2009/03/18
週刊マガジン・ワンダーランド 第131号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ http://www.wonderlands.jp/ マガジン・ワンダーランド(小劇場レビューマガジン) 2009年 3月18日発行 第131号 毎週水曜日発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【目次】 ◇パラダイス一座「続々・オールドバンチ〜カルメン戦場に帰る」(最終公演) 『オールド・バンチ』−記憶のバレエ 杵渕里果(保険業) ◇東京タンバリン「静かな爆」 取り繕わない自分と対面 「容赦ない」舞台で 武田吏都(フリーライター) ◇劇団掘出者「誰」 覚悟と楽しみをもって、思い悩もう 因幡屋きよ子(因幡屋通信発行人) ◇連載 カトリ式小劇場の歩き方 第4回 淋しいのはお前だけじゃない 香取英敏 ▽連載【レクチャー三昧】 第31回 「春」はすぐそこに 高橋楓 ◇特別セミナー 西村博子さんが語る「アリスフェスティバルの26年」 (4月2日、3日、4日、池袋・あうるすぽっと)募集中! http://www.wonderlands.jp/info/seminar09alicefestival26.html ■web wonderland から===================== http://www.wonderlands.jp/ ◇横濱・ リーディング・コレクション#FINAL「三島由紀夫を読む!」 リーディングの枠を超えた4本、幅広く多彩に 山田ちよ(演劇ライター) ◇野田地図第14回公演「パイパー」 美しいイメージの中に世界を投げ捨てる滅びのメルヘン 芦沢みどり(戯曲翻訳家) ◇日本劇作家協会東海支部プロデュース 「劇王VI」 「劇王」イベントにM-1 化の兆し 実況中継「劇王VI」 鳩羽風子(記者) ◇toi 「四色の色鉛筆があれば」(「ネクストジェネレーションvol.1」) 先鋭なセンスと計算された構成力 練度の高い舞台作品を生む 香取英敏 ◇ワンダーランド支援会員を募集中! http://www.wonderlands.jp/info/members2009-1.html ===================================================================== ◇パラダイス一座「続々・オールドバンチ〜カルメン戦場に帰る」(最終公演) 『オールド・バンチ』−記憶のバレエ 杵渕里果(保険業) パラダイス一座の『オールド・バンチ』が終わった。 でもカーテンコール、演出の流山児祥は「さよならはいいません」と言って いたから、「最終公演」と銘打っても、また二年くらいしたら「再結成」で 「復活」しそうな雰囲気はあった。パラダイス一座は、2006年冬、「三年間期 間限定旗揚げ公演」をした「平均年齢79歳」の超高齢劇団。以下が演目。 06年冬『オールド・バンチ 男たちの挽歌』山元清多脚本 07年冬『続オールド・バンチ 復讐のヒットパレード!』佃典彦脚本 09年冬『続々オールド・バンチ カルメン戦場に帰る』山元脚本 再結成されたら、見たいかな。どうだろう。 私は、岩淵達治が出るなら見たい。 岩淵達治といえばブレヒトの詳細な翻訳で知られるドイツ文学者。『オール ド・バンチ』主演老優七人衆のうち、彼だけは映像出演で、毎度、映像の中で 女の子と一曲歌って消える役回りだ。私は、この81歳になる老先生が地元でひっ そり行っている演劇ビデオの鑑賞会に出入りがあり、「『オールド・バンチ』、 見ましたよ」と先生をひやかすのが楽しい。 ほかに『オールド・バンチ』の楽しみといえば、御年92歳の戌井市郎という 文学座演出家の出演である。三年前の旗揚げ公演では、負荷を避けるためだろ う、車椅子で登場し、台詞も短く、どちらかといえば脇の俳優だった。ところ が今年は主役も主役、ゲイ・バー「つばき」のママ役で登場し、ロングスカー トでしゃんとした立ち姿をみせてくれた。台詞の量もふえ、それでいて、舞台 でウトウト、いかにもコウレイシャらしく眠ってみせてもくれ、虚実皮膜。 「老人力」、いやこれぞ「俳優力」であろう。 あと、本多一夫。これも貴重な俳優で、というか俳優ではなく、本多劇場は じめ下北沢の劇場グループの社長である。初演の舞台ではいささか照れた感じ もあったのが、もともと映画俳優を志して上京した人でもあり、いまや台詞も アクションを楽しそうにみえる。パラダイス一座を経験した本多一夫は、本多 劇場の下に「楽園」という劇場までこしらえたそうだ。スバラシイ。「平均年 齢79歳」は劇場を孕ませた。 しかし、なのである。 『オールド・バンチ』のパンフレットをみると、岩淵達治は、じつは映像作 品としては、ベケットの『クラップ氏最後のテープ』を模して『ブチ氏の最後 の8ミリ』をやってみたいんですよ、と話している。彼は、「へんてこな歌を 歌っては消えるお爺さん」がぜひ演りたいのではないらしい。なのに、「岩淵 先生、みましたよ」と、毎年毎年、私をはじめ幾人もの人々に楽しくひやかさ れるというのも、なんかなぁ、と思う。 なにしろ『オールド・バンチ』、銀行強盗やコロシヤ一味といった物騒な老 人たちが登場するが、小一時間もすると各人がカラオケを聞かすオタノシミタ イムに切り替わり、観客は手拍子で応じて時を忘れましょう、というサム・ペ キンパーもびっくりの、地方の温泉での老人会行事といった風合いの舞台なの だ。これがブレヒティアン岩淵の、また、文学座!の創立メンバーという戌井 市郎の、さいごの花道、というのも、なんかなぁ、と感ずる。 「平均年齢79歳」が旗揚げ。とはいえ、企画をし、率先して一座の俳優をリ クルートしていったのは流山児祥・当時59歳で、脚本家の山元清多は67歳、二 作目脚本の佃典彦だと43歳。つまりこの一座、エンジンのほうで計算すれば 「平均年齢56歳」なのだ。いや、山元清多は、流山児からの脚本の依頼に「え、 ボクが書くの?」と目が泳ぎ、「流山児はボクが知らない間に凄げえプロデュー サーになっていたのだ」と感心しいて、佃はというと「二作目を書く依頼をう けていたので…名古屋から新幹線に乗って(旗揚げを)見に来ました」というの だから、流山児祥ひとりをこそ「パラダイス一座のエンジン」と呼ぶべきであ ろう。エンジンは還暦。どうりで元気だ。 さて、流山児祥の口上を読もう。パンフレットを持つ手がぽかぽかするくら いアツい。 「二一世紀の小劇場運動の新展開を目指し、実験性の中に大衆性を備え」 「本来演劇の持つ遊戯性」「実験的でそして何よりも大衆的な「えんげきの原 点」」「お祭り一揆」「えんげきのかくめい」などなど。 この「大衆性」の一環なのだろうか。われわれ観客は、開演前に若いスタッ フから、「劇中、これこれの合図で客電が付きますから、この歌をみなさん一 緒に歌ってください」と指示うけ、なるほど劇場入り口で渡された栞には「青 い山脈」「お座敷小唄」「椰子の実」の歌詞が刷られており、その場面になれ ば、とりあえず客席の半分以上は声を出すなり手拍子するなり調子をあわせる。 もちろん、客はシラフ。いっそ、アルコールの配布があってもよいと思う。 しかしなんだって「お座敷小唄」の合唱が、「志と生きざま」の演劇で「 『商品』として『流通』=消費蕩尽される演劇ではなく、『人間』がそこに 『いる』演劇が生まれた」ことになるんだかは、よくはわからず、おそらく気 分の問題なのだろうけど、舞台にいるのは、どちらかというと文化を牽引する 側で半世紀立ち回っていた都会の爺さんがたなのだ。