霊界物語をメールで配信!  RSSを登録する

出口王仁三郎が書いた超長編小説『霊界物語』(全83冊)を、メールで配信します!あまりにも長すぎて読むのを途中であきらめたあなたでも、毎日少しずつ少しずつ読んでいけば、きっと完読できることでしょう!【現在休刊中です】

最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2009/03/17

霊界物語をメールで配信!(747)

霊界物語をメールで配信!第20巻(747)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

       こんな本が欲しかった〜

        霊界物語の入門書

      霊界物語を読み解くための
       100のキーワード
        〜霊主体従篇〜

          新発売

    http://rmfc.onisavulo.jp/books.html

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
--------------------

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■第2章 赤児《あかご》の誤《あやまり》〔664〕 ■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 雪に埋《うづ》まる川端《かはばた》の
   賤《しづ》の伏家《ふせや》も春が来て
 冷たき雪もいつしかに
   溶けて嬉しき老夫婦
 宇都山川《うづやまがは》の水|温《ぬる》み
   枯木も青芽を萌《ふ》き出して
 軒端《のきば》の梅も匂ひ初《そ》め
   谷の戸開けて鶯《うぐひす》の
 訪《おとづ》る季節となりにける
   山と山とに包まれし
 ここは世界の秘密郷《ひみつきゃう》
   人の心も質朴《しつぼく》に
 さながら神代《かみよ》の如くなり
   時しもあれや婆羅門《ばらもん》の
 神の教《をしへ》の宣伝使
   鬼雲彦《おにくもひこ》の残党と
 世に聞こえたる友彦《ともひこ》が
   二十戸ばかりの里人《さとびと》に
 霊主体従を標榜し
   剣《つるぎ》を渡り火を渡り
 水底《みなそこ》潜《くぐ》り浮き沈み
   鳥さへとまらぬ茨室《いばむろ》に
 郷《さと》の男女を裸体《はだか》とし
   言葉巧みに説きつけて
 身体《からだ》を破る曲《まが》の行《ぎゃう》
   足駄《あしだ》の表《おも》に釘を打ち
 穿《うが》ちて歩む村人は
   神に仕ふる第一の
 清き御業《みわざ》と迷信し
   心を痛め身を痛め
 無理往生の嬉し泣き
   この惨状を救はむと
 天《あめ》の真浦《まうら》の宣伝使
   松鷹彦《まつたかひこ》が賤《しづ》の家《や》に
 長らく足を留《とど》めつつ
   朝な夕なに神の道
 うまらに委曲《つばら》に説きつれど
   迷ひ切ったる里人の
 肯《うけご》ふこととならずして
   迷ひに迷ふ憫《あは》れさよ。

