2009/06/17
週刊マガジン・ワンダーランド 第144号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.wonderlands.jp/ マガジン・ワンダーランド(小劇場レビューマガジン) 2009年 6月17日発行 第144号 毎週水曜日発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【目次】 ◇二騎の会「一月三日、木村家の人々」 訪れるものの形象、宙吊りの悲喜劇 柳沢望 ◇演劇博覧会「カラフル3」観戦記(下) 「地域演劇祭」の原型に 地元劇団の奮起に期待 カトリヒデトシ ▽連載「カトリ式小劇場の歩き方−7月」 第7回 彼らはどこにいるのか? カトリヒデトシ ▽連載【レクチャー三昧】 第44回 「参照項」を増やす 高橋楓 ■web wonderland から===================== http://www.wonderlands.jp/ ◇DULL-COLORED POP「ショート7」 エロチシズムの上で弾けるポップコーンのように 三橋曉 ◇「雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた」(清水邦夫作、蜷川幸雄演 出) 青春に取り憑かれた「夢想者」たち 燃えたぎる身体が放った鋭い閃光 高野しのぶ ◇BATIK「another BATIK〜バビロンの丘にいく」(構成・演出・振付:笠井叡) 神話的ヴィジョンの魅惑と個としての肉体の不在 竹重伸一(舞踊批評) ◇珍しいキノコ舞踊団 ×plaplax 「The Rainy Table」 ファンタジーの世界を描き出す ダンスと映像の掛け合いの面白さ 中西理(演劇・舞踊批評) ◇演劇博覧会「カラフル3」観戦記(上) 「これからの演劇界」を考える機会に 全国から25カンパニーが結集 カトリヒデトシ ◇ワンダーランド支援会員を募集中! http://www.wonderlands.jp/info/members2009-1.html ===================================================================== ◇二騎の会「一月三日、木村家の人々」 訪れるものの形象、宙吊りの悲喜劇 柳沢望 『一月三日、木村家の人々』は、介護に疲れた30代独身の娘が認知症の父親 を巻き込んで心中をはかる場面から始まる。とはいえ、この戯曲をある種社会 派的なリアリズムとして受け取るべきではない。そうすれば、中途半端な出来 と評価するほかは無い。 現実感を欠いた現実がどこまでもつきまとってくるようなうんざりとさせら れる情況と、そこにあるかもしれないわずかな希望。おそらく、21世紀の日本 を覆い尽くしているであろう馬鹿げた悲惨さ、ある種のどうしようもない「不 条理」さを舞台に造形できている点で、この上演は、現代日本を、その欠如に おいて、正確に写し取っていると思う。 この作品は、「家族で介護の話をコメディーで書く」という課題を引き受け て書かれた戯曲である、と宮森さつき自身が当日パンフレットで明かしている。 実にその通りで、娘が父と心中するまで追い詰められるという悲惨な場面から 始まるこの劇は、前半、心中が中断されたままになるという状況をコミカルな 仕方で描いて行く。現実を描いているようでどこかリアリティに欠けるこのグ レーなコメディを、多田淳之介はリアリティのあいまいさが極まる方向に嘘を 重ねるように演出することで、戯曲を裏切り出し抜きながら、忠実に舞台に造 形して見せている。 冒頭の場面は、心中を決意して七輪の練炭に火をつけ、部屋の窓にガムテー プで目張りをする娘が投げやりに、鼻歌を歌い、一人で歌番組のモノマネをし てみせるという風に始まる。 「ノリノリでしたねー」「これで最後です」「スワンソングですね」「白鳥 の歌です」 睡眠薬を父に投与し、自らも服用して、そのまま眠り込んでしまおうとした 1月3日の午後、予期せぬ来客によってその心中は中断されてしまう。 まず訪れるのが、心中をはかる娘=明子のいとこで、幼馴染でもある健一。 新年会に来なかったのを心配して訪問したという健一に、明子は、心中の意図 を見抜かれないように「七輪は暖房だよ」「お父さんは寝ているから会えない」 とはぐらかし続ける。ここで、自殺を邪魔されてしまったバツの悪さや、心中 をはかろうとしたことが露見することへの焦りと、それに気付かずにのんきに 居座る健一のかみ合わない会話が、ある種のコミカルさをもって進む。 早く帰ってほしいと焦り、どうでも良い話を続ける健一にいらだつ明子の思 いを、過剰にコミカルにもならず、しかし、単純に深刻というわけでもない淡 々とした質において演じ続けた木崎友紀子はきわめて高度な技量を示したと言 うべきだろう。 やがて明子が心中しようとしたその家に、明子の兄の妻、明子の妹、兄の裕 之が順々に集まってくる。兄が介護の方針について、家族会議を開くことを決 め、明子に知らせないまま、父が居る家に集まるように告げていたという設定 だ。 練炭に火のついた七輪が居間に置かれている不自然さに疑いを持ちながらも、 はじめ誰も自殺の意図に気がつかず、やきもきする明子がそれをごまかし続け る筋立ては、古典的な意味で喜劇として成り立っている。 そして、明子が席を外した隙にカーテンで隠されていた窓の目張りが発見さ れ、集まった家族が明子の心中に気がつくまでがこの戯曲の前半部をなす。あ る種リアリスティックな描写が重ねられては行くが劇の進行はあまり現実的で はなく、喜劇として構想されていたわけだ。 たとえば、明子の兄が家族会議を開くと明子に事前に知らせていなかったこ とや、介護の現状についてあまりに無知であることは、うっかりというにも程 がある。しかし、このような無知もまた、喜劇的人物に特有の粗忽さと見るこ とができるだろう。 無知は、たとえばオイディプスがそうであったように、悲劇を決定付けるも のとしても機能する。しかし、この作品では、無知は、心中という悲劇を中吊 りにするものとして作用するように配置されている。明子を取り囲む人々は、 喜劇的な人物類型に沿うように、若干の誇張を伴う仕方で現れている。 ここで、演出面に触れておこう。この戯曲は1月3日の午後に木村家の居間で 起こることだけを、古典的な三単一の法則に従うように、飛躍の無いひとつら なりの場面として描いている。それを多田淳之介は、基本的に戯曲をリテラル に追いながら忠実かつリアリスティックに演出しているが、幾分か奇妙で少し 過剰な処理を施している。 この作品では、舞台の入り口が「木村家の玄関」になぞらえられていて、観 客は全てそこで靴を脱ぎ、下駄箱に靴を入れるよう指示される。舞台セットも、 窓には実際のサッシを使うなど、現実に家屋に用いられているものをそのまま 使って、現実感を醸し出している。 