霊界物語をメールで配信!(675)
霊界物語をメールで配信!第16巻(675)
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■第9章 法螺《ほら》の貝〔599〕 ■
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三五教《あななひけう》の宣伝使《せんでんし》
万代《よろづよ》祝ふ亀彦が
言霊《ことたま》の息にあふられて
雲を霞《かすみ》と逃げ散りし
鬼雲彦《おにくもひこ》は命|辛々《からがら》本城《ほんじゃう》へ
韋駄天《ゐだてん》走りに駆け戻り
赤白青《あかしろあを》の鬼どもを
一間《ひとま》に集めて鬼彦《おにひこ》や
鬼虎《おにとら》、石熊《いしくま》、熊鷹《くまたか》が
行方を探す大評定《だいへうぢゃう》
バラモン教の祭壇を
半ば祭ったそのままに
いやな便りを菊月《きくづき》の
苦しみもがく九月九日
何を夕べのすべもなく
半円の月は御空《みそら》に輝けど
心の空は掻き曇る
鬼に責められ村雲に
包まれきった鬼雲が
心のうちぞ哀れなる。
鬼雲彦は奥の一間《ひとま》を開放し、上段に胡坐《あぐら》をかき、象牙のや
うな角《つの》をニュウと立て、鰐口《わにぐち》を開《ひら》いて一同に向ひ、
『今日は実に目出度き菊見《きくみ》の宴《えん》、バラモン教が祭典日に犠牲《
いけにへ》を奉《たてまつ》らむと、神饌《しんせん》の蒐集《しうしふ》に遣は
したる鬼彦以下は何処《いづこ》へ姿を隠せしぞ。今に及びて帰り来たらざるは何
か非常事の出来《しゅったい》せしならむ。かくなる上は油断は大敵なるぞ、一々
武装を整へいかなる敵の来たるとも怯《お》めず屈せず克《よ》く戦ひ克く防ぎ、
敵を千里に追ひ散らし、バラモン教が神力《しんりき》を天下に現はせよ』
と下知したるに、満座の中より現はれ出《い》でたる一寸坊子、福助のやうな不恰
好な頭《かしら》をぐらつかせながら、危なき足許ひよろひよろと鬼雲彦が前に現
はれ来たり、
一寸坊子『申し上げます、鬼彦その他の勇将は心機一転して三五教《あななひけう
》に寝返りを打ち、綾《あや》の高天《たかま》に馳上《はせのぼ》り、日ならず
大軍を率ゐて当山《たうざん》を十重二十重《とへはたへ》に取り巻き、鬼雲彦の
大将を初め一人も残さず木端微塵《こっぱみぢん》に攻めつけ、大江山《おほえや
ま》を三五教の牙城とせむとの敵の計略、一日も早くこの場を立ち去るか、但しは
味方の全軍を率ゐて聖地に向って進軍するか、時《とき》遅れては一大事、先ンず
れば人を制す、一刻も早く進退を定めさせられよ』
と述べ立つるにぞ、鬼雲彦は両手を組み青息吐息《あをいきといき》の連続的発射
に余念なかりき。時しもあれや、表門《おもてもん》にガヤガヤとさざめく人声《
ひとごゑ》、鬼雲彦は自ら立って表門に立ち現はれ、屹《きっ》と目をすゑ眺むれ
ば、こはそもいかに、鬼彦、鬼虎、熊鷹、石熊の四天王は数多《あまた》の従卒《
じゅうそつ》に網代《あじろ》の駕籠《かご》を舁《か》つがせながら意気揚々と
帰り来る。鬼雲彦はハッと胸を撫で下ろし、
『ヤア天晴れ天晴れ、汝は鬼彦、鬼虎、熊鷹、石熊、よくも無事で帰りしぞ。獲物
はどうぢゃ』
鬼彦は肩を怒らし、鼻を蠢《うごめ》かしながら、
『鬼雲彦の御大将《おんたいしゃう》に申し上げる、そもそもわれら従卒を引率し、
由良《ゆら》の港の秋山彦が館《やかた》に立ち向ひ、さしもに固き大門《おほも
ん》も右手《めて》を延ばしてウンと一声向うへ押せばガラガラガラ、力《ちから
