2007/02/02
樋口正登の「犯罪・Watch!」第27号
☆☆☆樋口正登の「犯罪・Watch!」第27号☆☆☆ 2007.02.02発行 皆さん、今日は。 先ほど、先日の園児4人の死亡事故に関する初公判が埼玉地裁で行なわれ、 被告人は「業務上過失致死傷罪」に関する起訴事実を認めました。被害者が 幼年者でしかも複数であったことから、ご遺族側は、刑罰の軽い業務上過失 致死傷罪ではなく、重く処断できる「危険運転致死傷罪」の適用を望んで、 署名活動までなさったようですが、今回は検察側が立件をあきらめた?よう です。「業務上過失致死傷罪」は過失によるもので、「危険運転致死傷罪」 は故意によるものです。園児4人が死亡していることから、過失は明らかで あるものの、故意(=わざとやった)との立証はできない(=裁判で勝てな い)との判断をしたのでしょう。 第27号は、飲酒運転による危険運転致死傷罪に関する事件です。 ★★★危険運転致死傷罪が初めて適用された事例★★★ 宇都宮地裁平14.3.13、平14(わ)2号 ■事件の概要■ 本事例は、スナックで焼酎のお湯割りを4杯飲んだ者が、通常の運転が困 難であったにもかかわらず、普通貨物自動車(4ナンバー)を運転して、赤 信号で停止していた車に追突をしたものです。 ■考察■ 今回の事例では、空腹時に飲酒をしたのが事故の原因の一つであるようで す。ほとんど意識のない状態で車を蛇行させ、その蛇行運転に危険を感じた 通行人が警察に通報したものの間に合わずに、事故が起こってしまいました。 この被告人は、被害者の車両に追突した際、被害者にいいがかりをつけ、平 手打ちにするなどの暴行をはたらいています。犯行後の言動も悪質極まりな い! この開き直りは、居直り強盗以上かもしれません。 飲酒運転を、一種のファッションと考えているように思います。子供が、 スリルを味わうために万引きに手を出すような? 飲酒運転をして事故を起 こした場合には、刑事・民事・行政すべての責任を負うことになるのに、運 転免許証というライセンス保有者としての自覚が足りないのでは? 交通刑務所に入り、損害賠償金を支払い、点数を引かれたり免許の取消な どの処分を受けることは必定です。 車は、一つ間違えれば「凶器」となります。免許証を持っているというこ とは、1種免でも2種免でも刑法上は「プロ」として評価されます。そうし た自覚が必要ですね。 ■判決■ 今回の判決では、懲役1年4ヵ月の実刑とされました。この被告人は、過 去において酒酔い運転などで何度も罰金に処せられているほか、執行猶予付 きの有罪判決や実刑を何度も受けています。今回は、懲役4ヵ月・執行猶予 5年の保護観察期間中に起こした事故です。 被告人の妻が病弱で生活に困窮していることや、長女が高校進学のために アルバイトをしてためた20万円を、被害者に給付しようとしている点は評 価できるものの、その点を考慮したとしても実刑はやむを得ないと判断され ました。今回の被告人は、遵法精神の欠如が甚だしい!というのが裁判官の 判断です。 ■編集後記■ 今回の事件は、刑事訴訟において「危険運転致死傷罪」が初めて適用され たものです。判例を検索して調べましたところ、「業務上過失致死傷罪」と する事案は多数あるものの、「危険運転致死傷罪」の適用はほとんど存在し ないことが分りました。本事例以外では、大阪地裁平14.7.8、平14 (わ)15号など、ごくごくわずかの裁判記録があるだけです。大阪地裁の 事例では、「赤信号を意図的に無視して」という点が適用の根拠となってい ます。故意による「危険運転致死傷罪」については、さらに罰則を強化して 再発防止を図ることが、刑事政策的にも必要なことなのかもしれません。 次回(第28号)は、2月16日(金)に配信予定です。引き続き、ご愛 顧のほど、よろしくお願いいたします。 著作権法に基づき、発行号数を問わず、無断転載はお断りをしております。 ご協力、お願いいたします。 このメルマガに関するご意見などがございましたら、お聞かせ下さい。 配信画面から、返信が可能となっております。 樋口正登の「犯罪・Watch!」 発行システム:『まぐまぐ!』 http://www.mag2.com/ 配信中止はこちら http://www.mag2.com/m/0000197593.html


