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2009/02/19

霊界物語をメールで配信!(741)

霊界物語をメールで配信!第19巻(741)
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■第15章 山神の滝〔660〕 ■
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 松姫《まつひめ》は来勿止神《くなどめのかみ》に導かれ、門の傍《かたは》らの細
《ささ》やけき二間《ふたま》造りの室《へや》に案内された。
来勿止神『この暗夜《あんや》に女の身としてこの神山《しんざん》へ御参拝なされま
すについては、何か深い理由《わけ》がございませう。私はこの関所を守る役目として
一応お尋ねしておく必要がございますから、どうぞ包まず隠さず事情を述べて下さい』
松姫『お恥ずかしいことで御座いますが、私は今まで大変な取り違ひを致して居りまし
たものでございます。ウラナイ教の分社《でやしろ》高城山《たかしろやま》の麓の館
において、三五教《あななひけう》に対抗し、素盞嗚大神《すさのをのおほかみ》様の
御邪魔ばかり致して来ました罪の深い女でございます。私の師匠の高姫《たかひめ》、
黒姫《くろひめ》と云ふ方が大変に素盞嗚尊様に反対の教《をしへ》をなさったので、
私はそれを真に受け、どこまでも天下国家のためにウラナイ教を拡張し、素盞嗚尊の一
派|言依別《ことよりわけ》、八島主神《やしまぬしのかみ》様の主管せらるる三五教
を根底から打ち壊す決心をもって、昼夜の活動を続けて来たものでございますが、素盞
嗚尊様はわれわれ凡人《ただびと》の考へて居るやうな方ではなく、大慈大悲の世界の
贖主《あがなひぬし》であるといふことを、第一に高姫様が合点遊ばし、立っても坐《
ゐ》ても居られないので、黒姫様と御相談の上私の方へも詳細な手紙が参りました。つ
いては高姫、黒姫|御二方《おふたかた》の今までの罪を許して頂かねばなりませぬの
で、弟子としての私も立っても坐ても居られませず、何か一つの荒修行を致しまして、
功名手柄を顕はし、それを御土産に三五教へ参り、師匠や自分の罪を赦して頂きたいば
っかりに、高城山《たかしろやま》の館を振り捨てて一人とぼとぼとこの霊山《れいざ
ん》に修行がてら、玉照彦《たまてるひこ》様をどうかして御迎へ申し、これを土産に
三五教へ帰るつもりで参ったのでございます』
来勿止神『アアさうでせう。私もうすうす言照姫《ことてるひめ》様より承《うけたま
は》って居りました。しかしながら貴女《あなた》は余程御改心が出来て居るやうだが、
未だお腹《はら》の中に副守護神が沢山に潜伏して居りますから、このまま御出《おい
》でになっても玉照彦様が御承知下さいますまい。この先に山の神の滝がございますか
ら、そこで七日七夜《なぬかななや》荒行をなさって副守護神を追ひ出し、至粋至純の
本心に復帰《たちかへ》り水晶玉に磨き上げた上、御出でにならなくては駄目ですよ』
松姫『いかにも左様でございませう。どうかいかなる荒行でも厭《いと》ひませぬ、ど
うぞ御命じ下さいませ』
来勿止神『ここの修行は大変に辛いですが、貴女それが忍《こば》り切れますか』
松姫『何ほど辛《つら》くても構ひませぬ。たとへ生命《いのち》が亡くなっても、御
師匠様の罪が消えさへすれば、それで満足致します』
来勿止神『アアそれは感心な御心がけだ。それならこれから時を移さず、山の神の滝に
於いて修行をなされ、神の道に断飲断食は無けれども、貴女は自分の罪及び、御師匠様