》余って鬼彦は押した途端に門の中へ四五間ばかりドッと飛び込みし時の危《あや
ふ》さ否《いな》面白さ、続いて入《い》り来る数多の従卒、四方八方に手分けを
致して玄関、納戸《なんど》、水門《すゐもん》、物置、柴部屋《しばべや》より
鬨《とき》を作って乱れ入る、さしもに豪傑無双の素盞嗚尊《すさのをのみこと》
も国武彦《くにたけひこ》その他従ふ奴輩《やつばら》も肝を潰して右往左往に逃
げ惑うと見えしがたちまち勢力を盛り返し、千引《ちびき》の岩を手玉《てだま》
に取って大地も割れむばかりドスン、ドスンと岩石の雨、たちまち秋山彦の門前は
直径一里もあらむと云ふ岩の山を築いたり、されども少しも怯《ひる》まぬ味方の
勇士鬼彦は真っ先に立ち、さしもに固き岩山を片足揚げてポンと蹴ればガラガラガ
ラ、またもや左の足を揚げてポンと蹴った途端に秋山彦の館は中天《ちうてん》に
クルクルと舞ひ上がる。われはこれにも飽き足らず、数万貫の大岩石を手毬《てま
り》の如くヒン握り、海原《うなばら》目がけて雨や霰《あられ》と投げつくれば、
さしもに深き千尋の海も、ドボンドボンと音立てて水量《みづかさ》まさり、遂に
は大なる一つ島《じま》が現はれたり。ヤア開闢《かいびゃく》以来かかる勇士が
天にも地にもあるものか、かくまで強き豪傑が、何として鬼雲彦如き大将に盲従す
るや、われとわが身を顧《かへり》みればいやもう馬鹿らしくなりにけり。さはさ
りながら今日はバラモン教の祭典日、いかに豪傑なればとて神様には叶《かな》は
ぬ、一度礼を申し上げむとただ今立ち帰りしところで御座る』
熊鷹《くまたか》はまたもや大手を振り大地に四股《しこ》踏み鳴らしながら、
『某《それがし》は鬼彦の絶対無限の神力《しんりき》に驚きもせず、神素盞嗚尊
《かむすさのをのみこと》と渡り合ひ、千引《ちびき》の岩をもって互ひに挑み戦
へば、尊《みこと》はわれの猛威に辟易《へきえき》し、二三歩よろめきわたる隙
《すき》を窺ひ、飛鳥《ひてう》の如くつけいって有無を云はさず鉄より固き両腕
を後ろに回し踏ん縛り、網代《あじろ》の駕籠に押し込みて番卒《ばんそつ》に固
く守護させ置き、強力無双《がうりきむさう》の国武彦の所在《ありか》は何処《
いづこ》と尋ねるうち、現はれ出でたる大の男、これこそ確かに国武彦、熊鷹が力
を見せてくれむと云ふより早く拳固《げんこ》を固めて、縦横無尽に打ち振り打ち
振り、国武彦の横面《よこづら》目がけてポカンと一つ擲《なぐ》るや否や、首は
中天《ちうてん》に舞ひ上がり、日本海の彼方にザンブとばかり音を立てて水煙、
姿も水となりにけり』
鬼虎《おにとら》はまたもや四股《しこ》踏み鳴らし、
『某《それがし》は秋山彦の館に向ひ、様子いかにと眺むれば、四天王の一人鬼彦
並びに熊鷹の両人は神素盞嗚《かむすさのを》の大神や、国武彦を向うに回し、獅
子奮迅《ししふんじん》の勢ひ凄じく、丁々発止《ちゃうちゃうはっし》と秘術を
尽す上段下段、下を払へば中天《ちうてん》に飛び上がり、上を払へば根底《ねそ
こ》の国に身を潜め、天地四方を自由自在に飛び回る、電光石火の大活動目覚しか
りける次第なり。われも四天王のその一人、目に物見せむと云ふより早く、臀部《
しり》を捲《まく》ってポンと一発発射すれば雲煙《うんえん》濛々《もうもう》
として四辺《あたり》を包み、黒白《あやめ》も分らぬ真の闇、自縄自縛《じじょ
うじばく》、これゃたまらぬと臍《へそ》の下より息を固めフッとばかり吹き放て
ば、こはそもいかに、今までここに華々しく戦ひたる敵も味方も影もなく、大江山
