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川崎ゆきおの千字程度の不思議な小説。

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2008/07/22

千字一話物語 652話 弱者の道

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■   千字一話物語 川崎ゆきお  

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   652話 弱者の道

「どうしても勝てない同僚が多いのですが、
非力な僕はどうすればいいのでしょうか」
「勝とうとは思わないことでしょう」
「でも、これは戦いなのです。勝ったほうが
有利になります。負ければ不利になります。
評判も落ちます」
「みんなあなたより優れているのですか?」
「はい、そうです」
「あなたより劣っている人はいませんか」
「いましたが、辞めました。私が一番弱いで
す」
「あなたにしかできない何かがあると思いま
す。それを見つけ出すのは、いかがですか」
「僕にしかできないことがあるとすれば、弱
いことです」
「その弱さを活かせませんか」
「活かせません。だって、弱いことを活かせ
ば、どんどん負けてしまいますよ」
「勝っている人はあなたより努力しているの
ではないでしょうか」
「僕は同僚よりも努力しています。それでは
通じないのです」
「では、どうなればよろしいのでしょうか」
「勝ちたいです。少なくても互角に勝負でき
るほどには」
「しかし、弱いので、負けるのでしょ」
「はい。だから、悩んでいるのです。理不尽
です」
「理不尽?」
「同僚たちは最初から僕より強いのですよ」
「そうなのですか」
「だから、太刀打ちできません」
「負けるが勝ちといいます」
「負けると、勝ちにはなりません。それなら
負け続けている僕は全勝でしょ」
「勝ちにこだわらないことがいいのです」
「これ以成績が上がらないと、首ですよ。解
雇はされませんが、居たたまれなくなります」
「解雇されないのなら、続けられてはいかが
です」
「それは屈辱の日々となります。それに給料
も上がりません」
「下がらないのでしょ」
「まあ、そうですが」
「じゃ、今のまま負け続ければいいのですよ」
「いや、僕は勝ちたいのです。だから、相談
に来たのです」
「それがあなたのキャラクターで、そういう
人間だと納得させることで、自分のポジショ
ンができますよ」
「じゃ、駄目な人間だと自分で認めるのです
か」
「あなたがいるから勝者がいるのです」
「違います。同僚は最初から強いのですよ。
だから、勝者だとは思っていませんよ。僕が
弱すぎるので、馬鹿にしているのです。相手
にしていません」
「じゃ、転職ですね」
「それ、その言葉が欲しかったのです。僕よ
り弱い同僚がいる職場へ行きます」
「はい、お大事に」

   了


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ww8y-kwsk@asahi-net.or.jp
http://kawasakiyukio.com/

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