の罪、その他部下一般の罪の贖《あがな》ひのために、七日七夜《なぬかななや》断飲
断食をなし、その上に荒行をせなくては本当に罪は消えませぬぞ』
松姫『何分よろしく御願ひ致します』
来勿止神『勝《かつ》、竹の両人、ちょっとここへ出ておいで』
 言下に二人はこの場に現れ、
勝公『何用でございます』
来勿止神『別にほかのことではないが、この松姫様が山の神の滝で、七日七夜の荒行を
なさるのだから、お前は十分世話を代《かは》る代《がは》るして上げてくれ。荒行の
間は決してこの方に同情したり、憫《あはれ》みをかけてはいけませぬぞ。能《あた》
う限りの虐待をするのだ。さうでなければ神様へ対し重ね重ね御無礼御気障り、到底い
つまでかかっても罪は消滅するものではないから、松姫様を助けたいと思ふなら、十分
厳しき行《ぎゃう》をさしてあげてくれなくてはなりませぬ』
勝公『ハイ畏《かしこ》まりました。何分門番も勤めねばなりませぬから、竹さんと私
とが代る代る世話をします』
来勿止神『アアそうだ。若いものをよく監督して、落度の無い様に十分の荒行をさせ、
立派な人間に研いて上げてくれ』
 二人は一礼し、
『サア松姫様、早速ながらこれから滝壺へ参りませう。いづれ大きな灸《やいと》を据
ゑられると随分熱うて辛いものだが、そのために大病が全快した時の愉快といふものは、
口で言ふやうなことでないと同様に、お前さまもこれから私が大きな灸《やいと》を据
ゑます。しかしながら決して憎んでするのぢゃないから、悪く思うて下さらぬ様に頼み
ますぜ』
松姫『罪重き妾《わたし》、どんな辛い行でも甘んじて致します。どうぞよろしう御願
ひ申します』
勝公『よしよし、サアかう来るんだぞ、松姫の女《あま》つちよ。愚図々々してゐやが
ると頭をかち割らうか』
とにはかに言葉や行ひに大変動を現はした。
松姫『ハイ』
と答へてついて行く。
 勝《かつ》は先に立ち、竹は松姫の後ろより棒千切をもって背を打ち、臀《しり》を
突き、
竹公『ヤイ松姫、何を愚図々々してゐやがるのだ。早く歩かぬか、あた面倒臭い。日が
暮てからやって来やがって、俺達が楽に寝ようと思って居るのに、滝まで送ってやって
貴様を大切に虐待せねばならぬ。今まで慢神《まんしん》をして大神様に敵対《てきと
》うたその【みせしめ】だ』
と言ひつつ棒千切《ぼうちぎ》れをもって、松姫の後頭部をカツンを撲《なぐ》った。
松姫は痛さを堪《こら》へながら、
松姫『どうも有り難うございます。これでちっとは妾《わたし》の罪も軽くなりませう
か』
竹公『ナニ百や二百|撲《なぐ》ったって、頭をかち割ったって、貴様の罪は容易に浄
まるものか』
勝公『オイ竹公、あまりぢゃぞ』
竹公『何があまりぢゃ。貴様は来勿止神《くなどめのかみ》様の御言葉をなんと聞いた
か。松姫に親切があるのなら、十分に虐待をしてやれとおっしゃったぢゃないか』
勝公『ウーそれはさうだが、あまり役たいもないことをするものぢゃないぞ。虐待も十
分にするが好《えー》が、そこはまた、それそこぢゃ、人情を呑み込まずにな。いいか』
竹公『貴様は偉さうに先頭に立ちやがって、来勿止神《くなどめのかみ》様の御言葉を
無視し、かつまた松姫の修行を妨げ、重い罪を更に重うしようとするのか』
松姫『モシモシ御二方《おふたかた》、妾《わたし》のことについて、どうぞ口論《い
さかひ》はないやうにして下さいませ。神様に済みませぬから』
竹公『エー松姫の奴、何をゴテゴテと干渉するのだ。ふざけたことを吐《ぬか》すとモ
ー一つ御見舞だぞ。イヤこの棍棒《こんぼう》で力一パイ首が飛ぶほど、可愛がってや
らうか』