客席にいるのも、これま た新宿のコマ(もうなくなったけど)にも映画街にも行かず、小田急線や京王 線を乗り継いで下北沢で五千円の芝居を観てやろういった、若干インケンな趣 味傾向がみこまれる客層だったりする。 なのに、「青い山脈」「お座敷小唄」「椰子の実」。 なんだか必要以上に「大衆の楽しみ」や「日本人の共同体」のステレオタイ プを真似て下世話がっているような、みょうないやったらしさがなくもなく、 楽しいから「つい歌ってしまう」よりは「つきあいで歌う」ような、なんとな しの苦味を客席にいて感ずる。そして俳優陣も、カラオケタイムに「ぜひ歌い たい」という押し付けがましさはなく、どちらかというと「つきあいで巻き込 まれた」ヒヤヒヤな表情も垣間見え、それでも戌井市郎となると「新内をひと つ」、ふじたあさやだと「ならば講談を」と、さすがは演劇人といった変化球 の芸が披露され、そこに、まさに『オールド・バンチ』の<救い>がある。 これは、たとえば高校などで、退職する校長先生のお別れ会を、生徒会が派 手に大げさに企画して、主役の校長先生も生徒一同も半ばタジタジしながら、 そのタジタジ感を共有してくれた繊細な校長先生が、生徒一同はますます好き になった、というのと似ている。生徒会はお疲れ様だったけど、でももうちょっ となんとかしてよ、という気持ちを、私は流山児に抱いてしまうのだ。この演 出家は、「大衆的」であることに教条的で、「大衆ソノイチ」である私として は「これがおまえの見たいものだ」と杓子定規に決め付けられる感じがしてタ ジタジしてしまう。 だけど『オールド・バンチ』。 脚本、山元清多→佃典彦→山元、のリレーこそ、解散するのが惜しい気持ち にさせるのだ。シリーズとしての進展がこの先まだまだありそうだ。 このホン、たいへんだろうと思う。 なにしろ、アテガキの相手は七〜八人の高齢者(うち後期高齢者四人!)。加 齢具合によって台詞分量の多少に配慮する。 そのうえ、大先輩の演出家や劇場主が俳優なので、「いくらお前たちが戦争 を知らないといっても、お前のお爺さんが放射能にやられてるかもしれない」 と、これは瓜生正美の台詞だが、どうしてもいっときたいことを織り込んだり、 「老人を子供扱いするな」と言わせてスッとさせたり、気を遣っている。 そしてまた観客向けには、コウレイシャらしい身勝手さや、マイペースさ、 記憶が飛んだり取り違えといった、いわば、高齢俳優による高齢ネタ、をいた るところに用意している。 稽古中、咳き込むシーンの戌井は、「入れ歯を飛ばしたこともありましたよ ね」「あれはね、自分ではアリだと思った」、すかさず82歳の瓜生が「もし本 番でそのようなことあがれあば近くにいる僕が拾って差し上げますよ」。パン フレットのインタビューからは、なにが図か地かわからないような、和気藹々 にして壮絶な稽古場が伺えるのだが、この枠組みを用意したのは、まずは流山 児、でも脚本家の仕組んだ世界観の影響も、大きいように思える。 作品としてはしかし、『オールド・バンチ』『続オールド・バンチ』は、芝 居の骨格、ドラマがイマイチだった。 一作目、山元脚本『オールド・バンチ 男たちの挽歌』は、銀行強盗一味。 仲間をだまして土地を奪った銀行に、意趣返しに強盗に入った。強盗先で「あ の戦争は、あったんだ」と説教を始め、団塊世代の悪徳支店長が、「こっちは 戦争が終わってから生まれた」と言い張るのを倫理的にやりこめる。でも、経 済犯罪に対して「戦争」を持ち出すのは、いくらなんでも言いがかりで、支店 長が気の毒だった。 二作目は佃脚本『続オールド・バンチ 復讐のヒットパレード!』。一味は、 日本暗殺者協会(演出家協会のパロディ)の老スナイパー。いまは廃業した銭 湯を改造して作られた福祉施設にいる要介護老人。でも風呂桶から、東京オリ ンピックの冷戦当時の記憶と仲間が蘇って彼らを奮起させる。(この廃業した 銭湯での時空の連環は、佐藤信『浮世混浴鼠小僧次郎吉』のパロディだろう。 その年、天野天街演出で、流山児祥が主演していた)。 このモト暗殺者たちは、「老いてはケアマネに従え」と諭そうとする福祉施 設の女性ワーカーに、「とりあえずメアド教えろよ」と老いてますます盛んな ところをみせ、「フガフガ、フガフガ」しか台詞のないその他老人(若い俳優 が演ずる)と自分たちとの差異を際立たせていた。終盤、暗殺者協会はお互い の結束と達者さを再確認し、「次はビルマでも行くか」と義賊としての次なる 活躍を夢見るのだが、よそさまの軍事政権と戦うより、まず国内の同世代の福 祉状況をなんとかされては、と思わずにおれなかった。「天下国家」「世界情 勢」を論じながら、まるっきり足元をみないオヤジの放談のオールド・バージョ ンといった具合で、ほんと、まるっきり共感できない。 (蛇足だが、流山児祥は、「パラダイス一座」に先んじる十年前、「楽塾」 (45歳以上の地域の人々とはじめた演劇集団)を始動し、「フツーのおばさん たちとのあくなき戦いを私はメチャクチャ楽しんでいる」と『オールド・バン チ』のパンフにも記す人なのだから、「オールド・バンチ」が福祉施設のワー カーを、老人扱い失礼千万と単純に揶揄して捨て去るのは、多くのフツーのお ばさんがたに失礼で、活動上よろしくないと思う。) このように『オールド・バンチ』『続オールド・バンチ』は、モト兵隊やモ ト暗殺者、要は、殺人経験こそが水戸黄門の印籠という、いわば、タチの悪い マッチョだけど先が短いからショウガナイ、というトホホ感がかなり高い芝居 なのだった。 でも三作目、『続々オールド・バンチ カルメン戦場に帰る』は、違ってい た。 なにしろ、戌井演ずるゲイのママ、弁天ローズは、出征ですっかり「自分の なかのオトコってものにつくづく愛想がつきた」ので、戦後、ゲイになって銀 座に店を構えた人。ビルマ戦線での彼の部隊の面々は、「そのケのあったもの、 あんましなかったもの、途中で別の道に進んだものもいる」が、「あたしたちゃ あ、おっかさんの心意気に感じてゲイになった」のである。 これは、二作目を締めくくった「それじゃあビルマにでも行くか」に対する、 山元清多の応答だろう。 旗揚げ公演では、出征経験を印籠にする、ニトロや拳銃をいじる高齢者銀行 強盗を山元は描いたが、三作目『続々〜』で、日本が蹂躙した東南アジアに目 を転じるや、すっかりシュリンクしたのだろうか、全員、ゲイになってしまっ た。弁天ローズの道楽は、カンボジアやネパールに学校を作ることで、この慈 善道楽で店が傾いた設定。仲間の一人、布袋(肝付兼太)は、いまはビルマ料 理店に勤めており、日本政府の難民への対応の酷さを訴えながら、ビルマ人の 若い娘のために発砲も辞さない。 マッチョをやめた「オールド・バンチ」一同は、芝居の半ば、こぞって女装 で再登場する。加齢で体型が小さく丸くなるのだろうか、ふじたあさやなど髭 を生やしたままなのに、遠目に女性に見えてしまう。不思議だ。「平均年齢79 歳」とは、マッチョでもオカマでも、正義を標榜できればどっちでもよかった のか!。老境、とはこうしたものか。 高齢なのに、元気(物語は弁天ローズの葬式の、偽装から始まる)。オトコ なのに、オンナ。 ここまで自明性が崩れると、あとはなんでもあり、だった。 福寿(岩淵達治)は、タイからビデオメールを送ってきて、「タイから安全 にビルマへ入るルート見つけたからねーっ」と、東南アジアらしい衣装のかわ いい女の子と歌を歌う。