2009/03/30
著作権判例速報[まぐまぐ]
著┃作┃権┃判┃例┃速┃報┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 最新著作権判例について簡易版でお伝えします。 *事案の詳細はブログをご覧下さい。 Blog:駒沢公園行政書士事務所日記 http://ootsuka.livedoor.biz/ *この事案の裁判所ウェブサイト掲載日09/3/27 (謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「マンション読本」イラストキャラクター事件 大阪地裁平成21.3.26平成19(ワ)7877著作権侵害差止等請求事件 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090327103042.pdf *キーワード:依拠性、複製権、翻案権、キャラクター -------------------- ■事案 マンション広告宣伝物に無断でイラストキャラクターが 使われたかどうかが争われた事案です。(否定) 原告:イラストレーター 被告:住宅建設会社 広告代理店 -------------------- ■結論 請求棄却 -------------------- ■争点 条文 著作権法21条、27条 1 複製権、翻案権侵害性 (否定) 2 著作者人格権侵害性 (否定) -------------------- ■判決内容 <争点> 1 複製権、翻案権侵害性 (否定) 被告がマンション販促物のために作成したイラスト39点 について、原告書籍掲載のイラストの被告による複製権 又は翻案権侵害性が争点となっています。 (1)依拠性の立証と著作物の特定 原告イラストに対する被告の依拠性については、被告広 告代理店から委託を受けて被告イラストを制作したデザ イナーが、原告のデザインを無断で参考にして被告イラ ストを作成した旨のお詫びのメールを原告に送信してき ており、結論的には依拠性が肯定されています(22頁以 下)。 なお、原告書籍には127点と多数のイラストが掲載されて おり、原告イラストのキャラクターのどの作品が被告イ ラストの個々のイラストに対応するのか、その依拠性の 主張立証の内容も争われましたが、キャラクターモノの 特質などから、裁判所は、著作物の厳密な特定は不要と しています。 (2)複製権、翻案権侵害性 裁判所は、複製権、翻案権侵害の判断について、複製か 翻案かの区別の実益を否定したうえで、原著作物の本質 的な表現上の特徴の直接感得性を判断基準とし(21頁以 下)、直接感得性判断については、対比のための著作物 の最低限の特定性を要求。 そして、同一コンセプトの下に描かれた127点の多数に 及ぶ原告イラストであることから、キャラクターとして の共通する特徴の抽出をしたうえで、原告各イラストを 特徴づける本質的な表現上の特徴は、顔面を含む頭部に 現れた特徴である、と判断しています(27頁参照)。 こうした点を踏まえ、被告各イラストが原告各イラスト を特徴づける本質的な表現上の特徴を直接感得できるか どうかを検討。 結論として、裁判所は、いずれも直接感得性を否定し、 複製権又は翻案権侵害性を否定しています。 ---------------------------------------- 2 著作者人格権侵害性 (否定) 原告イラストの被告による複製、翻案が否定されたこと から、同一性保持権、氏名表示権侵害性も否定されてい ます(72頁)。 結論として、原告の請求は棄却されています。 -------------------- ■コメント 被告イラストと原告イラストがどのようなものだったか、 その対応関係別表資料や画像が公表されていないので、 どんな感じだったのかよく分かりません。 著作権に関する事案の判決文としては、異例なことかも しれませんが、和解の試みがうまくいかず、上級審での 適切な解決へ双方の努力を裁判所が期待する内容が付言 されています(72頁以下)。 類否判断の限界事例だったことを伺わせます。 もともと、広告代理店から委託を受けて被告デザインの 制作に携わったデザイナーが、原告に対してイラストの いわば「盗用」を認めてお詫びのメールをしてきており (23頁)、原告もそれを端緒に著作権侵害状況を認識し たという事案ですから、このメールがなければ、依拠性 の点からも否定されていた事例だったかもしれません。 -------------------- ■参考判例 ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件 最高裁昭和53.9.7昭和50(オ)324 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/3173CA19E307758049256A8500312051.pdf ポパイネクタイ事件 東京高裁平成4.5.14平成2(ネ)734(原審) http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D6B4C33EE4E2AFAA49256A7600272B8F.pdf 最高裁平成9.7.17平成4(オ)1443 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/B41FEE4CBEB3754249256A8500311DAE.pdf サザエさん事件 東京地裁昭和51.5.26昭和46(ワ)151 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/6E2C377C8FF1D20649256A76002F89C4.pdf サンリオカエルキャラクター事件 東京高裁平成13.1.23平成12(ネ)4735 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/3AF31A6BA34D193149256ACA001C238E.pdf -------------------- ■参考文献 ・依拠性の構成要素について、 西田美昭「複製権の侵害の判断の基本的考え方」 『裁判実務大系27巻知的財産関係訴訟法』(1997)127頁以下 山本隆司「複製権侵害の成否」『新・裁判実務大系22巻著作権関係 訴訟法』(2004)319頁以下 前田哲男「「依拠」について」 『紋谷暢男教授古稀記念知的財産権法と競争法の現代的展開』 (2006)766頁以下 ・依拠の立証、著作物の特定について、 金井=小倉編『著作権法コンメンタール上巻』(2000)209頁 牛木理一「著作権法におけるキャラクターと商品化権」 『民法と著作権法の諸問題-半田正夫教授還暦記念論集-』 (1993)558頁以下 田村善之『著作権法概説第二版』(2001)52頁以下 牛木理一『デザイン、キャラクター、パブリシティの保護』 (2005)378頁以下 中山信弘『著作権法』(2007)150頁以下 ・翻案について、 「裁判官から見た著作権法」『著作権研究』30巻(2004)2頁以下 「翻案」『著作権研究』34巻(2008)2頁以下 横山久芳「翻案権侵害の判断構造」『現代社会と著作権法 斉藤博先生御退職記念論集』(2008)281頁以下 半田=松田編『著作権法コンメンタール2』(2009)73頁以下 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:高速道路1000円乗り放題が始まりました。 機会をみつけて、温泉にでもちょっと遠出をしたい ものです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。おひとりでも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大(おおつか だい) 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