松姫『重々の御親切有り難う存じます。しかしながら御苦労をかけて済みませぬ。どう
ぞ貴方もお疲れでせうから、今日はこれくらゐでお休み下さいませ』
竹公『なにうまいことを言ふな。やっぱり頭を撲られるのが苦しいと見えるな。俺はこ
の間から何とはなしに、むかついてむかついてそこらの岩でも木でも、見つけ次第|撲
《なぐ》りたうて撲《なぐ》りたうて、腕《かいな》が唸って居ったのだ。今日は幸ひ
来勿止神《くなどめのかみ》様の御命令を遵奉して心地よいほど、貴様の頭を可愛がっ
てやるのだ。有り難く思へ。荒行と云ふものは辛いものだらう。ウラナイ教で朝から晩
まで、蛙かなんぞのやうにザブザブと水をかぶっとるのとはちっと段が違ふぞ。何ほど
辛くても生命の瀬戸際になっても、わづか七日七夜《なぬかななや》の辛抱だ。ここで
修行をやり損ねたならば、今まで大神様の御道を邪魔した、自らの罪で万劫末代根底の
国に落とされ、無限の苦しみを受けねばならぬぞ。このくらゐなことはホンの宵《よひ
》の口《くち》だ。九牛《きうぎう》の一毛《いちまう》にも如《し》かざる苦しみだ
から、勇んで修行をするのだぞ』
松姫『ハイ』
と答へたまま、頭部より流るる血潮の眼に滲《し》み込むを、袖にそっと拭《ぬぐ》ひ
つつ、しょぼしょぼと滝の方へ向かってついて行く。
勝公『サア、これが名題《なだい》の山神の滝だ。ちっと寒うても真裸体《まっぱだか
》になって、頭から水をかぶるのだ。ここは猿が沢山居るところだから、顔を引っ掻か
れぬやうに用心なさい。昼は大丈夫だが、夜分になると千疋猿《せんびきざる》がやっ
て来て悪戯《いたづら》をするから』
松姫『ハイ、有り難うございます』
竹公『勝公、御苦労だった。お前は門の方を守ってくれ。俺はこれから一つこの行者《
ぎゃうじゃ》を十分に可愛がってやらにゃならぬからな。それから六《ろく》と初《は
つ》とに棍棒《こんぼう》を持って、至急やって来るやうに言うてくれ』
勝公『さう沢山棍棒を持って来てどうするのだい』
竹公『きまったことだ。一本くらゐの棍棒では徹底的に可愛がってやる訳にはいかぬ。
助太刀のためだ』
勝公『しかしなア、竹公、わが身を抓《つめ》って他の痛さを知れと言ふことがあるな
ア。世界に鬼は無いといふことも、誰やらに聞いたことがあるやうに思ふ』
と、それとは無しにあまり虐待をせぬようにと、口には言はねど、その意をほのめかし
てゐる。
竹公『なに謎のやうなことを言ひやがって、貴様は松姫を大切にせいと言ふのぢゃらう、
否《いや》結局憎めといふのだらう。何事も竹の胸中に有るのだ、心配せずに早く帰れ。
さうして来勿止神《くなどめのかみ》さまに俺が力一パイ虐待して可愛がって居る実状
を、より以上に報告するのだぞ』
勝公『竹の奴が松姫の頭を七八分割り、腕《かいな》を折り、胴腹《どんばら》に風穴
をあけよったと言っておかうか』
竹公『そうだ、そこは貴様の都合にしてくれ。マアなるべく神様は小さいことはお嫌ひ
だから、言ふのなら十分大きく言ふのだな。オイ勝、ちょっと待ってくれ。二人の奴に
棍棒を持って来るように言ってくれと云うたが、こんな女一人を虐待するのに応援を頼
んだと思はれては残念だ。俺が徹底的にやっておくから、来勿止神に詳細に報告するの
だぞ』
勝公『そんなら松姫さま、しばらくの辛抱だ。どうぞ立派な身魂《みたま》になって下
さいや』
松姫『ハイ有り難うございます』
竹公『エーまた女にベシャベシャと正月言葉を使ひやがって、早く帰れ』
勝公『帰れと云はなくても誰がこんな怖ろしいところに居る奴があるか』
とトントンと帰ってゆく。
 肌を裂く如き寒風《かんぷう》は木々の梢《こずゑ》に唸りを立てて見舞うて来る。
