2009/07/10
著作権判例速報-学位請求論文事件-
著┃作┃権┃判┃例┃速┃報┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 最新著作権判例について簡易版でお伝えします。 *事案の詳細はブログをご覧下さい。 Blog:駒沢公園行政書士事務所日記 http://ootsuka.livedoor.biz/ *この事案の裁判所ウェブサイト掲載日09/7/8 (謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 学位請求論文事件 東京地裁平成21.6.25平成19(ワ)13505著作権侵害差止等請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090708101220.pdf *キーワード:共同論文、複製権、氏名表示権、公表権 -------------------- ■事案 共同で執筆した論文の一部を無断で使用して学位請求論文を 作成したとして複製権侵害性などが争点となった事案です。 原告:大学教授 被告:大学教授 -------------------- ■結論 請求棄却 -------------------- ■争点 条文 著作権法21条、19条、18条 1 複製権侵害の成否と原告の承諾の有無 (侵害否定) 2 氏名表示権、公表権侵害の成否と原告の承諾の有無(侵害否定) -------------------- ■判決内容 <争点> 1 複製権侵害の成否と原告の承諾の有無(侵害否定) 本件原著(草稿・ディスカッションペーパー/ワーキングペ ーパー)1と2が原告と被告の共同著作物であることには争 いはありません。 これらの草稿に関する共同研究論文1、2や他の研究者との共 同研究を踏まえて被告は学位請求論文を作成し、大学から博 士号の学位を授与されていました。 こうした行為が、共同研究者である原告の本件原著に関する 著作権(複製権)を侵害しているか、本件共同研究論文の学 位請求論文での使用について原告の承諾があったのかどうか が争点となりました。 1.被告が博士論文に原告との共同研究論文を利用する ことについての原告の承諾について 裁判所は、共同研究論文の利用についての原告の承諾の有無 について、他の共同研究者の承諾状況や原被告間の関係、経 済学界における博士学位請求論文の取扱い、被告の認識など の諸事情を検討。 博士論文における共同研究論文の利用として一般に行われる 方法での利用を原告が承諾したものと推認することができる、 と判断されています(29頁以下)。 2.本件博士論文における共同研究論文の利用形態に ついて そのうえで、裁判所は本件博士論文における共同研究論文の 利用態様についてさらに具体的に検討を加えています(44頁 以下)。 この点についても、博士論文における共同研究論文の利用方 法として一般的なものであるとして原告の承諾の範囲内のも のであると判断。 結論として複製権侵害性を否定しています。 -------------------- 2 氏名表示権、公表権侵害の成否と原告の承諾の有無(侵害否定) 原告の承諾や共同研究論文の利用態様の一般性、博士論文の 取扱いから被告による本件博士論文の作成及び大学への提出 行為は、原告の本件各原著に係る著作者人格権(氏名表示権 及び公表権)を侵害するものではないと判断されています (45頁以下)。 -------------------- ■コメント 共同研究の成果となる論文の利用の際の経済学界の慣行、 研究者の承諾範囲などが争われました。共同研究者の意 思解釈、裏を返すと著作権法上の引用(32条)よりもも っと緩やかな論文取扱い慣行が経済学界に成立している かどうかが争点となった事案です。 お二人の共同研究のテーマは、「私的所有権の保護を行 う政治システムとしての国家の成立と変遷」で、共同研 究論文1(原著1)は、分析の出発点である自然状態の社 会モデルとして、「すべての人は富を同じ量だけ持つ」 と仮定し分析したもので、共同研究論文2(原著2)は、 その仮定を修正したうえで分析したものでした。 ちなみに、被告教授の博士学位請求論文のテーマは、 「正義の経済分析」(正義の実証的側面と規範的側面に 関する経済学の視点に立つ体系的な研究)というもので、 4件の共同研究の成果を踏まえた論文でした。 先行する共同執筆論文著作権侵害事件(東京地裁平成19 年1月18日判決 英語の共同論文を無断で日本語翻訳・ 出版したとして翻案権、同一性保持権侵害性が争点とな った事案)の判決文からは、お二人の関係が良く分かり ませんでしたが、お互い学部時代の同じゼミ出身、院生 在学中から親しく交流していたという関係(原告のほう が被告の1年先輩)だったことが今回の判決文から分か りました(30頁)。 なお、被告が論文を投稿した「早稲田政治経済学雑誌」 の論文等投稿規程には、学会に著作権を譲渡する規定が ありましたが、規定の内容については別訴平成19年判決 PDF22頁以下参照。 -------------------- ■過去のブログ記事 共同執筆論文著作権侵害事件(2007年1月20日記事) http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50702248.html -------------------- ■参考判例 別訴(共同執筆論文著作権侵害事件) 東京地裁平成19.1.18平成18(ワ)10367著作権侵害差止等請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070119102041.pdf -------------------- ■参考文献 林紘一郎、名和小太郎『引用する極意、引用される極意』(2009)144頁以下、181頁以下 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:昨夜は、半田正夫先生のご講演に参加しまして、 北大時代から御著書14版刊行に至る学究の過程を 身近に伺うことが出来て幸せな時間でした。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。おひとりでも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