 春はやうやく深く、菜種の花もすげなく散りて青い莢《さや》の針をいただき、大根
の花遅ればせながら白く咲いてゐる。一方は大川、一方は田圃《たんぼ》で挟まれた川
堤《かはづつみ》の松鷹彦の茅屋《ばうをく》さして入《い》り来たる四五人の男女、
甲『ハイ御免なさいませ』
松鷹彦『ヤアお前は留公《とめこう》か。大勢伴れで血相変へてどこへ行くのだ』
留公『イヤどこへも行かぬ。当家へ村人の代表者として、われわれ五人がやって来たの
だ。今日はしっかりと聞いて貰ひませう。お前ら夫婦の身の上に関する大問題だから』
松鷹彦『大問題とはソラ何だ。また水の中で河童が屁を放《ひ》ったやうなことを針小
棒大に言って来たのだらう』
 留公は肩を張り、腕を捲《まく》り捩ぢ鉢巻をしながら、半分ばかり逃げ腰になって、
留公『オイお前達、道をサッと開《あ》けておけよ。まさかの時に邪魔になると困るか
ら』
松鷹彦『なんだ貴様は肩をいからし、腕をまくり、よう気張ったものだなア。今からそ
れだけ力一杯出して気張って居ると、力の原料が欠乏するぞ。先づじっくりせぬかい』
 留公《とめこう》は少し肩の角《かど》を削り、手持ち無沙汰にそっと捲った腕を隠
す。
松鷹彦『なんだその鉢巻は。他人《ひと》の家《うち》へ出て来るのに、あまり無作法
ぢゃないか。親の仇敵《かたき》にでも出会ったやうな勢ひだなア』
留公『親の仇敵《かたき》どころかい。大自在天《だいじざいてん》大国彦《おほくに
ひこ》の神様の、最も大切な仇敵《かたき》をお前の家《うち》に匿《かく》まうて居
るでないか。そいつを一つふん縛って帰り、友彦の宣伝使の御前《おんまへ》に曳き据
ゑて、相当の処置をつけるのだ。サア爺《ぢい》、もうかうなった以上は隠しても駄目
だ、キリキリと宣伝使をおっ放《ぽ》り出してわれわれに渡すのだよ。ゴテゴテ吐《ぬ
か》すと村中が貴様の信用を買はないぞ。ボイコットを始めるが、それでもいいか。さ
うすれば、武志《たけし》の宮の宮司《みやづかさ》は、足袋屋《たびや》の看板足上
がり、鼻の下の大旱魃、大恐慌だ。悪いことは言はないからさっさと渡してくれ。老爺
《おやぢ》の身に取って実に大切な場合ぢゃぞ。焦頭爛額《せうとうらんがく》の急場
と言ふのは今のことだ。サア早く神妙に宣伝使をわれわれに渡したがよからう。里人の
代表者留公の言葉に二言はないぞ。覚悟を定《き》めて返答しろ』
松鷹彦『何事かと思へばそんなことかい。ベラボウ教のドモ彦だな。やっぱりあいつは
いつまでも頑張って居るのかい。遠の昔に宇都山《うづやま》の里から消滅したはずだ
が、オイ留公、こちらには用が無いが訊《たづ》ねたいことがあれば、宣伝使は奥にチ
ャンと祭りこみてあるから、友彦と云ふ御大将《おんたいしゃう》をここへ連れて来い。
及ばずながら松鷹彦が天地の道理を説き諭し、友彦の身魂《みたま》を浄めて三五教《
あななひけう》の宣伝使|真浦《まうら》様のお伴彦《ともひこ》として使ってやるか
ら早く帰って注進致せ』
留公『なかなか老耄《おいぼれ》の癖ににはかに強くなりやがったな。オイお春、お弓、
樽公《たるこう》、捨公《すてこう》、貴様ら何を愚図々々してゐるのだ。俺と一緒に
奥へ踏んごみ、宣伝使をふん縛って帰らうぢゃないか。こんな奴がこの結構な里に来や
がって、三五教とかを説きやがるものだから、この御天道様《おてんだうさま》の色を
見よ。御機嫌が悪うて黒い雲が出て居るぢゃないか。御天道《おてんだう》さまのお気
に入《い》らぬ奴がこの里へ来ると、いつも黒い雲が出ると云ふことだ。二三日前から
人《ひと》の尾《を》峠の頂きに、真っ黒けの鍋墨《なべずみ》のやうな雲が現れたの
も、全くお前達が仕様も無い奴を宿《と》めて居るからだ。バラモン教の宣伝使友彦さ
まの御示しだぞ』
 奥の間より真浦の声として、涼しき宣伝歌の声聞こえ来たる。

