2009/06/05
縄文塾通信 9年6月号-2(389号)
************************************************** ◎寄稿・ご意見など歓迎します。 ◎転載は歓迎いたしますが、出処だけは明記下さい。 ◎ご感想・ご意見などをお寄せ下さい。 mail to : nakamura@joumon-juku.com> ************************************************** 縄文塾通信 <9年6月号−2(389号)> 縄文暦12009年6月5日 ★縄文塾HP http://joumon-juku.com ★中村キャッスルゲイトHP http://joumon-juku.jp ★縄文ブログ http://joumontn.jugem.jp/ ★「縄文塾通信」メルマガ登録は http://www.mag2.com/m/0000184916.html ************************************************** <6月号ー2(389号)目次> ************************************************** <縄文塾通信6月号−2> ◎巻頭言 中村 忠之 ◎F22導入は潔く諦めなさい! 中村 忠之 ◎中国アフリカ進出の真相 宮崎 正弘 ◎新国際通貨の幻想 おおなだ ◎奈良時代のホッケー 金谷 武洋 ◎広島の「樽ヘビ」 正藤 英夫 ◎6月五行歌 幾田 篤 ◎編集後記 ◎縄文塾通信<告知板> ◎推奨サイトの紹介 ************************************************** <巻頭言> ついにGMが倒産! 負債総額(日本円換算)約16 兆4千億円、強大だった肉食恐竜の最期である。今後株 式の60%を米政府が取得するという、かつて自由経済 を標榜したこの国の、なりふり構わぬ対応である。 年収5億円だったという無能な同社CEOだが、一方 日本の一流企業のトップの年収は約5000万円だとい う。 今年に入って、派遣労働者・季節労働者問題で日本の 企業をあれほど叩きまくったマスコミのおかしさを、き びしく指摘してきたが、この際すべての日本マスコミは、 大いに反省して日本の企業経営者に賞賛の辞を投げか けるべきではないか。 あとはGMと取引のあった日本の部品メーカーの去就 が気になる。またGMと深い関わりのあったスズキは、 700億円を超す債権があるという。日本政府の的確な 対応が期待されるのだが……。 (中村) ************************************************** ■□■━━━━━━━━━━━━ F22導入は潔く諦めなさい! ■□■━━━━━━━━━━━━ 中村 忠之 <おことわり> 本稿は、メルマガ “ 日本の進路 599号(05.26) に、『Fー22問題を考える』として投稿したが、その 後 、同文の中で)導入対象機とした垂直離着陸機シー ハリアーが、その後の情報で、後継機であるステルス 型戦闘機F35−B型=短距離離陸・垂直着陸機に順次 置き換えられるということから、その一部を書き換えた ものである。 ■□ 地政学は新兵器出現で陳腐化する ────────────────── 以前も書いたことだが、明治維新の際日本は近代的軍 隊を構築するに当たって、進んだ西洋文明の導入を急ぐ あまり、地政学を学ばなかった、あるいは地政学そのも のを知らなかったふしがある。 すなわち日本は、その地政学的立地に配慮することな く、結局当時最強といわれた西洋列強の陸軍および海軍 を手本にする、というより模倣するという手段を選んだ。 当初陸軍はフランス式、海軍はイギリス式を採用して きたが、1870年そのフランスがプロシア(プロイセン 1871年ドイツ帝国に統一)に大敗したことから、一転ド イツ陸軍を範とするようになる。ちなみに新たに制定さ れた大日本帝国憲法もプロイセン憲法をモデルにしたも のである。 そのあたり、詳しくは以下参照 ⇒ http://joumon-juku.jp/kaiyou/05.html 時代は下がり、大東亜戦争において、当初日本の空軍 力が真珠湾ついでマレー沖で大きな成果を上げたにもか かわらず、依然として「大艦巨砲主義」という亡霊を神 聖視することで、いたずらに乏しい国費を浪費し続け、 しかも制海権という意識も、制空権という思想に立脚し た立軍思想をまったく欠如したまま、いたずらに陸海軍 がそれぞれ勝手に戦略を立てて、みずから崩壊の道を辿 ったのである。 さて、地政学は新兵器と連動しているという点だが、 第一次世界大戦に当たって機関銃が実用化し、戦車と航 空機ののプロトタイプが出現した。また要塞攻撃のため の大口径臼砲が活躍した。 たとえば日露戦争において、日本軍の採用した機関銃 があの勇猛なコサック騎兵を無力化し、乃木将軍が多く の犠牲者を出しても落とせなかった203高地を、日本 防御のために設置していた大型臼砲を取り寄せた児玉源 太郎将軍が、その威力で短期間にこの難攻不落と思われ た203高地要塞を落城させている。 第2次世界大戦では、航空機や戦車と共に潜水艦が大 活躍したのだが、終盤ドイツが開発したV1・V2ロケ ットがロンドン市民を恐怖の底に突き落としたことは有 名で、戦後アメリカが、そうした科学者を多く亡命させ たことで、その後ミサイル発展の礎(いしずえ)を築き、 湾岸戦争からイラク侵攻作戦においてのミサイル活躍 の経緯を見れば、航空機の時代からミサイルの時代に完 全に移行したという事実を認めざるを得ない。 