2009/11/03
ゾーン#808080 (第12号)
◆――――――――――――――――――――――――――――――――― ◇ ゾーン#808080 不定期刊 2009/11/03 ◇ 語り 実装者(ITミステリーハンター) ◇ 番外編 【幽霊マンション】 ◆――――――――――――――――――――――――――――――――― ここではいつも、発行者の職業であるシステム開発に絡む不思議な体験を お話しているのですが、今回は、仕事とは関係のない体験談をお話したいと 思います。 番外編とお考えください。 ちなみに、既にお気づきとは思いますが「ゾーン#808080」でお送りして いる物語は、はっきり申し上げて発行者の創作物です。まあ創作物といえば 聞こえはよろしいが、でっち上げの嘘八百なんですね。 まあ、さすがに実話であると思われている方はいらっしゃらないでしょう が。 もしそういう方がいらっしゃっるのなら、ご期待を裏切ってしまって、ま ことに申し訳ありませんとお詫びしておきましょう。 しかしながら、この番外編でお送りするのは、「紛れもない実話」であり、 間違いなく、発行者が本当に体験したことなのです。 *--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*-- 【幽霊マンション】 自信を持って申し上げますが、私は霊感の強い方ではありません。 お化けや幽霊などまず見ることはないわけですが、しかしながら、そうい うものはあるもんだと固く信じています。信じているのになぜ自分の前に出 てきてくれないんだというフラストレーションから、このような話を書いて いるのだと言ってもいいほどです。 「実装亭炎上の上方落し噺」や「小噺マラソン」でも、怪談噺を適宜混ぜ 込んできましたから。 「え?ありましたっけ?怖い噺」 そんなこと言わないでください。 しかしながら、そのように霊感のない人間でも、否が応でも不可思議な体 験をしてしまうことがあります。 それは、「霊的な磁場が強いフィールド」の中にいるときなんです。私は、 そのことを否が応でも痛感する体験をしてしまったのですね。 阪神淡路大震災のあと、しばらく私は大阪に一人で住んでいました。職場 が大阪にありましたので、通勤できなくなってしまったからです。JR、阪急、 阪神の各鉄道が、軒並みダメになってしまいましたから。 地下鉄御堂筋線の東三国駅から徒歩一分というところに、ワンルームマン ションを借りました。七階建てのマンションの六階で、東の角部屋です。 南向きにベランダがあり東に窓があって日当たりもよく、暑い季節になっ ても窓を開けていれば、風のある日にはクーラー要らずと、非常に条件のよ い部屋でした。新御堂筋のすぐそばで、夜中でも車がぶんぶん走りますから、 「しまった。こんなところじゃ寝られないぞ」と最初は後悔しましたが、人 間おかしなもので、一週間もすれば慣れてしまいました。 車の走る音というのは、無機的なものですから、うるさくても気にしなけ ればそれまでです。何も意味がありませんから。それよりも、夜中に人がぼ そぼそと喋る声のほうが気になって眠れないものです。 ただ、とにかく狭い部屋でしたね。正真正銘のワンルームで、収納といえ ば作り付けのクローゼットだけという悲惨さであって、とても四十近いおじ さんの住むところではありません。一時的な退避場所だからというので我慢 できたと思います。 結局そのマンションには一年近くいることになりました。各鉄道は早くに 復旧しましたが、そのマンションにいるときに、急に横浜へ五ヶ月間出張に なったりして、引き払っている時間がなかったんです。 部屋を引き払うとき、すっかり荷物を運び出した後「え?この部屋ってこ んなに広かったの?」と思うことが多いですが、その部屋に限っては、荷物 がなくなっても「そうか。やっぱりこの部屋狭かったんだ」と妙に感心した のを覚えています。 さて、そのマンションですが、築年数がいい具合に古くて、元はといえば、 隣にある形成外科病院の若い医師や、看護士、看護師さんたちの寮だったん です。しかし、だんだんと寮住まいを嫌う人が増えてきて、空き室が増えた ので、一般の人にも貸すようになったんですね。 住み始めてからしばらくして、どうもそのマンションがおかしいことに気 がつきました。 とにかくよく金縛りに遭うんです。寝ていてふと目が覚めると、体が動か ないというあれですよ。断言しておきますが、そのマンションに引っ越すま で一度だって金縛りに遭ったことはありませんし、そのマンションを出てか ら今日まで一度もありません。 さらに、夜中に誰か東の窓をコツコツ叩くんです。六階ですよ。