「彼女の名前はジャスミン・水島!。水島上等兵の孫 娘なのよ!」。水島は坊さんじゃないのか、と思うのも束の間、弁天ローズ一 同は、ゲイ・バー「つばき」の売却金を元手に、さいご、ビルマへと向かう。 旅路のテーマソングは、『椰子の実』。女装高齢者たちは日傘をさしながら、 背景スクリーンに大写しされた海岸線へと歩みよる。 もちろん、タイとビルマの国境が海岸線なはずはないし、「安全」に入りた いなら観光ビザで現地入りすればよいし、水島上等兵の妻帯問題もあるし、悩 めばきりがない物語なのだが、いいの。たぶん、ボケてるんだから。このおた ちたちは、なんか良心がうずいてて、いろんな記憶が走馬灯のようにつながっ ちゃって、でもなんか言っときたい、そんな状態なの。と、鑑賞するしかなかっ た。 『続々オールド・バンチ カルメン戦場に帰る』は、真面目に考えれば支離 滅裂なストーリーだ。 でも、こんなふうに観劇を楽しんでいるずっと遠く、ビルマには確かに軍事 政権がある、という現実も、そうとうに支離滅裂な感じがする。 そして、弁天ローズたちが忘れられないのだと訴える大戦の記憶と、それを 抹消していった戦後という、時間的な遠近をみても、支離滅裂に感ずる。時間 も空間も、ちょっと先をみようとすると、なにやら、世界の破裂を感じてしま う。 こうした世界の破裂感に、「バンチ」一味、高齢俳優によるコウレイシャ的 無茶苦茶な論理破壊が、リンクしたのだと思う。 いや、この無茶さ、もっと世代的な感情かもしれない。 『続々〜』、副題のソース、映画『カルメン故郷に帰る』を想起するなら、 それは高峰秀子演ずる、アタマの打ち所の悪かったヌード・ダンサー、カルメ ンの、突飛な活躍が楽しい一種のピカレスクだった。日本初の総天然色映画が これ。戦後という時代の、いかにも底抜けに明るい幕開けだ。監督は、木下恵 介。戦争がいやでいやでしょうがないという映画をよく撮った(『二十四の瞳』 『笛吹き川』)。 こうした戦後の気分こそ、「バンチ」世代が共有した感覚で、単に「コウレ イシャ的」というと、すこし違うのかもしれない。 今後、『オールド・バンチ』はどう展開するのだろう。 『オールド・バンチ』、のタイトル自体は、もちろんサム・ペキンパーの映 画『ワイルド・バンチ』へのオマージュだ。蜂の巣どころか手でも足でも飛び 散っていく壮絶な銃撃戦のある西部劇で、「血のバレエ」とさえ呼ばれた。だ からこそ、演劇『オールド・バンチ』シリーズでも、主人公の高齢者たちの、 大戦の記憶(山元脚本)、冷戦下のスナイパーの記憶(佃脚本)、つまり、 「血の記憶」を語ったのだろう。 でも、「血の記憶」といっても、戌井、瓜生のほかは、だれも学徒出陣とも かぶらない「戦場は知らない」高齢者で、それなのに彼らが「俺たちの血の記 憶」を語るというのは、どうもチグハグだった。むしろ、「戦争を知る世代」 にアタマが上がらなかった世代、「パラダイス一座」企画者や脚本側の、オブ セッションに思われた。 流山児祥は、「さよならは言いません」と言い置いたけど、いったいいつまで、 どの高齢者に「戦場」を語らせるつもりなのか。旗揚げから「三年間期間限定」 と銘打ったのは、「平均年齢79歳」に不安があるからだろう。それなのに、 「だれが養老院なんか行くもんか! あんなジジイとババアばっかりのところ」。 老人たちは、いきまいてみせる。それはそれで面白いのだけど、うそ寒さくも あった。もしかして「オールド・バンチ」一味は、「戦場」や「殺人」より、 「要介護」や「痴呆」のほうが、よっぽどコワイように思える。「死」より、 その一歩手前の状態を、なるべく視界から追いやりたいように見える。 今後、『オールド・バンチ』が継続するとしたら、いま七十代の俳優が中心 になっていくのだろう。すると「大戦の記憶」よりは、「冷戦」や「ビルマの 軍事政権」など、いわば、「遠い国の戦争」に重心するのだろうか。「兵隊」 ではなく、「スナイパー」のような特殊な設定で、その「血の記憶」にコミッ トするのだろうか。 それって、なんかなぁ。 「ビルマに行くか」の無責任なかんじが、シリーズでリフレインされるって、 なんかナァ。しかも、毎度カラオケ聞かすんでしょ?。『オールド・バンチ』っ ていうのは、<男の高齢者が、血の記憶があるかのように騙りながらカラオケ を聞かかすシリーズ>なのでしょうか。はぁ。 私の好みとしては、『男たちの挽歌』よりは『カルメン故郷に帰る』系のピ カレスクで、「血の(騙りの)バレエ」よりは「血の(記憶の)バレエ」のほ うで、シリーズしてくれたら、うれしいんだけどナ。 ※『続オールド・バンチ』の、「それじゃあ、ビルマでもいくか」という台詞 は、パンフレット掲載台本にはありません。私の観劇記憶です。(しかし『続 々〜』との呼応として確認できます。) 【略歴】 杵渕里果(きねふち・りか) 1974年東京生まれ。演劇交友フリーぺーパー『テオロス』より、演劇批評を 書き始める。ほか『シアターアーツ』にも掲載あり。保険のテレアポ。 ・ワンダーランド寄稿一覧: http://www.wonderlands.jp/index.php?catid=3&subcatid=60 【上演記録】 ▽パラダイス一座「続々・オールドバンチ〜カルメン戦場に帰る〜」(最終公演) http://www.ryuzanji.com/r-bunch3.htm ザ・スズナリ(2009年2月8日15日) 【作 】山元清多(黒テント) 【演出】流山児祥 【音楽】林光 【美術】妹尾河童 【出演】戌井市郎 瓜生正美 肝付兼太 中村哮夫 本多一夫 ふじたあさ や 二瓶鮫一 藤井びん 町田マリー(毛皮族) 谷宗和 坂井香奈美 石井 澄 阿萬由美 村井一帆/流山児祥 山下直哉 鈴木麻理 【映像出演】岩淵達治・大路恵美 ★アフタートーク「ライフ イズ ミラクル」★ 8日(日)15:00の回 岩淵達治 林光 山元清多 9日(月)15:00の回 瓜生正美 中村哮夫 本多一夫 肝付兼太 11日(水)15:00の回 戌井市郎 岩淵達治 二瓶鮫一 12日(木)15:00の回 妹尾河童 ふじたあさや (水谷雄司) STAFF 【照明】沖野隆一 【音響】島猛 【舞台監督】中村眞理 森下紀彦 【映像】工藤真路 【衣裳】胡桃澤真理 【美術補】水谷雄司 【照明操作】 野中千絵 【音響操作】大久保友紀 【演出助手】畝部七歩 【舞台監督助手】諏訪創 山下直哉 鈴木麻理 【大道具】王様美術 【舞台写真】飯田研紀 【イラスト】山中桃子 【協力】文学座 青年劇場 劇団21世紀FOX 本多劇場 林光事務所 コスモ プロジェクト ワンダー・プロ 橋本真知事務所 ゴーチ・ブラザーズ 毛皮 族 RYU CONNECTION ステージオフィス AaT Room 【制作協力】ネルケブレインズアンドハーツ 【制作】岡島哲也 米山恭子 【主催】流山児★事務所 【宣伝写真+題字】荒木経惟 【宣伝美術】鈴木一誌 平成20年度文化庁芸術創造活動重点支援事業 ▽パラダイス一座「続・オールド・バンチ−復讐のヒットパレード」 http://www.ryuzanji.com/r-bunch2.html ザ・スズナリ(2007年12月12日-21日) 【脚本】佃 典彦 【演出】流山児祥 【美術】妹尾河童 【出演】 戌井市郎 瓜生正美 肝付兼太 中村哮夫 本多一夫 藤井びん 町田マリー(毛皮族) 谷宗和 坂井香奈美 石井澄 藤村一成 