しかもそのヴァリエーションときたら、「地対地」と いっても、弾道ミサイルという戦略的兵器から一人用の ロケットまで網羅され、その他「海対海・海対空(地)・ 空対空(地/海)」など無限と言って良いほど多様性を 誇っている。 ミサイルの出現は、ある意味でかつての意味での「制 海権・制空権」という地政学上のカテゴリーを陳腐化さ せたと言っても言い過ぎではないであろう。 ■□ F22は高価なオモチャ?! ──────────────── 前置きが長くなったが、そうした環境下において日本 の防衛省は、現在の主力戦闘機F15/F2の後継機と して、F22ラプターの導入を熱望していた。 さて経済環境も最悪ないま、果して1機150億円と もいわれる高価なF22ラプターを、すんなりと採用し ていいのだろうか。しかもそれをお決まりのライセンス 生産すれば、ゆうに200億円を超えることすら予想さ れるだろう。 たしかに同機は、最後の有人機といわれる高性能を誇 るステルス機で、1機でF15/16/18などの現役 配備中の米名戦闘機を相手にした模擬空中戦の結果、 「144対0」「241対2」という圧倒的な実力を示し たよいう桁はずれた実力を持つ名機であることは否定で きない。 ここで考えるべきことは、この「最後の……」という 点である。これは航空機がこれ以上の能力を持てば、人 の力では操作不能であるという、ギリギリの限界点を意 味している。つまりそのくらい同機は、パイロットに過 酷な精神的・体力的消耗を強いることになる。すなわち パイロットのちょっとした体調不良や判断ミスによって、 貴重な人命と高価な機体を同時に失うことになるのだ。 現在アメリカに於いては「(21世紀の)フューチャー ・ウエポン」として、陸・海・空のそれそれ無人兵器の 開発に取り組んでいる事実を知る必要がある。その前提 としては、イラクにおける予想外の人的損傷が発端とな っていることは疑いない事実であろう。 さて日本の航空自衛隊は、一体そうした高価なF22 を何機導入したいと言うのだろうか。ここで述べた課題 以外にも、日本では「秘密情報保護」という観念すらな く、しかも専守防衛という大きな制限を受けた中で、こ の高価な航空機を一体どのように運用しその能力を生か すという、総合戦略的要素を持ち合わせているのだろう か。 第一いざ(仮想敵国からのミサイル攻撃を受けた)と いう時に、高価な航空機を避難させるための、安全な避 難壕を持っているのか。ただ子供が新しい高価なおもち ゃをねだるように、安易な正面整備だけに固執する愚だ けは避けて欲しい。 仄聞するところでは、F22のステルス性を高めるた めの塗料は日本の中小塗料メーカーの製品で、「一切他 の企業には占い」という契約になっているのだという。 勿論ステルス性を高めるためには、日本のお家芸であ るチタン加工技術、複合材としてのカーボンファイバー など、日本発の技術が満載されているのだが、それ以外 にも表面に受けたレーダーを乱反射させるための空気力 学上の技術など、むしろ日本の得意分野はいくらもある。 問題はむしろ、「武器輸出三原則」とか「専守防衛」、 それに「シビリアン・コントロール」などという、軍 事的研究を阻害してきた多くの制約から、あたら「宝の 山」をたくさん持ちながら、それを有効に生かし切れず にいる現実からの脱皮が必要だが、さて誰が猫の首に鈴 を付けるというのか。 ■□ F22代替機としてのF35 ──────────────── 最近の報道によると、 「浜田靖一防衛相が今月1日に訪米した際、ゲーツ国 防長官から戦闘機F35の導入を打診されていたことが 23日に分かった。会談では、防衛省が最有力候補にし てきた最新鋭のステルス戦闘機F22について、ゲーツ 長官が禁輸条項を理由に輸出は困難と説明した。米側が F35購入を強く促したことで、F22の導入は困難な 状況となった」 とある。 ここでは、防護用避難壕など後方面の充実はひとまず 置いて、代替案としてアメリカ国防省より提案された F35とはどんな航空機だろうかみてみよう。 このF35は、たしかに性能的にはF22にやや劣る が、ステルス性に優れた次世代機であり、通常の陸上発 着型(A)と、短距離離陸(艦)垂直離着陸(艦)タイ プ(B)、それに通常空母発着型(C)という三タイプ がある。しかも米英二国の5軍に大量採用されることも あり、F22に比べて価格が格段に安くなっている。 気になる調達価格だが、「F35の情報サイト」によ ると、 ⇒ http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams06/jsf.html A型34億円 B型 42億円 C型46億円 (但し120円/ドル換算) で、これを現在の(100円/ドル)に置き換えると、 A型28.3億円 B型35億円 C型35.8億円 となり、単純計算では、F22の1機分でA型機なら5 機、B型で4機は購入出来ることになる。 前号における前空将佐藤守閣下の指摘のように、カッ トにカットを強いられて来た防衛費の実情を考えるとき、 いたずらに乏しい予算をがぶ飲みにする高価な支出を 避け、より高度な戦略的見地に即応した「かしこい買い 物」をすべきであろう。 それについて、以下提案したい。 ■□ 日本型空母配置とF−35B型機の導入すすめ ──────────────────────── ここで提案するのは、日本の国情に即した「小型空母」 の採用と同艦搭載のF−35B型機の導入・配置であ る。離着陸する場を選ばず、しかも時速1170kmという超 高速で飛行することが出来るという優れものの組み合わ せは、長い海岸線を持つ日本に於いては、常時近海を遊 弋出来る航空機搭載艦として、その存在ほど心強いもの はない。 