そして、舞台開始前に「携帯電話をお切りください」と注意を促す上演前の 案内そのものが「新年早々木村家にようこそいらっしゃいました。木村家では お客様に携帯電話の電源を切っていただくしきたりになっています」と、虚構 として示されている。 これは、舞台上の全てを、1月3日の木村家の居間へと一致させることで、逆 に舞台が極めて現実らしく見せるように仕組まれた嘘であるということを際立 たせる逆説的な演出であると言える。 あるいは、健一が登場するとき。そこで、健一役の佐藤誠が客席に何度か会 釈してみせている場面がある。居間を取り囲んで客席があって、舞台上の今が 見られているという、リアリスティックに解釈しようとすれば無いことにしな ければならない奇妙な状況が舞台表象から排除されず、むしろ、舞台上の虚構 に現実の客席を取り込もうとしている。これは、上演台本には指示されていな い演出上の仕掛けである。舞台の後半では、その延長線上で、登場人物が観客 にむかって直接語りかける場面もある。 客席と関係を結び現実を虚構に取り込むという仕掛け自体を成り立たせる 「演技という虚構」が、虚構内の現実をはみ出し、虚構と現実を区別するフレー ムの位置に演技が置かれている。舞台表象がリアリスティックであればあるほ ど、うそ臭くなる、そういうものとしてこの上演は演出されている。 森内友紀子が演じる明子の兄嫁、由美が登場する場面では、舞台上には居な いはずの、何か小動物のようなものに由美が「よしよしよし」と半ばヒステリッ クなほど誇張した仕方で戯れてみせる場面がある。この戯曲からの逸脱は、戯 曲が保とうとしているリアリティを裏切るのだが、戯曲自体がどこかリアリティ を欠いたある種の喜劇であることを強調してみせるものでもある。 この見えない小動物は、まるで、戯曲の上では居なくなったはずの、かつて 木村家で飼われていた犬(ハッピー)を連想させる。舞台上には居ない幻の犬 (?)は、客席という幻と同じ位置にある。幻の視聴者となっているのは我々 なのだ。 この上演で、冒頭で明子が歌うのは「ダンシング・オールナイト」だった。 上演台本ではただ「鼻歌」と指示されており、この曲は演出上の意図において 選ばれている。そのサビの部分の歌詞は「言葉にすれば、嘘に染まる」だ。こ の引用は、演技や演劇そのものが、現実を表象しようとすれば、嘘になってし まうという認識を示すことから作品がはじまっているものと解釈できる。 冒頭の投げやりにおどけて歌番組を演じてみせる場面でも、明子が意識した TV番組のスタジオにいる観客、あるいは同じことだが、想像上の視聴者のイメー ジとして、その居間に居合せていないはずの観客たちが明子の自意識において 想像される劇場の中でバーチャルな実在性を得ているかのようだった。 そのようにして、前半、明子の不安定な主観が投影されたものとして舞台は 解釈される。新たな来客がベルを鳴らす度に、あまり不自然に成らない程度に、 しかし、よほど不注意でなければ気がつく程度に、照明がその色彩を変え一瞬 その調子をゆらめかせる演出があった。これも、来客のたびに動揺する明子の 意識を表しているかのように解釈できるものだ。 明子から見れば、家族の言葉の全てが嘘に見えてくる。家族の存在そのもの、 その振る舞いそのものがうそ臭く見えてくる。演出の不自然さを、そのように 解釈することもできる。舞台が現実に近づこうとすればするほど、どこか居心 地が悪い。舞台を去ろうとしているのに、演技をしなければならない舞台に無 理やり立たされてしまうような感覚。作品の前半は、そのような意味で寝覚め の悪い夢のような悲喜劇として成り立っている。 ここで、舞台上にテレビが無かったことに注意しても良いかもしれない。ど の家にも団欒の中心にあるはずのテレビが無いというリアリティの欠如は、そ のまま、舞台全体がテレビスタジオの収録セットであるかのようであることに 裏返しの仕方で一致するのだ。 前半では、一人ずつ集まってくる家族の台詞を通して、家族構成や問題の背 景などが説明されていくことになる。ひとりでサスペンス的情況に置かれた明 子と、それに気がつかず呑気にしている親族たちの落差がコミカルで、その情 況を知っている観客は自ずと明子に感情移入することになる。だが、明子の心 中が露見した後、後半の場面では、不意に明子が姿を消してしまう。 ここで、明子の主観を中心とした前半の調子は消え去り、宙吊りになったま まの介護の問題をめぐるちぐはぐな対話のなかで、明子の心情が前半とは逆に 観客から一番遠くに行ってしまい、そこから家族の団欒の中に明子がもどって いくというプロセスを見るのが後半の調子になる。 明子の心中が露見した後で、不審な男が登場する。演じるのは太った体形で 青年団関連の舞台でもおなじみの島田曜蔵だ。父親が認知症になる前に離婚し ていたという母も家族会議に呼ばれていたのだが、出席を拒み、その男に手紙 を託していたというのだ。その男は高齢女性ばかりが集まるホストクラブで母 と出会ったという設定で、手紙の中身では母の恋人と語られるが、本人はただ のお客さんだとそれを否定する。母の人生を狂わすな、と長男は男に怒りをぶ つけていく。そのどさくさにまぎれて明子はこっそり家の外に出て行ってしま う。 明子の不在に気が付いた長男の妻と明子の妹は明子を探しに外に出かけてし まう。長男といとこの健一がそのホストと残される宙吊りの時間、手紙を届け に来ただけですから、と男が帰ろうとすると、「それはあまりに無責任だ」と 引き止めるというちぐはぐな諍いが進む。そこで、離婚した母親から何も知ら されていなかったホストがこの家族の介護問題に気付き、意外な一言を発する。 「介護職員なんで、前職」。 このホストの男が、どこまでも突き放した立場から、家族に向かって介護を 継続するために気をつけるべき基礎的なポイントを専門家として語っていくこ とになる。 この戯曲では、介護が家族にのしかかってしまうような現代日本の問題が扱 われている。そして、介護保険制度の現状に問題があることも示唆されている。 しかし、その介護をめぐる問題は、どうしたら根本的に解消できるのか、とい う方向では扱われない。ホストが実は介護のスペシャリストだったという馬鹿 馬鹿しい展開のなかで、専門家からの意見として語られる事柄は、「ケアマネー ジャーに相談して、ショートステイで自由になる時間も少しは作らないと」と いった、一般的で初歩的な対処法を伝えるだけのことだ。 この戯曲では、介護の負担が間違っていると気付いて家族会議を開くにして は、兄は介護の制度や家族内で起こりえる問題に対して無知すぎる。長男夫婦 は仕事の都合や子育てのため父親の介護ができず、明子の妹春香は演劇活動を しているので介護を手伝えないという設定だ。実は設定上、この家族には全く 余裕が無いわけではなく、各自が少しうっかりしていただけで、明子は追い詰 められたということになっている。