2009/11/10
著作権判例速報-環境童話著作権事件-
◆◇著作権判例速報◇◆ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 http://ootsuka.livedoor.biz/ 最高裁判所ウェブサイト掲載日09/11/6(謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 環境童話著作権事件 大阪地裁平成21.10.22平成19(ワ)15259著作権侵害差止等請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091106164525.pdf *キーワード 著作者、共同著作物、二次的著作物 -------------------- ■事案 原画への着色作業により制作された環境童話絵本(漫画)の 共同著作物性や二次的著作物性が争点となった事案です(否定)。 原告:イラストレーター 被告:亡小学生の両親、出版社、新聞社 -------------------- ■結論 請求棄却 -------------------- ■争点 条文 著作権法2条1項11号、12号、民法709条 1 童話絵本は原告とP4の共同著作物となるか(否定) 2 童話絵本の二次的著作物性 (否定) 3 人格権、名誉権、肖像権の侵害の有無 (否定) -------------------- ■判決内容 <争点> 1 童話絵本は原告とP4の共同著作物となるか 原画を制作して急逝した小学生P4の両親(被告P2,3)から依 頼を受けて原画への着色業務を請け負った原告イラストレー ターは、出版された童話絵本(文化社版)の共同著作物性あ るいは二次的著作物性を根拠に刊行された文化社版出版物等 の販売差止や損害賠償を請求しました。 まず、出版された童話絵本の共同著作物性については、原画 の著作者P4は既に死亡しており、P4と原告との間における共 同製作の意思の共通を認める事情は見あたらない、として裁 判所は共同著作物性を否定しています(33頁)。 ------------------ 2 童話絵本の二次的著作物性 次に、童話絵本の二次的著作物性(著作権法2条1項11号)が 争点とされています。 文化社版の出版より以前に原画の彩色版である英語版や地球 環境平和財団版(財団版)が存在したことから、文化社版の 創作性の有無について、原告の着色行為によって財団版に対 して創作性が新たに付加されたかどうかが検討されています (33頁以下)。 (1)表紙における相違点 (2)本編における相違点 (3)画材の選択により得られる効果 (4)被告P2の指示の内容 裁判所は、これら諸点について財団版と文化社版を詳細に比 較検討。 画材の選択や技法の選択(による効果)に原告の個性を感じ ることはできない、ごくありふれた表現である、被告P2は着 色作業を原告の裁量に委ねていたわけではない、などとして、 裁判所は新たな創作性の付加を否定しています。 結論として、原告の著作権、著作者人格権に基づく主張は裁 判所に認められませんでした。 ------------------ 3 人格権、名誉権、肖像権の侵害の有無 被告出版社の広告宣伝文(「ご案内」)に原告を「アシスタ ント」と記載し配布した点などが、プロのイラストレーター である原告の人格権や名誉権を侵害する、また写真の無断使 用が肖像権を侵害すると原告は主張しました。 しかし、いずれの点も裁判所に容れられていません(51頁以 下)。 -------------------- ■コメント 12歳で亡くなった坪田愛華さんの環境童話絵本「地球の秘密」。 没後、国連環境計画(UNEP)「国連グローバル500賞」受賞作品と もなったこの作品を巡って、制作に携わったイラストレーター と遺族との間で著作権紛争となってしまっています。 著作物が共同著作物(著作権法2条1項12号)となるためには、 各著作者間に一つの著作物を創作するという「共同意思」が必 要とされ、この共同意思については、主観的な共同意思を要求 する見解と外形的客観的に判断すれば足りるとする見解があり ますが(中山信弘「著作権法」(2007)167頁、田村善之「著 作権法概説第二版」(2001)370頁以下参照)、客観的判断説 (半田正夫「著作権法概説第14版」(2009)57頁以下)に立っ ても本件では後行者による創作性が否定されているので著作権 法に係わる争点についての請求棄却の結論に違いはないと考え られます。 本件では、彩色行為により著作物への新たな創作性の付与があ ったかどうか、二次的著作物性(同項11号)の成否の判断部分 が参考になるところです(江差追分事件最判H13.6.28、ポパイ ネクタイ事件最判H9.7.17参照)。 ところで、編集プロダクションの知人に判決の感想を聞くと、 「過去に新風舎の仕事で亡くなった子供の遺作の装丁とレイア ウトデザイン、未完成部分の彩色作業を担当したことがあるが、 自分の作業で著作権が生じるとは全く考えもしなかった。今回 の事案では当事者間に余程のことがあったのではないか」と。 また、工芸作家の知人も、「判決文全文を読んだが、裏の事情 は分からないが、このイラストレーターはプロという自負だけ が強い」という印象を持ったようです。 夭折した愛娘の作品で社会的に意義のある内容だから、と被告 側が「美談」のストーリー(「ご案内」参照31頁)を作ったり して書籍、カレンダー、キャラクター展開などの制作、出版、 広告宣伝で彩色担当のイラストレーターに対して配慮に欠ける 対応(判決文からは伺えない部分も含めて)があるいはあった のかもしれません。 しかしそれでも、訴訟をしてまで白黒付ける内容だったのか (本人訴訟)、書籍の二次的著作物性を主張すれば行き着くと ころ、印税の要求に繋がってしまうわけで、実際、イラストレ ーターは10万部販売された書籍の印税の半分(書籍:定価×10 万部×10%×1/2=735万円)などをこの訴訟で請求しています。 先の知人らのように制作現場の感覚からして、原告イラストレ ーターが彩色業務を受託した当初からそこまで権利・利益を意 識していたのか、どうか。 いずれにしても結果としては(控訴審の判断は残りますが)、 「アースくん」キャラクターを含め今後も愛華さんひとりの作 品(ご母堂の監修はありますが)として広く公表することがで きるので、応訴の負担はあったものの権利関係が明確になった ことはご両親にはせめてもの慰めとなりそうです。 -------------------- ■参考サイト 出版文化社ウェブサイト:地球の秘密 Secrets of The Earth http://www.shuppanbunka.com/books/3075/index.html 「アースくん」キャラクター:「地球の秘密」AIKAEye公式ページ http://www.aikaeye.com/main.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:そろそろ忘年会の季節。大学時代の恩師を囲んでの 忘年会も調整できて今からたのしみです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。お一人でも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com twitter:http://twitter.com/ootsuka ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


