2009/10/15
だれでもハズレは観たくない#174 さまよう刃
劇場公開中の新作・話題作からレンタル中の隠れた名作・おすすめ作品まで、 日本映画・アジア映画・洋画とジャンルにとらわれません。 1万本の映画の中から、とっておきをご紹介!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 ~新旧映画紹介~ #174 2009.10.15号 主宰・発行者 slow ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◆◆◆ 『さまよう刃』 ■ ストーリー 大切な娘を辱められ無残に殺された長峰(寺尾聰)は、ある日娘を殺した 犯人の名前と居場所を匿名の何者かに知らされる。相手は2人の少年だった。 長峰は彼らの一人の元を訪れ、殺害し、逃亡。長峰を追う刑事の織部 (竹野内豊)は、法と正義のはざまで自分のとるべき行動を決めあぐねていた。 そんなとき、長峰から捜査本部に、犯行の自供と少年法への憤慨をつづった 手紙が届く。 ■ レビュー この作品は、心にガツンと衝撃がきます。 家族や恋人とは一緒に観ないほうがいいでしょう。 あまりにむごく、凄惨な映像を目の当たりにします。 娘を愛してやまない父の無念を考えるにつれ いたたまれなくなります。 寺尾聰は渋いですねえ。 もう、予告編を一目見たときから、その世界観というか オーラに引き込まれていました。 物語の前半、犯人の一人である少年のアパートで 娘の姿を収めたビデオテープを目にしたときの 動揺のしかたと行動は、おそらく現実でもそうなるんだろうと 思える迫真の演技でした。 ストーリーは途中、警察の捜査の詰めの甘さなど、一部で 白々しいシーンもあります。しかしながら、それよりなにより、 寺尾聰演じる長峰が、最後にどんな決断をし、どんな判断を 下すのかという最大の興味に牽引されて、緊張感が途切れる ことなくラストまでいけました。 長峰の決断には共感できます。 原作者・東野圭吾の少年法に対する考えかたも理解できます。 ただ、犯罪被害者の本当の気持ちは、そうなった者にしか わかりません。裁判員裁判がスタートしましたが、 市民が法に携わる中で、それが法で定められているからと いって理不尽な決断をくださなくてもよいという点では、 画期的な制度ではないかと思います。 刺激の強い作品ですが、久しぶりに魂を揺さぶられました。 それぞれのシーンをどう感じるか、最後の長峰の行動を どう思うか、観る人によって捉え方は異なるでしょう。 ただ、深く考えさせられること、まちがいありません。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ●あとがき 以前本屋大賞を受賞作『告白』も復讐モノですが、 少しドラマ的な展開にもなっており、 一気に読破したくなります。こちらは、現実離れした キャラクターのため、重くはありません。 ただ、こういう作品が一般書店の店員に受けがいいと いうのはふしぎですね。もっと毒のない作品が好まれる ものだと思っていたのですが。 みなどこかで、自分のこうむった悲しみのやり場に対して、 作中の人物がとる行動に共感する気持ちを少なからず もっているのかもしれません。 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 since July.8 2006 主宰・発行者 slow


