2009/10/04
だれでもハズレは観たくない#172 パンドラの匣
劇場公開中の新作・話題作からレンタル中の隠れた名作・おすすめ作品まで、 日本映画・アジア映画・洋画とジャンルにとらわれません。 1万本の映画の中から、とっておきをご紹介!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 ~新旧映画紹介~ #172 2009.10.4号 主宰・発行者 slow ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◆◆◆ 『パンドラの匣』 ■ ストーリー 結核をわずらう少年、通称・“ひばり”(染谷将太)は、終戦を機に「健康道場」 と呼ばれる結核療養所に入所する。そこでは婦長の竹さん(川上未映子)や 看護師のマア坊(仲里依紗)、そして明るく個性的な患者たちが迎えてくれた。 ひばりは日々の出来事を親友・つくし(窪塚洋介)宛の手紙に綴る。 ■ レビュー 昭和を代表する作家・太宰治の生誕100年にあたる今年、 多くの作品が映像化される中、太宰作品のうちもっともポップでもっとも青春を 感じさせるという『パンドラの匣』。 もっとも、結核療養所が舞台ということで、けっしてあっけらかんとした青春ではありません。 予告を目にした際も、観ようかどうしようかわりと悩みました。 しかしながら、太宰治の世界観がどのように描かれているのか、高尚なものに 漂うベールのようなものを感じ、なんとなくひきつけられていました。 それに加え、芥川賞作家・川上未映子が役者として重要な役を演じており、 どんな演技をするのかも興味がありました。 近年の邦画にはない独特の世界観で、ほぼ限定空間で繰り広げられる何気ない 日常を描いているにもかかわらず退屈しませんでした。 ひばりがつくしに宛てた手紙をひばりが読み上げる形式をとっているため、実際の小説を 独白するような朗読劇の側面もあります。主演の染谷将太は声がいいですね。 いい演技をします。川上未映子の役柄も魅力的でした。 なぜ芥川賞作家を起用するのかと疑問に思っていましたが、観ればすぐに納得します。 彼女でしか出せない雰囲気がありました。 また、この作品をオンリーワンの作品に仕立てるのに、音楽が大きな役割を担っています。 ジャズ界のカリスマ・菊地成孔の音楽は、ときにミステリアスで、ときにロマンチックで、 ときにポップで、ときにスタイリッシュで、遊び心も感じられる緩急のうまさ。 観たことない映画。 太宰治って、おもしろいね。 そんな鑑賞後感をもてる作品に仕上がっています。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ●ちょっとつけたし タイトル『パンドラの匣』について、映画の中では とくにその意味は語られません。 もともとギリシャ神話からきています。 パンドラとは「すべての贈り物」という意味があり、 ある女性の名前でもあるようです。 それに映画の感想を踏まえ、わたしの勝手な解釈を加えますと、 パンドラの匣とは、強欲な人間界に神が与えた箱で、 なかには希望が入っている、 そんな意味があるのではないかと感じました。 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 since July.8 2006 主宰・発行者 slow