月は皎々《かうかう》として東の山の頂きから滝壺をのぞいた。
竹公『松姫さま、御気の毒ですが、どうぞしばらく辛抱して下さい。来勿止神はなかな
か厳格な神で寸分も仮借《かしゃく》をしませぬから、私も実は満腔《まんこう》の涙
を隠して、失礼なことを致しました。しかしながら到底貴女の身体《からだ》では、こ
の荒行は続きますまい。世は呪《まじなひ》と言うて神様は、大難を小難に祭り替へて
下さるのだから、私もこれからスッパリと素裸体《すっぱだか》になって、貴女《あな
た》の行を助けてあげよう。さうすれば七日のものは三日半で済むといふ道理だ。お前
さま、頭を割られて血が出たと思ってゐるだらうが、ありゃ血ぢゃありませぬから安心
なさい。私が紅殻《べにがら》の汁を棒の先の革袋に括《くく》りつけて撲《なぐ》っ
たのですよ。血と見えたのは袋の紅殻《べにがら》だ。撲られた割には痛くはあります
まいがな』
松姫『ハイ、さうでございました。別にどこも痛んで居りませぬ。こんなことで神様の
御意に召すやうな荒行が出来ませうかな』
竹公『出来ますとも。神様は形だけをすれば赦《ゆる》して下さいます。可愛い世界の
氏子に何を好んで辛い目をさせなさいませう。貴女《あなた》が生命《いのち》がけの
荒行をして、御詫をしようと決心なさったその心が、既に貴方の罪を赦して居ります。
ただ今の貴女は最早ちっとも罪は無いのですよ。本当の生まれ赤児の心ですワ。しかし
ながらあまり気分のよい滝ですから、清めた上に浄めてお出でになったらよろしからう。
しかし来勿止神《くなどめのかみ》は、ああ見えても実際は閻魔さまの化身ですから、
なかなか賞罰を厳重になさるのです。今帰った勝公だって本当に優しい、慈悲深い人間
です。しかしながらあいつは馬鹿正直ですから私が本当に貴女を虐待したのだと思って
心配をして居るのです』
松姫『アアさうでございますか。なんとも御礼の申しやうは御座いませぬ。何分よろし
う御指導を願ひます』
 かくして二三日経って、四日目の朝になった。
松姫『なんと荘厳な景色《けいしょく》ですな。日輪様がこの滝に輝き遊ばして七色の
虹を御描き遊ばし、得も言はれぬ微妙な鳥の声、常磐木《ときはぎ》の色、まるで天国
の様ぢゃありませぬか』
竹公『さうですとも、貴女の心が清まったので宇宙一切が荘厳雄大に見え、環境すべて
楽園と化したのですよ』
松姫『高城山《たかしろやま》も随分景色に富んだところですが、到底比べものにはな
りませぬワ』
竹公『それは貴女のお心が曇ってゐたからですよ。今度見直して御覧、この景色よりも
層一層立派です』
 かく話す時しも勝公は莞爾々々《にこにこ》として馳《は》せ来たり、
勝公『アア松姫さん、竹さん、御苦労だった。来勿止神様から今日は行の中途《なかば
》だけれど、モウ修行が済んだからすぐさま御山《おやま》へ参詣《まゐ》ってよろし
いとの御命令が下りました。お悦びなさいませ』
松姫『それは何より有り難うございます』
と滝壺に向かひ、感謝の祝詞を奏上し終って三人打ち連れ立って、来勿止神の庵《いほ
り》に向かって帰りゆく。
竹公『神様、おかげで無事に松姫様の御修行が終りました』
松姫『来勿止神様、いろいろと厚き広き思召《おぼしめし》によりまして、汚い身魂《
みたま》を洗って頂きました』
来勿止神『アアそうだったか、結構々々、モウそれでどこへ出しても立派なものだ。お
前さんの修行のおかげで玉照彦様のお迎へも出来ませう。お師匠様の罪もすっかり赦さ
れませう、よう辛い行をなさいました。アア竹公、お前も大変な心配り、気遣ひであっ
たな。わしの心を知って居るのはお前ばっかりだ』
