2009/05/21
クシャミ療法。クシャミを起こさせ、病気を治す。
クシャミ療法 第221回 クシャミを起こさせて、病気を治療する、という面白い治療法があります。 「中国民間療法大典」という本には、様々な面白い治療法が記載されています。 千ページ余の大冊です。 再販の前書きによれば、現代中国で「我が国で第一の民間療法の大典」だそうです。 台湾でも出版され、日本語にも翻訳され、世界の30数カ国で、発行(何語かは、かかれていません)されているそうです。 とはいうものの、日本語訳は見たことがありませんが。 面白い治療法の一つが、クシャミ療法です。 「中国民間療法大典」中原農民出版社 1999年11月第2版 劉道清先生主編 より 小児の急性、慢性の驚風(キョウフウ:ひきつけ) ◎犀角丸(サイカクガン) 犀角、麝香、牛黄、青黛、地竜各0.3g、朱砂、防風各30g、 蚕紙(カイコの卵が産み付けられた紙)1枚(焼く)、蟾酥(センソ)1.5g、 天漿子(てんしょうし:イラガの繭。雀瓮ともいう。)、蝉退(センタイ)各27匹分、 烏梢蛇(ウショウダ)の肉15g、を一緒に細かい粉にする。 それに、ハチミツ適量で練って、黍の実くらいの大きさの粒にする。 その1粒に水を加えて溶かし、鼻のなかにたらし、くしゃみを起こさせる。 ☆犀角丸の解説 犀角丸の内容は、大変面白いので、特に解説します。 犀角:犀(サイ)の角(つの)。哺乳動物のサイ(リノ)のツノのことです。 現在は、絶滅危惧種で、ワシントン条約で、取引が禁止されています。 強い解熱作用があります。 意外でしょうが、ほんの少し前まで、日本で使われていました。 いまから、30年位前、私の薬局でも、ウサイカクサン(多分、烏犀角散という漢字)という、小児薬がありました。 子供の、風邪、解熱薬でした。 あまり、売れないので、いつの間にか、取り扱いを中止しました。 多分 今は無いでしょう。サイの角が手に入りませんからね。 成分表示には、間違いなく「犀角」が入っていました。 多分、麝香もはいっていたと思います。 当時は、変なものがはいっているな、と思っていました。 麝香:ジャコウ。ジャコウジカ(musk deer)の雄の腹部に麝香腺がありそこから分泌されたもの。 雌を引き付けるための匂い。生薬であり、香料でもあります。 いわゆる高貴薬で、大変高価です。 香水、オーデコロンのなかには、ムスクの香りというものがありますが、 その麝香、もしくはそれを模した香りをさします。 現在、入手困難な薬の一つです。 瀕死の病人に対しての、起死回生薬でもあります。 牛黄:ゴオウ。牛の胆嚢にできた石。つまり、牛の胆石。 石が出来るということは、病気。従って、たまにしか見つかりません。 千頭の牛を屠殺しても、一つ位しか見つかりません(数は、不正確)。 中国では、人工牛黄を作る研究がなされていますが、 今のところ、人工的に作ることが出来ません。 これまた、大変高価です。 清熱解熱薬となっていますが、その効能効果は、実に多彩で、簡単に説明の使用があります。 これまた、起死回生の薬でもあります。 青黛:セイタイ。植物。外用では、口内炎、扁桃腺炎などに効果があります。内服としては、咳に効果があります。 地竜:ジリュウ。大地にいる竜、つまりミミズのことです。 蚯蚓は、優れた解熱剤であり、ほとんどの新薬よりも、すぐれています。 しかも、副作用はありません。 大いに使われていいはずなのですが、偏見と無知から、一般的には使われていません。 解熱だけではなく、気管支拡張作用もあります。 ゼンソクや気管支炎で息苦しいのがすぐに楽になります。 現代的な用法では、アトピーのかゆみ、脳梗塞の後遺症などにも用いられています。 また、鎮静作用があります。 うちの薬局では、地竜の錠剤も顆粒も、扱っています。ものがものですから、あまり、使いませんが、ここぞという時に使うと、効き目は、実にシャープです。 朱砂:シュシャ。これは、水銀の化合物。硫化水銀。 当然、日本では使われていません。 しかし、中国の少なからぬ処方に用いられています。 防風:ボウフウ。これは、植物性生薬。まあ、面白くないですね。 発熱、悪寒、頭痛、関節痛などの症状に用います。 蚕紙:サンシ。蚕退紙(サンタイシ)ともいいます。 蚕に卵を生ませる時に、紙の上に卵を産み付けさせます。その紙を指します。 止血作用があり、崩漏(ほうろう:子宮出血の特にはなはだしいもの)、帯下(こしけ)、吐血、鼻血、血便に効果があるとされています。 蟾酥:センソ。いわゆるガマの油。ガマガエルの皮脂腺より、分泌された液。 きわめて毒性が強い。 強心作用があり、心臓の薬として用いられている。 そのほか、鎮咳作用、抗炎症作用などがあります。 ガマの油は、日本でも現役の生薬です。救心、六神丸の主剤です。 こんなの古臭いと思われるでしょうが、 現代医学(西洋医学)でも、心臓の薬として、ジギタリス製剤が、広く用いられています。 ジギタリスは古くから用いられて入る植物です。 これまた毒薬です。 動物植物の違いはありますが、強心剤が天然の生物系生薬であることは、東西で同じです。 天漿子:テンショウシ。イラガの繭。 雀瓮(じゃくおう:字義ではスズメのカメ)ともいいます。 木の枝に小さい卵のような形をして、付いています。 日本では、別名、すずめのたご、スズメの小便たご。 小児のヒキツケなどに用いる。 蝉退:センタイ。蝉の抜け殻。 蝉の抜けがらは、現代でも、ひっそりと使われています。 「消風散」という漢方薬の成分として使われています。 しかし、飲んでいる人は、セミの抜け殻が入っているとは、気が付かないでしょう。 風邪の熱、喉の痛み、声がれ、風疹の痒み、夜泣き、破傷風に効果があるとされています。 「セミの抜け殻は、皮膚のようなものである。 だから、皮膚病に効果があるのだ。」と、書いている古い医書もあります。 烏梢蛇:ウショウダ。黒い蛇なので、烏という字が入っている。 日本にはいない種類の蛇ですが、日本語で「くろへび」ともいいます。 面白いことに、この「くろへび」を「青大将」(浙江中薬手冊)と呼んでいる地区もあるようです。 もちろん日本の青大将ではありません。念のため。


