2009/05/08
著作権判例速報
著┃作┃権┃判┃例┃速┃報┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 最新著作権判例について簡易版でお伝えします。 *事案の詳細はブログをご覧下さい。 Blog:駒沢公園行政書士事務所日記 http://ootsuka.livedoor.biz/ *この事案の裁判所ウェブサイト掲載日09/5/7 (謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 中国ドラマ「苦菜花」スカパー事件 東京地裁平成21.4.30平成20(ワ)3036損害賠償等請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090507160046.pdf *キーワード:準拠法、公衆送信権、ライセンス契約、 著作権譲渡契約、対抗要件 -------------------- ■事案 テレビ番組の著作権の移転に関する対抗要件の要否や通信衛星 放送会社の注意義務違反性が争点となった事案です(一部認容)。 原告:放送事業者(中国法人) 被告:衛星テレビ専門会社 スカパーJSAT株式会社 -------------------- ■結論 請求一部認容 -------------------- ■争点 条文 著作権法23条、77条 1 準拠法 2 著作権譲渡の有無 (肯定) 3 対抗要件欠缺の抗弁の成否(否定) 4 被告スカパーの過失の有無(否定) 5 損害論 (肯定) 6 差止めの要否 (肯定) -------------------- ■判決内容 <経緯> H14 北京華録がドラマ「苦菜花」(本件ドラマ)を製作 H14.4.30 被告衛星テレビ専門会社と被告スカパーが業務委託契約締結 H16.7 ドラマ「苦菜花」が中国で公開される H16.9.30 被告会社と湖南影視が番組提携契約締結 H16.10.26北京華録が湖南影視と放送権譲渡契約締結 H17.3.25 北京華録と原告がテレビ番組著作権譲渡契約締結 H17.5.3 被告スカパーで本件ドラマ全20話を各2回放送(11日間) H17.8.4 北京華録が中国国家版権局から著作権登記証書交付 H17.8.30 原告が仮処分命令申立て H17.9 原告が被告スカパーに通知書をFAX H17.11.1 仮処分決定 H20.2.6 本訴提起 ------------------- <争点> 1 準拠法 原告が中国法人であること、中国製テレビドラマを巡る紛争で ある点で渉外的要素を含むものであることから、まず準拠法の 決定がされています(22頁以下)。 ---------------------------------------- 2 著作権譲渡の有無(肯定) 原告とテレビ番組を製作し著作権を有していた北京華録との著 作権譲渡契約の内容について検討がされています(23頁以下)。 その上で平成17年3月25日、原告と北京華録との間で本件ドラ マを含む合計6本のドラマ作品について韓国、シンガポール、 日本及びマレーシアにおける著作権を代金50万人民元で譲渡す る旨の契約が締結されていることが認められています。 なお、中国法における「譲渡」の用語の意義などから、原告は 本件譲渡契約において本件ドラマの非独占的利用権の譲渡を受 けたにすぎないと被告は反論しましたが、容れられていません (25頁以下)。 結論として、原告が北京華録から本件ドラマの著作権の譲渡を 受けていたことが認められました。 ---------------------------------------- 3 対抗要件欠缺の抗弁の成否(否定) 本件ドラマを製作し著作権を有していた北京華録と湖南地域の 放送事業者である湖南影視との間で放送権譲渡契約が締結され ていました。 そして、被告会社は湖南影視と番組提携契約を締結していたこ とから、被告会社は本件ドラマのCS放送権を有しているとして 原告主張の本件著作権の移転につき日本における登録の欠缺に ついて正当な利益を有するものであって、著作権法77条の「第 三者」に被告会社は該当すると主張しました(30頁以下)。 しかし、北京華録と湖南影視との間で締結された放送権譲渡契 約が、本件ドラマの「湖南地域における放送権」の利用許諾契 約にすぎず日本での放送権(公衆送信権)の譲渡の合意まで含 むものではないと裁判所は認定。 被告会社は、対抗要件欠缺を主張するについて正当な利益を有 しておらず、著作権法77条「第三者」に該当しないことから、 原告は被告会社に対して本件著作権の登録なくして対抗するこ とができると判断しています。 結論として、被告会社による11日間にわたる本件ドラマ全20話 各2回のCSデジタル放送(本件放送)は、原告の本件著作権(公 衆送信権)の侵害にあたると判断されました。 ---------------------------------------- 4 被告スカパーの過失の有無(否定) CSデジタル放送サービスの一連の流れ(番組制作・編集→機械 的圧縮符号化→高次元多重化処理→衛星へアップリンク→ダウ ンリンク→各家庭での受信・視聴)のなかでの被告スカパーの 業務内容を裁判所は検討(4頁以下、34頁以下)。 スカパーの放送番組送出業務は機械的な処理であってスカパー が本件放送の主体であると解することはできない。また、運用 業務(顧客管理業務、広告宣伝業務等)を受託していたが個々 の放送番組の具体的な内容やその著作権の帰属等について十分 に知り得る立場にあったとまでいうことはできないとして、 結論として、被告スカパーは本件放送前に、本件ドラマが放送 された場合に著作権侵害となるかどうかを調査、確認すべき注 意義務を負っていたものということはできず、過失はないとさ れました。 ---------------------------------------- 5 損害論(肯定) 原告は、使用料相当額として5600万円、弁護士費用相当額とし て1120万円の合計6720万円を損害額として主張していました。 結論としては、使用料相当額として本件ドラマ1話当たり6万円 (2回放送分)、全20話の合計120万円と認定。弁護士費用相当 損害額として15万円の合計135万円を被告会社による著作権侵 害の損害額と判断しています(41頁以下)。 ---------------------------------------- 6 差止めの要否(肯定) 被告会社に対して、本件ドラマの放送の差止めの必要性が認め られています(43頁)。 -------------------- ■コメント 問題となった中国製作のテレビドラマは、抗日闘争が舞台とな ったドラマでした。 衛星放送サービスプラットホーム事業会社の著作権侵害事案に おける注意義務の有無、内容に関する判断部分が先例として重 要と考えられます。 スカパーの立ち位置としては、番組の「単なる導管的な役割」 にすぎないとして放送行為の主体性を自ら否定していますが (15頁参照)、本件被告が過去にアテネオリンピック放送で問 題を起こしていたこと(40頁参照)などからすると、スカパー が今後も従前通りのプラットホーム事業者としての取引態度で 本件被告と接すれば済むかどうかは微妙なところです。 仕事柄、中国語圏で利用する著作権契約書などにも接しますが、 日本法が準拠法の場合であっても相手先起案の場合、独特の言 い回しもあるので文言の取扱いには注意したいところです。 また、中国国家版権局版権保護センターへの日本からのアクセ スが容易になれば、中国でのビジネスや中国製コンテンツの取 扱いについて対抗要件具備の必要も今後増えてくるかもしれま せん。 -------------------- ■参考サイト ドラマ苦菜花-二十話テレビ連続ドラマ(DVD BOX7枚組) 中国語映画DVD JChere.com http://shopping.jchere.com/detail-id-7385.htm -------------------- ■参考文献 中国著作権法24条、25条(ライセンス契約、譲渡契約)について、 ・IPトレーディング・ジャパン株式会社編著 『中国知的財産管理実務ハンドブック』(2006)106頁 ・文化庁『中国における著作権侵害対策ハンドブック』(2005) PDF122頁以下参照 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/kaizokuban/pdf/china_singai_handbook.pdf ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:連休みなさまどのように過ごされたでしょうか。 陽差しが強くなって、ツツジも綺麗に咲く季節。 もうすぐ梅雨です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。おひとりでも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