『天教山《てんけうざん》に現れし
   木花姫《このはなひめ》の分霊《わけみたま》
 玉照彦《たまてるひこ》や玉照姫《たまてるひめ》の
   神の命《みこと》の朝夕に
 心を清め身を浄め
   仕へ給へる丹波《あかなみ》の
 国の真秀良場《まほらば》ただなはる
   青垣山を繞《めぐ》らせる
 真中《まなか》に立てる世継王山《よつわうざん》
   御稜威《みいづ》も高く照山《てらやま》の
 袂《たもと》にひらく神の苑《その》
   錦の宮の最聖《いときよ》き
 心の花も咲耶姫《さくやひめ》
   彦火々出見《ひこほほでみ》の二柱《ふたはしら》
 国治立《くにはるたち》の大神や
   豊国姫《とよくにひめ》の大神の
 厳《いづ》の御言《みこと》を畏《かしこ》みて
   天地にさやる曲津神
 八岐大蛇《やまたをろち》や醜狐《しこぎつね》
   バラモン教に立て籠る
 醜《しこ》の曲鬼《まがおに》言向《ことむ》けて
   この世を清め澄まさむと
 七十五声《しちじふごせい》の言霊《ことたま》を
   朝な夕なに宣り出《い》でて
 教司《をしへつかさ》を招《よ》び集《つど》へ
   言依別《ことよりわけ》を三五《あななひ》の
 神の柱とつき立てて
   錦の機《はた》の御経綸《おんしぐみ》
 開かせ給ふ常磐木《ときはぎ》の
   われは小さき者なれど
 神の恵をかうむりし
   三五教の宣伝使
 天《あめ》の真浦《まうら》の命《みこと》ぞや
   高天原《たかあまはら》を立ち出でて
 雲霧《くもきり》分けて降《くだ》り来る
   人の尾山は高くとも
 宇都山川《うづやまがは》は深くとも
   いかで及ばむ神の徳
 バラモン教の友彦が
   舌の剣に操られ
 神よりうけし生血をば
   滝の如くに流し居る
 哀れ果敢《はか》なき里人を
   諭して誠の大道《おほみち》に
 救はむための鹿島立ち
   武志《たけし》の宮に立ち寄りて
 しばし憩《やす》らふ折柄に
   宮の司《つかさ》の松鷹彦
 現れ来たりわれわれを
   これの伏家《ふせや》に伴ひて
 朝夕唱ふる太祝詞《ふとのりと》
   神の恵みもいやちこに
 五風十雨《ごふうじふう》の順序《ついで》よく
   花は梢《こずゑ》に咲き乱れ
 梅の蕾《つぼみ》はさわさわに
   枝もたわわに重なり合ひ
 見渡す限り野も山も
   色|蒼々《あをあを》と栄え行く
 神の恵みを目の当たり
   眺めながらに汝等《いましら》は
 何をうろたへ騒ぐぞよ
   一時も早く立ち帰り
 汝が親と頼み居る
   バラモン教の友彦を
 わが目の前に伴《つ》れ来たり
   天《あめ》と地《つち》とを守ります
 誠の神の御心《みこころ》を
   うまらに委曲《つばら》に説き諭し
 汝ら里人ことごとが
   眠れる眼《まなこ》を醒まさなむ
 朝日は照るとも曇るとも
   月は盈《み》つとも虧《か》くるとも
 たとへ大地は沈むとも
   わが宗門の神力《しんりき》は
 いかに強しと誇るとも
   誠一つの言霊の
 幸《さちは》ひ助くる三五《あななひ》の
   神の教《をしへ》に比ぶれば
 月に鼈《すっぽん》雲に泥
   天地の差別《けじめ》あることを
 洩らさず落とさず細やかに
   教へてくれむ里人《さとびと》よ
 神代ながらの里人よ
   この世を造りし神直日《かむなほひ》
 心も広き大直日《おほなほひ》
   ただ何事も人の世は
 直日に見直し聞き直し
   世の過ちを宣り直す
 神の教に省みて
   天地の道を誤りし
 深き罪をも差し赦し
   高天原《たかあまはら》の神国《かみぐに》の
 教《をしへ》の御子《みこ》といつまでも
   心に安きを与ふべし
 栄えの花は永久《とは》に咲く
   高天原の神の子と
 生まれ変りしその上は
   この世に恐るるものは無し
 アア惟神《かむながら》惟神《かむながら》
   御霊《みたま》幸《さち》はひましまして
 留公その他の里人を
   安きに救ひ給へかし
 アア留公よ里人よ
   友彦伴ひ早や来たれ
 天《あめ》の真浦《まうら》の神司《かむづかさ》
   襟を正して待ち暮らす
 アア惟神惟神
   御霊幸はひましませよ』

