「原因が結果を生じさせる」という発想は間違っている  RSSを登録する

現代医科学に至る、西欧学問の歩みとは、人間を人間以外のものと解する、誤った努力の歴史だと言えます。人などの生物を「原因」で説明しようとしてきた。そして、今、まさにしているのです。「原因が結果を生じさせる」と信じると、全てが理解できなくなります。

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2009/10/09

182 第3シリーズ「問題論」 第七章 vol.7

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メールマガジン: 「原因が結果を生じさせる」という発想は間違っている
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伊藤たち脳科学者は、人間を「機能の束」としか見てない。
彼は、人間の〈正常〉なありようを、遺伝学者のように



「生きて、しかも子孫を残すこと」(同書p.22より)



と考えているようである。
別の言葉で、この〈正常〉を、



「個体の生存と子孫の維持」(同書p.25)



とも表現している。
脳科学は、人をこう解釈するわけだ。
つまり人は、そのような
〈正常〉なありようになるよう本来〈予定〉されている。
それを、


脳の中の「原因」こそが実現する。
病気とは、その



「原因」の機能が阻害されていること



である。
そして、



例外的な〈予定〉が、「異常・原因」によって実現されてしまうこと



である。
そういうのである。
しかし、これは、



ロボットを見る見方でしかない。



このことを、では確認してみよう。
脳科学は何を目的とするものなのか。
同書 (伊藤正男『脳の不思議』岩波書店、1999年) のまえがきから引用して聞いてみよう。





〈 最近、脳の研究が組織的、計画的に
国家的な規模で推し進められるようになったが、
これには三つの狙いがある。

 第一に、
脳の分子や細胞のレベルにおける知識の増大を基に、


脳の老化、精神病、神経病、麻薬中毒などの抜本的な予防法、治療法


を開発しようとするもので、
近い将来人類にとって大きな福音となるだろう。
言い方を変えると、もし脳科学のそのような進歩がないと、
高齢化社会を迎えて人類は大きな困難に遭遇することになると思われる。〉





 話しの流れから少し脱線しておく。
僕たちはここまでいくつも指摘してきた。
医科学などの(西欧)学問の妄想について。
それらがここで、いくつも見受けられるのである。
先ず、僕が



パラダイス観



と呼ぶものがある。
〈異常〉を医科学は一つ一つ克服していくだろう。
そして、



いつの日か、この世は完全にパラダイスとなるだろう。



そんな甘い現実認識がここに見て取れるというわけだ。
「脳の老化、精神病、神経病、麻薬中毒」という〈異常〉について、



その「異常・原因」を医科学で特定してしまえる。



そうすると、その「原因」さえ取り除けば問題は解決する。
こう伊藤たちは楽観視している。
「異常・原因」の特定にかなりの時間がかかることすら
念頭に置いていないようである。
そのことに気付いていないだけかもしれないけれども。
そもそも、彼らは「原因」が必ず特定できると
勝手に決め付けてしまっているのである。


また、〈異常〉を問題としている点でも彼らは間違っているのだ。
だから更に、「病気を診て、人を見ない」ことにもなっているのである。
しかも、最も気をつけるべきなのは、彼が



脅迫という手法を採っている



ことだ。
決定論には既に触れた。
人間の可能性を過小評価する。
それは、こんな過った暗い未来予想法だった。
僕たちは確認した。
「原因」の存在を信じる者は、



「原因」を使って、人を脅す。



つまり、決定論をする者は、



そのまま放っておくとお前は大変なことになる



と言う。



助かりたければ、我々の予防法を用い給え、と強要する



のである、と。





 元の論旨に戻ろう。
引用をそのまま続ける。





〈 第二には、脳に似た働きをするコンピューターを作り、
それを載せた人間のようなサイボーグを作る夢である。
これも、実現すれば未来社会にとって計り知れない影響を与えるだろう。〉





 彼らには人間とロボットの区別が付けられない。
どちらも彼らにとっては「機能の束」でしかない。
だから、脳科学などをしていると、
ロボットを作ろうという発想を抱いてしまうことになる。



傍目にはこのロボットへの夢は突飛な着想と思われる



ことだろう。
これは、



脳科学者が人間をロボットとしか見ることができていない良い証拠



なのである。
引用部分で、伊藤は、言っていた。
脳科学は精神病、神経病などの福音になると。
しかし、脳科学は具合の良し悪しを捉えることができない。
人間とロボットの区別がついていないわけだ。


そして、問題は〈異常〉であることではない。
具合が悪いことだ。
『今どうしようとするか』ヨリはっきりしていないことだ。



脳科学はこのように、問題が何であるか理解できていない。



である以上、脳研究が福音になるとは考えにくい。
たまたま何かの役にちょっとだけ立つ位のことがあれば、御の字だろう。





 さて、ここでは、新しい問題解決法を挙げた。
自分が今から、どのように
『今どうしようとするか』ヨリはっきりしている状態になれるか考える。
即ち、具体的に、どのように具合良くあれるか、想像する。
そして、その状態を直接目標にする。
こういった仕方を解説したのである。


では、更にここから、
肉体的苦痛と精神的苦痛とに、苦を二分する見方を批判していきたい。
この新しい解決法が、肉体的苦痛には通用しない、
などと間違って考えてしまわないように、というわけなのである。

(続く)


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