これなら勿論専守防衛策に違反しないし、仮想敵国に 対しては強力な抑止力となり、いざというときには強力 な積極的防衛力を発揮できる。なにしろすぐお隣に、長 距離ミサイルを持ち、地下核実験を断行する「気違い国 家」と、毎年2桁以上の軍事予算をつぎ込み、空母建造 を公言し、原子力潜水艦による領海侵犯を繰り返す独裁 国家を持つ日本である。 いまこそ単なる虚仮威(こけおど)しではない、真の 戦略的プレゼンスとして、可及的速やかに同艦の建造・ 配備を3〜5隻、早急に配置するプランを実行して欲し いものだ。 実は以下のサイトによると、 ⇒ http://google-earth-travel.net/mercury/0707290001.html 「海上自衛隊の護衛艦としては最大級のヘリコプター 11機を搭載できる初の「ヘリ空母」の建造が横浜市の 工場で進んでいる。 新型護衛艦(16DDH)は、全長195メートル、 全幅33メートル、基準排水量1万3500トン、速力 30ノット (中略) 艦首から艦尾まで貫通甲板を備 え、艦橋は右舷側に配置されている。ヘリ4機の同時発 着が可能で、甲板前後に設けられる大型エレベーターで ヘリを艦内の格納庫に運搬、整備をすることもできる。 格納庫には8機収納が可能。 8月23日に進水、その後防衛省で艤装後平成21年 に就航予定で、おそらくハリアー等の垂直離着陸機も装 備できるはずだ」 とある。特に潜水艦対策にも抜群の力を発揮する空中ホ バーリング可能な同機の採用は、その対艦・対空・対地 ミサイルによる打撃力を併せ、「非核化」をモットーと している日本にとって、戦略的・戦術的にまたとない戦 力になること請け合いである。 ただシーハリアーと違って、垂直離艦(陸)タイプ でないことだが、同機の採用を決めた英海軍の空母は、 強力なカタパルトを持たないため、艦首部分の甲板が上 向きに反っていて、離艦を助ける形状となっている。 日本でもその形態の採用と、垂直着艦するときに噴射 口を下向きにすため、その高熱に耐え得る対策は必要と なるだろう。 ちなみにシー・ハリアだが、1982年のフォークランド 紛争時。領土奪回をかけた戦いで、イギリス軍はアルゼ ンチンの超高速戦闘機ミラージュ200機に対し、垂直離 着陸機ハリアーを空中戦用に改良した「シー・ハリアー 」28機のみで戦った結果、空中戦で撃墜されたミラージ ュは21機。ハリアーは1機すら失われなかったという実 績を持つ。 F35Bはその後継機だから、その潜在的能力は推し て知るべしであろう。 さて同プランだが、少なくともヘリ専用艦を別にする よりも、数機ずつ一緒に搭載するとして、3〜5隻の同 型空母の建造と、併せて2〜3機の空中給油機セットと して提案したい。 ともかく防衛省さん、駄々っ子みたいな「無い物ねだ り」は止めて、より現実的で効果的な、しかも戦略的適 合性のある武器導入の選択をしましょうよ。 ではF-22に匹敵する仮想敵国機が出現した場合だ が、そこは集団的自衛権の承認と「思いやり予算」の代 償として、アメリカ空軍の出番を待つべきであろう。 ************************************************** 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 6月1日 通巻第2612号より転載 ⇒ http://www.melma.com/backnumber_45206/ <中村のコメント> 内向きな日本人は、外での出来事にわざわざ目をそら している感がある。たとえば農業にしても、最初から国 内問題だけに焦点を合わせ、海外への視点は国を挙げて 見ないようにしているようだ。 本稿は、なりふり構わぬチャイナの行動の一部始終を 私たちに提示してくれる。なにも日本がチャイナの真似 をする必要はないが、国家的戦略として本気でこの問題 に立ち向かう必要がある。心してその意味するところを 読み取ろうではないか。 ■□■━━━━━━━━━ 中国アフリカ進出の真相 ■□■━━━━━━━━━ 宮崎 正弘 中国のアフリカ進出は石油とレアメタルばかりがター ゲットではなかった。大規模にアフリカの農地を借り上 げ、食糧増産計画を実現する野心に燃えている。 マダガスカル政府は130万ヘクタールの農地を無償で9 9年間、韓国の大宇財閥に貸し付け、そこを農場に転用 させて大増産を行えば外貨が入り込み、現地の雇用も増 え、農業技術も進展し、食糧が豊富になるという夢のプ ロジェクトに乗った。これを持ちかけたのは韓国だった。 「それは新植民地ではないか」とマダガスカル政府へ の反対運動が拡がり、クーデタが発生して政権が転覆、 韓国の野望は潰えた。 http://www.anzen.mofa.go.jp/info/spot_top5.asp?id=119&num=3 英誌『エコノミスト』(09年5月23日号)に拠れば、 狙われた農地で失敗した例は他にも中国が狙ったフィリ ピンとモザンビークの例がある。モザンビークへ中国は 8億ドルを提示していた。フィリピンで借り受ける予定 だった農地は180万ヘクタールの土地だった。失敗例は ほかにもサウジアラビアがインドネシアと交渉し、50万 ヘクタールの土地を借りうけ農地にする予定だった。 しかし当該国家では、「新植民地主義」などという批 判はすくなく、地主らが積極的に外国企業に農地を貸し ている国が多い。筆頭はロシア、ウクライナ。とくにウ クライナは40万ヘクタールの農地使用権をモルガン・ス タンレイに売った。 