2009/04/27
霊界物語をメールで配信!(752)
霊界物語をメールで配信!第20巻(752) -------------------- ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■第7章 再生の歓《よろこび》〔669〕 ■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 松鷹彦《まつたかひこ》は【あかざ】の杖をつき、田吾作、お春の慌てて駆け出した あとを気遣ひ、覚束《おぼつか》ない足つきにて二人に留守を托しながら出ていってし まった。後には夫婦連れ、何れも喜びと驚きの涙に暮れて居る。 お勝『モシ宗彦さま、どうぞ私に暇《いとま》を下さいませぬか』 宗彦『そりゃお前、本当に欲しいのか』 お勝『何しに心にもないことを云ひませう、ちょっと感じたことが御座いますから、ど うぞ今日限り縁を切って下さい』 宗彦『ハハ分った、お前は、私の父親《てておや》は、もっと立派なものと思うて居た のだらう、あの爺《おやぢ》さまが、私の親と云ふことが分ったのでにはかに嫌になっ たのだな』 お勝『イエイエどうしてどうして、嫌になりますものか、層一層《そういっそう》懐し うなって来ました』 宗彦『そんなら尚更のこと、夫婦|睦《むつ》まじく暮らしてくれたらどうだ。俺も折 角お父さまに遇うて喜ぶ間もなく、女の方から暇《いとま》を貰ってどうして親に合は す顔があらうか、昨日までならやむを得ざれば切ってもやるが、今となってそんなこと が出来るものか、俺の心もちっとは察してくれたらどうだ』 お勝『それはさうで御座いますが、これには云ふに云はれぬ仔細があって』 宗彦『遠慮会釈もない夫婦の仲、云はれぬ秘密があらうはずはない、サアその秘密を聞 かしてくれ』 お勝『その秘密を申し上げたら貴方はびっくりをきっとなさいませう、こればかりは死 んでも申し上げられませぬ』 宗彦『ハハア、さうするとお前は田吾作さまと、なんか俺に内証で契約でもしたのだら う、田吾作とお前の視線がどうも怪しかった』 お勝『何と云ふ情けないことをおっしゃるのですか、私の腹を切ってでも見せてあげた い、何れ死なねばならぬ罪の重いこの体』 と云ふり早く懐《ふところ》の懐剣を取り出し、帷子《かたびら》の薄衣《うすぎぬ》 の上からグサリと突き立てようとした。宗彦《むねひこ》は驚いてぐつとその手を握り、 宗彦『待て待て』 お勝『イエイエどうぞ留めて下さいますな、潔《いさぎよ》く死なして下さいませ、腹 を切って臨終《いまは》の際に一言申し上げて、神様や貴方にお詫びを申し上げます』 宗彦『生死を共にしようと云って、山野河海《さんやかかい》を見すぼらしい巡礼姿と なり下がり、手に手をとってここまで互ひに父母の後を慕ひ来たのではないか、お前は 大方私が親子の対面をしたので恨めしうなったのだらう、イヤ失望落胆したのであらう、 きっと遇ふ時節が来るから短気を起こしてくれな、夫が妻に手をついて、サアこの通り だ』 と片手にお勝《かつ》の腕を握り、片手を目の前に突きつけて、涙と共にお勝を拝む。 お勝『アア勿体ない、そこまで思うて下さるなれば死ぬのは止《や》めませう、安心し て下さいませ、その代り只今限り無条件でお暇を願ひたう御座います』 宗彦『暇をやらねば死ぬと云ふなり、暇をやれば親父に心配をかけるなり、嗚呼《ああ 》恩と恋との締木《しめぎ》にかかって、こんな苦しいことが世にあらうか。これお勝、 どうぞしばらくでいいから夫婦になって居てくれ、また時をみてお前の望み通り、離縁 をするから』 お勝『それが待たれるやうなことなれば、なぜ私がお願ひ致しませう、女房が夫に対し 離縁を申し込むなぞと云ふやうな、不合理なことがどこに御座いませう。