2008/10/05
サクレ・フランセ 40号 フランス若手監督
【Sacres Francais! 40号】 2008年10月05日発行 フランス若手監督の作品を知ってる? 嬉しいかな悲しいかな、年下の監督が増えてきましたねぇ、、、、 【Editorial par koko】 今日は10月2日木曜日。Victor Hugoのスターバックスで、スコーンとただのアメリカン コーヒーを注文した。近所のコインランドリーで洗濯ものを回している間の時間潰しに ここで本を読むのが習慣となっている。今日は時間帯がお昼だったからかもしれない が、たくさんの学生がいた。外の見える椅子を確保してParisScopeをパラパラめくる。 毎週水曜日に映画がロードショーされるので、何が始まって何が終了したかを確認し た。ふと外に目をやると街路樹が大きく風に揺らいでいる。空の色が急激に変化して突 如雨が降り出した。雨かと思ったらそれは雹だった。洗濯機が止まる時間近くになると 青空が戻ってきた。今年の私は本当に晴れ女である。ここのところ外で雨にあったこと がない。何かいいことしたっけ? 昨日今日と何もやらずひたすら寝た。風邪をひいたのだ。だけどどちらにしても何もや ることがなかったと思う。なぜならこの火曜日と水曜日はユダヤ人のお正月(Roch Hashana)で、大切な仕事関係の人たちはみなさんお休みだからだ。ここのところ私はユ ダヤ人に囲まれているような気がする。友人はもとより、今度引っ越しするところはユ ダヤ人ばかりが住む住宅だ。大抵は親切な人たちだけど、あの頭の上にのっている帽子 には若干の抵抗がある。ないといえばそれは嘘だ。黒づくめの男たちが数人固まって歩 いている姿は、他の人たちと交わるのを拒絶するような雰囲気を醸し出している。 アメリカの経済問題で今注目されている経済救済処置の議会投票も、このユダヤの正月 休暇のせいで木曜日以降の話となるから、少しは時間稼ぎができてブッシュも助かって いるに違いないと思う。日本ではお客様が神様だから世の中はお客様の要望に合わせて 動いている。ユダヤ人は神が唯一絶対だから神が望むユダヤ暦にのっとって仕事をして いる。個人的な経験でいえば、仕事の規模が大きくなればなるほど、ユダヤ人が絡んで くる可能性が高くなるので、一般的なカレンダー通りに物事が進まなくなってくるのを 痛感する。彼らは毎週金曜日の午後から仕事は絶対にしないし、ユダヤ新年から数えて 10日目にはYom Kippur(ヨム・キプール)といわれる大贖罪の日があり、24時間断食す る。フランス語でこの日のことをJour du Grand Pardonというけど、キリストは全人類 の罪を背負って一人で罪を贖ったように、神を信じるものはこの日に一切の活動を停止 して苦行し罪を贖わなければならないというようなことらしい。でないと恐ろしいこと になるそうな。 私のように限りなくいい加減な仏教徒はどうせーっちゅうねん! 誰にでも生きる権利ぐらいはあるだろうが。 とぼやきつつ、今日はPariscopeを片手に最近のフランス映画についてちょいとご紹介し ていきます。 今回もよろしくお付き合いください。 【お題 その1】 『Le premier jour du reste de ta vie』 Remi Bezancon監督 2008年仏映画 単館系でのロングヒットもさることながら、シネコンで頑張れる映画というのは大した ものだ。カンヌで賞をとったり、かなり強力な宣伝をした場合はともかく、口コミで人 が集まるのでロングランになっているというのは、監督冥利につきる結果である。 そのいい例がこの『Le premier jour du reste de ta vie』というRemi Bezancon監督の 2作目長編映画である。11週目というからそろそろ3か月に近くなっている。 この映画の何がそんなに人を集めるのか? 一つには映画が普通のフランスの5人家族のそれぞれの人生を扱っているからで、みんな が共感できる部分がたくさんあるからだと思う。2つにはキャスティングの妙と音楽セレ クションの妙、それから会話の軽妙さが合い混じって、とても現代的な雰囲気を醸し出 しているからだとも思う。 Remi Bezancon監督の1作目長編映画の評判もなかなかよかったけれども、私は見逃して しまった。ちょっと後悔。だけど客観的に考えて好評な映画が2本続いたということは、 彼の今後に興味を持って当然じゃないだろうか。 参考までに父親役をしているJacques Gamblinは1998年の今村昌平作品『カンゾー先 生』 に出演している俳優だ。2002年にはBertrand Tavernier監督の『Laissez- Passer』 で見事にベルリン映画祭最優秀男優賞を受賞した。遅咲きの男優の典型であ る。 ※映画のmaking of はこちらで(仏) http://www.dailymotion.com/related/x631re_le-premier-jour-du-reste-de-ta- vie_shortfilms/video/x5tq5l_le-premier-jour-du-reste-de-ta-vie_shortfilms もうひとつひそやかにロングラン街道を走っているアメリカ映画がある。 『The Bank Job』という実際にロンドンで起こった銀行強盗を映画化したものだ。 ※映画の内容が知りたい方はこちら。(日本語) http://www.cinemaonline.jp/review/bei/2139.html この映画が興味深いのは、実際銀行強盗した犯人が撮影に協力しているからだと思う。 実際に何が起こったのか知りたければ映画を見に行くしかない。そんな興味がフランス 人の足を運ばせる要因になっているんだろう。