2009/08/01
あなたへ贈る季節のたより No.42
*〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜* あなたへ贈る季節のたより ---- No.42 ---- 「天の川」 2009.8.1 by URUSHI OHTAKI 大滝 豊 http://www.u-ohtaki.com/ *〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜*〜〜〜〜* 親愛なるあなたへ 雨上がりの湿り気を含んだ重い大気の中、ふと思い出したように鳴る、 風鈴の音(ね)。その軽やかな音に誘われて、窓の外を見ると、ほんの わずか、木々の葉が風に揺れ動いているのが見えます。 微かな風のそよぎに、思わずふうっと息をつきたくなる瞬間ですね。 梅雨が明けぬまま、8月に入りました。暑さは今や真っ盛りというのに、 7日はもう立秋。少しずつ少しずつ、秋の気配が濃くなって来る頃です。 日暮れもめっきり早くなりました。 ほんのりと赤みが残る空は、まだ明るいのに、家々の陰や庭の木々は、 黒い固まりになって沈み、すぐそばにいる人の顔さえ、さだかには捉え がたくなる晩夏の黄昏は、わたしの心をしっとりと落ち着かせます。 やがて、ぽつりぽつりと輝き出す星たち・・・ あなたもときには、夜空を見あげることがあるでしょうか? 先月は、46年ぶりに日本で観測できる皆既日食ということで、にわか 天文ファンが増えたようですが、星を見るには、これからが最適の季節 ですね。 織姫と彦星が年に一度の逢瀬をするという「七夕」は、「秋」の季語。 いつの頃からか東京などでは、新暦に行うようになりましたが、本来は 旧暦7月7日がその日。今年は新暦の8月26日にあたるようです。 ふたりを隔てる天の川が、もっとも美しく見える時でもあるのですね。 こよひみそらの白波(しらなみ)に 楫(かぢ)の音(と)すなりひこぼしの 安(やす)の河原に舟浮(ふねう)けて 今しこぐらし 風かぐはしく吹き匂ふ 花濃き岸にたづさはり 涙は顔をうるほして 老をし知らぬ夢のごと かしこにかしこに 楫の音きこゆ 人のすなるを星も見て こひつくすらんこの夕(ゆふべ) 水影草(みづかげぐさ)のうちなびく 川瀬を見ればひとゝせに ふたゝび逢はぬこひづまに 今し逢ふらし まだ色青き草麦(くさむぎ)の はたけのうちにたふれふし 燃えては熱き紅唇(くちびる)の たがひに触るゝ夢のごと かしこにかしこに ふれる袖見ゆ 人のすなるを星も見て こひつくすらんこの夕 川声(かはと)さやけしおりたちて 天(そら)より深く湧きいづる 恋の泉をうちむすび 今し飲むらし 乾くまもなき染紙(そめがみ)を 落つる涙にけがしては 生命(いのち)の門(かど)をかけいでゝ 恋に朽ちぬる夢のごと かしこにかしこに 渡るひこぼし 人のすなるを星も見て こひつくすらんこの夕 「天の河」其の二「七夕」 島崎 藤村 わたしの町では、七夕と言うと、盂蘭盆(うらぼん)も終わった8月の 16日、17日の2日間。旧町人町の各町内の若い衆が、伊勢堂の上に 傘鉾(かさぼこ)や雪洞(ぼんぼり)を乗せて、竹に短冊、提灯などで 飾りつけた山車を、笛太鼓を鳴らしながら引き回し、ご祝儀の上がった 家々の前で、獅子舞を舞う「七夕祭」が行われます。 獅子舞の音曲や舞い方は、それぞれの町内で微妙に異なり、また小さな 子どもが、独特の華やかな衣装を着て獅子に対する「ささらすり」は、 とても可愛い仕草を見せてもくれるのです。 一般に「七夕」は、天の川に隔てられている織姫と彦星が、1年に1度 だけ逢えるという伝説で広く知られていますが、これは中国の行事と、 日本の風習とが合わさって定着したもの。 中国にはもともと、「乞功奠」(きこうでん)と言って、牽牛、織女の 伝説にあやかり、女性の裁縫の上達を祈った行事があり、また日本には、 「棚機つ女(たなばたつめ)」という、人里離れた水辺に作られた「棚」 (水に張り出して造った建物)の機(はた)で、神のために機を織り、 来臨した神に穢(けが)れを持ち去ってもらう習俗があったといいます。 そのふたつが合体してできたのが、日本の「七夕」なのですね。 「通い婚」が普通だった日本の古代、この伝説は、離れ住んでなかなか 逢うことがままならぬ、男と女のせつない実感を伴い、万葉人の間にも 親しまれたのでしょう。 この二つの星の逢瀬を、「星合」(ほしあい)、「星の契り」、「星の 恋」などとも呼ぶとのこと。いずれのことばも、星への憧れが伝わって くるような気がしますね。 伝説では、7月7日に雨が降って、天の川が増水し、二人は逢うことが できずに涙に暮れていたところ、何処からともなく飛んできたカササギ が、その翼を広げて橋とし、ふたりを逢わせてくれたのだそうで、この 「鵲(かささぎ)の橋」というのも、よく歌に出てくるようです。 星合の夕べすずしき天の河 もみぢの橋をわたる秋風 西園寺 公経 かささぎの渡せる橋に置く霜の 白きをみれば夜ぞふけにける 大伴 家持 あなたの住む大都会の空では、天の川を見ることは難しいでしょうか。 銀色の星の群れが天空を真一文字に横切る壮大な美しさを、あなたにも 見せてあげたいなと思います。 ずっと見ていると、それはもう、空に吸い込まれていくような、身体が 空中に浮遊しているような、そんな感じにさえなります。 星の光は、どうしてこんなにもわたしたちを惹きつけるのでしょう。 それは、わたしたちが遠い昔、星のかけらから生まれた存在であるから なのでしょうか。わたしたちのからだは、あの輝く星たちと同じ成分で できていて、星を見ると、自らのふるさとを思うような懐かしさがある からなのでしょうか。 実際の「天の川」は、数千億個もの星が集まった銀河ですね。それは、 この巨大な渦巻きの、ほんの端の方に住んでいるわたしたちが見た、 わたしたち自身の「故郷の姿」にほかなりません。 そして今、わたしたちの目の網膜に飛びこむ光は、数千年、数万年も 宇宙を旅してきたものなのですね。 そんなはるかな時空を超えて届く「便り」には、わたしたちは誰ひとり、 けっして孤独な存在なのではない、宇宙はみんなつながっているのだ、 と綴られているような、そんな気がするのです。 平成21年8月1日 蝉しぐれが降る、北越後の城下町より ─────────────────────────────── メールマガジン 「あなたへ贈る季節のたより」 ●発行 URUSHI OHTAKI ●編集 大滝 豊 Mail to: yutak@lapis.plala.or.jp Web Site: http://www.u-ohtaki.com/ Blog: http://blog.u-ohtaki.com/ ※バックナンバーは、ここで読むことができます。 ↓ http://www.u-ohtaki.com/magazine.html ─────────────────────────────────── このメールマガジンは、以下のマガジンスタンドから配信しています。 配信中止は、それぞれのページから行って下さい。 ・まぐまぐ http://www.mag2.com/m/0000183042.html ・メルマ http://www.melma.com/backnumber_150184/ ・めろんぱん http://www.melonpan.net/melonpa/mag-detail.php?mag_id=009247 ───────────────────────────────────