武田智弘 諏訪創 【映像出演】岩淵達治・李麗仙・若杉宏二・阿萬由美/流山児祥 ★=アフタートーク「ライフ・イズ・ミラクル//トークゲスト 13日(木)19時 瓜生正美 流山児祥 肝付兼太 14日(金)15時 戌井市郎 中村哮夫 流山児祥 17日(月)19時 岩淵達治 佃典彦 流山児祥 18日(火)15時 本多一夫 肝付兼太 流山児祥 20日(木)15時 妹尾河童 水谷雄司 山元清多 流山児祥+ALL CAST STAFF 【照明】沖野隆一 【音響】藤田赤目 【舞台監督】中村真理 森下紀彦 【映像】工藤真路 【衣裳】大野典子 【美術補】水谷雄司 【演出助手】畝部七歩 【舞台監督助手】熊谷清正 阿萬由美 【宣伝写真+題字】荒木経惟 【宣伝美術】鈴木一誌 鈴木朋子 【協力】文学座 青年劇場 劇団21世紀FOX 本多劇場 ワンダー・プロ 毛皮 族 B級遊撃隊 RYU CONNECTION AaT Room 【制作協力】ネルケプランニング 【制作】岡島哲也 青山恵理子 米山恭子 【主催】流山児★事務所 平成19年度文化庁芸術創造活動重点支援事業 ▽パラダイス一座「オールド・バンチ−男たちの挽歌」 http://www.ryuzanji.com/r-bunch.html ザ・スズナリ(2006年12月6日-13日) 作 /山元清多 音楽/高橋悠治 美術/妹尾河童 演出/流山児祥 【出演】戌井市郎 90歳 瓜生正美 82歳 肝付兼太 71歳 高橋悠治 68歳 中 村哮夫 75歳 本多一夫 72歳 藤井びん 塩野谷正幸 谷宗和 坂井香奈美 (新人) 石井澄(新人) 【映像出演】岩淵達治 79歳 観世榮夫 79歳 町田マリー(毛皮族) ★アフタートーク「ライフ・イズ・ミラクル」開催 12月 7日(木)19:00 岩淵達治 本多一夫 流山児祥 12月 8日(金)15:00 瓜生正美 中村哮夫 流山児祥 12月 9日(土)15:00 岩淵達治 肝付兼太 流山児祥 12月10日(日)15:00 妹尾河童 岩淵達治 流山児祥 ほか 12月11日(月)15:00 妹尾河童 戌井市郎 高橋悠治 流山児祥 ほか 司会進行:岡島哲也(ネルケプランニング) STAFF 【照明】沖野隆一 【音響】松本昭 【舞台監督】森下紀彦 中村真理 【演出助手】畝部七歩 【協力】文学座 青年劇場 劇団21世紀FOX 本多劇場 ワンダー・プロ フレ ンドスリー RYU CONNECTION 音スタ AaT Room 毛皮族 【制作協力】ネルケプランニング 【制作】岡島哲也 米山恭子 【主催】流山児★事務所 平成18年度文化庁芸術創造活動重点支援事業 ===================================================================== ◇東京タンバリン「静かな爆」 取り繕わない自分と対面 「容赦ない」舞台で 武田吏都(フリーライター) 高井浩子が描く東京タンバリンの作品を観るといつも、「なんて容赦がない んだろう」と感じる。日常にごくありふれて存在する無邪気な(ゆえにタチの 悪い)悪意をむき出しにし、そこに何のフォローも与えないのが、私の考える 高井作品の特徴だからだ。言ってみればマキロンも絆創膏もなしで、グジュグ ジュの傷口をほったらかし、みたいな。おおよその場合は自然にかさぶたとなっ て治癒に至るのだろうし、高井作品に登場するドライな(ときに記号的ですら ある)キャラクターを見ていると、人間はそうしてやり過ごして生きていかざ るを得ないのだなとも思う。 けれどもバイ菌で汚染された傷口が身体に深刻な影響を与えたり、醜い傷痕 を残す場合もあるだろう。それに対するケアの意味でも何らかの救いを与えて カタルシスをもたらすのが演劇的手法としては(いい・悪いではなく)一般的 だと思っていた。ゆえに高井作品のこの容赦のなさには毎回驚いてしまうし、 観て数日間はどんよりとした澱のようなものが腹の中に溜まった感覚になる。 そうした意味で、私にとって東京タンバリンの作品を観ることは快いとは言い 切れない体験だが、けして不快ではない。取り繕わない自分と対面させられて 暗澹たる思いがしながらも、同時に自己が浄化されてゆくような−そうか、そ れこそが“カタルシス”と呼ばれるものか。 で、「静かな爆」だ。 爆… なんだろう。タイトルのなんだかモヤッとした寸止め感とは対照的に、 タイトル、劇団名、作・演出家名しか書かれていない、白一色のチラシビジュ アル。予備知識は一切持たずに、劇場に足を運んだ。 舞台を囲むように、天井から数十本の単管がぶら下がっている。鉄製の幕、 とでも言おうか。役者が少しでも触れると、耳をつんざくような轟音が響く。 ちっとも“静か”じゃない。 主な舞台は、出版社の休憩室。某編集部で、聴覚に障害のあるイラストレー ター・聡美が働き始める。彼女に対する周囲の反応はさまざま。かいがいしく フォローする者、あからさまに迷惑がる者、彼女にごく一般的な恋愛感情を抱 く者…。聡美はもっと働きたいと意欲を見せるが、もろもろの事情からそれも ままならない。そしてある日突然、彼女はみんなの前から姿を消してしまう。 というように物語の軸は聡美なのだが、観劇してしばらく経った今思い起こ すと、案外と彼女の印象が薄いことに気づく。もちろん演者の演技の問題では ない。事実、大田景子は(まるでメリー・ポピンズのごとく)風のように現れ て去る聡美を、持ち前の軽やかさと透明感で好演した。なので思うに、聡美は 登場人物の中で唯一ブレない人間であるから、ブレまくる周囲の人々と違って 印象に残りにくかったのではないだろうか。…だがしかし、ふと疑問が湧いた。 聡美がブレていないとなぜ言い切れる? 聴覚障害者である聡美は言葉を発さ ず(発する場面も少しある)、自分の気持ちの動きを観客に表明しないが、そ の間にも胸中には当然ながらさまざまな思いが渦巻き、その結果が“姿を消す” ことであったはずだ。だがわれわれ、いわゆる健常者は(一部の人を除き)そ のことに気づけないし、気づこうとしない。そこには障害というものがもたら す、どうしようもない隔たりがある。もちろん絶望的ではないにせよ。その事 実の突き付け方にも、私は高井の“容赦のなさ”を感じるのだ。 オープニングからラストまでの間に登場人物の印象がガラリと変わることが、 高井作品ではままある。わかりやすく言えば、善玉キャラが悪玉に、悪玉が善 玉にいつの間にか入れ替わっていたりする。本作ではもともと聡美と知り合い だった編集者・原がその立場を担う。原は何かと聡美を気遣い、周囲の人々の 彼女への無神経さをなじる。だがそこにはどこか偽善的な空気が漂い、最終的 には聡美の自立を妨げるような行動をとるに至る。その逆で、聡美との距離を 徐々に近づけて行くのが同じ編集部の三島と近藤だ。だが原を含めた彼女たち はある意味、こうした題材を扱うにおいてはステレオタイプな人物といえるか もしれない。 私が最も東京タンバリンらしいキャラクターだと感じたのは、編集部に出入 りするカメラマンの真田だ。彼は聡美の耳が聞こえないという事実を誰よりも フラットに受け止めているように見える。聡美という人間自身に興味を持ち、 筆談で対話しながらじっくりと彼女に向き合おうとする。事実、聡美と真田の 筆談のシーンは、作品中最も体温の高さを感じさせ、観客に安堵感をもたらし てくれる。ところがだ。そんな真田も聡美が持ち歩いていた小鳥の死骸の処理 を巡って、それまでには見せなかった黒い表情をのぞかせる。