千字一話物語 651話 青い龍
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■ 千字一話物語 川崎ゆきお
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651話 青い龍
「眠いのだがね」
吉田は風邪薬を飲んだため、眠くなった。
「この、うとうと感は悪くはないが、何もで
きないねえ」
「風邪のときは、何もしないで、安静が大事
ですよ」
「そうだね。でも、この状態では眠ってしま
いそうだ」
「はい、会議は眠っていてください」
「そうだね」
会議中、吉田は眠っていた。目がさえてい
る場合でも、黙って聞いているだけなので、
眠っているのとかわらない。
「目を覚ますのじゃ、青い龍」
突然声が聞こえた。吉田は、覚えていない
が、夢でも見ていたのかと思った。
「目覚めのときが来た。眠りから蘇るのじゃ」
まだ聞こえている。
吉田は、目を開けた。
会議中で、青いスーツの社員がプレゼンを
やっていた。誰かが聞いているはずだが、こ
れらは儀式であることを、みんな知っている。
それはいい。
それはいいが、この声はなんだろう。どこ
から聞こえてきているのだ。
吉田は大きく目を見開いた。
その表情を見た社員は驚いた。
目玉が飛び出るのかと思えるほど大きく開
いたからだ。目玉がピンポンように回転した。
「部長」
横の次長も吉田の表情に気付いた。
「いや、続けてくれ」
「青い龍よ。いよいよその日が来た。さあ、
立ち上がるのじゃ。東で赤い龍も立った。時
期が来たのじゃ」
吉田にとって、それは空耳ではなく、実際
に聞こえているように感じられた。
「青い龍を知っておるかね」
部長の、この発言内容が伝わらなかったよ
うだ。
「わしは青い龍らしい」
全員きょとんとした。
「わしは、西の青い龍らしい」
「それは、どういうことでしょうか」
次長が皆に代わって聞く。
「知らぬが、立ち上がるときが来たようじゃ。
目覚めるときが来たようじゃ」
プレゼン中の社員は棒立ちのまま動かない。
「黒い龍が北の空から飛んできた。地球の滅
亡は近い。立ち上がるのじゃ」
全員がざわめいた。
やがて吉田は、がくんとテーブルに上体を
倒した。
「夢で、うなされていたみたいですね」
次長はプレゼンを続けさせた。
了
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