「キング・アブドラ・イニシャティブ」という農業プ ロジェクトはマレーシアに米農家をつくり、すでに国王 は「マレーシア産、サウジ胴元の米」を食した。 食糧不足により世界的に農地借り受けプロジェクトは 拡大しているが、ダントツなのが中国である。すでに米 国に広大な養豚場を立ち上げ、この用地はゴールドマン サックスを通じて、中国はなんと5億ドルを投下してい る。 全世界で中国が獲得した農地は明らかになっているだ けでも数百万ヘクタールにおよぶ。これを追っているの が韓国、UAE、サウジ、カタールなど。 ▲基本的な食糧には目もくれず、バイオ燃料を狙うヘ ッジ・ファンドが露骨に介入 とくに中国が投資したなかでコンゴの280万ヘクター ルが飛び抜けて目立つ。史上空前の規模である。ここで はヤシ油が生産される。 アフリカが如何に貧困と雖も、ひとつの国が外国にこ れほど大規模な土地を提供するのは中国向けが最大であ る。 ザンビアでも200万ヘクタールの農地使用が交渉中、 すでに現地の養鶏の四分の一は中国資本と言われる。 しかしながらザンビアでは中国の遣り方に不満をもつ 民衆が立ち上がり反中国暴動が発生している。あまりに 露骨な農業の搾取であり、政権への賄賂は腐敗の象徴で はないか、という批判が巻き起こっている。 このような新植民地主義的な海外農地への進出は、表 面的に見れば「食糧不足の解消」である。 だが、ベンチャー・キャピタルや新興ヘッジ・ファン ドが混在し、面妖な農業ビジネスがまかり通っている。 旧来の小麦、芋、バナナなどに目もくれず、かれらは トウモロコシなどエタノール燃料(とうもろこし)の増 産を狙う気配が濃厚であり、なにしろ値上がりの見込め る品種しか興味がない。 過去一年、大豆は78%値上がりした。米は130%。 一方で世界各地では食糧のストックがそこを尽きつつあ る。 タイミング良く格好の解説書がでた。国際情報通の浜 田和幸氏が書いた『食糧争奪戦争』(学研新書)である。 浜田氏は、この本のなかで、異様な食糧ブームの背景 を次のように描く。 「今世界はかつてない食糧生産における危機に直面し ている」が、「食糧生産国の間では農作物の輸出制限が 強まってきた。食糧の値段は高騰を続け、貧しい途上国 に於いては食糧を確保することが日々困難となりつつあ る。100万人単位で餓死者がでるという悪夢のような状 況が現実のものとなり始めている」と警告する。 国連FAOも「十億人を超える人々が満足な食事をと れていない事態が続けば、途上国を中心に政治的に不安 定な状況が生まれ、治安の悪化やテロの引き金になる可 能性が大いに懸念される」 と事務総長が警告を発した。 ▲恐ろしい現実を日本は見ようともしない だが、濱田氏は独自の情報から二つの重要なことを指 摘する。 第一は食糧不足で、むしろ太っているアメリカのアグ リ・ビジネス。とくにカーギルやモンサント、これに乗 じて食種の種子の特許を独占しようとするビル・ゲーツ やらヘッジ・ファンドの魑魅魍魎的な動き、他方で家庭 菜園をつくって防御に走るアメリカ国民だが、その家庭 菜園の率先役がオバマ夫人だという矛盾。 第二に「自然災害を装ったテロの可能性が否定できな い」という指摘である。 これは浜田和幸流の独自の歴史感覚だろう。 つまり「ヨーロッパや地中海地方を襲う異常な熱波や 寒波、またアフリカを襲う大規模な干魃、そしてスカン ジナビア半島を飲み込む氷河期の到来」が危険視される ものの、じつは「人工的に(干魃が)生み出されている という説」が流れており、「背後には一部の政府機関や 民間企業がかかわっている」という空恐ろしい現実が指 摘されている。 いったい、そうなると先進国で最悪の食糧自給率を誇 る日本はどうするのか? さて中国に関して浜田氏の指摘は次のようだ。 第一は「耕地面積の減少」であり、工業化による減反、 中国の農業地帯では農地をごっそりと工業団地にした が、「乱立してきた工業開発区の規制に」、中国政府は 重い腰をあげて、ようやく「04年末には5000ヶ所あまり の開発区が撤廃された」ものの減反に劇的な歯止めがか からず、そこで中国は「海外に農場を確保する動きを加 速させる」。 第二は「都市化がもたらした農村の疲弊と衰退」。 都市に就労する農民の群れに関しては説明が不要だろ う。 第三は「都市と農村の賃金格差」により離農が続き、 農村が荒廃していること」である。 第四は「農業技術の立ち遅れ」である、と浜田氏はい う。 まさにレスター・ブラウンが予言した。「石油には代 替品があった。しかし、食糧には代替品はない」 ************************************************** <中村のコメント> まだご記憶の方も多いと思うが、かつて国際通貨とし て、ドル&ユーロ&円(YEN)というトライアングル 構想が話題をさらったことがあったが、結局雲散霧消し てしまった。たしかバブル崩壊の前、日本が「もはや学 ぶべきものがない」と豪語したころのことだった。 いまやその日本だが、金融市場の規模にしろ、港湾で の輸出入取扱高にしろ、ハブ空港としての規模実績にし ろ、シンガポール・香港、それに韓国にも、そのいずれ かで後塵を拝しているていたらくである。 デフレを恐れて、いつまでも低金利政策を採り続ける 日銀や、それを是認しているばかりか、米国債の処分も ままならず、さりとてそれを元にした新ファンド一つ組 めない弱腰の、財務省のお役人が健在?な内は、ここで もアメリカの「金融属国」から抜け出すことなど不可能 であろう。 ■□■━━━━━━ 新国際通貨の幻想 ■□■━━━━━━ おおなだ 米国発世界同時不況からドルの信任がとやかく言われ 始めると同時に、新国際通貨の創設が取り沙汰されてい る。