貴方はさぞさ ぞ不貞腐《ふてくさ》れの女だと思召《おぼしめ》すでせうが、私の胸のうちは千万無 量、焼鏝《やきごて》を当てるやうで御座います』 宗彦『アアどうしたらこの苦しみを逃れることが出来ようかなア、暇をくれと云へば云 ふほど心のうちの恋と云ふ曲者が躍り出し、俺の体も焦熱地獄に陥ちたやうだ』 と太き息をつく。夫婦の間に得も云はれぬ悲惨な雲の幕が下りた。かかる所へ松鷹彦は いそいそと帰り来たり、 松鷹彦『ヤア宗彦、お勝、お前は泣いて居るのか、こんな目出度い時に夫婦が揃うて泣 くと云ふことがあるものか、泣きたければまた夜中にゆっくりと泣いて満足《たんのう 》するがよい、今そこへ村の衆が出て御座るから、サアサア早う機嫌直してくれ』 宗彦『お父さま、あまり嬉しうて嬉し涙が溢《こぼ》れたのです、御心配下さいますな』 松鷹彦『アア、さうだらう さうだらう無理も無い、しかしお勝も泣いて居たやうだ、 目を腫《は》らして居るぢゃないか、これこれお勝、みっともない、泣いてくれな』 と留《とど》めながら松鷹彦は自分も泣き出した。 宗彦『お父さま、申し上げ悪《にく》いことですが、女房が只今より暇《ひま》が欲し いと云ふのです、それで実は二人が談判して居ったのです』 松鷹彦『若い者と云ふものは仕方がないものだな、わしも覚えがある。天下御免だから 犬も喰はぬ喧嘩を精出してやってくれ』 後は嬉し涙をしゃくり上げる。 かかる所へ、天《あめ》の真浦《まうら》の宣伝使を始め、田吾作、留公《とめこう 》、お春は四五の里人《さとびと》と共に、スタスタとやって来た。 田吾作『モシモシ、お爺さま、お喜びなさいませ、真浦《まうら》の宣伝使は確かに左 の腋《わき》の下に梅の紋が鮮かに現れて居ります。きっと最前おっしゃった、貴方の 御長男 松さまに間違ひありません。ナア真浦さま、さうでせう』 真浦『ハイ』 と云ったきり、何となく心落ち着かぬ返事をして居る。 松鷹彦『モシモシ真浦さま、失礼なことをお尋ね致しますが、あなたのお国はどこで御 座いましたか』 真浦『ハイ、私は紀の国熊野の生まれで御座います』 松鷹彦『お父さま、お母さまはお達者にして御座るでせうな』 真浦『イエ父も母も行方不明となり、三人の兄妹もどうなったか、何分小さい時に分れ たのものですから顔も知らず、まるで世の中に親族《みうち》も何もない一人ぼつちで す。私の力とするのはただもう仁慈無限の神様ばかり、度々夢を見ますが、私の父はど うも貴方に良く似て居るやうに思ひます。しかしこれは夢のことですから、あてにはな りませぬ。何卒お心にさへて下さいますな』 松鷹彦『お前さま左の腋《わき》に梅の花の痣《あざ》があると云ふことぢゃが、それ は真実《ほんたう》ですか、真実《ほんたう》ならちょっと見せて下さい。わしの子供 には兄弟とも兄は左に弟は右に、不思議なことには梅の紋の痣《あざ》がついて居る、 何でもこれは神様の生まれ変りと聞いて居る。一人の娘には臍《へそ》の上に三角星の やうな黒子《ほくろ》があった』 真浦『これは妙なことを承《うけたまは》ります、サアどうぞお調べ下さいませ』 と肌を脱ぐ。松鷹彦は眼を光らし、つくづくと眺めて、 松鷹彦『ママ擬《まが》ふ方《かた》なきわしの忰《せがれ》であった。有り難い有り 難い、これと云ふのも神様のお引き合はせ、婆が生きて居たらどれだけ喜ぶであらうに、 可憐《かはい》さうなことをした。婆と明け暮れ三人の子供のことを思ひ出しては泣き、 云ひ出しては泣き、可憐さうに泣いて泣いて泣き暮らし、終ひには自暴自棄《やけ》に なって、河の魚《うを》を漁《すなど》り、殺生ばかりして悶々の情《じゃう》を慰《 なぐさ》めて居た。アーア可憐さうだった』 とさすが妻を思ふ愛情の雲に包まれてその場に力なく泣き沈む。 