しかもベ ランダではなく東側の窓なので、足場も何もないですから外部からノックで きるはずがありません。 電車が通ったときに風圧で窓が揺れてバコッと音がするときもあるんです が、それとは違って、明らかに人間がコツコツ叩いているとしか思えない音 なんです。 そういった現象よりも何よりも、そのマンション、入り口からしておかし いんですよね。 入居したのはまだ寒いときだったんですが、夏近くになると、マンション の入り口に、向こう側が霞んでしまうほどの蚊柱が立つんです。真昼間でも ですよ。周りに木などないんです。どういう条件が揃えば、これほどの蚊柱 が立つんだろうと、薄気味悪かったです。 とまあ、そのように妙なことはあったわけですが、私は気にせずそこへ住 み続けていました。もしかすると霊感の強い人なら、一週間でたまらず逃げ 出していたのかもしれませんが、冒頭で述べたように、私はとんとそっち方 面には不調法ですから。 横浜出張を終えて戻ってきてからも、色々と理由をつけてそこに住み続け ました。 なんといってもひとりは気楽でしたからね。通勤も楽ですし。 しかし、年の暮れも近くなったある日、さすがの私でも転居を決意する現 象が起こってしまったんです。 その頃はひとりの気楽さで、休みの日ともなると朝から酒をかっくらって、 一日中酔っ払って寝ている状態だったんです。今でこそ、そういう生活はき っぱりやめていますが、私の場合心が弱いところがありまして、何かのきっ かけで、そんな生活に戻ってしまうかもしれないぞという気持ちは常にあり ます。 早く、システム開発の仕事から足を洗って時間を好きなように使えるよう になりたいとは思っていますが、もしそうなったらそうなったで、昔よりも ひどいことになるかもしれない。 まあそんなことは、今お話しすることでもありません。 その日も、日曜日ということで、朝から酒を飲んで寝ていたのですが、表 がワイワイと騒がしいんです。 ちょうど私の部屋の前にエレベーターがありまして、別の部屋に友人が大 勢遊びにでも来たのだろうと思いました。 「静かにしてくれよ。寝れないじゃないか」と思いましたが、時計を見ると 午後零時少し前です。要するに真昼間ですね。そんなときに酒を喰らって寝 ている私が悪いのであって、少々騒いでいるからといって文句を言える時間 帯ではないです。 まあとりあえずどんな奴が騒いでいるのかと思い、ドアのレンズを覗いて みたのですが、誰もいません。あれ?おかしいなと思いながらベッドに戻ろ うとすると、またワイワイという声が聞こえてきます。 不思議に思って、再度レンズから覗いてみても、やっぱり誰もいないんで す。 冷水を浴びせかけられたようになって、酒の酔いなどいっぺんに吹っ飛ん でしまいました。 さすがにこれはちょっとまずいんじゃないかと思い、ベッドに戻って布団 をかぶり、息を殺していたところ、誰かが部屋の中に入ってきたような気配 がしました。 当然鍵をかけていましたし、そもそもドアは開いてないんですよ。 それと同時に、体を動かすことができなくなりました。金縛りです。どん どん気配が近づいてきたかと思うと、突然私の両方のふくらはぎがぐいぐい と押されたんです。指圧みたいにね。 思わず声を上げそうになりましたが、必死で我慢していると、低くくぐも った声が聞こえました。 「寝たふりしたってだめだよ。起きてるんだろ?なんか文句あるのか?お 前」 それからどうなったかよく覚えていません。気を失ったのか。そもそも全 てが、酔っ払った私の夢だったのか。 そのことがあってから二週間後、私は逃げるようにそのマンションを引き 払いました。 そのマンションですか? はい。ちょっと前にふと思い出して、グーグル ストリートビューで見たときは、まだあるようでしたよ。 あの、蚊柱もね。 *--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*--**--*--*--* 【禁無断転載】 ====================================================================== 編集後記 ====================================================================== 1.次号の発行日は未定です。 2.ご意見ご感想は以下までお送りください。 impl_person@yahoo.co.jp 3.『実装者公式ブログ - 実装者流』 http://ameblo.jp/impl-person/
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