最終的には解決できるという印象が残るの はそのためだ。 劇作上、あまりに大きな問題をあまりに軽く扱いすぎているといえなくも無 い。しかし、またこの作品は、あまりに多くの問題が、単にうっかり気が付か ないことによってこじれているのだ、ということを示唆しているとも言える。 そして、この作品では、うっかり間違いを犯してしまうことが、一切糾弾され ていない。 もちろん、単に運良く最悪の結果が回避されたに過ぎないという戯曲の構成 は甘い。だが、この筋立ては、それぞれの立場の人がどこかでうっかりしてい るもので、そうした間違いは、いつだって、少しずつ正せば良いのだ、という メッセージとして読み取ることもできる。この戯曲の根底にある寛容と希望の 原則は、倫理的にその価値を認めるべきものだ。それが、あまりに馬鹿馬鹿し い悲惨さとセットに提示されている点でも、この戯曲はあいまいな悲喜劇なの であり、この上演はそれを十分に造形してみせていただろう。 さて、ここで、小劇場演劇の役者をするために介護を手助けすることができ ない明子の妹、春香が、明子が心中を図ったことに最後まで気が付かないほど 現実を見失っているという仕方で、喜劇的な人物として表れていることは興味 深い。そして、妹が出演に向けて準備している作品は『DNAの憂鬱』というも ので、妹は遺伝情報を担う塩基の一つ「シトシン」役だというのだ。「生物と 言う名の乗り物を乗り継ぐDNAも流れの中で不動のものではないんだよ」と妹 は劇の内容に触れながら、「生命の神秘、生きるって何?」というのがテーマ なんだ、と語ってみせる。 ここでは、一般社会の中で小劇場演劇が、現実に直面できていないことや、 一般から理解されない所でしか表現が成立していないことを皮肉な仕方で描い ている。 姉が介護の現場で追い詰められ、生きていく意味を見失っているのに対して、 「生命の神秘」を寓意化するような芝居に妹がかまけているというのは、いさ さかグロテスクだ。しかしそれを裏返せば、演劇は現実から離れることによっ て初めて本質的な問題を明らかにできるという希望がそこに込められているか もしれない。 妹役の春香を演じた村井まどかは、冒頭ではやたらな明るさを振りまいて 「空気を読めない」ただのイタいキャラクターといった風だが、姉を連れ戻し た後、そのやたらな明るさで「お姉ちゃんどよーんとしてて話しかけにくかっ たんだよ」と、問題を抱え込んでコミュニケーションを拒絶していた明子自身 が自分を自分で追い込んでいたことをあっけらかんと示し、「休みとって演劇 見にきてよ、生きるってなにか?だよ」と明子に語りかける場面では、噛み合 わない明るさがともかく人を励ますこもあると感じさせもした。その点では、 難しいニュアンスの演技を実現していただろう。 さて、後半では、妹と兄嫁に連れられて家に戻った明子と兄の間で交わされ る激しい対話が、この劇のクライマックスとなっている。それは、「もう生き ていたくない」「生きていかなければならない理由がわからない」と言う明子 と、「家族が大事じゃないのか」「俺たちは家族なんだぞ」と繰り返す兄との 間のすれ違いである。ここでは、問題の根深さが明らかになるばかりで、何も 解決されないし、そこからは何の救いも見えてはこない。生きることについて の様々な見方は、どれも決定的な答えにはならないということだけが示さる。 しかし、ここで初めて明子と兄はお互いの違いと互いが抱えている問題をはっ きりさせることができたのであり、すれ違うことによって初めて深く絆を確認 できたのだ。これは真の意味で劇的といえる唯一の場面とも言えるが、この場 面を見事に演じきった小川原康二と木崎友紀子の二人は賞賛に値する。 この戯曲の最後は、心中のために用意された七輪をいとこやホストも含めた 全員で囲んで餅が焼けるのを待つという、かりそめの団欒の場面で閉じられる。 しかし、心中をはかったその日その場所で、明子が家族の団欒に戻っていける まで回復した心理的な転機となる最大のドラマは、この舞台の外で起きていた。 そのことが兄嫁の由美の語りの中で示される。 いとこの健一が結婚して明子を支えたいという意志をそれとなく示し「あと 一日持てばいい、そうやって毎日なんとかやっていけばいい」と励まそうとし た場面のあと、カイロを握り締めた明子は「そこまでして生きなきゃいけない のかね」とつぶやく。そこで、カイロを明子に渡したのは、近くの神社で偶然 出会った老婆だったと、由美が何気なく明かす。まるで明子は当然すでに家族 の輪の中に戻っているとみなして、その理由を告げるように。辛そうな明子の 様子を見て、その老婆が「生きていたらきっといいことあるから、だまされた と思って信じてみなさい」と言ってカイロを渡したのだ、と。 この戯曲で、カイロが渡される神社とは、劇中で「ぽっくり神社」と呼ばれ てもいて、「苦しまずにぽっくり死ねるようにと老人が願をかけに来る神社」 と説明されてもいる。だから、そこで老婆が根拠が無くても希望を持てばよい のだと語る言葉もアイロニカルな配置の中でなされているとも言える。 いずれにせよ、明子にとってもっとも劇的であるもの、家に帰るつもりにさ せたであろう老婆の無償の善意は、しかし、舞台の外に置かれている。 明子以外の家族が介護の負担を処理する責任を放棄していたのと平行するよ うに、この上演は、戯曲が指示するままに、「認知症」の父親を直接描くこと を放棄する。別室に寝かされたままの父親については、舞台の外に様子を見に 行った人物によって報告されるだけである。もっとも過酷で触れたくない現実 も、追い詰められた明子を救う可能性も、木村家の居間という舞台の外に排除 され、舞台表象の臨界を越えた位置に置かれている。 明子に向けられた善意を報告する由美が、舞台上に見えない生き物(居ない はずのハッピー?)をそこに見ているように振る舞うことも、この位相から捉 えるべきだ。この由美の演技は、舞台表象の臨界に触れている。 「青い鳥」にもなぞらえられる「ハッピー」は、そこにいるのに、家族には 見えないのか、あるいは、「ハッピー」はそもそも幻で、由美も幻覚を見てい るだけなのか。どちらとも言えない。 この上演の最後で七輪を囲んだ団欒の場面は溶暗し、ついに舞台は完全な暗 闇となる。そこで更に新たな来客を告げるベルの音が鳴り響いて終わる。これ も戯曲に指示されていない演出だ。この来客はどこか不穏な印象も残す。呼び かけに誰もこたえないままの幕切れは、ひょっとすると、餅を焼こうとした練 炭による一酸化炭素中毒でこの団欒の全員が死んでしまったのではないか、と いう解釈すらほのめかすようだ。少なくともその解釈は排除されない。直接に 希望が示されながらも、戯曲は結論を先延ばしにする終わり方をしているが、 この上演は全てをどこまでも宙吊りにして舞台を閉じるのだ。 この戯曲では舞台に訪れるものが死を中断しながら、しかし、死に脅かされ た世界を語り、希望について語る。