ダメ押しに、 「きれいな人間なんているのかよ」のせりふとともに捌けていくのだ。ここで の彼の言動はとりたてて酷いというほどのものではないが、これまでの真田を 信頼し、大げさかもしれないが彼を本作唯一の“良心”的にとらえていた観客 を奈落に突き落とす威力はあったと思う。かく言う私もその一人だが、と同時 にゾクッとした一種の恍惚感のようなものが湧き上がったのも事実。しつこい ようだがこの“容赦なさ”を味わうことが、東京タンバリンの作品を観る醍醐 味なのだ。M的感覚もそこにはある、のかもしれない。 それにしても、登場人物の誰をも信じることができないというのは、実はか なりすごいことではないか。 聡美を巡る物語と並行して、ある夫婦が描かれる。美大の同級生のカメラマ ン・五十嵐と結婚した由紀子はセンスもよく料理上手な主婦。その日常を事細 かにブログにアップしているため、ブログを見ない夫よりもその仕事仲間(聡 美がいる編集部の面々)の方が家庭の事情に詳しいという皮肉な図が成立して いる。今なら実際あることだろうし、ブログのコメント内容によって物語を進 行させる方法もとても面白かったのだが、この夫婦のエピソード全体が聡美の エピソードともっとしっかり絡むと良かったのかもしれない。もちろん群像劇 ではあるのだが、本作は大きな柱がこの2本なため、片足で立っているような 少し心許ない感覚を覚えたのも事実。どちらのエピソードがクローズアップさ れるかは観客それぞれで異なるという面白さはあるのだが。 ところで、前出の聡美と真田の筆談のシーンで見逃せないやりとりがあった。 聡美「(省略)きたないものをきれいなものとしてわたしはみてるんじゃな いかとおもうことがあります」 真田「ひとはきれいなものがすきですからね」 聡美「ほんものをみようと、みせようと、しないのかもしれません」 拍子抜けするほどストレートに、高井作品の本質を表している。この文中で 幾度も“容赦ない”と書いたが、高井本人はきっとピンとこないだろう。彼女 にとっては容赦ないこともなんでもなく“ほんもの”を描いているにすぎない から。人間は怠惰で、常に快いものを求めがちな生き物であるだけに、東京タ ンバリンにはこれからも“ほんものを、みせようと”する集団でいてほしい。 いてもらわねば。 【筆者略歴】 武田吏都(たけだ・りつ) 1973年、北海道札幌市生まれ。早稲田大学人間科学部卒。情報誌の演劇・アー ト担当を経て、フリーのライターに。「シアターガイド」「ぴあ」「レプリー クbis」「Audition」「Tokyo Walker」「DVDでーた」などで、演劇・映画・海 外ドラマ関係の記事を執筆。 【上演記録】 東京タンバリン「静かな爆」(下北沢演劇祭参加) http://tanbarin.sunnyday.jp/index.html 下北沢・駅前劇場(2009年2月4日-9日) 作・演出:高井浩子 【 CAST 】 瓜生和成 森啓一郎 大田景子 遠藤弘章 大湯純一 斎木恭兵 島野温枝 田島冴香 萩原美智子 坂田恭子 柴田薫 青海衣央里 皆戸麻衣(今回出演予定のミギタ明日香が急病のため代役出演) 【 STAFF 】 作・演出:高井浩子 舞台監督:佐藤恵・松下清永+鴉屋 舞台美術:杉山至+鴉屋 音響:中村嘉宏 照明:橋本剛(colore) 宣伝美術:清水つゆこ 当日運営:高田制作所 製作:東京タンバリン 協力:財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場 チケット料金(日時指定・全席自由)前売・予約3,200円 当日3,500円 ■各種割引(・ 杉並割引 2,800円 ・ 高校生以下・シニア(60歳以上)割引 2,000円 ・ ★特別割引(2月5日15時の回) 一律2,500円(高校生・シニアは2,000円) ・ リピーター割引 2,000円 ===================================================================== ◇劇団掘出者「誰」 覚悟と楽しみをもって、思い悩もう 因幡屋きよ子(因幡屋通信発行人) 劇団掘出者の舞台をみるのは、昨年春の『チカクニイテトオク』に始まって 秋の『ハート』と続き、今回の『誰』で3本めになった。およそ半年ごとに次 々と新作を発表しており、作・演出の田川啓介が劇作家として伸び盛りである こと、劇団としてのフットワークの強さを感じる。しかし初日に観劇した直後 は「困ったな」というのが正直な気持ちであった。それは「これはフィクショ ンなのか、それとも同じようなことが現実の大学生にも起こっているのか」と いう極めて初歩的な困惑だった。舞台をみるとき、その世界が現実に則したも のとして受け止めるのか虚構を楽しむものか、自然に感じ取れれば楽なのだが、 『誰』は判断できなかった。千秋楽近くに足を運んだ知人も似たような感想を 漏らしており、舞台に描かれている世界を受け止めるのがむずかしかったこと がわかる。だんだん心配になってきた。こういう舞台を作る田川啓介さん、あ なたの心は大丈夫なのでしょうかと。 舞台空間が劇場の隅にあり、客席はそれをL字形に挟むような作りになって いる。いつものサンモールスタジオより随分狭く見える舞台には中途半端な大 きさの長机がふたつに椅子が6脚。最初に入ってきた箕輪(板橋駿谷)と木田 (澤田慎司)の会話から、この部屋が大学のサークルの部室であること、木田 は大学生でサークルの会員だが、箕輪は派遣労働者であることがわかる。続い て他の会員やその恋人、友人たちが次々に出入りし、ここは「まなざしの会」 というサークルで、会長の田中(篠崎大悟)によれば、所属メンバーはお互い に毎日最低電話1回とメール5通送りあうのがルールだという。そのようにして 「僕は君のことを見ている、見守っているよ」という気持ちを確認するらしい。 何なのだ、これは。大学のサークルを騙った新興宗教か。箕輪は充分奇妙なキャ ラクターなのだが、負けず劣らず変った大学生たちがどんどん登場して、唯一 の大人である守衛のおじさん(工藤洋崇)も妙な人であったし、学生、社会人、 派遣労働者、大人、若者といった分け方ができなくなる。まともな人はいない のか。というより何がまともで何がそうでないのだろうか。どの人物にも視点 を合わせられず、上演時間中ずっと落ち着かなかった。 今回の『誰』で最初に耳につく台詞は、箕輪の「殺すぞ」である。ちょっと ふざけているようでもあり、実際彼は誰も殺さないのだが、登場した人物が 「派遣労働者」であるというだけで秋葉原無差別殺傷事件を連想し、これから ただならぬ話が始まるのでは?と身構えると同時に、その気持ちと矛盾するが、 おおかた予想のつきそうな話かもしれないとも思った。会話が進むうちに、箕 輪は木田の姉(実は母親)に横恋慕しており、彼女恋しさに木田を刃物で脅し たこともあるらしく、「殺すぞ」の一言は、少なくとも木田にとっては脅しに 近いことがわかる。しかし箕輪が「殺すぞ」と言うタイミングや言い方は、ど こか間抜けで迫力に欠ける。「殺すぞ」の言葉じたいが持つ緊迫感と、台詞が 出てくる状況にギャップがあって、むしろおかしくなるのである。箕輪は「ど うだったか聞けよ殺すぞ」「まだ聞け殺すぞ」「親父の話していい姉ちゃん殺 すぞ」と一息で発する。聞く側は「殺すぞ」に一瞬ざらついた感覚を持つが、 箕輪は「どうだったか俺の話をもっとちゃんと聞けよ。