2009/03/21
著作権判例速報[まぐまぐ]
著┃作┃権┃判┃例┃速┃報┃ ━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ こんにちは!駒沢公園行政書士事務所日記メルマガです。 最新著作権判例について簡易版でお伝えします。 *事案の詳細はブログをご覧下さい。 Blog:駒沢公園行政書士事務所日記 http://ootsuka.livedoor.biz/ *この事案の裁判所ウェブサイト掲載日09/3/19 (謝意:裁判所判例Watch) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 復刻版歴史資料事件 東京地裁平成21.2.7平成18(ワ)26458等謝罪広告等請求事件PDF http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090319134657.pdf *キーワード:編集著作物性、版面権、知情頒布 -------------------- ■事案 「特高警察関係資料集成」「朝鮮軍概要史」などの歴史 資料に関する復刻本の編集著作物性や著作権侵害性、版 面権侵害性が争点となった事案です。 第1事件・名誉毀損事件 :平成18年(ワ)第26458号 第2事件・著作権侵害事件:平成19年(ワ)第24160号 原告:出版社(第1事件原告・第2事件被告) A (第2事件被告/原告元代表取締役) 被告:出版社(第1事件被告・第2事件原告) B (第1事件被告/弁護士) -------------------- ■結論 第1事件・名誉毀損事件 :請求棄却 第2事件・著作権侵害事件:請求一部認容 -------------------- ■争点 条文:著作権法12条1項、113条1項2号、民法709条 *第2事件(著作権侵害事件)関連の争点 1 被告「特高警察関係資料集成」の編集著作物性(肯定) 2 著作権侵害性(著作権法113条1項2号) (肯定) 3 版面権侵害性(民法709条) (否定) 4 損害論 (肯定) *第1事件(名誉毀損事件)関連の争点は略 -------------------- ■判決内容 <争点> 1 被告「特高警察関係資料集成」の編集著作物性 名誉毀損事件(第1事件)で被告となった出版社が筆者らと 資料収集などしたうえで出版された「特高警察関係資料集 成」は、特高警察に関係する資料を広く所収し復刻したも のでした。 裁判所は、歴史資料編纂復刻書籍の編集著作物性(著作権 法12条1項)について、編集著作物性を肯定しています (39頁以下)。 そのうえで、原告が韓国から輸入し販売した書籍(韓国書 籍)である韓国「特高警察関係資料集成」について、複製 性(無断複製物性)を肯定しています(43頁)。 なお、被告が出版した6点の復刻本(被告書籍)のうち、 「特高警察関係資料集成」については編集著作物性が肯定 されていますが、その他の書籍については否定されていて、 復刻本中の解説部分(解題・解説)などについて各筆者の 著作権が肯定されるにとどまっています(57頁以下)。 ---------------------------------------- 2 著作権侵害性(著作権法113条1項2号) 原告元代表者A及び原告代表者Cは、韓国書籍が被告書籍の 無断複製物であることを知りながら販売したのか、著作権 侵害みなし行為である著作権法113条1項2号の「情を知つ て」頒布したかどうかが争点となりました。 この点について裁判所は、著作権法113条1項2号該当性を 肯定しています(46頁以下)。 (なお、被告出版社は、編著者らから著作権譲渡及び著作 権侵害に基づく損害賠償請求権の譲渡を受けています。) 結論として、原告は復刻本の編集著作権や復刻本中の解題 ・解説文などの著作権を侵害している(著作権法113条1項 2号)と判断されています。 なお、原告が知情頒布を超えて韓国書籍の無断複製行為自 体について韓国高麗書林と共謀又は幇助していた(民法71 9条)とまでは認定されていません(57頁)。 ---------------------------------------- 3 版面権侵害性(民法709条) 被告は、原告が被告書籍の版面を複写した韓国書籍を販売 した行為が、いわゆる版面権を侵害するとして一般不法行 為(民法709条)の成立を予備的に主張していました。 この点について、裁判所は、版面の複写行為にかかわる一 般不法行為の成立を否定しています(60頁以下)。 ---------------------------------------- 4 損害論 原告会社の元代表取締役Aについては、著作権侵害行為(著 作権法113条1項2号)に基づき、また原告会社については、 会社法350条に基づき損害賠償責任を負うことになりました が、損害論としては、韓国書籍の平均販売価格、販売セッ ト数量、利益率などから合計119万円余り、弁護士費用は25 万円と認定されています(62頁以下)。 -------------------- ■コメント 被告らが刑事告訴について記者会見などをしたことを理由 とする原告に対する名誉毀損行為については、違法性など を欠くとして、その成立が否定されています(第1事件請求 棄却)。 