォーラム 2009年10月10日 (土)16:00~18:00 慶應義塾大学 三田キャンパス 無料、申込不要 講師は 丹尾 安典(早稲田大学 文学学術院 教授)、新見 隆(武蔵野美術大 学芸術文化学科 教授、慶應義塾大学アート・センター 訪問所員)、小林 博 人(慶應義塾大学政策・メディア研究科准教授兼環境情報学部准教授、慶應義 塾大学アート・センター 所員)、渡部 葉子(慶應義塾大学アート・センター 准教授/キュレーター)の諸氏 http://www.art-c.keio.ac.jp/event/log/317.html ▽メディアの過去・現在・未来 2009年10月24日(土)10:00~15:30 専修大学生田校舎 10号館1階10103教室 無料、要申込、先着順、定員 200名、申込締切 10月 19日(月) * お車でのご来校ご遠慮ください http://www.senshu-u.ac.jp/gakubunews/gakubunews_2009/kyomu_literature_pub_lec_09_2.html ▽専修大学創立130年人間科学部開設・文学部改組記念シンポジウム 2009年11月6日(金)16:00~19:30 専修大学神田キャンパス731教室 無料、要申込、先着順200名 講師は香山リカ氏(精神科医・立教大学教授)、上野千鶴子氏(社会学者)ほ か。 http://www.senshu-u.ac.jp/univguide/efforts/130th_anniversary/130th_anniversary_event.html#sympo ▽世界同時食糧危機、日本は乗り切れるか? 2009年10月3日(土)14時~15時30分 カタログハウス本社ビルB2階セミナーホール 1,000円、要申込、先着順、定員150人 講師は 石弘之氏(環境学者・東京農業大学教授) http://www.cataloghouse.co.jp/study/index.html#T20091003002 ▽映画に見る世界の人、社会、歴史 各日19時00分~20時30分 淑徳大学サテライトキャンパス(池袋) 全7回3,500円、要申込、定員100名 淑徳大学・豊島区教育委員会主催 ▽▽西部劇と日本の叙情 2009年10月5日(月) 講師は 渡部治氏( 淑徳大学国際コミュニケーション学部教授) ▽▽映画で見る社会における言語の機能 2009年年10月19日(月) 講師は 赤崎美砂氏(淑徳大学国際コミュニケーション学部准教授) ▽▽ 『フォレスト・ガンプ』アメリカにおける60年代、70年代 2009年10月26日(月) 講師は 高橋弘氏(淑徳大学国際コミュニケーション学部教授) ▽▽ 『Little Voice』にみる気取らないイギリス 2009年11月2日(月) 講師は 出浦敬吾氏(淑徳大学国際コミュニケーション学部教授) ▽▽世界の名作短編アニメーション紹介 2009年11月9日(月) 19時00分~20時30分 講師は 星野英樹氏(淑徳大学国際コミュニケーション学部教授) ▽▽スクリーンの上の古代ローマ世界 2009年11月16日(月) 講師は 宮嵜麻子氏(淑徳大学国際コミュニケーション学部准教授) ▽▽アニメーション『父と娘』(邦題「岸辺のふたり」9分)をめぐって 2009年11月30日(月) 講師は 高畑勲氏( 映画監督・プロデューサー) http://www.shukutoku.ac.jp/graduates/information/extension/2009a/t-007.html ▽世界の諸宗教と平和 2009年11月14日(土)~12月12日(土)毎週土曜日14:30~16:00 青山学院大学相模原キャンパス 無料、要申込、定員250名、 申込期間10/9(金)~10/23(金) 車輌での来校はご遠慮下さい http://www.aoyama.ac.jp/extension/sagamihara_04/index.html ▽弁士が語る無声映画の世界 ~早川雪洲の「チート」上演と弁士の歴史講座~ 2009年12月7日(月)19時00分~20時30分 東京工業大学大岡山キャンパス西9号館2Fディジタル多目的ホール 無料、申込不要 講師は 澤登翠氏(活動写真弁士) http://www.cswc.jp/lecture/lecture.php?id=9 ▽現代中国文学と文化の再構築 2009年11月16日(月)19時00分~20時30分 大岡山キャンパス西9号館2Fディジタル多目的ホール 中国語、日本語通訳有 