聞かないとおまえを殺 すぞ」という前後の文脈や意味がきっちり伝わるように言わないので、どう捉 えてよいかわからないのである。決め台詞には程遠く、何度か繰り返し出てく るが決してルーティンに陥らない「殺すぞ」は、劇作家の緻密な計算が隠され ているのか、それとも箕輪の口癖に過ぎないのか。 観客は台詞を耳だけで聞いているのではない。発する俳優の表情や仕草はも ちろん、それを受けている相手役、同じ時間と空間をともにする客席ぜんたい の空気まで、五感すべてを総動員して受け止めているのだ。その回路を箕輪の 「殺すぞ」は閉ざしてしまう。この台詞にこだわってよいのか、もともと大し た意味や意図がないのか。箕輪が自分の父親について話す場面があって、それ は実に痛ましい体験なのだが、演じる板橋の口調がずっと半端に怒っているよ うな平板な調子なので、どんどん流れてしまうのである。箕輪のことをどう捉 えればいいのか、終始迷う。 箕輪の入会が直接の要因と断定はできないが、小さな誤解や自意識過剰な諍 いが積み重なり、「まなざしの会」は次第に変容し、崩壊していく。お互いに 理解しあい、歩み寄って共に生きていくことはできないのか?『チカクニイテ トオク』や『ハート』にも増して人々の心のうちは一層痛々しく、ディスコミュ ニケーションの歯止めがかからぬまま、あっけない終幕を迎える。 タイトルの『誰』は、あなたは誰、わたしと必要としている人は誰、そして わたしが必要なのは誰?と探し求める人々の心ではないかと思う。『誰』は派 遣労働者が主人公の社会派作品ではなく、小ぢんまりした自分探しの話でもな かった。舞台で描かれていることを分析したり登場人物の気持ちを理解しよう としたりするのではない、もう少し違う味わい方、つきあい方があるように思 える。 たとえば終盤、箕輪がまさかの女装をしてしまう場面など、作りようによっ ては客席を大いに沸かせる爆笑ものに造形することはいくらでもできるのに、 田川はそれをしなかった。正直なところ、そろそろこのあたりで自分は笑いた かった。笑えば少し楽になれるだろう。しかしここは笑う箇所ではない。堪え なければ、という気持ちにさせられた。それはなぜかと考えている。いつもは 日常の悩みや迷いに対する答を無意識に求めながら舞台をみつめていることが 多い。しかし田川の作品からは、逆に悩みや迷いが与えられるのだ。田川の意 図するものを掴み取るのはむずかしい。もっと時間をかけてみつめていきたい。 その道筋はまだみえないが、もしかすると答や結論を出すことよりも豊かな演 劇体験につながっていくのではないか。 いつのまにか田川啓介を心配する気持ちは消えていた。悩みを解決するのは 明解な回答だけではなく、さらに悩みが与えられ、深く迷うことから思いもよ らない何かがみえてくるのではないか。少なくとも劇団堀出者の舞台からは、 その予感がする。 もっと思い悩もう。人生はできれば明るく朗らかに過ごしたいが、ここはひ とつ、覚悟と楽しみをもって。 【筆者略歴】 因幡屋きよ子(いなばや・きよこ) 1964年山口県生まれ 明治大学文学部演劇学専攻卒 1998年晩秋、劇評かわ ら版「因幡屋通信」を創刊、2005年初夏、「因幡屋ぶろぐ」を開設。 http://inabaya-k.mo-blog.jp/inabayakmoblogjp/ 【上演記録】 劇団掘出者第6回公演「誰」 http://horidasimono.main.jp/pc/page/top/index.html 新宿・サンモールスタジオ(2009年2月14日-22日) 作・演出 田川啓介 出演 箕輪明(板橋駿谷) …派遣労働者 木田透(澤田慎司) …大学3年、まなざしの会の会員 井上邦夫(村松健) …大学3年、まなざしの会の会員 田中雅彦(篠崎大悟)…大学4年、まなざしの会の会長 鶴川武(渡邊圭介) …大学3年、まなざしの会の会員 谷本有希(寺本綾乃)…大学2年、まなざしの会の会員 長谷部京子(亀田梨紗)…大学1年、井上の恋人 石川ひかり(大澤夏美)…大学1年、京子の知人で田中の元恋人 藤井誠一(工藤洋崇)…大学の守衛 舞台監督:鳥養友美 舞台監督補佐:吉田元海 舞台美術:秋友久実 舞台美術補佐:野村久美子 照明:中能良 音響:池田野歩(umlaut) 宣伝美術:斉藤さやか フォトグラファー:田口徹 映像撮影:石川浩司・小口理菜・高橋修平 制作:高縁貴彦 新宿サンモールスタジオ 2月14?22日 前売2000円 当日2500円 ===================================================================== ◇連載 カトリ式小劇場の歩き方 第4回 淋しいのはお前だけじゃない 香取英敏 --------------------------------------------------------------------- タイトルは1982年の市川森一の名作ドラマ。劇中で花村月之丞一座(大衆演 劇らしいいい名前…)が旗揚げする鈴なり座として、カトリの記憶では「ザ・ スズナリ」が使われていた。 芝居を見続けても、舞台の感動を分かちあう相手に不足する。「木戸銭かえ せ!」という時も、その憤懣を共感してくれる相手がいない。 また、芝居が好きというと、「いいご趣味ですね」などと言われる。別に趣 味じゃないんだけど、なかなか説明できない。 たとえばカトリは、金魚が淀んだ水から口だけつきだし、直接息をしている ような切実な気持ちから芝居にこだわっているのだが…。 だから「仲間」がいるといいなぁ。というのが今月のとっかかりである。 仲間の効用には、芝居を熱く語りあえる以外にも、チケットを融通しあった り、未見の劇団へのガイドや指針をもらえる効用もある。「行く?」という話 から、あいつが勧めるなら「行かない」というのもある(笑)。 そういう仲間をカトリは「同志」と呼んでいる(おお、かっこいいぞ)。 ではそんな仲間にはどこで出会えるかというと、身贔屓を承知で、ワンダー ランド主催「劇評を書くセミナー2009」を提案する(詳細は近く公開)。カト リも昨年の第1期生です。そこで知り合った多彩な演劇好きたちと、情報交換 したり、劇場で出会えったらお茶を飲んだり、季節の宴会をしたりと楽しんで ます。ダンスの師匠にも出会えた。 たった一人はつらい。「淋しいのはお前だけじゃな」(枡野 浩一)となら ないようにぜひ! ということで、4月である。 演劇が運動でも、社会の変革でもなくなったためか、今は「劇団」という枠 がユルい。若くてもフリーが増えている。主宰者一人だけのカンパニーもある。 作品ごとに集めるのである。ゆえに魅力ある才能は多くの芝居にでる。好きな 役者を追いかけるのも大変になった。また脚本提供や、外部演出も増え、コン ペやテーマ競作というガチな(DAIGO)競演も増えたのも、演劇文化の振興に つながる。勝負しあい、文字通りの切磋琢磨の機会が増えたのも、いい意味で の仲間意識であろう。 そこで、まず「切れなかった14才リターンズ」 (http://kr-14.jp/kr-14web/)をおすすめ。 1982年生まれは、14歳であった96年に、同学年が「神戸連続児童殺傷事件」 を起こす。その「酒鬼薔薇聖斗」により、「キレる14歳」といううれしくない、 キャッチーなくくられ方をされるようになる。その後、17〜19歳に世紀をまた ぎ、昨年、秋葉原通り魔事件を起こした容疑者も同学年である。 