訪問者によって、舞台の枠組みはその都度 問い返されている。最後に外から訪れるものは、もはや誰ともわからない。舞 台の外におかれるもの、見えないものの全てが、ベルの音として訪れるかのよ うだ。この場面では、平田オリザの戯曲に見られるように、舞台に収まらない 現実が何か意味ありげなものに象徴的に託されて語られたりはしない。 どこまでも不条理で馬鹿馬鹿しい社会的現実の鏡として機能し、その厭わし さを漂わせていた舞台は、舞台と現実の区別も無い闇の中で、訪れることの音 響的な形象だけになるまで縮んでしまうのだ。もはや舞台表象の限界はどこに あるとも言えない。観客のそれぞれが一人で闇に取り残された場面に、訪れる ことの痕跡だけが示される。 そして続くカーテンコールでは、もんたよしのりが歌うオリジナルの「ダン シングオールナイト」が響き渡る。この上演で唯一の、録音された音楽の再生 である。お茶の間を支配するテレビのスター、POP音楽の文脈が闇を押し流す。 「言葉にすれば嘘に染まる」。 そして、それぞれ訪問者でもあった観客たちは、木村家の玄関から去って行 くのだった。(所見:5月31日) 【筆者略歴】 柳沢望(やなぎさわ・のぞみ) 1972年生まれ長野県出身。法政大学大学院博士課程(哲学)単位取得退学。 個人ブログ「白鳥のめがね」。http://d.hatena.ne.jp/yanoz/ ・ワンダーランド寄稿一覧:http://www.wonderlands.jp/index.php?catid=9 【上演記録】 青年団リンク 二騎の会『一月三日、木村家の人々』 こまばアゴラ劇場(2009年5月23日-6月2日) http://www.komaba-agora.com/line_up/2009_05/nikinokai.html 作:宮森さつき 演出:多田淳之介 出演:小河原康二 木崎友紀子 島田曜蔵 村井まどか 佐藤 誠 森内美由 紀 照明:岩城 保 舞台美術:鈴木健介 宣伝美術:京 制作:服部悦子 木元太郎 芸術監督:平田オリザ ★= ポストパフォーマンストーク 5/23(土)19:30 『解析・宮森戯曲』ゲスト:堤 広志氏(舞台評論家) 5/24(日)18:00 『多田淳之介、父を語り、作品を語る。』 5/25(月)19:30 『戯曲・俳優・演出』 ★『F』プレイベント 二騎の会次回作『F』プレイベント開催=5月30日(土) 18:00 START! 〈料金〉予約・当日=1,000円 企画制作 青年団/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催 (有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 ===================================================================== ◇演劇博覧会「カラフル3」観戦記(下) 「地域演劇祭」の原型に 地元劇団の奮起に期待 カトリヒデトシ 長久手町でのセカンドステージは1st選抜5団体と、各地で推薦されたカンパ ニーである「全国地域推薦」6団体、「主催者推薦」5団体、計16団体が参加し た。地域の推薦は各地の表現に精通する団体が行った(注1)。 5月2日(土)〜4日(月)に「森のホール」(最大客席数819)と「風のホー ル」(最大客席数300)とで開催された。 ▽16団体でセカンドステージ 初日出場順に紹介する。まず、「森のホール」から。 ・劇団スマイルバケーション「さすらいダンボール」 1stと同じ出来栄えだが、それでも見入ってしまうのは、正副代表の体の張 り方にある。へんに成熟せずに、体を酷使する芝居を続けてほしい。 ・帰ってきたゑびす「ワーニおじさん」(東京・主催者) 題名に引かれたが、わりと普通な井伏「山椒魚」的世界の変形。美術的な衣 装が魅力的で、舞台一面に広がる裾の処理に黒子を何人も投入できる所に団体 の力が現れる。象徴劇だが、わかりやすい範囲にとどまっているところにバラ ンスの良さがある。 ・劇団C-Factory「シャインズマン」 期待する団体だけにあえて言うが、1stと寸分違わない芝居を二度見るのは つらかった。演出が都度ごとに変わる冒険を、とはいわないが、一度完成した からといって、+αを加えず提出してくるのはいかがなものか、と思う。 ・座"K2T3(福岡推薦)「ルールブック」 20年選手らしい。女性だけの登場人物で、練り上げられたコントをきちんと 演じる姿勢に好感がもてる。最後の「ドレミの歌」は圧巻で、それぞれの音に 感情とふりをつけて「歌を演じる」という、「くだらない思いつき」を、抱腹 絶倒で完成度の高い笑いに作りあげる、真摯な態度には打たれた。そこまで徹 底する努力に尊敬を禁じえない。 ・劇団コーヒー牛乳「男の60分−名古屋場所−」 1stから更に演出を工夫し、ダンスの体術を工夫し、更に見やすい、分かり やすい芝居になっていた。ベタになるとも手順を省かず、一度完成した作品を 再度、磨き上げる姿勢に頭がさがる。何度みても「モジャンテス」(ガキ大将 が扮する怪獣)のバカバカしさは大笑いできる。 ・試験管ベビー(名古屋・主催者)「はかない恋の話でも」 観客参加型演出。前説で周知された観客の合い言葉により、筋運びが変わる というベテランならではの手練。ベタな恋愛コメディかと思いきや、ラストに 梯子をはずしてしまう、意外性が秀逸。 ・TAKE IT EASY!(神戸推薦)「TAKE IT EASY!×末満健一「千年女優」」 戦前の映画界から話を説き起こす歴史ロマン。印象が散漫になる場面もある が、物語構造がしっかりしているので、大河ロマンの香りを損なうことはない。 大劇場でも通用する壮大さである。できる役者陣なので、格調を損なわないた めにいいわけじみた説明やベタなギャグはいらない。 ・柿喰う客「恋人としては無理」 観劇は三度目になるが、売れっ子劇団だけに、その都度キャストが変わる。 それに伴い脚本も手直しされ、演出も変更される。ために都度ごとに新鮮で、 手にする感動が変わることに素直に感心する。今回はキレイな話になった。 「風のホール」 ・オイスターズ(名古屋主催者)「トラックメロウ」 観光バスが無責任な運転手によりはぐれていく。乗客が一対一の会話しかで きない、人の話を聞かない人たちで笑わせる。輪唱や相対性理論など唐突なモ チーフが差し込まれ、ラストは奇妙な味で終わる。もう少し演出の効いた仕掛 けのある別作品がみたい。 ・ユニット美人(京都推薦)「山内一豊が言う前に!」 不格好なコントと、下手なミュージカル。実はきちんと踊れる女性二人が笑 いのために何でもやるところに感動する。いざとなると「ブルマ姿」になって 「ブルマあげてこ!」と苦境を乗り切る(笑)。なんだかな、ではあるが、計 り知れないものを感じる。自分の世界をとことん追求してほしい。 ・Theatre劇団子(東京・主催者)「愛知のオンナ」 紀伊国屋公演した実績をもつ団体だけに、うまさが並ではない。 結婚式のビデオ撮影のための帰郷が、避け続けていた旧友との過去を見つめ 直す契機になる話。構成がしっかりしている上に、「御当地もの」をつくる戦 略に感心する。「アイちゃん」役の田中千佳子がよいコメディエンヌとして印 象に残った。 ・弦巻楽団(札幌推薦)「神の子供達はみな遊ぶ」 設定の妙で見せる。一世を風靡した超能力少年少女アイドルグループのその 後日談。構成もうまく、役者の演技力をカバーしている。流れの緩急はいま一 つだが、テンションのかけ方に優れ、楽しめた。 ・負味(東京推薦)負味コント選集「負味と申します。」 映像を多用したコント。10本の出来に大きなばらつきがあるので、全体とし てはインパクトにかけたが、まだまだできる実力を感じる団体だと思う。 ・坂口修一(大阪推薦)「煙突」 座付きの老優の芸談を一人芝居でじっくりと。少年時代から長い人生をてい ねいに立体化させて描く。もっと見ていたい気にさせる俳優の演技である。の びしろに期待が大きいので、たくさんの人物を演じ分けるものが見たい。 ・特攻舞台Baku-団「ピッツァ・ヒーロー・ミックス・Lサイズ」 1stでも見たが、暑苦しい芝居が爽快感に満ちた仕上げになるところに好感。 二度見ると、オチの弱さに気づくが、そこまでに十分に楽しませてくれている ので好印象は減じない。この路線を追求してほしい。ブレイクする予感を持つ。 ・ニットキャップシアター(京都。主催者)「サルマタンX vs ドクターベン 〜こだわりすぎた男達〜」 ビロウな話を最後までやりきる体力に感心した。役者のキャラがきちんとた ち、笑わせるためなら、どんなベタでも恐れない精神力の強さに脱帽する。た だ、役者の力量にはっきりとした差が見えるので、もう少し演出でカバーする 必要があるだろう。 ▽「お祭り」の枠を脱するために 各ホール各日1回の上演だが、期間中上演順を変え、各々計3回の上演機会が 与えられる。立派なプロセミアム劇場での上演は、若手には魅力ある経験であ る。 のべ48ステージで観客数は2000名(のべ9000名)あったと聞く。 ゴールデンウィーク期間開催がどう作用したかはわからないが、「カラフル」 が二日開催9団体で1500名、「カラフル2」が二日開催、のべ32ステージで2000 名の動員だったので、一気に拡大路線とはいかない厳しさはある。 「演劇博覧会」という企画が東京以外で開催されるのは、地域演劇の振興の ために重要だ。また、4月29日には、同会場で地元「試験管ベビー」のかこま さつぐと、「劇団コーヒー牛乳」の柿ノ木タケヲのワークショップも開かれた。 「観劇機会の創出」とともに「演劇体験の創造」も行うのは、振興戦略として 適切で、この考え方が今後の「地域演劇祭」の原型となってもらいたい。 しかし「博覧会」というためには、地元団体以外の出場が増えなければなら ないが、それに呼応して愛知以外からの観客動員が増加するというわけではな い。「興行」的には厳しいだろう。2ホール同時開催をやめ、普通に4団体ごと のブロックを8日間で開催すれば、興行的に健闘できる可能性も高くなろう。 しかし、名古屋市内で長期使用できる劇場がないことや(名古屋の劇場は音楽 系に押されていると聞く)、凝縮された環境だからこそ、お互いの団体を鑑賞 しあい、交流しあう機会が生まれるメリットなどを考えあわせると、一概に結 論はでない。 武豊町は大企業の工場があり、42,000余りの人口に比して立派な劇場を持つ 豊かさがある。市民自身が立ち上げたNPOが運営し自主企画も多い劇場である。 長久手も大学を幾つも抱え、緑多く、名古屋圏の人々に住みたいと言われる町。 ここも人口48,000人ほどながら、武豊と同じく市民劇団を持つ演劇に理解のあ る町である。東京周辺の市町よりも「演劇の民度」は高いともいえる。 2ndでは高校生の多さが印象的だった。顧問に引率された演劇部員と覚しき 一団もいた。地元の高校に優待を行ったそうで100名弱が観劇した。更に「2」 から始められた「ハイスクールミーティング賞」という、高校演劇連盟の賞の 審査員20名も参加していた。短い休憩時間(15分)にロビーやホワイエで見た ばかりの芝居の感想を声高に言い合っている畏れ知らずの姿に、ほほえましい ものを感じた次第。彼らが「友達に見せたい」という基準で選んだ2劇団は、 愛知全県の1000人以上の高校生が見る鑑賞会に招かれる。まさに団体にとって の「栄誉」である。選ばれたのは「劇団コーヒー牛乳」、「帰ってきたゑびす」。 6月6、7日に名古屋市栄の「アートピアホール」で公演された。その他の受賞 結果は注2にまとめた。 さて、結果を見て、何と言うべきだろうか…。受賞した実質8つのうち、5つ が東京団体。外が神戸と、京都の2団体である。地元名古屋の団体は4団体あっ たが、選ばれなかった。 これは残念だった、となぐさめるだけでいいのであろうか? 東京の団体は やはり「一日の長」がある、という話でいいのか? 大会プロデューサーの東海シアタープロジェクト(TTP)の大橋さん(注3) の話を伺うと、名古屋の小劇場はここ5年で40パーセント市場規模を縮小し、 老舗「少年王者舘」や「B級遊撃隊」につづく新興団体が、現れづらい状況に なっているという。まだ28歳だが、名古屋の演劇界の中で実績を残してきた大 橋プロデューサー。彼の忸怩たる思いは想像に難くない。 ところが、その期待される若手の芝居を見て感じるのは、「お笑い」全盛だっ た状況のその後ともいうべき、たとえお笑いでなくとも、内輪感がただよう作 品作りの姿勢。名古屋という文化圏・商業圏が独立性があるためにかえって、 団体に「外」に出ていこうという気迫が薄いところに問題を感じる。 名古屋の中堅若手たちは今回受賞できなかった現実を重くうけとめてほしい。 リージョナル・シアターが地元で根付き、支持されることは最低条件ではある が、もうひとつ上の「文化性」を見据えた活動に結実していくのでなければ、 「カラフル」が単なるお祭りの枠を脱することはできないだろうと思う。(了) (注1)推薦団体は、東京「王子小劇場」、京都「フリンジシアタープロジェ クト」、大阪「in→dependent theatre Group」、神戸「アートビレッジセン ター(KAVC)」、福岡「FPAP(福岡パフォーミングアーツプロジェクト)」、 北海道は「NPO法人生活支援型文化施設コンカリーニョ」である。 (注2)各受賞団体は次の通り。 ・パブリックアワード(観客賞)。観客投票が同数のため2団体 「劇団コーヒー牛乳」「Theatre劇団子」 ・インターネットクチコミ賞(演劇ライフ賞) 「Theatre劇団子」 ・各賞は、ハイスクールミーティング賞(「劇団コーヒー牛乳」「帰ってきた ゑびす」)以外に、三重県文化会館賞「柿喰う客」、シバイエンジン賞「負味」、 福岡のぽんプラザホール賞「帰ってきたゑびす」「TAKE IT EASY!」