キャスティングを見て映画館に足を運ん だ私のような人間には、つまりアクション映画を期待してきた人には、途中まで辛いと ころがあるけれど、最初から興味の視点が隣国イギリスの機密情報に関することだとわ かっていればとても面白い映画である。 【お題 その2】 『La Belle Personne』Christophe Honore監督 2007年仏映画 『La Princesse de Cleves』Madame de Lafayette 1678年仏小説 フランスらしいという切り口で最近の映画を見ると、現在公開中の『La Belle Personne』 はとてもフランス的な映画だといえる。 まずは映画が、フランス文学の代表作である『クレーヴの奥方』を下敷きにしたもので あるということと、主役のLouis Garrel(ルイス・ガレル)がヌーベルヴァーグの映画 を彷彿とさせるほど怪しい魅力に満ちているからだ。 さらに大切なのは、Christophe Honore(クリストフ・オノレ)監督の今までの作品の多 くが、新しいフランスを映し出す珠玉の作品群となっている点からも想像できるよう に、彼の作品はフランスそのものである。日本では何が公開されたんだろう?3作目の長 編『Dans Paris』(2006) もしくはその後の『Les Chansons d’amour』(2007)だろ うか。もし『Les Chansons d’amour』を観る機会があるのなら是非見てほしいと思う。 今どきミュージカル映画なんてと思われるかもしれないけれども、ジャック・ドゥミの フランスミュージカル映画の系譜を受け継ぐ記念的作品の一つである。もちろんここに はLouis Garrelが出ていて、オノレ映画に欠かせない存在となっている。 ≪La belle personne≫というのは、直訳すると「美しい人」ということになるけれど、 それは別に女性だけの話ではなく、みんなが見とれるほどの魅力を持った人に使われる 表現だ。ただの美人・男前ということではなく、その人の挙動も含めすべてに惚れ惚れ するというようなときに使う。先日亡くなったポール・ニューマンなどはその代表とい える。特に『クレーヴの奥方』にはたくさんのBelles Personnesが登場するけれども、 その中でも一番魅力的な人物が、Jacques de Savoie-Nemoursであり、映画では LouisGarrel演じるところのイタリア語の教師M.Nemoursである。現代のBelle Personne はプリンスでも貴族でも資産家でもなく、ただの一教師だが、みんなが好感を持って接 する人物として描かれている。女性は向こうからやってくるし、人生に不満があるわけ ではない。絵にかいたような独身貴族である。そんな人物をLouis Garrelは自然に演じ ている。その教師に恋する女生徒が、小説でいうところのクレーヴの奥方ということに なる。 『La Princesse de Cleves』は、現代恋愛小説のはしりである。昔フランスに来て間も ないころに、フランス文学者の知り合いに何を読めばいいかを尋ねたら、「クレーヴの 奥方」という返事がかえってきた。学生時代はほとんどフランス文学に親しまなかった ので、当時はわけがわからなかったけれども、もう8年もこの地に腰を落ち着けた身とし ては納得のできる返答だと思う。 【おまけ】 『Faubourg36』 Christophe Barratier 監督 2007年仏映画 この人もある意味でフランス映画を代表する監督かもしれない。長編第1作目『Les Choristes(コリスト)』で大当たりを出したので、ただの一発屋かとおもいきや、先週 から公開されている2作目も悪い映画ではなさそうだ。ただ私の好みじゃないから見には 行かないとおもうけども、出そろった批評の感じからいくとなかなかのようだ。彼も実 力を2作目で証明したといえる。一作目同様主役にGerard Jugnot(丸顔のちっちゃなオ ヤジです)の顔がみえるのは、「コリスト」制作資金を出資した一人で、この大当たり でガッポリお金を手にいれた人物であると同時に、フランスでは定評のあるコメディア ン集団の一員としてずっと第一線で活躍する俳優だからだ。 この映画が日本に来る可能性が高いような気がするなぁ。 というのも1936年のパリの劇場を舞台にした映画で、パリらしいといえばパリらしい映 画だから。 参考にしてもらえれば幸い。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 先日パリの空港会社の下請けとしてカバンの運びだしをしている会社の社員たちが、旅 行者のカバンから計画的に盗みを働いていたことが判明。盗んだ品はe-bayなどで売りさ ばいていたそう。盗みの対象になったのは、パリでトランジットする客のカバンだった そう。 友人間でもi Phoneの盗難など、相変わらずパリは物取りが多くて困るにゃ〜。 みなさん、パリに来たら気をつけてください。 パリは命は取らないが、モノを取る町です。 今週末はNuit Blanche。9月の末から始まったパリコレの一つの目玉のような感じで、今 日はソニア・リキエルの40周年記念パーティも催されました。40年の彼女の業績は素晴 らしいものす。しかも68年にサンジェルマンに店をオープンしたというのが、女性デザ イナーとして何か特別なイメージを常に持ち続ける理由のような気がしました。 10月はやはり文化の匂いがプンプンです。 ではまた次回。 チャオ。 koko ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ Sacres francais! <映画と美術とパリジャンと> お便りはこちら yuriko.noritake@wanadoo.fr 発行システム:「まぐまぐ」http://www.mag2.com 配信中心はこちら http://www.mag2.com./m/0000191817.html


