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パリに住む筆者が、なにがなんだかわからないフランス人という人達を映画や絵画作品を通して解剖してみました。Sacres Francais!(サクレ フランセ)とは「とんでもないよ、フランス人」という意味です。

  • 発行周期 隔週刊
  • 最新号 2009/11/25
  • 部数 146部
  • メルマガID 0000191817
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2009/05/25

サクレ・フランセ 48号 落語から覗く笑いのこころ

                            2009年5月25日発行
【Sacres  francais !48号】                  



落語から覗く笑いのこころ




【Editorial par koko 】

今年もまたカンヌ映画祭の季節が訪れた。
フランスでは映画祭開催に合わせて続々とコンペティション作品が一般ロードショーさ
れる。アルモドバルの新作『Etreintes brisees 』と ケン・ローチの新作『Looking 
for Eric 』をはじめとして、タランティーノやサム・ライミなどお馴染が続々登場。ケ
ン・ローチはあのサッカーの神様カントナを使ってきた。やはりいいセンスしてる

お墨付き映画はさておき、個人的楽しみといえば、まずはJacques Audiardの『Un 
Prophete』とJohnnie Toの『Vengence 』の2作品だ。特に『Vengence 』(報復という意
味です)は、あのフランスの顔であるロックスターJohnny Hallydayが主演の(たぶん)
思いっきり香港映画の流れを受け継ぐ映画だと思われる。

私は、昔っから香港映画の流れを汲む『うっそ〜!そこまでやるかぁ』というシーンの
連続が売り物の映画が大好きだ。『エ〜ッ!』と叫びながら目が笑ってしまうあのとん
でもないストーリーに脳内センサーが完全に毒されている。そんな映画にジョニー・ホ
リデイが出るとすれば、どう考えても大爆笑間違いない。これを期待せずして何を期待
しろというのか。

コンペティション以外の作品というと、フィナーレを飾ることになっているヤン・クー
ネンの『Coco Chanel & Igor Stravinsky 』(あのアメリのオドレィ・トトゥ主演の映
画と混同しないで!)と、La quinzaine des Realisateurs で紹介されるGrenn 
Ficarra とJohn Requaの『I love you Philipe Morris 』だろうか。後者はな・なんと
ジム・ギャリーとイワン・マグレガー共演によるおかまカップルの話だそう。

そういえばお約束事のように『天使と悪魔』を観に行ったけど、相変わらず映画として
はチンケな出来である。だけど、ヴァチカンをもってしても、やはり『ダ・ヴィンチ 
コード』のインパクトには敵わない。それほど<ダ・ヴィンチ>という名前にすでにミ
ステリアスな雰囲気が漂っているということか。それとも『天使と悪魔』の原作本から
あまりにストーリ端折りすぎてわけがわからなくなったためか。

それは各自ご覧になられてからご判断ください。





【お題 その1】

立川一門からみた江戸落語


「落語とは人間の業の肯定である」とは立川談志の言葉だそう。


日本から友人がくるというので読みたい本をアマゾンで買って友人宅に送りつけ持って
きてもらった。こちらで注文して買うと値段が3倍になってしまうので誰かがパリにくる
まで「日本語で読書したいしたい病」発病を抑えるために目新しい発見を求めて図書館
や本屋を彷徨う。
今回も念願の本が到着して当然あっというまに読んでしまった。そのうちの2冊が落語家
が書いた本だった。1冊は立川談春『赤めだか』、そしてもう1冊は立川志らく『全身落
語家読本』。
『赤めだか』は奇特にも私のメルマガを読んでくれる友人の推薦本で、前座時代の苦労
ばなし満載のエッセイ。<シラク>じゃなくって<志らく>の本は落語解説本のような
感じで、たまたま気になっていたのを買ってみた。二人とも立川談志の直弟子だなんて
考えもせず買ってたもんで、本が手元に来たときにはちょっと吃驚した。