無料、申込不要 講師は 王力雄氏(作家) http://www.cswc.jp/lecture/lecture.php?id=97 ▽広報戦略とメディア-世論づくりの実例とブームの裏側- 2009年11月5月(木) 16:30~18:00 慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール 無料、申込不要 講師は 矢島尚氏(株式会社プラップジャパン取締役会長) http://www.mediacom.keio.ac.jp/koza/index.html ▽ダーウィンと人類進化 2009年11月3日(祝)13:00~17:00 東京大学本郷キャンパス理学部2号館・講堂(4階) 無料、要申込 http://www.s.u-tokyo.ac.jp/event/symposium-ASN/ ▽自然科学の多様性と楽しさ 2009年11月20日 (金) 13:00~17:40 慶應義塾大学日吉キャンパス 来往舎1階シンポジウムスペース 無料 http://www.sci.keio.ac.jp/events/sympo2009.html ▽現代日本文学の中の〈家族〉像 -有吉佐和子から村上龍まで- 2009年12月7日(月)14:00~15:30(90分) 東洋大学 白山キャンパス 無料、要申込、定員 100名 講師は 石田 仁志氏(東洋大学文学部教授) http://www.toyo.ac.jp/manabi/koza/exten_ga/2009fgah02_j.html ▽変貌する日本経済とその展望:危機を超えて 2009年11/13 ~ 12/4 の毎週金曜日、18:30~20:30 専修大学神田校舎7号館(大学院棟)3階731教室 無料、要申込、定員150名 ▽▽11/13(金) マクロ経済の構造変化を展望する 講師は 櫻井宏二郎氏(専修大学大学院経済学研究科教授) ▽▽11/20(金) 企業システム:雇用と企業統治の行方 講師は 宮本光晴氏( 専修大学大学院経済学研究科教授) ▽▽11/27(金) 産業の国際競争力を展望する 講師は 西岡幸一氏( 専修大学大学院経済学研究科教授 ) ▽▽12/4(金) 金融の監督・規制をどう再構築するか 講師は 田中隆之氏( 専修大学大学院経済学研究科教授 ) http://www.senshu-u.ac.jp/sc_grsc/graduate_school/grsc_extension/004466.html ====================================================================== 【編集日誌】 ☆今週は、青年団・南河内万歳一座共同企画を取り上げました。もう一本は、 テント巡演を続けている劇団どくんごの「ただちに犬 Deluxe」公演評です。 年末まで各地を回る予定です。 ☆好評のレクチャー三昧企画で、筆者・編者の高橋楓さんに情報の掲載基準を まとめてもらいました。マガジン掲載のほか、webワンダーランドのカレンダー 版もご覧ください。週別、月別表示のほか、一覧表示もあって使い勝手がいい はずです。 ☆10月1日からマガジン・ワンダーランドの編集長が交代します。新編集長に 水牛健太郎が就任し、編集部に大泉尚子が参加します。二人はワンダーランド の寄稿者であり支援会員でもありました。当面はすでに依頼していた劇評・レ ビューが掲載されますが、徐々に新しい方向が明らかになると思います。現編 集長の北嶋は、ワンダーランド代表・マガジン発行人となって活動を支えます。 今後ともご協力、ご支援をお願いいたします。 (北嶋) ====================================================================== 発行 ワンダーランド 〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北4-1-9 Tel& Fax: 042-422-5219 info@wonderlands.jp webサイト http://www.wonderlands.jp * 「マガジン・ワンダーランド」の登録・解除は次のページから。 http://www.wonderlands.jp/info/subscription.html ======================================================================