その82年生まれを中心とした、青年団演出部・柴幸男、快快・篠田千明、柿 喰う客・中屋敷法仁(彼だけ84年生まれ)、岡崎藝術座・神里雄大、モモンガ ・コンプレックス白神ももこ、KUNIO/こまばアゴラ劇場<サミット>ディレ クター杉原邦生の6名が「14歳」をテーマに競作する。おおげさだが、これか らの演劇を支えていくはずの6名である。 6作品のなかでもカトリが特に期待しているのは、白神の「すご、くない。」 と中屋敷「学芸会レーベル」。 ダンスパフォーマンスでありながらなんとも「普通の女の子」の現実の点描 を感じさせてくれる白神の作品はかわいくてしかたがない。大好き!白神ちゃ ん! そしていうまでもなく中屋敷は、もの凄い。彼の芝居をみてると、「シガー ボックス」というジャグリングを思い浮かべる。2つの箱でもって1つの箱をは さんで持ち、落とさずに操るあの大道芸である。「端返し」「中抜き」「大回 転」などという技で、カラーボックスを空中で組み替えていく。スピードとリ ズムと一瞬で変わっていく色合いとがなんとも中屋敷芝居のようだ。下品なこ とばやくだらないことばあそびと、超スピードのラップ様のセリフ群に翻弄さ れるが、その実、しっかりした構造の芝居が進行していく。それは安心してら れる平凡なものではなく、過激で攻撃的なものだ。観客は立ちくらみを起こす が、気持ちはよい。自ら「男子中学生の妄想エンターテインメント」と規定す る中屋敷だが、いやはや注目しつづけたい才能である。 さらにその側面企画でplayworks主宰の岸井大輔が 「playworks#1.『14=1997.02.xxx-xxx-xxxxx』」 (http://plaza.rakuten.co.jp/kishii/diary/20081222/)を制作するため連 日取材をする。「ポタライブ」というお散歩演劇や「文(かきことば)」とい う口語演劇への挑戦でしられる演劇作家が上演期間中のアゴラ劇場ロビーで、 訪れた82年生まれとその同世代にインタビューをし、その成果を元に劇を作る。 その創作プロセスは、日々公開されていく!アゴラに行ったらぜひロビーでニ コニコしている「演劇界の伝説の人・岸井」を見てくれ!!話すと面白い年齢 不詳の博識な方です。取材自体を作品にしようという試み。意欲作となるのは 必定だ! さて次に、ようやくこの劇団が紹介できる幸せ、DULL-COLORED POPである。 3月もMrs.fictions主催の『15 minutes made vol.5』に参加している売れっ子 劇団。第7.7公演「ショート7(七乗)」(http://www.dcpop.org/short7/。 4/29(水)〜5/6(水)。Pit北/区域)を打つ。仮チラシには「秘蔵で死蔵な 短編6本+新作1本を一挙上演」とあるが、何をおっしゃるウサギさん!ダルカ ラ贔屓のカトリでも1本知らないのがある強力ラインナップ(!?)、短編な らではの多彩な世界が展開されるもよう。ただ7本って年寄りには上演時間が 心配、と思ってたら、ABプロに分かれてました(安堵)。芥川「藪の中」あり、 モーパッサン「ソヴァージュばあさん」あり。特に後者は1月に時間堂黒澤世 莉がやったばかりのを、作者自ら演出。劇構造把握にはカトリの中で定評のあ る谷(柏市民劇場CoTiKの「源氏物語」(2/13〜15)も市民劇レベルを超えた、 重厚な劇構造を見せた)が、いかに違いをだすか楽しみ。また岡田あがさ(黒 目がちなまなざしが神秘的)、佐々木なふみ(ハーフっぽくてセクシー)、佐 野功(ニヒルですてき)、堀越涼(女形もできる強力二枚目)などファンには 垂涎のキャスト! (ここから頭の中で活字を二ポイント落としてください) 地位も名誉もあるカトリであるので(大嘘)、小さい声でのご推薦になるの だが、上記が小劇場というマイナー界でもメジャーな部類だとすると、ほんと に「マイナー・マイナー」の帝王、「下品上等!」ゴキブリコンビナートだ! 「にぎやかどうぶつ横丁」 (http://www.geocities.jp/goki_con/frameset.html。4/10(金)〜13(月)。 新宿タイニイアリス。この劇場を紹介できるのも喜び)を見に行こう。 グロテスクでアンチモラルでというと往年の「アングラ」のようだが、ゴキ コンはさらに濃縮還元された100%の下品がプラス。怖いものみたさで」なん て軽くいいますけど、それでほんとに「怖いモノ」はないでしょ。「常識」を ぶっ壊すのが芸術の使命ではあるが、ここまで「日常への無差別テロ」を見せ られるとね、ほんとに怖いです。 予告にも「汚れても良い服装・靴・カバンでお越しください。■今回レイン コートの販売は予定しておりません」(脱力)。レインコートは「吉例」なん だが、買わないで後悔する人がでます。黒っぽい衣装で、緊張感をもって観劇 してください(爆)。まちがってもデートでいかないでね。トラウマになって 別れてしまうかも。ただ、主宰のDr.エクアドルは大道具のプロなので、もの すごいセットをくむはずです、楽し。 (ここで活字をもとのポイントに戻してください) 今月紹介したような劇団を勧めてくれたり、「いいよね」と言い合える一般 社会では考えられない人に出会える(爆笑)のが、仲間がいる最大の喜びです。 「芝居見ようぜ!」そして、「芝居について話そうぜ!」 それではみなさん、来月も劇場でお会いしましょう。 【筆者略歴】 香取英敏(かとり・ひでとし) 1960年、神奈川県川崎市生まれ。大学卒業後、公立高校勤務の後、家業を継 ぐため独立。現在は、企画制作(株)エムマッティーナを設立し、代表取締役。 ウェブログ「地下鉄道に乗って−エムマッティーナ雑録」を主宰。 http://plaza.rakuten.co.jp/ksh21c/ ==================================================================== 連載【レクチャー三昧】第31回 「春」はすぐそこに -------------------------------------------------------------------- 今は大学での催しがとても少なくなっている時期なのですが、それでも面白 そうなものがあります。来月以降はどんなに沢山見つかってしまうかと思うと …。「マガジン・ワンダーランド」がいつもの倍の長さになってしまってもお 読みいただけますでしょうか…?(高橋楓) *無料でも予約が必要なことがございます。必ずウェブサイトでご確認ください。 *各講座情報の真偽・変更・取消・思想信条背景等につき一切の責任を負いま せん。各自ご確認の上お越しください。 *近日開催の講座紹介は、バックナンバーに載っている可能性がございます。 http://archive.mag2.com/0000201899/index.htmlをご覧ください。 ▽劇場創造アカデミー「講義のみ受講生」追加募集 2009年4〜7月、9〜12月、1〜3月、月曜〜水曜午前中 受講料15万円、受験料5,000円、申込締切3月19日(木) http://za-koenji.jp/news/index.php?news=13 ▽音楽はパレスチナの「壁」をこえられるか? 2009年3月21日(土)10時〜12時 日本女子大学目白キャンパス 無料、予約不要 ユダヤ系の音楽家バレンボイムとパレスチナ系の学者サイードが、相反する国、 イスラエル、アラブ諸国などから、若手音楽家を集めてオーケストラを創り上 げたドキュメンタリー映像上演と講演。