と屋外に響く竜声《りうせい》に留公始め四人の男女は、
『ヤア大変だ。頭が痛い、胸が苦しい。ひと先づこの家《や》を立ち去り、友彦の宣伝
使に注進せむ』
と大麦、小麦、豌豆《えんどまめ》、蚕豆畑《そらまめばたけ》を踏み躙《にじ》り、
周章狼狽《あわてふため》き帰り往《ゆ》く。
松鷹彦『この村は質朴な代りに理解力が無いので困る。信仰も結構だが無理解な信仰に
ああ堅くなっては、どうにもかうにも手の付け方が無い。まるで鉄をもって固めた城壁
に向かって、無手《むて》で子供が襲撃するやうなものだ。アアどうしたら彼らの目を
醒ますことが出来ようかなア。かう云ふ時に不言実行の教理を徹底的に発揮して欲しい
ものだ。広い世界にはどこかに、一人や半分くらゐ天から溢《こぼ》れて来て居りさう
なものだなア』
と、わざと奥の間に聞こえよがしに、
『ナアお竹』
と婆アに向かって話しかけたればお竹はウナヅイて、
『さうですな、随分いろいろの神様の教もあり、宣伝使も沢山ありますが、どれもこれ
も言葉の花の山吹ばっかりで、実ののった例《ためし》は無い。あれだけ近くにバラモ
ンが跋扈して居るのだから、何とかしてあの様な惨酷な教《をしへ》を根底より転覆さ
せ、せめてこの村だけなりと助けてくれる真人《しんじん》が現れさうなものだなア』
とお竹もまた爺の言葉尻について、奥の間に聞けよがしに言ってゐる。真浦はこれを聞
くや否や、奥の間の戸を、音させじとソッと開き、スタスタと宇都山《うづやま》の里
を目ざして走り行く。
 留公の離れ座敷に陣取って日夜怪気焔を吐き里人を煙に捲いてゐるバラモン教の友彦
は、松鷹彦の茅屋《ばうをく》に遣はしたる使ひの帰り来るを、今や遅しと首を長くし
て日当りのよい角窓《かくまど》から覗いてゐる。倒《こ》けつ転《まろ》びつ、ハー
ハー、スースーと息を喘《はず》ませ帰り来る留公一行の姿を見るより、友彦は、
友彦『ヤア待ち兼ねた。様子はどうだ。早く返答聞かしてくれ』
留公『イヤもう暗雲低迷、前途暗黒、収拾すべからざる形勢で御座いました。この留公
が深遠微妙の言霊によって、やうやく騒乱鎮静の曙光《しょくわう》を認めました』
友彦『アアさうか、それは大儀であったのう』
お春『モシモシ宣伝使様、全くですよ。全くは全くだが零敗《ゼロはい》の大当違《お
ほあてちが》ひ、夜食に外れた梟鳥《ふくろどり》の憫《あは》れ儚《はか》なき列を
乱した頓狂振り、実に目も当てられぬ惨状でしたワ』
留公『コラコラ女の差し出るところでない。黙って物言へ。それだから女に大事は明か
されぬと昔の聖人が云ったのだ』
友彦『一体どちらが本当だ。吉か凶か、天か地か、月か鼈《すっぽん》か、雪か炭《す
み》か』
お春『鼈《すっぽん》に炭の様なものです。爺さま、なかなかの剛情者で村中の協議の
結果を一も二もなく退け、青瓢箪のやうなヘボ宣伝使の加勢ばっかりやって居ます。さ
うして奥の間から何百人とも知れぬ大きな声を揃へて、照るとか曇るとか歌ひ居った。
その声に私達の結構な笠の台はたちまち地異天変、目は暈《ま》ふ、鼻はうづく、口は
自然に弛《ゆる》んで下顎《したあご》が乳《ちち》の辺りまで垂下《すゐか》する、
胸は早鐘《はやがね》をつく消防夫は駆け出す、纏《まとひ》はガサガサ チャンチャ
ン』
友彦『オイオイ貴様何を言ってゐるのだ。どこへ行って来たのだ』
留公『ハイちょっと小火《ぼや》があったものですから』
お春『留《とめ》さま、何をボヤボヤして居るのだ。火事ったらどこにあったのだい』
留公『エー貴様の見えない、遠い遠い神霊界に無形の火事があったのだよ。霊眼の開《
ひら》けないデモ信者の窺知し得る限りでないワイ。女だてらブカブカとこの場面に浮
き出して水をさすよりも女らしうしばらく沈艇《ちんてい》をしてゐてくれ』
