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川崎ゆきおの千字程度の不思議な小説。

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2008/07/17

千字一話物語 647話 訪問会

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■   千字一話物語 川崎ゆきお  

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   647話 訪問会

「いろいろな人と交流することで、視野も広
がります。人は一人では生きていけないので
す。仲間が必要なのです」
 講演が続く。
「一人で寂しいときでも、仲間がいると、緩
和されます。いや、仲間がいると、寂しい状
態も最初からないといってもいいでしょう」
 村田は後ろの席で聞いている。
「村は崩壊し、町も崩壊しました。壊れたわ
けではないのですよ。ゴーストタウンでもな
いのですよ。壊れたのはコミュニケーション
です。町内でのコミュニケーションです。近
所との繋がりです。これは住宅問題にもよる
のでしょうねえ。気楽に声がかけにくい環境
になってしまいました。昔なら隣の家の夕食、
何を食べているのか見えたものですよ」
 全員笑わないで聞いている。
「ここで必要なのは、人と人との繋がりを取
り戻すことなんです。これは生活文化が違っ
てきたための弊害なんですが、昔のような長
屋には戻れません。井戸端会議の井戸がない
のですからね。集う場所がない」
 村田は黙って聞いている。
「そこで必要なのは、地域の繋がりでしょう
か。いえ、違います。昔には戻れないのです
から、ここは知恵を働かせ、人為的な仕掛け
が必要なのです。町内の人が集まれる集会所
があありますね。でも行かれないでしょ。用
事がないからですよ。それに生活とは切り離
された場でしょ。集会所とか、コミュニティ
ー施設は。わざわざ出かけないと駄目なんで
す」
「では、どうすればいいのです」
 会場から声がかかる」
「質問のある人は、後でお願いします。では、
続けます。そこで考えたのが訪問ごっこです」
 村田は一度聞いたことがあった。
「二人一組で、訪問するのです。その組み合
わせは、こちらで用意します。これなら、安
心して、訪問できますし、また訪問も受けら
れます。あなたが人の家を訪ね、あなたまた
訪ねられるのです。週に一度でも、二度でも
三度も、毎日でもいいのです。スケジュール
はこちらで用意します。ただ、了解を得ない
人の家を訪問することはできませんからね。
メンバーになってもらう必要があるのです。
これは営利が目的ではありません。地域ボラ
ンティアです。他の多くの町内では成功して
います。この町でも、訪問会を作りたいと思
いまして、こうして、皆さんにお集まりいた
だいたしだいです。いかがでしょう」
 村田は前にも、こんな話があったことを思
い出した。
 結局村田は人嫌いなので、メンバーに加わ
らなかった。
「メンバー登録は簡単です。これで、皆さん
はみんな仲間になれるわけです」
 また、同じパターンかと思い、村田は説明
会場を出た。
 
   了


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