Sacres francais! <映画と美術とパリジャンと>  RSSを登録する

パリに住む筆者が、なにがなんだかわからないフランス人という人達を映画や絵画作品を通して解剖してみました。Sacres Francais!(サクレ フランセ)とは「とんでもないよ、フランス人」という意味です。

  • 発行周期 隔週刊
  • 最新号 2009/11/25
  • 部数 146部
  • メルマガID 0000191817
  • 個別ページ
最新号をメルマガでお届けします    
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。
2009/07/15

デ・キリコ

2009年7月15日発行

【Sacres  francais !50号】                  


思い込みとは恐ろしい - Giorgio de Chirico



【Editorial par koko】

夏というものが去るのがこの数年早すぎる。
7月のなのに革のブルゾンを羽織らないと肌寒い夜が結構続いた。
毎年バーゲンで買った服がデビューできずに秋を迎えることも多い。
バカンスは南に向かうべし。

「夏は暑い」という思い込みが、今一つ汗をかく機会のない夏休みを物足りなくさせる。
逆に長袖シャツ1枚で心地よく日々を過ごせると考えれば、こんなに贅沢なことはないのに。
人間は欲張りです。


メルマガ読者のみなさん、
ここんとこ相次いだ環境の変化と自然災害のおかげで、メールアドレスが変わりました。
もう変わって1カ月。対応の遅さはフランス人並みです(恥)。
今度からお便りはこちら。
yuriko.noritake@gmail.com

今後ともどうぞよろしくお願いします。




【お題1】
イタリア人でしたかぁ。
Giorgio de Chirico (1888-1978 )


そうです、思い込みです。
スペイン人だと思ってました。そうでなければベルギーかな。
言われてみればすっごくイタリアっぽい名前です(照れ笑い)。

数年前、ローマに遊びに行ったときに、ジョルジオ・デ・キリコ
のエキスポを観ました。そして興味がなくなった。それ以来キリ
コのキの字も考えなかったし、その時どうしてローマで彼の展覧会が開催されて
いるのかさえも考えなかったのでした。
お粗末。

しかし、そのお粗末さにも一つ理由があることはある。
それはキリコの絵がどう考えても‘ヘタッピィー’だったからです。
見るも絶えない絵も多くあり、
「なんでこいつが世界的に有名やねん、金返せ!」
と思っていたからなんですが・・・




【お題 その2】
『イタリア人は変人だ!』 という思い込み


今年の5月24日までパリ市立近代美術館で開催されていたデ・キリコ展。
「デ・キリコ=下手」という思い込みが、私の脳細胞を完全に支配して
しまいました。
そう、行かなかったのです。
バカだね、全く。
160点強の作品が勢揃いして、キリコの生涯を一望できるまたとない
機会だったそう。
パリでは恐らく1972年に行われた展覧会以来です。
その時は大変なスキャンダルが生じました。

会期最終日に、まだ生きていたご本人(84歳)が会場に現れて、
一番評価されている20年代の作品3枚を見て一言。
『これは偽物だ!』
『これも偽物だ!』
『これもダメ!』

そりゃ、展覧会主催者も驚くけど、一番驚いたのは絵の持ち主達。
裁判ですよ、裁判。
描いた本人が偽物だというんだからどうしようもないですよね。
だけど、それらの絵は履歴的にも科学的にも間違いなくご本人の手になるもの。
本人の意図が誰にもわからないという、前代未聞の不思議ワールドに突入したのでした。

その記事を読みながら、知り合いのイタリア人絵画専門家を思い出してしまったのです。
彼も、オークションで売買される作品を前に
『それは、偽もんだ!』と避けぶのを得意にしていたから。
毎回それなりに記事になってましたっけ・・・・

イタリア人って自分のキャリアがそれでダメになっても、恨みを晴らすためにそういう人
を喰ったパフォーマンスを大々的にできる国民なのかな、と思うのです。
またフランス人とは違うタイプっていうやつでしょうか。

この子供じみた恨みを晴らすにあたり、いつも犠牲になるのは絵の所有者です。
絵を所有することも簡単なことではありませんね。
(キリコが何に対して恨みを晴らしたかったのかは、のちほど)

デ・キリコがスペイン人だという思い込みは晴れたけど、イタリア人が気狂いじみている
という思い込みがまたできてしまったなぁ。




【お題 その3】
デ・キリコの汚名返上作戦


ま、私の思い込みなんてどうでもいいです。
大切なのは、なぜデ・キリコの評価は平均していないのか。
それについてバッサリとお話したいと思います。
※作品を見たい方は下記youtubeを参照。
http://www.youtube.com/watch?v=D3GjVlnQm1A