原告の取扱っていた韓国書籍は、被告書籍の全版面を複写 して製作されたいわば「海賊版」でした。 ところで、版面権については、旧著作権法改正来議論がさ れていますが、いまのところ著作権法上は認められていま せん。 版面権は、出版物の版面を構成する際の出版者の準創作的 な行為に着目して設けられる権利で、著作隣接権として構 成することができる版面に関する利用権となります。 なお、版面権に係わる事件としては、昭和50年代の漱石復 刻版事件に関する和解部分(復刻出版に関する商慣習の存 在の確認)が参考になります(*)。 今回、版面の複写に関して、後行出版社は、先行する復刻 版にフリーライドしていたわけですが、主位的請求で著作 権侵害が肯定されており、事例判断(予備的請求)として は侵害品を輸入販売した出版社には一般不法行為の成立が 肯定されるまでに至っていません。 復刻本刊行の努力にフリーライドする場合には、不正競争 防止法での対応も考えられますが、一般不法行為の成立の 検討も重要であることがよく分かる事案でした。 (*)文化庁平成2年6月「著作権審議会第八小委員会 (出版者の保護関係)報告書」を読むと、報告書作成 当時の平成2年まで復刻版の作成については、不法行 為法適用の判例はないようです。なお、後掲知恵蔵事 件参照。 -------------------- ■関連事件 復刻版歴史資料「海賊版」流布事件 東京地裁平成20.8.29判決 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080918115958.pdf -------------------- ■参考判例 知恵蔵事件 東京地裁平成10.5.29判決 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/CA1554BD664DDADE49256A7700082E43.pdf 同控訴審 東京高裁平成11.10.28判決 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/0B07E451447E8CB849256A7700082DCA.pdf -------------------- ■参考文献 版面権、漱石復刻版事件について、 作花文雄『著作権法講座第二版』(2008)99頁以下 半田正夫「著作隣接権とは」二弁知的財産法研究会編 『エンターテインメントと法律』(2005)81頁以下 著作権判例研究会編『最新著作権関係判例集2(1)』(1980)30頁以下 阿部浩二「覆刻・復刻・複刻-漱石初版本復刻セット事件」 『著作権とその周辺』(1983)170頁以下 美作太郎「復刻本の出版-「漱石復刻版」事件」『著作権判例百選』 (1987)180頁以下 大瀬戸豪志「復刻本の出版-漱石復刻版事件」 『著作権判例百選第二版』(1994)196頁以下 -------------------- ■参考サイト 統一日報(2007年1月17日発行版) 海賊版問題 高麗書林 告訴される http://www.onekoreanews.net/past/2007/200701/news-syakai05_070117.cfm 不二出版株式会社(2009年3月5日プレスリリース) 「海賊版」刊行問題について http://www.fujishuppan.co.jp/kaizokubanmondai.htm -------------------- ■著作権法改正議論 著作権情報センター(CRIC) 文化庁審議会報告書(平2.6) 著作権審議会第八小委員会(出版者の保護関係)報告書 http://www.cric.or.jp/houkoku/h2_6/h2_6_main.html 文化庁(平15.7.31) 文化審議会著作権分科会 法制問題小委員会(第2回)議事要旨 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03091201.htm benli(2008.2.2記事) 「版面権」の例に倣う http://benli.cocolog-nifty.com/benli/2008/02/post_5db6.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 後記:恵比寿を歩いていたら、陽差しのあたる場所のソメ イヨシノがもう花びらを散らしていました。 あっというまに桜の季節です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼企業内イントラネット配信、業務資料、勉強会資料に ご自由にお使い下さい。おひとりでも多くの方と著作権 問題について認識を共有できれば私としても幸甚です。 執筆者:行政書士 大塚 大(おおつか だい) 大塚法務行政書士事務所 東京都世田谷区駒沢5-12-7 TEL:03-3703-7076 E-mail:houmu@pc.nifty.jp HP:http://ootsuka-houmu.com ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