田吾作『こんな目出度い時に何をベソベソ泣くのだ。男と云ふものは涙を目から外へ落 とすのは大変な恥だ、潔《いさぎよ》うなさいませ。歌でも謡って祝ひの酒でも飲んで 機嫌ようするのだなア、私も何だか陰気になって来た。サア一つ歌って見ようかな、ぢ ゃと云うて酒も呑まずに何だか拍子抜けがしたやうだ。お弓の奴、酒を買うて持ってゆ くと云ひながら、何をして居るのだらう。また爺《おやぢ》といちゃついて居るのだな からうかなア』 と態《わざ》と潔《いさぎよ》うしゃべり立てる。留公《とめこう》は、 留公『モシモシ、真浦《まうら》の宣伝使さま、何を俯向《うつむ》いて居るのだ。早 くお父さまに久し振りの御対面の御挨拶をなさらぬか、何だか目出度いことだと思うて 来たのにさっぱり座が湿ってしまひ、五月雨《さみだれ》の空のやうだ。ヤアお弓さん が酒を持って来た。オイ田吾作、お前は酒好きだから、早く飲んで一つ踊ってこの場の 空気を一洗してくれ、俺は御馳走の用意にかかるから、追々村の者が出て来る時分ぢゃ から愚図々々しては居られぬぞや』 と足早に炊事場指して走り行く。 田吾作はお弓の持って来た酒をグイと引っ手繰《たぐ》り、そのまま口にあてて法螺 貝飲みを始めて居る。松鷹彦、真浦、宗彦、お勝の四人は喜びと悲しさの雲に包まれ、 黙念として傾首《うなだ》れて居る。田吾作は酒の機嫌で謡ひ出した。 『とうとうたらりや とうたらり たらりや たらりや とうたらり 天下泰平 国土成就 神が表に現れて 善と悪とを立て別ける この世を造りし神直日《かむなほひ》 心も広き大直日《おほなほひ》 ただ何事も人の世は 直日に見直せ聞き直せ 身の過ちは宣り直す 三五教《あななひけう》の神の道 神の御稜威《みいづ》のいや高き 武志《たけし》の宮の御前《おんまへ》に 親子夫婦の邂逅《めぐりあひ》 三千世界の梅の花 左の腕《かひな》は厳御霊《いづみたま》 右りの腕《かひな》は瑞御霊《みづみたま》 厳と瑞との神の子が いよいよここに現れて 三五《さんご》の月の御教《みをしへ》を 四方《よも》に広むる常磐木《ときはぎ》の 松鷹彦のお喜び 臍下丹田《あまのいはと》のその上に 瑞《みづ》の御霊《みたま》の印ある 黒子《ほくろ》の出来たお勝さま 私ばかりは知って居る さはさりながら皆の人 必ず怪しみ給ふなよ わしとお勝さんのその仲は 汚れたことは露《つゆ》もない 宇都《うづ》の河原にお勝さま 御禊《みそぎ》せられたその時に 横からちょっと見ておいた 松鷹彦の先刻《さきほど》の 御物語《おものがたり》を伺《うかが》へば これぞてっきり御兄妹《ごきゃうだい》 松竹梅《まつたけうめ》の三人が いよいよ揃うた神の前 皆さま喜びなさいませ こんな目出度いことはない たとへ天地は変るとも 親子の縁は変りゃせぬ 親子は一世 夫婦二世 切るに切られぬ親と子が 長い間の生き別れ ここで遇うたは優曇華《うどんげ》の 花咲く春の梅の花 開いて散るな実を結べ 七重《ななへ》に八重に九重に 十重《とへ》に廿重《はたへ》に咲き匂ふ 神の教《をしへ》の瑞祥ぞ アア惟神《かむながら》々々 御霊《みたま》幸倍《さちはへ》ましまして 知らず知らずに犯したる 宗彦《むねひこ》夫婦が身の罪を 三五教《あななひけう》の大御神《おほみかみ》 直日に見直しましまして 罪も汚《けが》れもあら川の 淵瀬に流して清めませ アア惟神々々 御霊《みたま》幸倍《さちはへ》ましませよ』 と剽軽《へうきん》な男に似ず、今日に限って真面目に謡ひ、真面目に舞うて見せた。 この言霊《ことたま》に白けかかった一座はにはかに陽気だち、何れも顔色変へて春風 に桜の綻《ほころ》ぶ如き笑顔を見せたり。 宗彦『アアお勝、お前は合点の行かぬことをにはかに云うと思って居たが、アア妹であ ったか。