実際中国人民銀行の周小川総裁は、「主権国家と繋 がっていない通貨を作ることは国際通貨体制の理想的な 目標」と述べている。この理想的国際通貨構想としては 過去に前例がある。 1944年に戦後の国際通貨体制の枠組みを決めるべ く、米国ブレトンウッズにおいて連合国44カ国が会合 した。そのとき激しく対峙したのが、英国の経済学者ジ ョンメイナード・ケインズと米国の財務省通貨部長ハリ ー・ホワイトである。このときケインズが持ち出したの が主権国家と関係ない「通貨バンコール」である。 しかし圧倒的な米国という国力の前にケインズは敗れ ている。この両者の戦いの激しさは、後にケインズが「 国際交渉は、武器をもたない戦争である」と語っている ほどである。 つまり理念より米国という最強国家の主権が勝ったの である。以来ドルを国際機軸通貨とすることになり、こ れをブレトンウッズ体制と呼ぶ。 ここで少し、通貨の本質を整理しておきたい。 通貨は大きく分けて二つの性質をもつ。物品を交換す る媒介手段としての交換価値と、資産としての保存価値 である。1971年までは、金本位制でドルは金1オン ス=35US$の兌換券であった。つまり、ドルは金と いう保存価値を持っていた。 ところが米国がベトナム戦でドルをばら撒きすぎたこ とで、金とリンクした世界通貨としてのドルの供給がで きなくなり、ニクソンは金とドルの交換を停止した。1 971年の所謂「ニクソンショック」である。 その2年後、変動相場性に移行し事実上ブレンウッズ 体制は崩壊した。 言い換えれば、世界経済成長に必要な機軸通貨である ドルの兌換用として供給するだけの金の産出が間に合わ なくなったのである。 以来貨幣は、帳簿上あるいはPC内に記録された数字 の交換価値としてのみ一人歩きしだした感がある。 かくしてドルと金のリンクが解け、変動相場性に以降 すると同時にドル貨幣は膨張し始めたのである。 ドル貨幣の膨張と世界の経済的発展が期を同じくし、更 にIT技術の発達が加わり経済発展はグローバル化した。 特にこの数年間の中進国の発展は目覚ましい。一方で、 この数年間を特徴付けるなら金融市場の著しくも激し い膨張であろう。日本の超低金利政策もその片棒を担い だのである。 それが所謂円キャリートレードで、金融工学の発達も あってヘッジファンドや米国の投資銀行は、超低金利の 円を借りて途方もないレバレッジをかけて資産運用した。 リーマン・ブラザースショックまでに貨幣は実態経済 の数十倍まで膨張したという。 この膨張は、ドルが「金」の軛(くびき)から解き離 れた結果でもあるが、もう一方の事実は米国の信用力が 十分に金に代替できたという証(あかし)でもある。 つまり、ドルの保存価値を担保するものは、金に代わ って米国という主権国家の強大さであった。 現在(いま)その膨張が弾けたことから世界的金融危 機を迎え、いま問われているのはドルに保存価値が有る か否やであろう。そして、再び1944年のケインズの いう「通貨バンコール」が取沙汰されるようになった。 中国人民銀行総裁の周小川総裁は、今年の3月に「S DR(IMF特別引き出し権)を機軸通貨に」と主唱し たといわれる。SDRは1969年に創設され、185 ヶ国でクォータを分かち合っている。 ロンドンサミットではIMF増資が決まり、日本10 00億ドル、EU1000億ドル、中国400億ドルを 拠金する。IMFの資本金は7500億ドルに増えてい る。 中国としてはIMFの増資時期を捉え、米国ドル支配 に牽制球を投げたと思われる。昨今はドルの凋落や衰退 を予測する論調も散見するようになった。 BOICE6月号で、評論家の宮崎哲弥、若田部昌澄 早稲田大学教授、飯田泰之駒沢大准教授の三氏が「経済 常識のウソを斬る!」で対談している。飯田氏の「変動 相場性においては、ドルが機軸通過でなくとも誰も困ら ない」に対し、他の二氏からも反論はなく、前後の文脈 からどの通貨が機軸でも構わない趣旨のようだが、通貨 の一側面しか見ない相当荒っぽい主張である。 因みに、2008年12月の世界の取引シェアーのベ スト5は下記の通りである。ドル44.8%、以下ユー ロ35.3、ポンド7.2、円4.3、スイスフラン1.7 (それぞれ%) しかながら、ここは考えどころである。 そもそも保存価値のない交換価値は考えづらい。箪笥 預金をする価値もない通貨で誰が商品を売ってくれよう か。ケインズや周小川総裁のいう新国際通貨は一見理想 的にみえるが、もし国際中央銀行があるとして、この中 央銀行は自身の発行する通貨にどうやって一定の保存価 値を付与するのであろうか。 いまさら金本位制には帰れない。出来るとするなら、 この中央銀行を構成する最強の主権国家しかない。なら ば初めから、特定の主権国家の通貨を国際基軸通貨とす るしかない。その分醜い主権争いをせずに済む。 通貨の保存価値(信用力)は、その通貨を発行する主 権国家の、 1.経済力の大きさ 2.文化力の大きさ 3.軍事力の大きさ 4.国土や人口の大きさ 5.透明性 などである。何故なら、通貨政策が極めて政治的でな ら誰も安心してその国の通貨を保存しないだろう。この 透明性において政治体制が今のままなら、中国の人民元 は国際基軸通貨にはなり得ない。 ところで予見しうる将来、米国に代って通貨に最も信 任を与えうる最強主権国家は当分現れそうにないという のが私見である。 さて前述中国やEUがあるではないかと言う向きもあ ろうが、人民元が機軸通貨になるには前提条件になる透 明性がない。上海銀行監査委員会副主任の「2020年 までに世界の外貨準備の3%は人民元に」は一見控えめ な発言に見える。 