友彦『アハアお前たちはフの字だな』
お春『フの字ですとも、それはそれは麩《ふ》のやうな腑抜け魂《だま》ですよ。戦況
を詳細に報告致しませうか』
留公『オイ敗軍の将は兵を語らずだ。弱虫は弱虫らしう控へて居らう』
 かく争《いかさ》ふ所へ、スタスタと現れて来た一人の男、鍬《くは》をかたげ頬被
《ほほかぶ》りをしながら、
男『留《とめ》さん、ちょっと外へ出て下さい。俺んとこの大事な赤子《あかご》を踏
み殺しやがって、どうしてくれるのだい』
留公『貴様の家に赤子があるのか。いつの間に子を産んだのだ。嬶《かかあ》も無い癖
にどうして赤子を踏まれる道理があるか』
男『あらいでか、ありゃこそ言うて来たのだ。嘘と思ふなら俺んとこの畑までやって来
い。さうしたら一目瞭然貴様もなるほどと合点がいくだらう』
留公『赤子の三つや五つ踏み殺したって、なんだい。この村は今や地異天変の最中だ。
ちっとくらゐ辛抱して作戦の用意にかからねばならぬだないか。悠々と野良へ出て仕事
をして居る場合ぢゃない。挙国一致で敵に当たらねばならぬ危急存亡の場合だぞ』
男『それでも貴重な赤子を捨ててまで馬鹿らしい、こんな戦争が出来るかい。婦人国有
論が起こって赤子を一人でも殖やさにゃならぬ時に、二十も三十も踏み殺されてたまる
ものかい』
留公『貴様|鼠《ねずみ》のやうな奴だな。沢山な赤子をどうして産んだのだい。あま
り仕様も無い種子《たね》を蒔くと、米が騰貴して国家的破産を来たさねばならぬやう
になるぞ。産児制限の問題がやかましい時だ。俺が踏み殺したのも国家のためだよ』
男『天地の大神様の御恵《みめぐ》みで、やうやうと芽をふき、葉も出来、花もちょっ
と咲きかけたとこだ。それを貴様が三五教の宣伝歌に驚き慌てて、広い道路《みち》が
あるのに俺んとこの芋畑《いもばたけ》を通りやがって、三度芋《さんどいも》の赤子
をすっかり踏割ってしまひやがった』
留公『何を吐《ぬか》しやがるのだい。俺はまた人間の赤子だと早合点して、いささか
同情の涙にくれて居ったのだ。貴様の芋畑を通ったものは俺ばかりぢゃないぞ、五人も
居るのだから、そりゃ大方人違ひだらう』
男『馬鹿言ふな、足型でよく分って居る。六本も指のある奴は、この村には貴様一人よ
り無いのだ。指の型が証拠だ。モシモシ バラモン教の先生、あんなことをしても神様
は許されますか。私はいつも貴方の御話を聞いてゐますが、畔放《あはな》ちの罪と云
ふことは大変な重い罪だ。そんなことを致したものは直ちにバラモン教を破門するとお
っしゃいましたなア』
友彦『それはいつも言うて居る通りだ。オイ留公、お前は今日限り破門する。しかしな
がら明日はまた明日のことだ。ともかく教《をしへ》が許さぬからこの場を立ち去った
がよからう』
留公『エーおきやがれ、今まで先生々々と崇めてやれば、いい気になりやがって、なん
だい芋種子《いもだね》の二十や三十踏み躙《にじ》ったと言って、それがそれほど悪
いのか。芋と人間とどちらが貴《たっと》い、芋よりも安く見られるのなら、俺もこち
らから破門だ。その代りにタッタ今頭の痛い、胸の苦しい宣伝歌を謡って、天《あめ》
の真浦《まうら》とか云ふ偉い生神様《いきがみさま》がやって来るから、その時に犬
突這《いぬつくば》ひになって、ベソをかかぬやうに用心せい。これが俺の別れのお土
産だ。オイお春、貴様もよい加減に目を醒ませ。俺はこれから三五教の宣伝使に御味方
《おみかた》するのだ』
と言ひ捨て、一目散に駆け出した。
(大正11年5月12日 旧4月16日 外山豊二録)
--------------------
(748)に続く
http://onisavulo.web.fc2.com/
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る