2009/05/14
著作権判例速報
著┃作┃権┃判┃例┃速┃報┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 最新著作権判例について簡易版でお伝えします。 *事案の詳細はブログをご覧下さい。 Blog:駒沢公園行政書士事務所日記 http://ootsuka.livedoor.biz/ *この事案の裁判所ウェブサイト掲載日09/5/11 (謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 黒澤明監督作品格安DVD(対角川)損害賠償請求事件 東京地裁平成21.4.27平成20(ワ)6848損害賠償請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090511152740.pdf *キーワード:映画の保護期間、格安DVD、損害論 -------------------- ■事案 黒澤明監督「羅生門」「静かなる決闘」映画作品の保護期間 をめぐり映画の著作者が黒澤監督なのか映画会社であるのか が争われた事案の損害賠償請求別訴です(一部認容)。 原告:角川映画株式会社 被告:格安DVD製造販売会社 -------------------- ■結論 請求一部認容 -------------------- ■争点 条文 著作権法2条1項2号、21条、113条1項1号、旧法6条、 114条3項 1 映画の存続期間の満了時期-映画の著作者はだれか 2 原告は映画の著作権を有するか (肯定) 3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無(肯定) 4 損害の有無及びその額 (肯定) -------------------- ■判決内容 <争点> 1 映画の存続期間の満了時期-映画の著作者はだれか 1.本件各映画の著作者 「羅生門」「静かなる決闘」の著作者が監督であれば、映画 の著作権保護期間は平成48年12月31日までとなり、逆に映画 製作会社の著作名義となると平成12年までには保護期間が満 了しているので、平成19年頃の被告による本件DVD輸入行為 が保護期間内に行われたものかどうかが問題となります(15 頁以下)。 この点について、裁判所は、結論として、黒澤監督が本件映 画の監督を務め、脚本の作成に参加するなどしていることが 認められることから、本件各映画の全体的形成に創作的に寄 与している者と推認される、として少なくとも黒澤監督が本 件各映画の著作者の一人であると認めています。 -------------------- 2.本件各映画の著作名義 本件各映画には、映画を製作した旧大映の表示「大映株式會 社製作」とあったことから、旧著作権法6条(団体名義の著 作物の保護期間)の適用があるかどうかが次に問題とされて います(21頁以下)。 結論としては、「監督A」との表示があり、著作者であるA (黒澤明)の実名が表示されたものであり、創作者が判別で きない著作物ではないとして旧著作権法6条の団体名義の著 作物には該当せず、本条の適用はないと判断されています。 本件各映画の著作権の保護期間はしたがって、黒澤監督が死 亡した平成10年の翌年から起算して38年後の平成48年12月31 日までと判断されました。 ---------------------------------------- 2 原告は映画の著作権を有するか(肯定) 映画を製作した旧大映が本件各映画の公表されたころまでに 黒澤監督から本件映画の著作権を承継取得し、その後原告が これら著作権を全部取得していると認定されています(25頁 以下)。 ---------------------------------------- 3 被告の故意又は過失による侵害行為の有無(肯定) 被告が本件DVDを国内で頒布する目的でもって輸入した行為は、 原告の著作権を侵害する行為とみなされ(著作権法113条1項1 号)、過失についても、これが肯定されています(26頁以下)。 ---------------------------------------- 4 損害の有無及びその額(肯定) 1.損害の有無 被告が本件DVDを輸入する行為は、原告の著作権を侵害するも のとみなされる(著作権法113条1項1号)から、原告には使用 料相当額の損害が生じていると判断されています(31頁)。 -------------------- 2.損害の額 原告は、原告DVDの標準小売価格4700円(/1本)、4万本輸入、 使用料率20%の合計3760万円を損害額として主張しました (著作権法114条3項)。 しかし、裁判所は被告の本件DVD1本あたりの使用料相当額と して、本件DVD小売価格の20%に相当する額とされ、2000本 の輸入販売(小売価格1800円/1本)とされたことから、合計 72万円が損害額と認定するにとどまっています(31頁)。 -------------------- ■コメント すでに角川映画は、被告に対して著作権侵害差止請求控訴事 件で勝訴していて(知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10082)、 本訴は損害賠償請求訴訟となっています。 著作権法114条(損害の額の推定等)の規定は、単純化すると 1項:侵害者の譲渡数量×著作権者等の利益の額 2項:侵害者の譲渡数量×侵害者の利益額 3項:侵害者の譲渡数量×使用料相当額 と表現されますが(「著作権法コンメンタール3」439頁参照)、 114条3項の判断にあたって格安DVDのように正規品と販売価格 に差がある商品での基礎価格をどうするか、使用料率をどう 算定するかの点が実務上参考となります。 この点、チャップリンの「モダンタイムス」など9作品の格安 DVD販売が問題となった後掲チャップリン事件では、裁判所は 使用料相当額についてライセンス料率25%、被告DVDの販売価 格500円を基礎に算定しています。 なお、後掲の対松竹差止請求事件控訴審では、損害賠償請求 附帯控訴部分で著作権法114条1項により損害額の算定が行わ れています。 -------------------- ■過去のブログ記事 2008年3月8日記事 チャップリン事件(控訴審) http://ootsuka.livedoor.biz/archives/51479463.html 2008年8月2日記事 対角川事件(控訴審) http://ootsuka.livedoor.biz/archives/51642851.html 2009年2月19日記事 対松竹事件(控訴審) http://ootsuka.livedoor.biz/archives/51803496.html -------------------- ■参考判例 同一被告が関係する事案 チャップリン事件 東京地裁平成19.8.29平成18(ワ)15552 知財高裁平成20.2.28平成19(ネ)10073 対角川差止請求事件 東京地裁平成19.9.14平成19(ワ)11535 知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10082 対東宝差止請求事件 東京地裁平成19.9.14平成19(ワ)8141 知財高裁平成20.7.30平成19(ネ)10083 対松竹差止請求事件 東京地裁平成20.1.28平成19(ワ)16775 知財高裁平成21.1.29平成20(ネ)10025等 -------------------- ■参考文献 寒河江孝允(監)永野周志・矢野敏樹(編) 『知的財産権訴訟における損害賠償額算定の実務』 (2008)179頁以下 吉田正夫、狩野雅澄「旧著作権法下の映画著作物の 著作者の意義と保護期間-チャップリン映画DVD無断 複製頒布事件及び黒澤映画DVD無断頒布事件の知財 高裁判決-」『コピライト』(2009)573号30頁以下 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:東京はとてもすがすがしい日和となっています。 かなり乾燥していますが、豚インフルもあるので マスクなどに気をつけたいところです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。おひとりでも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


