2009/11/12
だれでもハズレは観たくない#179 大洗にも星はふるなり
劇場公開中の新作・話題作からレンタル中の隠れた名作・おすすめ作品まで、 日本映画・アジア映画・洋画とジャンルにとらわれません。 1万本の映画の中から、とっておきをご紹介!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 ~新旧映画紹介~ #179 2009.11.12号 主宰・発行者 slow ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◆◆◆ 『大洗にも星はふるなり』 ■ ストーリー クリスマス・イブの夜、茨城・大洗の海の家に集まってきた 6人の男たち。ナルシスト杉本(山田孝之)、サメ好きな 松山(山本裕典)ら、ひと夏を海の家で働いた彼らは、 エリコ(戸田恵梨香)からの手紙でイブの夜に彼女と 二人で会うことになっていたのだ。 なのに5人とも同じ手紙をもらっていたことから、 それぞれがエリコの本命は自分だと主張し始める。 ■ レビュー ドラマ「33分探偵」の福田雄一脚本・監督の ワンシチュエーションコメディ。 ほぼ全編海の家の中だけで話が進んでいきます。 率直な感想を述べると、何も映画にしなくても、 舞台でやったほうがそれなりの作品に なったんじゃないかと思ってしまいました。 シチュエーションコメディといえば、三谷幸喜脚本作 『ラヂヲの時間』『12人の優しい日本人』『笑の大学』 などを思い浮かべますが、それらと比べると『大洗』は 大笑いとまではいきません。山田孝之は『鴨川ホルモー』 ばりの怪演でみんなをリードします。 マスター役佐藤二朗もキモオモシロさ全開でがんばってます。 にもかかわらず心躍るような笑いが少なかったのは、 偏に謎解き部分の弱さのせいでしょう。 謎と呼ぶほどのことでもないんですが、男たちが それぞれに、自分がどれだけエリコに好かれているか エピソードを話し、その「ウソ」を弁護士の関口が 論理的思考で暴いてみせます。 ここに大きな驚きやどんでん返しがなく、ふううん、 そうなんだ、程度の納得しかないため、笑いの小ネタが 連続ジャブで浴びせられても、イマイチ笑えなくなって しまうのでした。 「エリコの本命はだれなのか?」という最大の関心事も、 結局たいしたレベルでないオチで締めくくられます。 『キサラギ』に続けと、二匹目のドジョウを狙ったような 本作ですが、逆に、観ていてワンシチュエーションで ハイクオリティを維持する難しさを感じた作品でした。 本当にいい脚本だったら惹きこまれるはずです。 ただ、館内の女性客は山田孝之や山本裕典の繰り出す シュールギャグにもケラケラと笑ってました。 あしからず。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ●あとがき 伊坂幸太郎の小説『あるキング』を読みました。 ずば抜けた野球の天才・山田王求(おうく)の生涯。 野球小説でありながら、試合の描写はごく一部で、 それよりむしろ、周囲に天才がいる環境に生きる人々の 悲哀を中心に描いています。 いつもの伊坂作品と違い、時間軸のトラップや洒脱な ユーモアはありませんが、独特な世界観に浸れることは 間違いなしで、読むペースは衰えません。 ひとたびページをめくれば、一気に読破できます。 ほとんどの章が「おまえ」という二人称で書かれている あたりも新鮮です。 王求の両親がもう少し普通なら、より王求の存在が 際立ったかなと思いました。新たな作風に挑むのならば、 いっそうのこと、殺しのない恋愛小説を書くくらいの ことを期待したいですね。 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 since July.8 2006 主宰・発行者 slow