大阪生まれ大阪育ちの私は、立川談志の落語を聞いたことがないもんで、談志のなにが
そんなに凄いのかということがこの2冊ではじめて理解できた。さらに落語と絵画は一緒
なんだということもよくわかった。古典落語というものを基本にしながら現代に適応し
たものを創作していかなければならない。それをより面白く聴かせるには、まずは落語
家のしゃべりの基本テクニック(リズムとメロディ)は最低不可欠な条件だ。そこに落
語家個人個人のキャラや現代性を付加させていくってな具合らしい。

クラシック音楽がクラシック音楽愛好家の間でしか広まらないように、現代に生きる画
家がいかに上手なアカデミック絵画を描いたところで現代アートの嵐に踏み潰されるに
きまっている。もちろん落語に至っては落語がわかったふりをしている自称落語通のじ
いさん達の間でしかもてはやされず、作品の中に時代に呼応した創造性のせめてカケラ
でも存在しなければどんなに上手に真似ても意味ないよ、とこの二人の落語家は言って
いるのである。本人の自己満足で終わってしまっては落語も衰退の一途を辿ると危惧し
ているわけだ。落語協会の実態は、日本の洋画やアカデミックな日本画を描いて胡坐を
かく日本画壇の団体と似ていると思う。

落語愛聴者人口を増やすには、若い方々にも聞いていただかないといけません、という
わけで立川一門は奮闘しているらしい。おまけとして江戸落語の歴史で5代目古今亭志ん
生の落語家としての評価がいかほど高いかも(知ってはいたが)再認識することとあい
なった。




【お題 その2】

上方芸能  つまりは 藤山寛美



談志の師匠である5代目柳家小さんの落語を小さい頃テレビで見ていた(聞くほどではな
い)記憶がある。今の3代目桂米朝と並んで人間国宝だったんだってさ。桂米朝は大阪で
は落語の守護神みたいな物知りお爺さんだから、私でも時折彼の落語や話を聞いてい
た。

だけど私が自主的に深夜チャンネルで落語を聞くというのは、やはり桂枝雀だったよう
な気がする。(もちろんそれ以前に忘れられないキャラとしては六代目笑福亭松鶴なん
ていうとんでもないお爺さんもいたっけ。)枝雀が若くして死ななければ、今頃きっと
上方落語の重鎮として名を覇していたことだろう。これは上方落語の不幸である。枝雀
はまさしく落語を今のニーズに合せながら進化させていった代表選手のような落語家だ
ったと思う。

立川の名を冠する二人の落語家が敬愛して止まない志ん生のような落語家を考えた時
に、私の頭には一人の上方芸人の舞台の記憶が甦った。

それは 松竹新喜劇の看板スター 藤山寛美 である。

笑いの心は神から与えられたもののみが具現化できる、とは私の藤山寛美の舞台を観た
あとの感想。

大阪の道頓堀にある中座へたまに芝居を見に行ったけども、その時の衝撃は今でもはっ
きり覚えている。どうかんがえたってこんな芝居は小学生の子供好みのものではなかっ
た。しかしそんな私でも彼が天才だということはすぐにわかったもんね。存在そのもの
が芸術だったようなところがある人だけども、舞台での寛美さんは『狂』に限りなく近
い、何かがとり憑いたような天才だったと思う。その天才度はピカソに匹敵すると思う
(これは誇張ではありません)。ただ上方の言葉を駆使して演じる舞台なので、ローカ
ルで刹那な芸術だから、ピカソのようにインターナショナルな知名度が成立しなかった
だけの話。

あんな人この平成の世でもいるのかな?