、コンカ リーニョ賞「ニットキャップシアター」「ユニット美人」、Asect賞(名古屋 の映像制作会社)「ユニット美人」。 (注3)TTPは2006年、愛知県が地域社会で活躍する優良事業者を認定・応援す る「コミュニティビジネス優良モデル事業者」に選出された。「演劇ラボ」を 企画運営し、各種のワークショップを運営していた。昨年度講師には地元演劇 人のほか。デスロック多田、shelf矢野、青年団柴幸男などがいる豪華メンバー。 名古屋と東京の若手人による演劇コミュニティ「366.0 project」の創立に携 わった。 【筆者略歴】 香取英敏(かとり・ひでとし) 1960年、神奈川県川崎市生まれ。大学卒業後、公立高校勤務の後、家業を継 ぐため独立。現在は、企画制作(株)エムマッティーナを設立し、代表取締役。 ウェブログ「地下鉄道に乗って−エムマッティーナ雑録」を主宰。「カトリ式 小劇場の歩き方」をワンダーランドに連載中。 http://plaza.rakuten.co.jp/ksh21c/ 【上演記録】 演劇博覧会「カラフル3」 http://colorful3.jp/index.php ▽1st 武豊 会場:ゆめたろうプラザ(武豊町民会館)・輝きホール(678名 収容) 料金:1日通し券(14日・15日) 一般前売 3,000円 / 当日 3,500円 3月14日(土) 11:00〜/12:15〜/13:45/15:00〜/16:15〜/17:45〜/19:00〜 旧劇団スカイフィッシュ、演劇組織KIMYO、BQMAP、Marmoset、劇団渡辺、劇団 C-Factory、柿喰う客 3月15日(日) 10:30〜/11:45〜/13:15〜/14:30〜/15:45〜/17:00〜/18:15〜 劇団820製作所、劇団コーヒー牛乳、劇団蒼月、特攻舞台Baku-団、fuzzy m. Arts、劇団スマイルバケーション、西田シャトナー演劇研究所 ▽2nd 長久手 会場:長久手町文化の家・風のホール(300名収容)、長久手 町文化の家・森のホール(707名収容) 料金:1日通し券(2日・3日・4日)一般 前売 3,500円 / 当日 4,000円、ブ ロック券(2日・3日・4日の半日券)一般 前売 2,000円 / 当日2,500円 ▽2nd.stage タイムテーブル 5月2日(土)11:00〜/12:15〜/13:30〜/14:45〜(客席入れ替え)16:15〜/ 17:30〜/18:45〜/20:00〜 森のホール 午前(Aブロック):劇団スマイルバケーション、帰ってきたゑ びす、劇団C-Factory、座"K2T3。午後(Bブロック):劇団コーヒー牛乳、試 験管ベビー、TAKE IT EASY!、柿喰う客、 風のホール 午前(Aブロック):オイスターズ、ユニット美人、Theatre劇団 子、弦巻楽団。午後(Bブロック):負味、坂口修一、特攻舞台Baku-団、ニッ トキャップシアター 5月3日(日)11:00〜/12:15〜/13:30〜/14:45〜(客席入れ替え)16:15〜/ 17:30〜/18:45〜/20:00〜 森のホール 午前(Cブロック):劇団コーヒー牛乳、柿喰う客、試験管ベビー、 TAKE IT EASY!。午後(Dブロック):劇団C-Factory、劇団スマイルバケーショ ン、帰ってきたゑびす、座"K2T3、 風のホール 午前(Cブロック):柿喰う客、坂口修一、ニットキャップシア ター、負味。午後(Dブロック):弦巻楽団、Theatre劇団子、オイスターズ、 ユニット美人 5月4日(月)10:00〜/11:45〜/12:30〜/13:45〜(客席入れ替え)午後、 15:15〜/16:30〜/17:45〜/19:00 森のホール 午前(Eブロック):帰ってきたゑびす、座"K2T3、劇団スマイル バケーション、劇団C-Factory。午後(Fブロック):TAKE IT EASY!、試験管 ベビー、柿喰う客、劇団コーヒー牛乳 風のホール 午前(Eブロック):弦巻楽団、Theatre劇団子、ユニット美人、 オイスターズ。午後(Fブロック):ニットキャップシアター、特攻舞台Baku- 団、負味、坂口修一 主催:風林火山実行委員会、NPOたけとよ、武豊町教育委員会、長久手町教育 委員会、東海テレビ放送、東海シアタープロジェクト 助成:(財)セゾン文化財団 舞台運営・統括:(株)若尾綜合舞台 映像:(株)Asect 劇団選出協力:FPAP、in→dependent theatre、神戸アートビレッジセンター、 王子小劇場、フリンジシアタープロジェクト、NPO法人コンカリーニョ 特別協力:演劇ライフ、(財)三重県文化振興事業団、シバイエンジン、(株) Asect ほか 協力:名古屋演劇鑑賞会 企画・製作:カラフル3製作委員会 ===================================================================== ◇連載「カトリ式小劇場の歩き方−7月」 第7回 彼らはどこにいるのか? カトリヒデトシ 今月は体温が低い。 いつものように「これが!これが!絶対っ!」と熱狂できない。 こんな月もあるんだなぁ。 もちろん、気になるところはたくさんある。 カニクラ88「73&88」(7/15(水)〜19(日)アトリエヘリコプター。 http://ameblo.jp/canicula88)。ご贔屓の天才認定、青年団演出部柴幸男が 演出、柿喰う客玉置玲央も参加するので期待大だが、前回のカニクラを見逃し ているので、まだ保留…。 キリンバズウカ「スメル」(7/4(土)〜12(日)王子小劇場。 http://kirinba.seesaa.net/article/117378110.html)大阪から攻め上ってき たキリンである、東京公演2本目。登米裕一の脚本にカスガイで大いに魅力を 感じたが、本体は初めてなのでまだ強く推せない…。 熱愛、三条会だが、夏の野外公演、今年は「八犬伝」(7/24(金)〜29(水) 亥鼻公園・千葉市郷土博物館(千葉城)前。 http://homepage2.nifty.com/sanjokai/02.html)。アトリエは必見なんだが、 野外はあんまり見てないので、今回は…。 野外の吉例といえば椿組「新宿ジャカジャカ」(7/11(土)〜21(火)新宿 花園神社境内特設ステージ。 http://f37.aaa.livedoor.jp/~jackabcd/jyakajyaka)。新宿フォークゲリラ の話らしいし、何より作演出が中島淳彦(!)ということで期待している…。 劇団空晴(からっぱれ)「いってきますの、あと」(7/23(木)〜26(日) 下北沢OFFOFF。http://www.karappare.com/)。