しかし中国の約2兆ドルの外貨準備の内82%はドル 建金融商品である(ウォールストリート・ジャーナル5 月22日付け) ドル建てを処分しつつの「世界の3%」なら危険であ る。また、同紙によればドル建て債のポートフォリオを 長期から短期(なかでも財務省証券)に変更しつつある という。 因みに、中国は米国債の保有国世界一で7679億ド ル(三月末現在)である。 ドル安になれば一番のドル建て債権保有国の中国が最 も大きな損失を被るから、あえてバカな真似はしないと 思うが、それでも中国の政治体制なら「やりかねない」 という怖さがある。従って人民元は機軸通貨になりえな い。 ではユーロはどうであろう。EUは理念共同体であり、 有体に言えば、まだ実験中の段階である。通貨政策が ブリュッセルの理性と、構成国の主権との対立を招き混 乱する可能性も捨てきれない。 実際、参加各国の経済的水準も経済成長率もまちまち であり、今回のリーマン・ショックの影響にも格差があ る。欧州中央銀行は現在の経済危機に際し、加盟国の国 債買いオペで通貨の供給を強化したいが、とはいえ「加 盟国に優劣は付けられない」と悩んでおり、その分米国 よりもEUの経済危機対策が遅い上深刻でもある。 事実、国際通貨基金(IMF)によれば欧州の銀行が 10年末までに計上する損失見込額は1兆ドルと米銀の 2倍に達するという。 要するにEUは、様々な主権国家を抱えすぎ、事実上 「ユーロ」は主権国家の裏打ちのない通貨である。従っ てユーロもまた、すぐにはドルに代わって国際基軸通貨 になるとも思えない。 米国はこの不況を乗り切るため大胆な財政出動(米国 債の増発)を予定している。オバマ政権はこの2月に、 10年度は前年比4倍増の180兆円の財政赤字をして でも、この危機を乗り越えようとしている。もっとも共 和党の反対がありスンナリと事は運びそうにないが、そ れでも膨大な国債を発行することは間違いないし、現に 始まっている。 当然、米国債の金利上昇(価格の下落)局面も予測さ れる。それでも、米国に代わる透明性のある主権国家が 現れるまでは、中国を始め当面はドル(米国債)を守る しか他に方法はなさそうである。 こうした中、今も米国債の流動性は最も高く、また資 源・穀物がドル決済なのも米国の信認が落ちてない証で ある。 それが常に先取りをする市場の判断である。 ************************************************** 金谷 武洋の「日本語に主語はいらない」 「日本語ものがたり」第34回 ⇒ http://blog.goo.ne.jp/shugohairanai/ <中村のコメント> 私も少しの間だが、誘われて俳句の会に参加していた ことがあるが、「左義長(さぎちょう)」本来の文字が、 「三毬杖」あるいは「三毬打」で、発音は「さぎちょ う」あるいは「さぎっちょう」だとはじめて知った。 広島では「どんど」ではなく「とんど」と言う。この 「どんど」だか「とんど」のことを「左義長(さぎちょ う)」ということを知ったのもそんなに昔ではない。た だこの字を見た時に、「ひだりぎっちょ」の語源だろう と直感的に思った。 英語で左利きのことを「サウス・ポー」というが、こ れは南部出身の野球選手由来だと聞いている。最近では 「レフティ」と言うのだろうか、最近まで日本では、ゴ ルフだろうがテニスだろうがボーリングだろうが、平気 でこのサウス・ポー使っていたものだ。 だいたいこうしたいい加減さ、曖昧さが日本人の特質 だとも言えるのだが……。 ■□■━━━━━━━ 奈良時代のホッケー ■□■━━━━━━━ 金谷 武洋 今回は、奈良時代の日本にもホッケーがあったという お話を。この話題が、左利きの意味で使われる「ぎっち ょ」と結びつくのだから、う〜ん、やっぱり言葉は「小 説より面白い」と思う。 私は4人兄弟で姉、兄、弟が一人づついるが、この弟 が左利きだ。それで、小さい頃から「ぎっちょ」という 言葉はよく聞いて育ったが、なぜ「ぎっちょ」と言うの か、つまりその語源が何かを立ち止まって考えたりした ことなどなかった。 それが分かったのはカナダに来てからである。その上、 カナダと言えばこのスポーツ、と言われるアイスホッケ ーが何と「ぎっちょ」に関係があったのだから驚いた。 ミステリー仕立てでさらに言えば、「ぎっちょ」と 「ホッケー」の関係が分かるためには、ある橋渡しが必 要だった。 見つかった「ミッシング・リンク」は、俳句の季語で ある。一見全くバラバラに見える、奈良時代と俳句とホ ッケーと「ぎっちょ」が一気に繋がって、言葉オタクの 私はいささか興奮した。 モントリオールには皐月会という句会があり、毎月第 一日曜日午後に会員が日系文化センターに集まる。私も 長年メンバーで、下手な俳句をひねっては楽しんでいる。 数年前に遡るが、皐月句会を率いる渡辺繁さんが聞き 慣れない季語を使った。「左義長(さぎちょう)」であ る。渡辺さんが、これは「どんど焼き」のことだ、と説 明してくれた。日本全国で行われる民間行事だから、ご 存知の読者も多かろう。 村境などで、正月で使った注連縄や松飾りを燃やす火 祭で、その火で焼いた餅を食べると年中の病気を除くと いう。この行事が行われるのは小正月(1月15日)で、 俳句では正月の季語となっている。「どんどやき」は単 に「どんど」とも言われる。火が盛んに燃えるさまを表 現したオノマトペア(擬音語)に違いない。 何故「どんど焼き」に「左義長(さぎちょう)」など という不思議な別名があるのだろう。好奇心にかられて、 ちょっと調べてみると、本来は別な漢字であったこと が分かった。それが「三毬杖」あるいは「三毬打」で、 発音は「さぎちょう」あるいは「さぎっちょう」である。 