【お題 その3】

フランスのお笑い


フランスではイギリスほどではないにしろ舞台が発達してるからいろんな役者が活躍し
ている。最近の若い役者はイギリスで武者修行をつんで、英仏バイリンガル役者となっ
て大いに活躍するパターンが増えている。まぁ、それでもポピュラーなお笑い系芸人
(フランス語でいうところのhumoristeというカテゴリー)は当然フランス語を駆使する
のでやはりフランス語圏においての人気しか持てないのが辛いところ。

大抵は一人で舞台をすることが多く、二人組でも日本の掛け合い漫才とは全く違う形態
だ。一人にしても二人にしても芝居に近いから、台本書く人間の能力もかなり無視でき
ない。大概のユーモリストは一人で1時間半ほどの舞台に立ち続けることになる。イッセ
ー尾形の一人芝居みたいな感じで、しばしば爆笑問題風の政治ネタが使われると想像し
ていただければそれほど間違ったものにはならないでしょう。

この国では一発芸なるものでは食べていけないのです。

だから吉本興業はフランスには進出できません。あしからず・・・・


『Coluche, l’histoire d’un mec 』 (Antoine de Caunes 監督2008年仏)という作
品は、フランスでも伝説となりつつあるユーモリスト 故コルーシュの大統領選挙事件
前後の生活を描いた映画だ。というのもミッテランが立候補する1981年の大統領選挙
に、笑いを追及するあまりジョークで立候補したのが冗談にならなくなってきて、本当
に大統領になりかけてしまった人だから。(この人物のことはまた別の機会にしっかり
書かないといけないので、今回は名前だけにしておこう)

現役で一番のっているユーモリストにGad Elmalehという人がいて、セザールの司会もし
ばらく務めた。今年自分で監督主演した映画『Coco 』 が公開されたけど、これは自分
が舞台でよく演じるキャラクター<Coco>のスケッチを元に映画化したもの。だけども
し日本でDVD借りてみるんだったら、やっぱり2003年のフランス映画『Chouchou 』をお
勧めしたい。昔このメルマガでも少し紹介したことがあるこの映画はかなり笑える。

小粒ではあるが、今ちょっと世間を騒がせているユーモリストにDieudonneという人がい
て、この人は極右でしられる過激な政治ネタを展開する芸人。(上手く訳はつけれない
けど芸名からしてかなり挑発的です。)今度6月に行われるヨーロッパ議会議員選挙に立
候補していて、しかも最近何かにつけてはユダヤ人を敵対視する発言を繰り返しては訴
えられて、裁判沙汰になっている人物でござい。あまりにひどいので選挙立候補資格を
はく奪されそうな状況なんだけど、それでも彼は吠える。それが彼のユーモリストとし
ての政治との関わり方なわけ。

もちろんフランス版コロッケみたいなものまねもあるけど、一番人気を博すのはやはり
政治家の真似を得意とする芸人たち。結局、政治抜きには語れないのがこの国の笑いか
も。
爆笑問題の太田光もどきが集まったのがフランスのお笑い界を形成しているって。
もちろんそうじゃない人もたくさんいるけどさ。



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24日はカンヌ映画祭最終日です。
その結果を知ったころには、このメルマガが発行されてしまっているので、ここでは触
れることができませんが、今年は比較的静かな映画祭だったようです。世界的不況が禍
いしていて派手さに欠けるらしいです。それでもシャーロン・ストーンは張り切ってお
ります。

是枝監督の『歩いても歩いても』はフランスでも高い評価を得ていて、結構長期にわた
って映画館のスクリーンを占拠していました。それよりも少し前には黒沢『東京ソナ
タ』も公開されていましたし、もちろん『崖の上のポニョ』もちゃんと紹介されていま
す。

でもやっぱり私は『ヤッターマン』が観たい!
深田恭子のドロンジョがどうしても見たいのです。

どうかフランスの会社が配給権を買ってくださることを祈ってます。

今回もお粗末でございました。
ではまた次回。
koko



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お便りはこちら yuriko.noritake@wanadoo.fr
発行システム:「まぐまぐ」http://www.mag2.com
配信中心はこちら http://www.mag2.com./m/0000191817.html


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