講師は中野真紀子氏(翻訳家、バレン ボイムとサイードの対談集『音楽と社会』(みすず書房)の翻訳者) http://momi.jwu.ac.jp/~sogoken/37kouenkai20090321.html ▽デジタルアーカイヴ その現在と未来 2009年3月23日(月)15:00〜20:45 慶應義塾大学三田キャンパス 無料、予約不要 身体表現のディジタビリティ、ジャズ・アーカイヴの可能性、等のトピックも http://www.darc.keio.ac.jp/sympo0903/ ▽Future Motion 2009 2009年3月28〜29日 慶應義塾大学日吉キャンパス 無料、要申込 「全く新しいカタチの映像の祭典」とのこと http://www.futuremotion.jp/index.html ▽近藤サトが伝えたい!朗読の楽しさ〜朗読研究会からテレビの世界へ〜 2009年4月21日(火)18:00開場18:45開演 日本大学カザルスホール 無料、要申込(電話のみ)、申込期間4月1日(水)〜4月10日(金) http://www.nihon-u.ac.jp/news/2008/2008000122.html ▽春の音楽会 2009年4月15日(水)19:00開演、18:30開場 明治学院大学白金キャンパス アートホール 無料 http://www.meijigakuin.ac.jp/event/archive/2009-03-10.html ▽結婚するなら婚活時代−これだけ変わった現代結婚事情− 2009年4月11日(土)14時〜15時30分 中央大学駿河台記念館 無料、予約不要 講師は山田昌弘氏(中央大学文学部教授) http://www.chuo-u.ac.jp/chuo-u/event/event_j.html?suffix=k&visit=12&mode=vst&topics=8283 ▽アーティスト・ファイル2009−現代の作家たち 2009年3月28日(土)は、「六本木アートナイト」開催にともない無料 22:00まで開館 国立新美術館企画展示室2E http://www.nact.jp/exhibition_special/2009/af2009/index.html ▽徳川将軍15代、時代背景を映し出す肖像画 2009年3月24日(火) 15:30〜17:00 ジャパンファウンデーション本部 日本語 無料、要申込、申込締切3月23日(月)17:00 講師はネリ・レシェンコ氏(ロシア科学アカデミー東洋学研究所主任研究員) http://www.jpf.go.jp/j/intel/new/0903/03-01.html ▽大リストラ時代に労組は何ができるのか〜労働組合の役割を考える〜 労働相談情報センター池袋事務所セミナー室(3階) ▽▽企業リストラに労働組合はどう抗するか? 2009年3月19日(木)18時30分〜20時30分 ▽▽企業・雇用形態を超えた労働組合の役割〜派遣切り、派遣村から見えるも の 2009年3月23日(月)18時30分〜20時30分 ▽▽3企業倒産に労働組合はどう取り組むか? 2009年3月24日(火) 無料、要申込、定員100名(先着順) http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/ibento/kyoiku/seminar/08088/index.html ====================================================================== 【編集日誌】 ☆日本テレビの社長が辞任しました。番組で誤報を流した責任を取ったようで す。社内の検証結果が公表される前の辞任なので詳しい経緯は分かりませんが、 テレビ局と制作会社の混成チームによる取材だったと報じられているところ をみると、テレビ現場が抱える構造的な危うさが今回も露呈したのではないで しょうか。「私が辞職するに値する案件だと、日本テレビ報道局の管理職と報 道局員がどの程度理解していたか」(朝日新聞3月17日付朝刊)と社長が述べ ているところをみると、制作局だけでなく報道局も含めて会社全体が「報道機 関」である意識が薄れていたのでしょうか。 ☆刑事事件を扱う番組で、登場人物が「法廷で白黒を争う」などと発言する度 に冷や冷やします。あるいは「被告が無罪かどうか裁判で決める」などという 場面が出てくると、大丈夫だろうかとか心配になってしまいます。刑事裁判の 原則はいうまでもなく「推定無罪」です。被疑者として逮捕され、起訴されて も、依然として「無罪」なのです。検察が証拠に基づいて被告の有罪を立証し なければなりません。法廷は有罪か無罪かを争う場ではありません。検察側が 有罪を立証する場、なのです。立証できなければ、無罪です。 ☆陪審員に事前質問が出される場合、「被告が犯人かどうか分からない」と述 べれば、予断を持っていると疑われても致し方ないでしょう。被告はあくまで 「無罪」なのですから。テレビでよく逮捕者を「犯人」などと呼び、既に判決 が下ったかのように表現しますが、あきらかに逸脱です。捜査当局のリーク情 報を基に、まるで有罪であるかのような印象を与えるニュースを連続して流し たりするのも権力側のメディア操作、報道と一体化した世論管理の常套手段で す。 ☆最近野党党首の公設秘書が逮捕されて政局絡みの話題になっていますが、不 思議に思うのはすぐに検事総長を国会に呼べ、となってしまうことです。検事 当局は明らかに捜査情報をリークして操作しようとしています。こういう闇の 仕組みを止め、記者会見をオープンにして必要な情報は一般に届くようにして もらいたいと、どうして要求しないのでしょうか。会見では捜査中との理由で ほとんど事件に触れず、陰でリーク=操作するという悪癖はもう止めた方がい いと思います。 ☆ワンダーランドは小さなメディアです。司法事件を扱うわけでもありません。 しかし事実関係を含め、公演に関わる見方や考え方を盛り込んでいます。目も 行き届かなければ手も及ばないのでなかなか思うに任せませんが、編集サイド としてはできることはやりたいと思います。こぼれやミスが出たら、すぐにお 詫びを。掲載劇評やレビューは誤解、偏見だという方には、匿名のコメントで 斬りつけるより、きちんとした指摘と反論をお願いしたいと思います。 ☆今週はレビュー3本、連載2本の盛りだくさんの内容となりました。それぞれ 力の入った作品です。じっくり読んでいただきたいと思います。 (北嶋) ====================================================================== 発行 ワンダーランド 〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北4-1-9 Tel& Fax: 042-422-5219 wonderlandsアットマークnorthisland.jp webサイト http://www.wonderlands.jp * 「マガジン・ワンダーランド」の登録・解除は次のページから。 http://www.wonderlands.jp/info/subscription.html ======================================================================



