2009/05/10
『だれでもハズレは観たくない』#149 ウォーロード 男たちの誓い
劇場公開中の新作・話題作からレンタル中の隠れた名作・おすすめ作品まで、 日本映画・アジア映画・洋画とジャンルにとらわれません。 1万本の映画の中から、とっておきをご紹介!! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 〜新旧映画紹介〜 #149 2009.5.10号 主宰・発行者 slow ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◇◆◆◆ 『ウォーロード 男たちの誓い』 ■ストーリー 清の時代、太平軍との戦いにおいて自軍を壊滅させてしまったパン将軍 (ジェット・リー)は、盗賊として生計をなしていたアルフ(アンディ・ラウ)、 ウーヤン(金城武)と出会い、彼らに兵としてともに戦うことをもちかけ、 義兄弟としての契りを交わす。しかし、蘇州との戦において、自分の義を踏みにじ られたと感じたアルフと、パンの間に溝が生まれる。 ■レビュー ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武の3大スターそろい踏みの映画ですから、 内容どうこうよりも前に、観なきゃと思ってしまいますよね。 現在も上映中の『レッドクリフ PartII』をご覧になった方の何割かは、 似たような世界観を期待してこちらに興味をもったかもしれませんが、 ただ、テイストは完全に異なります。 『レッドクリフ』が戦乱をエンターテインメントに昇華させ、圧倒的なボリューム (兵も船も矢も)で壮大な歴史絵巻として描いていましたが、『ウォーロード』では、 一兵と一兵のガチの殺し合いが繰り返されるため、ものすごく血なまぐさい、 戦争の過酷さを思い知らされます。 主演3人の義兄弟。投名状というもので兄弟の契りを交わすことは、血判状にも 似ています。そんな義を重んじるアンディ・ラウと金城武に対して、もっともっと 大きなものを追い求めるジェット・リーが、いくつかの戦いを繰り返していく中で、 徐々に決裂していきます。 何が正義で誰が正しいのか。 平和な国に住む今の日本人にとって、ジェット・リーの考え方は冷徹に感じるかも しれません。しかし、彼の考え方は、これまでの数々の映画においても実は繰り返し 描かれてきました。たとえば、同じジェット・リー主演作品でいえば、 『HERO』(英雄/2002年中国・香港)を思い出す方も多いかもしれません。 こちらは秦の時代。秦王を狙う3人の最強の刺客を倒したという無名(ジェット・リー) が、いったいどのようにしてそれをなしえたかを秦王に話していきます。 そして、忘れもしないクライマックス、覚えていますか? 秦王の決断。 あれこそ、戦乱の世において人の上に立つ者の行為なのです。 未見の方は、ここでストーリーをネタバレさせるわけにもいきませんので、ぜひ一度 ご覧ください。 話を『ウォーロード』に戻しますが、原題・The WARLOADSのロードは、ROADSでは ありません。戦いの道でなく、戦の負荷、あるいは代償というふうにとらえました。 『レッドクリフ』のようにエンターテインメントに徹すれば、楽しく観られるので しょうが、『ウォーロード』にはいろいろ考えさせられました。 ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武それぞれの信条が描かれますが、 一ついえるのは、平時に下す平和な決断を100だとしたら、戦時に下す決断は、 よくて30、悪ければ0の価値にまで落ち込みます。いくら正当な理由付けをしたと しても、結局どこかで人は死にます。前回レビューした『GOEMON』も同じです。 戦時の男気に惚れるのでなく、その悲哀に思うところがあれば、観て損はありません。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ●あとがき● 2009年本屋大賞第1位の小説、『告白』(湊かなえ著・双葉社)を読みました。 娘を生徒に殺された教師の教室での独白に始まり、その事件にかかわった人々の 心の闇が浮かぶ物語です。本の帯にもあるとおり、読中感も読後感も最悪でした。 ただ、読む手は止まらず、最後まで一気に読みきってしまいましたね。 世の中で起こっている理解不能な少年犯罪や親殺しなどの起こる背景って、 実はこんな感じなんじゃないかと思ってしまいます。 もちろん、実際にはもっともっと理解不能であったり、ものすごい憎悪を抱えて いる場合もあるでしょう。ゲーム脳なんていう言葉が小説中にも出てきますが、 この作品こそゲーム脳で書かれたゲーム小説じゃないかと嫌悪感を示す人も いるかもしれません。 しかしながら、著者の経歴にもあるとおり、ラジオドラマの脚本に適した圧倒的な 構成力と斬新な語りによって、凄い作品になったのは確かです。 週刊映画レビュー『だれでもハズレは観たくない』 since July.8 2006 主宰・発行者 slow