ここも大好き浪速ノリで、荒っ ぽい大阪弁を使うのがご贔屓なのだが、チラシにも余り情報がないので、どう だろうか…。 たとえどんなに低体温症でも、いつもどおりにカトリは劇場には行く。 何で、そんなに飽きもせず見に行くの?と聞かれることが多いので、考えて みた。 カトリにとって芝居を見て、「おもしろい!おもしろい!」と喧しく言いふ らすのは、「オズマ計画」が発動しているからだ。 現在では、SETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)というそ うだが、1960年に始まった「地球外知的生命体探査」のこと。 137億光年という広い宇宙のどこかに、地球人以外の知的生命体がいるかも しれない(今になると「知的」というくくりはけっこう恥ずかしいが)。その 宇宙人と交信したくて、たゆまず宇宙に発信を続け、痕跡を受信しようと耳を すましつづける。 「幼年期の終り」にSFにつかり、時々「SFもの」の血が顔を出す、ロマンチ ストのカトリ(あ、自分でいっちゃった!)としては、この連載はカトリ版 「オズマ計画」なのだ。 演劇に対する偏愛のことばを、どこかにいるかもしれない同志に届けたい。 さらには、どこかに産まれているにちがいない、「新しい才能の産声」を逃 さずキャッチしたい。 だから毎日のように劇場に通い、厚顔と思われても、気にいった役者さんに はぬけぬけと声をかけ、好きになったら「ボイジャー」のようにどこへでも追 いかける。大丈夫、ちゃんとボイジャーに搭載されている、55か国語の挨拶の 記された金盤みたいなものは準備してある。いつでも、どんな芝居でも「おも しろがる」用意はある。ドン(胸を叩くSE)。 だから、演劇を評価する軸は絶えず見直している。 このところ、「渡辺源四郎商店」、「ジェットラグ」、「東京ノーヴィ・レ パートリーシアター」、「二騎の会」を見て、何よりも、中村富十郎の「勧進 帳」を見て、「うまいってすごいな」と改めて思った。 どうぞ、お笑いくだされ。 今まで生意気にも、「うまいだけじゃ…」とか、もっと極端に「うまくてど うする?」なんて吹きまくっていたりしたのだが、心を入れ替えました(笑)。 やはりうまいのはそれだけで、すごい。はっきりいって、うまくなくては、 「古典には勝てん」(韻を踏んでみました)。 カトリの演劇評価の軸は、脚本、(空間も演技も含めての)演出、役者といっ た要素よりも、「エネルギー」「わからないもの」「ことばの強さ」「異形」 といったものが中心にあった。 そこにおくればせに「うまいってすごい」も付け加えます。 ひねくれすぎて、自家中毒おこしていたんですよ。「御笑納」ください(?)。 で、今月は「うまいってすごい」就任記念で3本紹介します(どんどん日本 語が下手になってるなぁ)。「うまい芝居」が予感されるものをごあんなーい。 モダンスイマーズ「血縁〜飛んで火に入る五兄弟〜」(7/17(金)〜8/2 (日)。http://www.modernswimmers.com/index2a.html)。岸田國士戯曲賞を とったのでもう一流の仲間入り(!?)だが、蓬莱竜太は書ける!のは確か。重 厚で濃密な脚本世界が緻密に作り上げられ、演出もムダのなく抜群の構成力が ある。けどね、上手すぎる弊害がある。例えば、「まほろば」(=理想郷)と いいつつ、女性の生む性としてのたくましさこそが「まほろば」だと、つい断 定してしまうようなところにラフさを感じる。違いますか? しかし、今回は 10周年記念!で、何とモダスイ5名の共同脚本・演出! 最初で最後かもしれ ない蓬莱が役者で出演! 5人がぶつかりあって「崩壊してもいい」という見 上げた覚悟。応援しようではないか。 世界名作小劇場「−初恋」(7/15(水)〜20(月)シアター711。 http://smshogeki.art.officelive.com/next.aspx)。やわらかい暖かさを醸 す2枚目窪田道聡が演出するカンパニーだが、本人が前川知大「イキウメ」に 俳優として加入になったため、セカショーは活動休止になる。役者に専念する 時期だとカトリも思うよ…。今回はMONO土田英生の「−初恋」を時間堂黒澤世 莉演出で。これは楽しみだ。うまい先人のホンをうまい後輩演出家が立ち上げ る。古典だけが古典じゃないぜ! すばらしい声の持ち主、熱愛するこいけけ いこもでる! ペンギンプルペイルパイルズ「Cover」(7/17(金)〜26(日)本多劇場。 http://penguinppp.com/)。倉持裕は岸田戯曲賞受賞後、超売れっ子であるが、 やはり自分のカンパニーでやるときが一番。ぼくもとさきこ、空豆顔で油断さ せておいていいようのない「?」を醸す怪優、大好き。「30年前に失踪した姉 が子どものころに風船で飛ばした手紙がついたタコを孤独な漁師が釣りあげ、 手紙が二人の弟の元に返ってくる」(チラシよりカトリ要約)って、どんな話 だ! 人間の不安と恐怖を、コメディ精神を忘れずに描くことを標榜するPPPP。 今回も楽しみ。 今回の副題は「フェルミのパラドックス」といわれるもの。簡単にいうと、 「広い宇宙の中に、地球以外に知的生命体がいないとは考えづらい。しかしそ れなのに、どうして彼らから何の音沙汰もないんだ?」という問いである。 時に演劇の現状に、猛烈に不安と焦燥と憤りを感じる。しかし、パラドック スを口にせず、「とにかく見て」、「才能を見つけ」、「それを大いに吹聴す る」ことをこれからもやっていきたい、と強く決意するのであった。 だから来月も劇場に通いつめる。 アルキメデスが風呂で浮力を発見した時、裸で走りだしたように、「ユリイ カ!(私は発見した)」と興奮して叫ぶような才能との巡り合いを、カトリは いつも夢見ているからだ。 それでは皆さん、来月も劇場でお会いしましょう。 【筆者略歴】 香取英敏(かとり・ひでとし) 1960年、神奈川県川崎市生まれ。大学卒業後、公立高校勤務の後、家業を継 ぐため独立。現在は、企画制作(株)エムマッティーナを設立し、代表取締役。 ウェブログ「地下鉄道に乗って−エムマッティーナ雑録」を主宰。「カトリ式 小劇場の歩き方」をワンダーランドに連載中。 http://plaza.rakuten.co.jp/ksh21c/ ==================================================================== 連載【レクチャー三昧】第44回 「参照項」を増やす -------------------------------------------------------------------- 期待して出かけたのにぜんっぜんハズレだったとき。「参照項を増やした」 と考えて自分を納得させることにしています。(うっとうしいけど)ポジティ ブシンキング、です。(高橋楓) *無料でも予約が必要なことがございます。必ずウェブサイトでご確認下さい。 *各情報の真偽・変更・取消・思想信条背景等につき一切の責任を負いません。 各自ご確認の上お越しください。 *【レクチャー三昧】カレンダー版(ウェブサイト)もご活用下さい。 http://www.wonderlands.jp/info/lectures.html ▽イプセン劇の可能性について 2009年7月29日(水)午後2時〜 東京芸術劇場 5F中会議室 無料 講師はバー・クレメトセン氏(ノルウェーナショナル・シアターフェスティバ ル・ディレクター/スポンサー・ディレクター) http://www.norway.or.jp/news_events/2009/ibsen_noh.htm ▽『演劇学の教科書』をめぐって ▽▽演劇の場 その政治的、社会的、美学的意味 2009年6月22日(月)18:00〜 21:00 早稲田大学早稲田キャンパス6号館3階318教室 フランス語、通訳無し 無料、予約不要 講師はクリスティアン・ビエ(パリ第10大学、『演劇学の教科書』著者)、ク リストフ・トリオー(パリ第7大学、『演劇学の教科書』著者)、 エマニュエ ル・ヴァロン(パリ第10大学、『演劇学の教科書』「補論」著者)、藤井慎太 郎の諸氏 http://www.enpaku.jp/event/host/event20090622.html ▽▽政治の上演 表象の政治学 2009年6月23日(火)19:00〜21:00 東京日仏学院エスパス・イマージュ フランス語・日本語(日本語同時通訳付) 講師はクリスティアン・ビエ、クリストフ・トリオー、エマニュエル・ヴァロ ン、松井憲太郎の諸氏 リミニ・プロトコルの作品等20世紀演劇の成果を振り返る企画とのこと http://www.enpaku.jp/event/host/event20090623.html ▽▽17世紀演劇の現代性 2009年6月24日(水)18:00〜21:00 早稲田大学早稲田キャンパス26号館(大隈記念タワー)3階302会議室 フランス語、通訳無し 無料、予約不要 講師はクリスティアン・ビエ、クリストフ・トリオー、千川哲生(GCOE研究員、 『論争家コルネイユ フランス古典 悲劇と演劇理論』著者)の諸氏 http://www.enpaku.jp/event/host/event20090624.html ▽▽ヨーロッパの文化政策 リスボン戦略における創造性と文化産業の問題を中心に 2009年6月25日(木)18:00〜21:00 早稲田大学早稲田キャンパス18号館国際会議場 共同研究室7 フランス語、日本語逐次通訳付 無料、要申込 講師はエマニュエル・ヴァロン氏 http://www.enpaku.jp/event/host/event20090625.html ▽子どもの事件取材から見えるもの 2009年6月20日(土) 14:00〜17:00 早稲田大学早稲田キャンパス22号館203教室 無料、予約不要 講師は草薙厚子氏(ジャーナリスト、ノンフィクション作家) http://www.waseda.jp/prj-kyoshikyoiku/sf2009.htm ▽日本と韓国、まつり文化を比較して 2009年6月20日(土) 14:00〜16:30 ジャパンファウンデーションJFICホール 非会員:200円 http://www.jpf.go.jp/jfsc/member/event/0906.html ▽貧困・差別問題と憲法(学) ―自律・社会的包摂・潜在能力 2009年6月22日(月) 18:00〜20:00 早稲田大学早稲田キャンパス8号館3階大会議室 無料、予約不要 講師は西原博史氏(早稲田大学社会科学総合学術院教授)、菊池馨実氏(研究員、 早稲田大学法学学術院教授) 、笹倉秀夫氏(研究員、早稲田大学大学院法務研 究科教授) http://www.waseda.jp/hiken/jp/research/project_summary/project2008_1.html ▽遣隋・遣唐留学生と日本文化 2009年7月11日(土)13:00〜18:00(受付12:30〜) 専修大学生田キャンパス10号館10101号教室 無料、要申込、定員 250名 (抽選)、申込締切7月2日(木)16:00必着 http://www.senshu-u.ac.jp/iga/lab/sidrc/h21event_sidrc/090711.html ▽『降りてゆく生き方』映画鑑賞会&トークセッション 2009年7月4日(土) 13:00〜17:40 立教大学池袋キャンパスタッカーホール 無料、申込不要、定員300名 http://www.rikkyo.ac.jp/events/2009/07/5349/ ▽祭礼を彩る動物 2009年7月18日(土)13:00〜15:10 國學院大學学術メディアセンター棟1階常磐松ホール 無料 http://www.kokugakuin.ac.jp/oard/orc-activities_h21_2g_forum_PR.html http://www.kokugakuin.ac.jp/content/000013397.pdf ====================================================================== 【編集日誌】 ☆パソコンは相変わらず不調。今週中にOSを再インストールせざるを得ない。 さまざまなアプリケーションのインストールやアップデート、必要なパッチ当 て作業など、考えただけでも頭が痛い。会計ソフトが一時休止になってしまっ たのが実務的には最大の打撃でした。データがきちんと復旧してくれることを 願っています。 ☆今月のクロスレビューはハイバイ「リサイクルショップ『KOBITO』」です。 東京公演は16日まで。大阪公演終了後の6月30日が締め切りですが、末尾に観 劇日を付けて、早めの投稿をお願いします。詳細は次のページをご覧ください。 http://www.wonderlands.jp/index.php?itemid=1047 (北嶋) ====================================================================== 発行 ワンダーランド 〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北4-1-9 Tel& Fax: 042-422-5219 info(アットマーク)wonderlands.jp webサイト http://www.wonderlands.jp * 「マガジン・ワンダーランド」の登録・解除は次のページから。 http://www.wonderlands.jp/info/subscription.html ======================================================================



