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パリに住む筆者が、なにがなんだかわからないフランス人という人達を映画や絵画作品を通して解剖してみました。Sacres Francais!(サクレ フランセ)とは「とんでもないよ、フランス人」という意味です。

  • 発行周期 隔週刊
  • 最新号 2009/11/25
  • 部数 142部
  • メルマガID 0000191817
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2008/04/30

サクレ・フランセ 36号 ナルシシズム

【Sacres Francais! 36号】               2008年4月30日発行


ナルシス、その垂れた頭はどこを見つめる・・・


【Editorial par koko】

フランス人の友人と夕食の席での会話。

F:「中国と日本ってどうして仲が悪いの?」
K:「だってあの人たちっていつも自分が一番と思ってるでしょ。日本は属国のようなも
んよ」
F:「でもほんと中国は凄い国だよ。これから経済的にも凄いし・・・」
K:「どうしていつもフランス人は中国を過大評価するのかなぁ」
F:「ま〜確かに勝手に凄いと思っているところもあるな」
K:「そ〜よ、だって毎回眠れる獅子が甦るみたいに言われて、結構眠ったまんまだった
ことがよくあるからね」
F:「なんだかフランスのこと言われてるみだいだよ」
K:「だって似てるもん、2つの国は。どっちにしたって自分が世界の中心なんだから!」


ということで、いつも私は世界の中心の人たちにやり込められて今日まで生きてきたの
で、たまの機会にお返しをせねばならず、このような会話に興ずるのでした。

それでというわけではないけれど、今日はナルシシズムをテーマにちょいとメルマガで
す。




【アート−1】

フランス国立図書館リシュリュー館で2008年3月4日から6月8日まで開催されている
『Daumier.L’ecriture du Lithographe』と題されたエクスポジションでたまたま私を
立ち止らせた1枚のリトグラフから今日は話を始めましょう。

Honore Daumier  “Le beau Narcisse”(1842,lithographe)
http://expositions.bnf.fr/daumier/grand/034.htm

まず私の頭に浮かんだ図が映画『The Load of the Ring』の一場面。Gollumがジキルハ
イド状態になって会話している場面。
そのあと絵の下に書かれているタイトルを読むと、これがナルシシズムについての話だ
とわかります。古代神話シリーズ50枚のうちの一枚がこれ。

『美しいナルシス』と題されたこの一枚の絵が気になって、ナルシス(Narcisse)の神
話について調べてみました。

こうなるとどうしてもEcho(エコ) とNarcisse(ナルシス)の話に行き当たる。

HeraはZeusの女兄弟であり嫁でもある女神です。Heraの旦那であるZeusがほかの女とい
ちゃいちゃしている間、Echoは彼女の気をそらすために長々とおしゃべりをします(話
のバージョンは色々あるようですが。)それを知ったHeraはEchoをお仕置きするわけで
す。
おしゃべりな女が二度と自由に喋れなくなるように、HeraはEchoが自分から話が始めら
れないように、そして相手が話た最後のセリフしか話せないようにしてしまったので
す。ホントギリシャ神話の神々はいつもやることが凄い!

そしてEchoがNarcisseに恋します。相手はあの美男子で誉高いNarcisse。彼に話かける
ことができず、思いを伝えられない苦しみにもだえながら声だけを残してだんだん岩に
なっていくEcho。(かなり怖い場面だ!お岩さん状態です)しかしNemesisという女神が
彼女の仇をうちます。Narcisseが自分自身だけを愛して、そのその愛する人の姿が手に
届かないものになるように呪をかけるのでした。

その話の末路とは、、、
泉に映った自分の姿に恋して、その姿をとらえようとすると消えてしまう相手(自分の
姿)に恋い焦がれて衰弱死の末路をたどるのでした。これも壮絶!

彼の死後、そこには水仙(Narcisse)の花が咲くのです。あの水仙が頭を垂れる姿は、
Narcisseが泉に映る自分の姿をじっと見つめる姿を現しているわけでした。なんか切な
いな〜。

Echo(エコ:木霊、こだま)といい、Narcisse(ナルシス:水仙)といい、全くどっち
の名前が先についたんだかわかりませんが、ストーリー的にはかなり魅力的なおどろお
どろしいお話です。

そんなわけでこの題材はたくさんの画家の興味を引くことになりました。




【アート−2】

カラバッジオ『ナルキッソス』(Le Caravage 1595)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Image:Michelangelo_Caravaggio_065.jpg


ナルシス(所謂ナルキッソス)を題材にした有名な絵が幾つかあります。そのうちの1枚
がこのカラバッジオの絵。

これはいわゆる自他ともに認めるおかま画家だった彼が、満を持して描いたホモセクシ
ャリティをテーマにした絵です。それはもう美しい絵ですね〜。バッカスの絵と共に絵
画史に残る名作です。今度ローマに行ったら絶対チェックの絵です。

おかまはひたすら美を求める傾向があるのは、このパリの生活でよく理解しています
が、確かにこのカラバッジオの絵を見ると美に対する舐めるような画家の賞賛が感じら
れます。



もうひとつ有名な絵がこちら。
ニコラ・プッサン『エコーとナルキッソス』(Nicols Poussan 1627−1630)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Image:Nicolas_Poussin_040.jpg

ここではもうナルキッソスは死んでしまってるんです。そしてエコーも徐々に岩に溶け
込んでいこうとしているのでした。キューピッドがもつ火は、恋に焦がれるエコーのハ
ートに火をつけたという意味と、ナルキッソスのお葬式のための木材に火をつけるとい
う意味が込められています。愛と死というのがこの絵のテーマってところでしょうか。
それでナルキッソスの頭にはすでに水仙の花が咲き始めています。
あ〜なんて悲しい絵なんだろう。こんな悲しい絵がルーブル美術館にかかっているのを
私は知りませんでした(ん〜、もしかしたらかかってないかも、今度行ったらチェック
して来よう)



【最後に】

余談ですが、オウィディウスの『変身物語』をフランス語で検索すると、Ovide『Les 
Metamorphoses』と書くとわかりました。やめてほしいよ、名前の綴りが変わっちゃって
なんのことだかわかんないじゃないですか!

というわけでメルマガのおかげで今回も勉強になりました。

そして、現在フランス国立図書館ではドーミエ展と併設でSophie Calle(ソフィ・カ
ル)展が開催されています。去年のベニスビエンナーレと同じものが展示されています
(内容についてはまたの機会に)。それよりもなによりも展示スペースが図書館のメイ
ンの部屋で、あまりの美しさに吃驚です。この期間中にパリに来られる機会がある方
は、言葉の壁があろうとも、是非このエキスポジションに足を運んでくださいね。
2008年6月8日まで開催中です。
http://www.culture.gouv.fr/culture/actualites/conferen/albanel/sophiecalle.htm



ではまた次回。
今回も読んでくださってありがとうございました。
Koko


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