なぜ遠慮をするのだ、素より兄妹と知って天則を犯したのでもなし、知らず識 らずの反則であるから神様も赦して下さるだらう。どうぞ心配してくれな、しかし兄妹 と分った以上は、お前の望み通り暇を上げませう』 松鷹彦、真浦は打ち驚き、夢か現《うつつ》か、親か子か兄妹かと、目と目を見合し、 呆れて言葉も泣くばかり。天の真浦は立ち上がり、 『天《あめ》と地《つち》とのその中に 生まれ来たりし人草《ひとぐさ》の 中にも別けて我が親子 運命の神に操られ 親子は四方に離散して 行方も知らぬ旅の空 親はわが子の行先を 尋ねて風雨に身を曝《さ》らし 慈愛の涙そそぎつつ 山河渡り荒野越え 我らが跡を老《おい》の身の 憂《うき》を忘れてあちこちと 彷徨《さまよ》ひませる親心《おやごころ》 山より高く海よりも 深き尊き御恵《おんめぐ》み 我ら三人《みたり》の兄妹《けうだい》は 親に離れし雛鳥の 寄る辺《べ》渚の捨小舟《すてをぶね》 流れ漂ひあちこちと 情《つれ》なき人に虐《さいな》まれ 百《もも》の艱《なや》みを凌ぎつつ わが垂乳根《たらちね》の行先を 朝な夕なに当てもなく 探りしことの悲しさよ 天地に神のますならば 悲しき我らがこの思ひ 晴らさせ給ひて片時も 早く遇はさせ給へやと 神に祈りをかけまくも 畏《かしこ》き御稜威《みいづ》幸《さち》はひて 思ひもかけぬ親と子が 今日の対面何として 天地の神に礼代《いやしろ》の 言霊さへもなくばかり アア惟神《かむながら》々々 御霊《みたま》の幸《さち》を賜《たま》はりし 恵も深き三五《あななひ》の 道を守らす大御神《おほみかみ》 神素盞嗚大神《かむすさのをのおほかみ》の 瑞《みづ》の光に照らされて 月満つ今日の邂逅《めぐりあひ》 父はこの世にましませど 母は早くも娑婆世界 後に見捨てて去りましぬ さはさりながらわれのみは 恋しき母と知らずして お目にかかりし嬉しさよ この世に母のましまさば いかに喜び給ふらむ 嗚呼《ああ》父上よ弟よ 日頃尋ねし妹よ いざこれよりは大神の 真《まこと》の道に服従《まつろ》ひて 生命《いのち》の限り身の極み 誠一つの言霊に 悪魔の猛ぶ現世《うつしよ》を 洗ひ清めて母上の 御心《みこころ》慰め奉《たてまつ》り 父の誉《ほまれ》を万代《よろづよ》に 伝へむものと励みませ 淵瀬と変る人の世は 明日《あす》をも知らぬ身の上ぞ 嬉しき春に廻《めぐ》り遭ひ 互ひに顔をみたり連れ 一度に開く梅の花 三千世界の名を負ひし 三角星座の印ある 名さへ目出度き梅子姫 常磐堅磐《ときはかきは》にいつまでも 松竹梅《まつたけうめ》の勇ましく 生き長らへてわが父に 能《あた》ふ限りの孝養を 尽くすも嬉し兄妹の 今日の喜び月照《つきてる》の ミロクの神の御前《おんまへ》に 喜び感謝し奉《たてまつ》る アア惟神々々 御霊《みたま》幸倍《さちはへ》ましませよ』 と謡ひ終って座についた。 村中の老若男女は残らず空家にしてこの場に馳せ集まり、飲めよ謡へよの大祝ひに夜 を明かした。 天《あめ》の真浦《まうら》は永く武志の宮に留《とど》まりて父に孝養を尽くし、 お春を女房に持ち、父の後を継ぐこととなった。お勝は留公《とめこう》の媒酌にて田 吾作の妻となり、夫婦仲よく一生涯を送り、子孫繁栄して裕《ゆたか》な身となった。 宗彦及び田吾作の二人はこれより聖地に上り、言依別命《ことよりわけのみこと》に 謁《えつ》し、三五教の教理を体得し、自転倒島《おのころじま》を始め、世界到る所 に足跡を印し神業に参加し、遂には素盞嗚大神に見出されて立派なる大宣伝使となりに ける。 (大正11年5月13日 旧4月17日 加藤明子録) -------------------- (753)に続く http://onisavulo.web.fc2.com/