と嬉し涙を袖にそっと拭ふ。しばらくは沈黙の幕が下りた。このとき門前に慌《あはた
だ》しく駆け来たる四人の男、
男『モシモシこの門開けて下さいませ』
 勝《かつ》は立ち上がり大石門をギーと左右に開けた。四人の姿を見て勝は驚き、
勝公『ヤアお前はこの間やって来た不届者、バラモン教の谷丸《たにまる》、鬼丸《お
にまる》の両人、また二人も味方を殖やして来居ったのだな。玉照彦様だと思って大き
な岩石を大事さうに抱へて帰り、途中で気がついてまたもや二度目のお迎ひに来居った
のだらう。モウモウ余人は知らず貴様に限って、この門を通過さすことは出来ないと来
勿止神《くなどめのかみ》様の厳命だ』
 谷丸、鬼丸は大地にペタッと坐り、涙を流しながら、
谷、鬼『モーシ門番様、今日の谷丸、鬼丸は先日の両人とは違ひます。どうぞ御安心下
さいませ』
勝公『違うと云ったってお前の容貌と云ひ、姿と云ひ、どこに一つ変ったとこがないぢ
ゃないか』
谷、鬼『ハイ形の上はちっとも変って居りませぬが、私の心は天地の相違に変りました』
勝公『いよいよもって怪《け》しからぬ奴だ。皮はいつでも変るぞよ。霊魂《みたま》
はなかなか変らぬぞよと神様が教へてござる。それに何ぞや、心が変りましたとはます
ます合点のゆかぬ奴だ』
谷、鬼『そのお疑ひはごもっともでございますが、今までの取り違ひ、慢神《まんしん
》の雲霧《くもきり》が晴れまして、すつぱりと青天白日の様な魂に生まれ変りました。
何ほど人間が利巧や智慧をだして焦慮《あせ》ってみた所で駄目だ。神様のお許しない
ことは九分九厘で掌《てのひら》が覆《かへ》ると云ふことをつくづくと悟らして頂き
ました。アーア心ほど怖ろしいものは御座いませぬ。今まで私は三五教《あななひけう
》や、ウラル教、ウラナイ教が敵《かたき》ぢゃと思って、一生懸命にその敵を征服し
たいと憂身《うきみ》を窶《やつ》し、大活動を続けて居ました。然るに豈《あに》図
らむや、その大悪魔の敵は私らの心の中にみんな潜んで居りました。こうおかげを頂い
た以上は、天ケ下《あめがした》に敵も無ければ、他人も無い、鬼も大蛇《をろち》も
何もありませぬ。われわれは松姫と云ふウラナイ教の宣伝使に対し、非常な暴虐を加へ、
大方半死になるとこまで打擲《ちゃうちゃく》を致しましたことを、今更ながら悔いま
して、立っても坐ても居堪まらず、四人のものが、どうぞして松姫様の所在《ありか》
を尋ね御詫《おわび》をせなくてはならないと思うて、そこらを探すうち、道で会うた
杣人《そまびと》に聞いて見れば、三四日以前の暮れ方に霊山《れいざん》の方に向か
って、一人の女が上がったと云ふことを聞き、これは正《まさ》しく松姫様に間違ひあ
るまいと、飛び立つばかり悦んで四人が打ち揃ひ御目《おんめ》にかかって御詫をしよ
うと出て来たのです。どうぞここを通して下さいませ。また先だっては貴方がたに御無
礼を致しましたその罪も御詫せなくてはなりませぬ。何事も過去のことは水に流して、
われわれの過ちをお赦し下さいますやうに』
勝公『さてもさても妙なことが出来たものだわい。変り易いは秋冬《しうとう》の空と
聞いてゐるが、こりゃまた大変の地異天変が起こったものだ。ちょっと皆さま待って下
さい。松姫様もまだここにゐられますから、伺《うかが》った上で会はせませう』
と門内に影を隠しける。
(大正11年5月9日 旧4月13日 外山豊二録)
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(742)に続く
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