発音はそのままに、漢字を見た印象のいいものに変え ることは「好字化」と言い、日本ではよく行われる。苗 字の「窪」が「久保」に、「北」が「喜多」になったの もその例。日本人の苗字で「佐藤」に次いで二番目に多 い「鈴木」はもともと「薄」や「芒」だったという説も ある(が、異論もある) さて、この火祭は宮中でも神事として正月行われた。 清涼殿の東庭で、青竹を束ね立て「三本の毬杖(毬打) 」をそこに吊るした。毬杖には扇子、短冊などを添え、 それを陰陽師が謡いはやしつつ焼いたのである。「三本 の毬杖」で「三毬杖」。つまり「左」は、本来は数字の 「三」だったのだ。 俳句や短歌の五七調のリズム、七五三の祝い、注連縄 の筋数(七五三)、華道の基本も三本枝、長さの比も七 五三であるなど、民から神へは奇数が用いられるのは日 本文化の奥深い伝統だが、ここでも毬杖は三本立てられ ていた訳だ。これで謎が解けた。左利きの人を「(左) ぎっちょ」というのは、「三毬杖」の書き換えられた「 左義長」の「左」のせいに違いない。(広辞苑の「さぎ ちょう」に宮中行事、三毬杖の様子が描いてある) 「毬杖(毬打)」とは何か、という問題が最後に残っ たが、これは読んで字の如し。毬杖で毬を打ち合う遊び が毬打である。奈良時代に中国から伝わったらしい。大 人が足で毬を蹴る「蹴鞠(けまり)」があるのに並行し て、毬を長柄(ながえ)のような杖で打つ「毬杖・毬打 (ぎちょう・ぎっちょう)」が子供にはあったのだ。 やはり広辞苑の「ぎっちょう」を参照されたい。蹴鞠 がサッカーに似ているとすれば、杖を使うこちらはホッ ケーだろう。昔々、宮中のやんごとなき雲上人がホッケ ーやサッカーを楽しんでいたとは。そんな様子を想うと 愉しい。 左義長へ行く子行き交ふ藁の音 中村草田男 みちのくの星燦然とどんど焼 三谷いちろ ************************************************** <中村のコメント> 正藤君は、私の旧制中学時代の同期生で、平成19年に は“ 時のせせらぎ ”というエッセー集を上梓している。 この5月からわが家での(ネットを操る上記同期生によ る)「洋酒をたしなむ会」の新メンバーとして参加した。 現在私を除いて6名の参加者だが、2名以外は学生時 代ほとんど交流がなかったのだが、これがインターネッ トの功徳であろう。 実は正藤君──本会開催の発端となった「思い出の洋 酒」を書いた荒谷君の紹介で──本通信のゲストライター となっている月河氏とは、同じ某在阪企業に勤務してい たという因縁もわかり、今更ながら「縁」というものの 不思議さに驚嘆している。 どちらかというと「硬派」の本通信に、ホッとするよ うな息抜きの文章を正藤君に期待している。だが「樽へ び」とは初耳だなぁ。 ■□■━━━━━ 広島の「樽ヘビ」 ■□■━━━━━ 正藤 英夫 大阪で定年を迎え古里の広島に還って間のない頃、中 国新聞の「天風録」に載っていた「樽ヘビ」という文章 を読んで驚いた。広島の「樽ヘビ」については記憶がな い。 その一部を紹介すると、 ▲広島地方で「樽ヘビ」と言う。樽から一匹が出ようと すると、皆で引き下ろす嫌な県民性を指すらしい。これ が山口県になると、皆で押し上げるそうだ。 ▲「樽ヘビ」は瀬戸内という、食べ物が豊かで、温暖な 風土の産物らしい。そのおかげでいつの時代も生活が厳 しくないから強力な指導者もそれをもり立てる必要もな かった。安穏が生んだ「ぬるま湯の争い」であるという。 私と同じように、人生の大半を都会で過ごして広島に 還ってきた友人がいる。彼にこの話をすると、「広島は 『地震、雷、火事、親父』のない平穏な土地柄だからな」 と言う。その彼が「戦後に海外から引き上げて旧制広 島一中に転入したとき、何かにつけて同僚が足を引っ張 るのが嫌だった」と顔を曇らせたのを思い出す。 私が生まれ育ったふる里は、広島県南部の山村。いま は広島市に編入されているが、瀬戸内海に近い山里であ る。昔から台風による被害がなく、気候温暖でしのぎや すい地域である。 今年のお彼岸は、春が間近と思わせる暖かい日が続い ていたのに寒気が入り込み、瀬戸内にも風花が舞った。 県北の山地では、小雨からみぞれ、小雪へと変わって、 山や野は真っ白。二、三日前から咲き出したという梅の 花びらが薄化粧して、雪の重さにじっと耐えていたと聞 いている。 まだ、広島の「樽ヘビ」に納得のいかない私は、公民 館の教養講座「東南アジアの国々ーその生活・文化・歴 史ー」に出席し、県民性と「樽ヘビ」について質問した。 地理学がご専門の講師は、「樽ヘビ」の話をご存じで、 次のように説明された。 「地域の風土が長年月の内に、土地の人々の性格を作 ると言えますが、文化、政治、宗教の影響もありますね。 広島では、小さい集落の集まりが「小寄講」の共同作 業を通して、協調精神が培われていることも見逃せませ ん」 しかし、同じ中国地方、しかも瀬戸内で隣の山口県と も気質が違う。地形的な影響以外にも何かありそうに思 える。 そんなとき、日本史がご専門の大学教授有元正雄先生 の講演会「安芸人気質──十八・十九世紀を中心に──」 があることを知り、さっそく聴講することにした。 有元先生は、「江戸から明治時代には、もう地域によ って気質が違っていました。北陸、安芸、防長それぞれ 違っています」と先生の自説「安芸門徒論」を持ち出さ れた。 まず安芸国の精神的風土は、真宗の盛んな地方として 安芸門徒を挙げられた。安芸門徒の活躍は、天正五年前 後、この地方に真宗の勢力が伸びたようで、真宗の教え は阿弥陀仏への信仰一筋に徹することであると主張して、 余宗の神仏を排撃したという。