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パリに住む筆者が、なにがなんだかわからないフランス人という人達を映画や絵画作品を通して解剖してみました。Sacres Francais!(サクレ フランセ)とは「とんでもないよ、フランス人」という意味です。

  • 発行周期 隔週刊
  • 最新号 2009/11/25
  • 部数 146部
  • メルマガID 0000191817
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2009/10/23

サクレ・フランセ53号 ティツィアーノ、いずれはプッサンへ。

                                   2009年10月23日発行
【Sacres  francais !53号】                  


ティツィアーノ、いずれはプッサンへ。
   ――― 『1540-1600 ヴェニツィアの巨匠たち』(ルーブル美術館)



【Editorial par koko】

わからないことが突然わかることがある。
学生の頃、数学の証明問題なんかは、突然解答が閃くことがあった。
そんな時、大概答えは正解だった。

訓練を積めば積むほど、その閃きは頻繁になり、ある時点から確信へと変わっていく。
絵を見る時も、同じことが起こることがある。
突然その作品のことがわかる。
納得できる。
そして自明の理が姿を現す。

だから美術鑑賞も訓練だ。
やはり手当たり次第に見ていかないと、観れるようにはならない。
それにわかろうと思ってもなかなかたやすく分かるはずもない。
わかってしまえばつまらないではないか。
ミステリアスな異性ほど魅力的に見えるっていうのと一緒のことだ。

そんなわけで、今日もまたわけのわからない美術作品とにらめっこするのです。




【お題 その1】
そうだったのね、ティツィアーノ(1490年頃 ~1576年 ヴェニス)


今月はルーブル美術館の特別展示『1540-1600 ヴェニツィアの巨匠たち』に行って絵をにらんできました。
http://www.louvre.fr/llv/exposition/detail_exposition.jsp (日本語ページ有)

理由は、わからないものをわかりたいという単純な欲求を満たすため。
結果からいうと、わたしゃ15世紀後半のヴェニス絵画が嫌いではない。
つまり、以前は嫌いだったということです。

なんだかハデでエロくって、まとわりつく感じが好みではなかったのですよ。
マニエリズムってやつが、あまり好きではないともいえます。
あの体クネクネしてるやつね。
(それ以前のヴェネチア派の絵画は、前にメルマガ(44号)にも書いたとおり大好きです。)

好き、嫌いの境めは、ティツィアーノ。
この爺さんがヴェニスの絵画界を牛耳ってからというもの、私の興味はヴェニスから消え失せてしまっていました。
この長生きじじい(爺さん呼ばわりしてごめんなさい)のあまりに有無を言わせぬ作品の数々が、私を喰わず嫌いに
してしまったのです。

〈この画家はなんでも描ける、まるでピカソみたいにいくらでも描ける。
そう、悔しいけど、この爺さんは疲れを知らぬ天才だ。〉
早くから認められて長生きしたという意味でピカソと言ったけど、画家のカテゴリーとしてはルーベンスに近い
(実際はルーベンスがティツィアーノの影響を多大に受けているんですよ)。精力的に次々と作品をこなしていく、
彼の落ち着いた、けれどダイナミックな息遣いが伝ってくる。ピカソのように野性的ではないけれど、内にある
エネルギーは似たようなものか。でもやっぱエロ爺いかなぁ~。そこんとこはロダンに似てるような・・・

彼の作品を観れば観るほど、絵からオーラが出てくる感じがして、嫌いとか好きの問題以前に、スゴイなぁ、
と思う私だったのです。




【お題 その2】
ヴェネチア ルネッサンス最後の華、ヴェロネーゼ(1528年 ヴェローナ - 1588年 ヴェニス)


ルーブルですでに何十回も観た彼の大作『カナの婚礼』をこれから何百回観たとしても、きっとわかる日は
こないんじゃないだろうか。毎回この絵の前に立って、いつか天から何かしらの啓示が落ちてくることを祈る
のだけれども、今のところ特に啓示はなく、ただただヴェロネーゼの名前だけがどんどん大きくなっていくのでした。

そんな私に今回の展覧会は、一つの道筋を与えてくれた気がします。
きっかけを与えてくれたのは一枚の肖像画。
http://realmofvenus.renaissanceitaly.net/wardrobe/CountessLivia.jpg

初めて見た時、ドキッとするぐらい近代的で吃驚したのです。親子(たぶん)の有様がとても自然でリラックス
しているようで、さらに色が全く今までの作品とは違いました。全体の印象としては18世紀ロココの画家シャルダンの
ポートレートにとても似ている気がしたのです。そしてもっと最近ではマネ。21世紀になってもこのようなポートレートに
よく出くわしているような・・・・とにもかくにも16世紀ヴェニスの日常生活の息遣いを感じることができました。

思うに注文主の要求に応じて、いつでもハデな当時の流行絵を描くことができるヴェロネーゼですが、
実は他の志も持っていたのではないか、ふとそんな思いを持つようになった私です。




【お題 その3】
第3の男、ティントレット(1518年 ヴェニス-1594年 ヴェニス)


ルーブルの展覧会は、ティツィアーノ・ティントレット・ヴェロネーズの3人を軸とした16世紀後半のヴェニス絵画の展覧会です。
ティツィアーノから遅れること四半世紀を経てヴェニスに生まれたこの画家は、ティツィアーノの呪縛から逃れるために
苦しんだ画家ともいえそう。どの時代でも同じで、巨匠の後に続く者の定めとして、新しいスタイルの確立に相当苦労
したらしいです。

しかしながらこの展覧会の目玉の一つ『スザンナの水浴』の完成度はかなりのもんで、普段ルーブルにある作品しか
知らなかった私にとっては目からウロコの一枚であります。
http://www.univ-montp3.fr/pictura/GenerateurNotice.php?numnotice=A0667

たぶん、ティントレットは描こうと思えばいくらでもティツィアーノと同じ作風の作品を描くことができたのでしょう。
だけどそれではアーティスト魂が浮かばれない。だから孤独の画家修業に旅立ったのですね。

こりゃ絶対ヴェニスへ彼の残した壁画を見に行かないと!




【最後に】

23日からいつものごとくパリFIACが始まった。
現代美術の潮流をうかがうにはいい機会だ。
現代美術にはわけのわからない作品がたくさんある。
それも経験を積めばわかるようになると信じてFIACに臨むkokoである。

わからないといえば、副題につけた『プッサン(1594年-1665年』のどこが凄いんだか10年フランスに住んでも未だにわからない私は、
自分が本当に馬鹿なんじゃないかと心配でたまらない。
今回ティツィアーノがわかってきた気でいるので、そのうちプッサンの良さもわかるようになるのだろうと期待はしてるけども、
どうもすぐというわけにはいかなそうだ。

冒頭に書いたように、すぐにわかる程度の良さでは長続きしないのは、異性の場合も同じ。
だからある日プッサンの良さがわかる年頃(どんな歳か想像もつかないけど)になったら、プッサンの大ファンになったりして。

どっちでもいいといえばいいけれど、しばらく美術鑑賞の楽しみは尽きないことだけは確か。


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この秋はフランドル絵画の展覧会も充実していて、また古臭い絵の話をしたくなるkokoです。
なぜか最近映画の話をする気になれないのは困ったことです。
今日も山崎貴監督の『リターナー』という映画の中古DVDを深く考えもせず買ってしまいました。
単純に金城武を見たかったというだけの話なのです。
(意外と面白くて吃驚しました。)

ではまた次回。
A bientot !


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お便りはこちら yuriko.noritake@gmail.com
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