2009/11/08
著作権判例速報-FX自動売買プログラムリバースエンジニアリング事件-
◆◇著作権判例速報◇◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 http://ootsuka.livedoor.biz/ 最高裁判所ウェブサイト掲載日09/11/6(謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ FX自動売買プログラムリバースエンジニアリング事件 大阪地裁平成21.10.15平成19(ワ)16747損害賠償請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091106164143.pdf *キーワード:複製、翻案、リバースエンジニアリング、権利の濫用 -------------------- ■事案 外国為替証拠金取引(FX取引)用トレーディングソフトウェア 関連のプログラム(自動売買プログラム)の複製・翻案行為 (リバースエンジニアリング)の違法性が争点となった事案です。 原告:コンピュータプログラム開発業者 被告:プログラマーら -------------------- ■結論 請求棄却 -------------------- ■争点 条文 著作権法21条、27条、民法1条3項 1 被告プログラムが頒布されたか 2 被告P3による被告プログラム作成行為の違法性 -------------------- ■判決内容 <争点> 1 被告プログラムが頒布されたか 原告は、『被告P3が原告の著作物である本件各プログラムを 無断で改変して被告プログラムを作成し,本件各プログラムに 係る原告の著作権(複製権,翻案権)を侵害し,被告P2及び 被告P4が,被告プログラムを原告の著作権を侵害する行為に よって作成されたプログラムであるとを知りながら,これを頒 布し又は頒布目的で所持したことにより原告の著作権を侵害し た(著作権法113条1項2号)と主張して,不法行為(民法 709条,719条)に基づく損害賠償』(4頁)を請求しま した。 各当事者の主張としては、各プログラムの創作性や著作者性な どが争点として挙げられていますが、裁判所は、まず被告プロ グラムが頒布されたかどうかを検討しています。 結論としては、被告らが被告プログラムを第三者に頒布した、 あるいは頒布目的でこれを所持していたと認めることはできな いと判断されています(19頁以下)。 ------------------ 2 被告P3による被告プログラム作成行為の違法性 被告プログラムは、本件プログラム2(「スイングおじゃる原 告版」)に依拠して被告P3が複製又は翻案したことが裁判所に よって認定されていますが、それでもなお被告P3のプログラム 作成行為に関する原告の主張を封することができるかどうかが 検討されています(21頁以下)。 この点について、被告らは、『被告プログラムはユーザーに頒 布する製品として作成されものではなく,開発に先立つ,研究 ・分析の途上にて一時的に作成されたものであり,原告の著作 権を侵害しない』として、リバースエンジニアリングの抗弁を 主張。 さらに、法人ではなくP3個人を被告とすることは権利の濫用に あたるとP3は主張しました。 この点について、裁判所は、 (1)FX取引でより多くの利益を獲得できるプログラムを作成す るため、各トレードごとの成績を個別に検証し、適切なパラ メータ設定を探ることのみを被告プログラムの作成目的とし ている (2)本件プログラム2の作成経緯 (3)被告プログラムが第三者に開示も頒布もされていない これらの事情を総合すれば、被告の複製・翻案行為のみを理由 として原告が著作権侵害を主張し、損害賠償を請求することは 権利の濫用(民法1条3項)にあたる。 として、結論としては、原告の請求を容れませんでした。 -------------------- ■コメント 被告らによるプログラムの複製・翻案行為について、原告の著 作権の行使(損害賠償請求)を権利の濫用(民法1条3項)とし て許さなかった事例です。被告によるリバースエンジニアリン グの抗弁が認められた結果となりました。 著作権法にフェアユース規定があればそれによることができた かもしれませんが、民法の一般規定である権利濫用規定(民法 1条3項)で処理されています。 なお、2009年著作権法改正(2010年1月1日施行)では、リバー スエンジニアリング適法化のための個別規定は盛り込まれませ んでした。 -------------------- ■過去のブログ記事 リバースエンジニアリングが係わる事案について、 「Addetto事件」東京地裁平成18.2.10平成16(ワ)14468参照。 リバースエンジニアリング著作権侵害事件(2006年2月13日記事) http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50339531.html -------------------- ■参考文献 中山信弘『ソフトウェアの法的保護(新版)』(1988)127頁以下 同 『著作権法』(2007)104頁以下 作花文雄『著作権法講座第2版』(2008)420頁以下、446頁以下 -------------------- ■参考判例 MS対秀和システム社事件 東京地裁昭和62.1.30昭和57(ワ)14001判決PDF http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/0BC29D652757F8DC49256A76002F8AEF.pdf -------------------- ■参考資料 (平成20年8月20日)文化庁文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)議事録 「リバース・エンジニアリングに係る法的課題についての論点」(資料1)参照 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_07/gijiroku.html (平成21年1月16日)文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第11回)議事録 「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会平成19・20年度・報告書(案)」参照 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h20_11/gijiroku.html (平成21年8月25日)文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第4回)議事録 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/housei/h21_shiho_04/gijiyoshi.html 知的財産推進計画2008PDF 「リバース・エンジニアリングに係る法的課題を解決する」 http://www.ipr.go.jp/sokuhou/2008keikaku.pdf 知的財産推進計画2009PDF 「権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入する」 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/090624/2009keikaku.pdf ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:東京は穏やかな日曜の朝です。昨日は、世田谷246 ハーフマラソンが開催されて、うちのまわりは交通 規制。路線バスも通れなくなりました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。お一人でも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