安芸では真言宗、時宗、 禅宗などから転宗して真宗寺院になっている。 真宗の安芸門徒は、集落の十戸から三十戸を単位とす る小寄講で真宗の説教を繰り返す一方、小寄講の人たち が結束して田植えや葬式なども助け合った。真宗の説教 は小寄講内で行われ、信者は平等の立場で節欲、私欲を ストレートに出さない習性が根付き、正直、勤勉、助け 合いの精神が浸透した。 真宗の精神に殺生の忌避がある。虫や動物の殺生禁止 の教えから、人の間引きを禁じ、捨て子をも禁じる教え を頑なに守った。従って、安芸門徒の家族増加が進むこ とになる。そんな背景から、広島の山地や島の端々まで、 生活のために開拓がゆきとどいて、地域住民の貪欲な までの勤労意欲が生まれたという。 明治時代になると、勤勉で正直な真宗門徒衆は安芸者 として、その労働力が各地で好まれて迎えられたらしい。 広島県は出稼ぎの風土となった。北海道の開拓には家 族で移って「広島村」を作り、海外のハワイには単身か 夫婦で短期間の移民として出向いた。 私の先祖をみると、祖父の弟は養子として近県で独立 しているし、祖父母はハワイ移民の記録がある。真宗の 熱心な信者の祖母に育てられた私は、幼児期から真宗の 教えが浸透している。有元先生が「小結」として示され た社会性(気軽に出ていく集団性が強い、協調性に富む が、やや独立独歩の気性を欠く)や経済性(勤勉・着実 な活動、しかし投機的でない)、政治性(やや保守的) のどちらも私の気質の例外ではない。 「総じて面倒見がよく、我慢強い。しかし、限度を超 えたときは牙をむくことがある」に至っては返す言葉が ない。 ************************************************** 幾田さんは地元銀行のOB、古くからの縄文塾メンバ ーでいろんな集会にあたっては、本当にお世話になって きた穏やかの人格者である。 長い間ご病気の奥さんの献身的介護をなさっている。 口先ばかりでとんと行動が伴わぬ私にも、いつも温かい 目を注いで下さる、かけがえのない方である。 幾田さんの五行歌には、その人格がにじみ出ている。 ■□■━━━━━━━━━━━━━━━━ 6月の五行歌 “ 名も知らぬ小さな花 ” ■□■━━━━━━━━━━━━━━━━ 幾田 篤 合理化時代の かかえている はなし言葉や 業を ケイタイ用語 前にならべたら 日本語が 人はよけていく 乱れていく 面白くないもんなぁ なんと言っても 名も知らぬ 自筆がいい 小さな花 故人の 手折ろうとする手を 生前の便りなどは 拒むような“立て札” すてられない 「ここで咲きたいのです 」 くらべるな 現実は 自分は自分と きびしくても 覚悟をきめたら この世に それだけで 生きていることは ストレスは軽くなる とてもロマンティックだ ************************************************** <縄文塾通信6月−2号 編集後記> ************************************************** 梅雨の季節到来。さて梅なら早春だという思いが強い がこちらは梅の実がみのる方だ。たしか3年前だったか 、それこそ久方ぶりに漬けた梅干しが底をついたのだ が、ここ最近朝と昼、例の「愛の野菜ジュース・三点セ ット」を忠実に守っているためもあって、カミさんが 「折角漬けても生きている内に食べきれるかどうか〜」 と言いだす始末。いさぎよく?自家製は諦めてしまった。 ただ問題は、最近の梅干しがなぜか甘すぎるものがほ とんどだという現実である。ところが時々コンビニで梅 ムスビを買うと決して甘くない。一体誰がこんな甘い梅 干しなんか食べるのだろうか不思議でならない。 先日カミさんが「通販で甘くない梅干しがあった」と 早速注文したところ、柔らかくて形の整ったしかも甘くな い梅干しが到着したのだが、今度はなぜか塩辛さ・酸っぱ さが強くて閉口した。 そこで目下、残り少なくなった自家製梅干しの壺の余っ た紫蘇の下に入れて我が家の味になじませている。 食品の甘さだが、梅干しに限らずスーパーの総菜でもし かり、もう子供に味覚に阿ねるというより、すでに母親ま で味覚が駄目になったのだろう。 かつての「お袋の味復活」を願うことしきりである。 (中村) ************************************************** < 縄文塾通信 告知板> ************************************************** 広島雑学アカデミー 第68回学会 タイトル “ 能への誘い ” 講師:観世流能楽師(シテ方) 吉田 篤史 師 当日は、能の解説だけに止まらず、祝舞・謡体験 能舞台でのしぐさ・能面・装束の解説など、素人 でも充分楽しめる会です。 ◎日時 6月16日(火) 18:30〜21:00 ◎場所 広島アステールプラザ 広島市中区加古町4大会議室B (Phone to :082-244-8000) ◎会費 1500円(懇談・茶菓子代を含む) ◎申込み・問合せ 同事務局 島田宛 携帯:080-3879-8484 電話&Fax:082-892-4735 Mail to : shimada.hyouji@nifty.com ************************************************** 以下クリックすると、 <推奨メルマガ・ブログ・ホームページが示されます> ⇒ http://joumon-juku.com/suisho.html **************************************************