《おほえやま》の此方《こなた》を指して駕籠《かご》も人数も何もかも宙を駆け
って散って行く、ああ有り難や有り難や、バラモン教の神力はかくまで尊きものな
るか、この勢ひをばいかして大江山の本城に立ち帰り、鬼雲彦の大将に尻を捲って
屁を放《ひ》れば、館《やかた》諸共|中天《ちうてん》に舞ひ上《のぼ》り真っ
逆様に和田の原、たちまち船と早変り、転宅《てんたく》などの面倒は要らぬ、サ
アサア一つ捲《まく》って見ようか、鬼雲彦の御大将《おんたいしゃう》』
と肩を怒《いか》らし雄猛《をたけ》びをする。四天王の一人と聞こえたる石熊《
いしくま》は、またもや腕を振り胸をドンドンと打ちながら、
『某《それがし》は当城より御大将の命令を受け、数多の木端武者《こっぱむしゃ
》を引き連れ、秋山彦の館に至って見れば、今三人が申し上げたる通りの乱痴気《
らんちき》騒ぎの真最中、人の手柄の後追ふも面白くなしと股を拡げて朝鮮国へ一
足飛《いっそくとび》に飛び行けば、神素盞嗚《かむすさのを》の大神の隠れ場所
なる慶尚道《けいしゃうだう》の壇山《だんざん》に某《それがし》が片足を踏み
込み館も何も滅茶苦茶、留守居の神はこれに恐れて雲を霞と逃げ散れば、一歩|跨
《また》げてウブスナ山脈の斎苑《いそ》の宮居《みやゐ》を足にかけ、コーカス
山も蹂躙《ふみにじ》り、背伸びをすれば、コツンと当った額《ひたひ》の痛さ、
よくよく見れば天に輝く大太陽《だいたいやう》、これ調法と懐中《ふところ》に
無理に捻ぢ込み帰って見れば、夢か現《うつつ》か幻か、合点の行かぬこの場の光
景、木端武者《こっぱむしゃ》らが寄り合ってわれらが行方を詮議の最中、面白か
りける次第なりけり、アハハハハ』
と法螺を吹いて、一同を煙に捲きけり。鬼雲彦は四人の顔を熟々《つくづく》眺め、
『ヤアヤア、汝ら四人狂気せしや、空々漠々《くうくうばくばく》として雲を掴む
が如き注進振り、何はともあれ網代駕籠《あじろかご》をこの場に引き据ゑよ、わ
れ一々敵の首を実見《じっけん》せむ』
鬼彦『いや、決して決して空々漠々《くうくうばくばく》ではありませぬ、いづれ
も副守護神の御詫宣、肝腎要の御本尊は既に三五教に帰順致して御座る』
『ナニ、三五教に帰順致したとな、それゃ何故《なにゆゑ》ぞ』
鬼彦『これはこれは失言で御座いました。【に】と【が】との言ひ過り、三五教
【に】帰順したのではない、三五教【が】帰順したので御座る。アハハハハ』
鬼雲彦は得意満面に溢れ、網代駕籠《あじろかご》の戸を荒々しく引き開け眺む
れば、こはそもいかに、最愛の妻の鬼雲姫《おにくもひめ》は五体ズタズタに斬り
放たれ血に塗れ、真っ裸のまま縡《こと》ぎれ居る。またもや四つの駕籠より現は
れ出でたる血塗《ちみど》ろの男女、見れば最愛のわが伜《せがれ》及び娘なり。
息子娘は数十箇所の傷を身に負ひながら、虫の泣くやうな声を絞り、
『父上様残念で御座います』
と一言残しその場にバタリと倒れ全身冷えわたり、氷の如くなりにける。月は皎々
《かうかう》と輝き初《そ》め四辺《あたり》は昼の如くに明るく、寝惚《ねとぼ
》け烏《がらす》は中天《ちうてん》に飛び狂ひ阿呆々々《あはうあはう》と鳴き
立つる。アアこの結果はいかに。
(大正11年4月14日 旧3月18日 加藤明子録)
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(676)に続く
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