2009/04/10
著作権判例速報
著┃作┃権┃判┃例┃速┃報┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 最新著作権判例について簡易版でお伝えします。 *事案の詳細はブログをご覧下さい。 Blog:駒沢公園行政書士事務所日記 http://ootsuka.livedoor.biz/ *この事案の裁判所ウェブサイト掲載日09/4/8 (謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 読売「押し紙」著作権事件 東京地裁平成21.3.30平成20(ワ)4874著作権に基づく侵害差止請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090407180231.pdf *キーワード:創作性、著作物性、著作者性 -------------------- ■事案 新聞社の法務部員が通知した著作権侵害警告書(催告書)の 創作性が争点となった事案(否定) 原告:読売新聞西部本社法務室長(個人) 被告:フリージャーナリスト -------------------- ■結論 請求棄却 -------------------- ■争点 条文 著作権法2条1項1号、18条 1 本件催告書を作成したのは原告か(否定) 2 本件催告書は創作的な表現といえるか(否定) -------------------- ■判決内容 <経緯> H19.12.19 原告が別件訴訟の代理人弁護士へ回答書をFAX送信 H19.12.21 原告が被告サイトに回答書が掲載されているのを発見 原告が被告に催告書をメール送信 ---------------------------------------- <争点> 1 本件催告書を作成したのは原告か(否定) 原告が別件(押し紙問題:新聞社から販売店に配達されたが、 販売されていない新聞紙の問題)で第三者にFAXした回答書を 被告が無断で被告サイトに掲載したとして、原告は被告に対 して回答書の著作権に基づいて本件催告書(著作権侵害警告 通知書)をメールに添付して送信しました。 この催告書の内容は、 1.中止を求める被告の行為の指摘 2.原告が有する権利の主張 3.上記の被告の行為が原告の上記権利を侵害する旨の主張 4.上記の被告の行為の中止の要求 5.同要求に従わなかった場合、法的手段に訴えることの通告 という構成のものでした(32頁、34頁参照)。 催告書の作成にあたり、原告室長は弁護士(本件訴訟の代理 人弁護士)に相談していたことから、そもそもこの催告書の 作成者が室長なのか、弁護士なのかがまず争点となっていま す。 結論としては、本件催告書は原告室長が作成したものではな いとされています(27頁以下)。 ---------------------------------------- 2 本件催告書は創作的な表現といえるか(否定) 争点1で原告室長には本件催告書について著作者性がないと 判断されましたが、仮に原告が本件催告書の作成者であると した場合に、本件催告書に創作性(著作権法2条1項1号)が あるかどうかがさらに判断されています。 裁判所は、内容がありふれた表現であり、原告の個性が現れ ていないとして、結論的には本件催告書の創作性を否定して います(33頁以下)。 以上から、原告の著作権に基づく差止請求は棄却されていま す。 -------------------- ■コメント 法務部室長の肩書きで相手方に通知された催告書なら、業務 上の書類ですから、そうした催告書にも著作権があるという なら、職務著作物(法人が著作者・著作権者 著作権法15条 )となりそうです(17頁参照)。 わざわざ、室長個人の著作物として著作権侵害性を論難する のは、新聞社本体を原告とする裁判にはしたくなかったとい う配慮からでしょうか、新聞社の法務部員の対応としてよく 分からない事案処理です。 もっと早い段階から、室長がグループ本社の法務部に相談し ていれば違った対応になったかもしれません(後掲被告サイ ト 2月16日記事参照)。 ところで、契約書草案や法律関連の書籍について、その著作 物性が否定された事例が過去にありますが(後掲判例参照)、 実務的なもの、ひな型的な書類の著作権上の保護の要否につ いては、それらの独占による不当な弊害の防止という実質的 理由が働きます(中山後掲書参照)。 今回、東京地裁民事29部清水コートが催告書の著作物性を否 定した判断は重要で、紛争当事者間でやりとりされる催告書 の類に著作物性が認めらない(著作権法上の保護は与えない) との裁判所の判断は、もちろん、営業誹謗行為(不正競争防 止法2条1項14号)や名誉毀損、プライバシー権侵害は別論で すが、紛争事案がネットで公表される機会が増えることを後 押しするものとなります。 本件は控訴されたようなので知財高裁による催告書の著作物 性の争点部分にかかわる判断が待たれます。 -------------------- ■参考判例 ・土地売買に関する契約書案の著作物性が否定された 事案について、 「土地売買契約書事件」 東京地裁昭和61.5.14(Netlaw) http://www.netlaw.co.jp/hanrei/tochibaibaikeiyakusho_620514.html ・債権回収や契約、手形小切手などの法律問題に関して 一般人向けに解説した書籍の表現の著作物性が否定され た事案について、 「法律書籍著作権侵害事件」 知財高裁平成18.3.15 http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50398290.html ・手紙の内容が単なる時候のあいさつ等の日常の通信文 の範囲にとどまるものではないとして著作物性が肯定さ れた事案について、 「「三島由紀夫−剣と寒紅」事件」 東京高裁平成12.5.23 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/FED8B2AEA36490D149256A77000EC41E.pdf (原審)東京地裁平成11.10.18 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/AB02DA8071BAEEB649256A7700082C72.pdf -------------------- ■参考文献 中山信弘「著作権法」(2007)40頁以下 独自の船荷証券の用紙の著作物性が否定された事案 (東京地判昭和40.8.31)について、 耳野皓三「船荷証券の用紙」『著作権判例百選』(1987)52頁以下 -------------------- ■参考サイト 被告サイト:新聞販売黒書 http://www.geocities.jp/shinbunhanbai/ (本件回答書については、3月24日付記事参照) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:桜が散り始めました。はらはらと落ちてゆくさまを 見ると西行の歌を思い出します。 ねがはくは花のしたにて春しなむそのきさらぎの望月の比 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。おひとりでも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


