2009/06/11
著作権判例速報
著┃作┃権┃判┃例┃速┃報┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 最新著作権判例について簡易版でお伝えします。 *事案の詳細はブログをご覧下さい。 Blog:駒沢公園行政書士事務所日記 http://ootsuka.livedoor.biz/ *この事案の裁判所ウェブサイト掲載日09/6/8 (謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 観音像仏頭部原状回復事件 ★東京地裁平成21.5.平成19(ワ)23883著作権侵害差止等請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090608093021.pdf *キーワード:著作者の推定、著作者人格権、 死者の人格的利益の保護 -------------------- ■事案 観音像の仏頭部を無断ですげ替えて公衆の観覧に供したとして、 遺族が著作者人格権侵害などを争った事案です(一部認容)。 原告:彫刻家兼仏師 被告:寺院 仏師 -------------------- ■結論 請求一部認容 -------------------- ■争点 条文 著作権法14条、20条、25条、60条、115条、116条 1 原告の共同著作者性 (否定) 2 人格的利益保護のための原状回復等請求の可否(一部肯定) 3 遺族としての謝罪広告請求の可否 (否定) -------------------- ■判決内容 「駒込大観音」:十一面観音菩薩立像 観音像体内墨書 「大佛師 監修 D(亡父)」 「制作者 E(亡兄) F(兄) A(原告) 弟子 C(Eの弟子)」 観音像足ほぞ墨書 「監修 D(亡父)」 「制作者 E(亡兄) F(兄) A(原告) C(Eの弟子)」 ---------------------------------------- <争点> 1 原告の共同著作者性(否定) 原告は、共同著作物である観音像が無断でその頭部がすげ替えられた として、被告らに対して著作者人格権侵害等を理由として損害賠償請 求などを求めました。 ところで、観音像の体内と足ほぞに墨書で原告Aの氏名が記載されて いました。 これによって原告Aは著作権法14条(著作者の推定)によって観音像 の著作者(共同著作者)であると主張しました。 しかし、裁判所は、被告仏師の観音像の制作経緯と制作作業の内容に 関する供述などから、原告Aは観音像の仕上げ作業に何らかの関与を したものとは認めたものの、仕上げ作業は観音像の制作についての創 作的な関与にあたるものとまで認めることは困難であると判断。 結論として、著作権法14条の推定は認められず、原告Aは観音像の共 同著作者とは認められませんでした(48頁以下)。 このことから、原告A自身の著作者人格権侵害などを理由とする損害 賠償請求等は認められていません。 ---------------------------------------- 2 人格的利益保護のための原状回復等請求の可否(一部肯定) 観音像の制作に関与した原告の亡父(D)、亡兄(E)の人格的利益に ついて、原告は遺族として仏頭部の原状回復を求めました(著作権法 116条、60条、115条)。 1.亡父Dの人格的利益の保護の要否(否定) 仏師であった亡父Dについては、観音像の体内や足ほぞに「監修 D」 との亡父の雅号の墨書があり著作権法14条(著作者の推定)によって 著作者とも考えられましたが、結論的には病気などにより亡父Dは観 音像の制作に関与していたと認められず、観音像の著作者であると 認められていません(54頁以下)。 従って、原告による遺族としての亡父Dの人格的利益保護のための原 状回復等請求は認められませんでした。 -------------------- 2.亡兄Eの人格的利益の保護の要否(肯定) 原告Aの亡兄Eが観音像の著作者であることに争いがなく、亡兄Eが制作 した仏頭部部分のすげ替え行為が亡兄Eとの関係では亡兄Eの意に反す るもので、同一性保持権侵害となるべき行為(著作権法60条本文)に あたるかどうかが争点となりました。 被告寺院は、仏頭部のすげ替えは生前のEの意思に沿うものとして60条 ただし書きの「当該著作者の意を害しないと認められる場合」にあた ると反論しましたが、結論として著作者人格権侵害となるべき行為に あたると裁判所は判断しています(55頁以下)。 また、被告寺院は、仏頭部のすげ替えは著作権法20条(同一性保持権) 2項4号の「やむを得ないと認められる改変」にあたり、同一性保持権 侵害にはあたらないと反論していましたが、裁判所に容れられていま せん(58頁以下)。 結論として、著作権法115条(名誉回復等の措置)に規定される「訂正 ・・・するために適当な措置」としてE制作による仏頭部へ原状回復す ることが認められています。 なお、観音像を原状回復するまでの間、一般公衆の観覧に供すること の停止の請求までは認められていません(63頁以下)。 ---------------------------------------- 3 遺族としての謝罪広告請求の可否(否定) 亡兄Eの遺族として原告Aは新聞への謝罪広告の掲載を求めましたが、 裁判所は認めていません(64頁以下)。 -------------------- ■コメント 東京文京区の駒込の光源寺さんにある通称「駒込大観音」。もともと 境内には1697年造立の約8mの十一面観音像がありましたが、これが19 45年5月25日の東京大空襲で焼失、平成5年に6mの立像として再現され ました。 被告仏師は、原告の仏師一門の工房の弟子筋にあたり、師匠である仏 師E(原告の兄)とともに観音像の制作にも深く関与していました。 観音像の頭部を制作したのは被告仏師の師匠Eで、その師匠Eが生前、 観音像の「尊顔」が悪相で作り直す願いを持っていた(48頁)ことな どから、原告Aの反対を押し切ってまで弟子の被告仏師は仏頭部のす げ替えを断行したと思われますが、生前の師匠Eの意思がどこにあっ たのか、寺院や弟子は裁判で明らかにすることができませんでした。 いずれにしても開眼落慶法要から約10年間、信仰の対象となっていた 観音像の頭をすげ替えるという事態は、たいへんなことだったと思わ れます。寺院、お檀家さん、仏像制作工房内での人間模様、いろいろ 思いを巡らされるところです。 -------------------- ■過去のブログ記事 銅像をめぐる著作権事件について 2006年3月2日記事 ジョン万次郎銅像事件 http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50363844.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:東京も昨日梅雨入りしたようです。今朝は朝から 雨模様。気分が滅入る時期ですが、元気に(カラ 元気?)行きたいと思います。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。おひとりでも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



