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川崎ゆきおの千字程度の不思議な小説。

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2008/07/08

千字一話物語 640話 まあいいか

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■   千字一話物語 川崎ゆきお  

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   640話 まあいいか

「まあいいか」が作田の口癖だった。
 幽霊が出ても「まあいいか」で済ませてし
まう。
 しかし、些細なことでは「まあいいか」と
はなかなか言わない。特にどうでもいいよう
なことに関しては妥協を許さない。
「それは逆じゃないの」
 友人の徳田が突っ込む。
「大事なことは目を瞑って通過するんだ」
「いや、大事なことほど真剣に考え、熟考す
べきじゃないのかい」
「それはわかっている。だがね、それをやり
だすときりがないんだ。いつまでたっても結
論が出ないんだよ」
「真剣に考えるということは、真剣に結論を
出すことだよ。考えているだけじゃ駄目だか
らね」
「そう簡単には結論は出せないよ。矛盾する
問題があるとき、どちらを選択しても、満足
を得られないわけだから」
「そこで断を下すのが、真剣に考えた結果の
答えなんだよ」
「真剣に考えれば考えるほど、矛盾点の解決
が難しいことが分かってくる」
「だから、英断だよ」
「強引に答えを出すわけ?」
「妥当な結論をね」
「その答えなんだが、今まで何度も熟考した
末、答えを出したことがある。でも、それっ
て一晩でひっくり返るほど脆いものなんだよ」
「それは英断ではなかったんだ。考えが足り
なかったんだ」
「最終的な決断って、結局雰囲気でしょ」
「え?」
「だから、イメージでしょ」
「いや、もっと論理的なものだよ」
「その論理に導いているところの背景のイメ
ージがあるんだよ。理屈は言い訳のようなも
のさ」
「じゃ、そのイメージって何だよ」
「雰囲気だよ。なんとなくの好き嫌いという
か、センスというか」
「それは、感情に左右されているだけのこと
さ」
「人間は感情の動物って言うじゃないか」
「その面があるというだけさ」
「まあ、今回のお誘いはキャンセルするよ」
「おいおい作田君。この仕事は完璧だよ。落
とし穴なんてない。検討してもらえれば、分
かる」
「まあいいか」
「出た出た。その言葉、待っていたよ」
「断っても、まあいいかって言ったんだよ」
「その判断基準を聞かせろ」
「論理とか、判断とか以前に、問題は君なん
だよな。君」

   了


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ww8y-kwsk@asahi-net.or.jp
http://kawasakiyukio.com/

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