デ・キリコがシュールレアリズム関連の画家の中でもとりわけ高い評価を受けるのは
その制作年代に依るところが大きいです。
≪第一のデ・キリコ≫と呼ばれている時代の作品群がそれです。
キリコ第一時代は、1911年から1925年頃まで。
本によって若干前後するものの、10年代から20年代前半のキリコ
の油絵は、高いものなら15億円を超えてくるし、安くても5億円ぐらいはします。
そりゃもう、マグリットよりずっと高価な絵なんですよ。

高価であるということは、それなりに意味があります。
それは、ブルトンがシュールレアリズム宣言をするずっと前から
、デ・キリコはシュールレアリズムの先駆としての作品をたくさ
ん描いていたからなのです。ブルトン自身がパリの画商ポール・ギヨームの店で
デ・キリコの絵を見てショックを受け、またイヴ・タンギィも1923年にそこの
ウィンドウに置いてあった絵『le Cerveau de l’enfant』 (子供の脳みそ)を見て
画家になる決心をしたそうな。
あのピカソも「どんな作品とも似ていないオリジナルな絵」といって賞賛。

しかし、さかのぼること最初の賞賛者は、アポリネールだったそう。
若干23歳のデ・キリコの才能をいち早く見抜いていたようです。
彼は1912年のパリドートンヌ展やアンデパンダント展に出展されていたデ・キリコを
高く評価する記事を書いています。デ・キリコが1912年には人の心にさざ波を立てて
不安にさせる不思議な絵を描いていた、という事実が高値に結びついているのでした。


さて、問題の≪第二のデ・キリコ≫です。

何を思ったか、過去の大家の作品の模写にいそしみ、
しかもその後自分の作品のコピーを描き始めたのです。だから同じ主題を描いたデ・
キリコ本人の絵でも、価値は10数倍変わってくるのです。アンドレ・ブルトンは1928年頃から
そんなデ・キリコの作品をひどく批判し始めていました。
一目も二目も置く作家にプイっと顔を背けられたようなもんです。
デ・キリコがいなかったらシュールレアリズム絵画の将来も怪しかったかもしれないだけに、
先駆者の路線逸脱は許せなかったのかな~。
でもあまりに手厳しいシュールレアリスト達の批判がまだまだ若いデ・キリコにはきつかったんだと思います。

でもちょっとひねくれて物を見れば・・・・

恐らく、デ・キリコの絵を絶賛してもてはやすシュールレアリス
トの一団が我慢ならなかったのかもしれない。皆と同じ道を歩みたくなかったのかもしれない。
だから自分が早くに成してしまった絵の数々をわざと否定したのかもしれない。
そして第二のデ・キリコの画風(クラシックへの回帰)を真っ向から批判されたことに腹を立てたのかもしれないです。
すべては私の勝手な推測ではありますが・・・・
しかし、72年のパリの展覧会についてどこかの記事に書いてあっ
たように、「80も半ばになって、もう一度世間を自分の作品と対峙させるとは、なんとも大した度胸である」
と言えないこともないですね。

「デ・キリコ殿、もう君のことをただのヘタッピーとは言わないよ」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ここんところ自分が深刻なアルツハイマーではないかと恐ろしくなることが重なりました。
最大の事件は、クレジットカードの暗証番号が思い出せなかったこと。
さらに続いて銀行の口座参照ページのパスワードも正しく入らなかったこと。
やっばいです。
独りで冷や汗かいてます。
なのに懲りずにいろんなインターネット閲覧アプリケーションの類をダウンロードして、
ますますたくさんのログインコードと付き合うことになっています。
みんなどうして管理してるんでしょうねぇ。

メモとらないからそんなことになるんですよね。
ホント私おバカです。
昔からメモの取れない女なのでした。
よくもそれで今までなんとか人生を渡ってこれたと呆れはてます。
が、もう今さら治りません。

私の人生は記憶とともに消えてなくなるのです。
花火のようにはかない私の記憶・・・・・
せめてメルマガだけは残したい。
そう思う7月14日革命記念日です。

ではまた。
koko



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Sacres francais! <映画と美術とパリジャンと>
お便りはこちら yuriko.noritake@gmail.com
発行システム:「まぐまぐ」http://www.mag2.com
配信中心はこちら http://www.mag2.com./m/0000191817.html
最新号をメルマガでお届け
登録 解除

規約に同意して

登録した方には、まぐまぐの公式メルマガ(無料)をお届けします。

最近の記事

上へ戻る