「ちょっと一言」真実は現場にある
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「ちょっと一言」 こころの栄養 2007/1/21
第96号
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■皆さん、こんにちは。
今回で、「ちょっと一言」こころの栄養は
平成18年1月17日の創刊から2年になります。
そして「うしのフットボール」は今日が最終回です。
今まで、お読みいただきました全ての皆さまに、心から感謝いた
します。
今日は「答えは現場にある」についてお話しします。
■阪神淡路大震災から13年が経過しました。
私が13年前、鉄道の復旧に追われていたときのお話です。
私たちは不通区間の復旧工事を必死でやっていました。
ある日の午後2時頃。
現場の工事担当者から連絡が入りました。
その担当者は新たに敷いた線路に信号機を付ける工事を担当して
いました。
「係長、信号機のテストをしましたが、信号が赤、黄、青の点灯
を繰り返して、正常に機能しません」
「設計図どおりに工事はしています。配線は間違いありません」
開通が明日に迫っていました。
■それを聞いた事務所の担当者は、自分の設計が誤っていないか、
図面のチェックを始めました。
担当者は時間がないので、もう必死です。
しかし、いくらチェックしても設計図面には、悪い箇所は見当
たりません。
仕方なく、今度は、製品の検査結果を入念に調べました。
絶縁抵抗値や、電圧、電流、全て規定値内でした。
もう、これ以上調べるところがありません。
私たち事務所の人間は、困惑していました。
「とにかく、現場に行こう」
私は、その設計担当の部下を連れて現場に行きました。
■現場に着いて、もう一度、信号機を制御している箱の中の配線を
全て調べましたが、異常は見当たりません。
何百本の配線を一本一本、全て調べました。
が、だめでした。
明日、開通できない。私たちは途方にくれました。
「もう、打つ手がない」
「明日の開通は絶望的や」
時間だけが、流れ、私たちは呆然とその場に立ちつくしました。
■「もう時間がない。部長に明日の開通を中止するように連絡する」
私がそういったとき
「最初に付けたときは、うまくいっとったのに」
現場担当の係員がぼそっとぼやきました。
「ほんまか。ほな、それから、今まで何か作業をしたんか」
私が尋ねると
「はい、レールの位置を修正したので、絶縁装置を、一旦バラし
てまた、元にもどしました」
絶縁装置というのは、レールとレールの継ぎ目に電気が流れない
ように挟み込む絶縁体のことです。
「そうか。それだけか・・・」
■私は、あきらめかけました。
が、その言葉が気になって、念のためにもう一度絶縁装置をバラ
してみるように指示をしました。
担当者はすぐにそれをバラしました。
そして、もう一度組み立ててみると、何と信号機は青を点灯して
くれたのです。
そうです。故障が直ったのです。
「何で?」
不思議に思って、レールのあたりをよく見ると、1ミリ程度の小
さなレールの削りカスが一つ落ちていました。
この金属片が、絶縁装置の中に入り込み、それに気付かずに組み
立てていたのです。
そして、その金属片がレールとレールの間をショートして、電気
が他の場所にも流れていたのでした。
私たちは、ほっとしてお互いに握手を交わしました。
時計を見ると、もう夜中の12時を過ぎていました。
■さて、
□□□ 今日の「ちょっと一言」です。 □□□
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【 真実は現場にある 】
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■上の故障の原因は、いくら机上で議論をしていても見つかりませ
ん。
原因は、現場にあった、たった1ミリのレールの削りカスなので
すから。
まさに真実は現場にあったのです。
■京セラの創業者である稲盛和夫さんは、その著書
「生き方(サンマーク出版)」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763195433/mag2com02f-22
の中で、こう書かれています。
技術者らしくない非科学的な言い方かもしれませんが、こちらの
思いの深さと観察の鋭さに応じて、無機質であるはずの現場や製
品にも「生命」が宿り、無言の声を発する。
いわば、「心に物がこたえる」瞬間を経て、物事というのは成就
していく。
■私も、そのとおりだと思います。
物が発する無言の声が分かるほど、
「事は、熱心に、そして必死にやらねばならない」
ということでしょうか。
■さて、いつものように、ここから私の学生時代の経験をモデルに
脚色を加えた青春物語
【うしのフットボール】です。
今回は96回目、最終回です。参考のために95回目も掲載しておき
ます。
決して、フットボールの技術指導ではありません。
田舎で若者がフットボール部を作って、僅か2年で関西大会出場
を果たした物語です。
(脚色を加えていますので、登場人物等は架空のものです)
■この物語の中にも生き方のヒントが、たくさんでてきます。
がまんして読んでください。
ではどうぞ。
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【 うしのフットボール 】 第96回(最終回)
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【 前回分 】
受験勉強を始めたころは、長く机に座っているのが苦痛だった
が、しばらく続けるうちに勉強することが楽しみになってきた
から不思議である。
京大や東大の過去問が解けるとうれしくてたまらない。
早く次の問題を解きたくて、夕食を10分で済ますと、また部
屋にもどり毎晩ラジオから流れてくるヤングタウンを聞きなが
ら勉強を続けた。
いつも単語の暗記をすましてベッドに横になるのは午前2時こ
ろだった。
翌朝は、7時に起きて学校にいく。
そのリズムを毎日毎日繰り返した。
【 96回(最終回)】
8月になって練習に再び参加するようになってからは、さすが
に帰宅は8時ころになったが、同じリズムで勉強を続けた。
よく、部活で体が疲れて勉強に集中できないということを聞く
が、部活が再度始まったころには勉強の習慣が体に染み付いて
おり、この習慣に変化はなかった。
習慣のおそろしさを実感した。
毎日同じことを繰り返すうちに少しずつ実力が付いてきたのが
実感できるようになってきた。
そして、年が明けた1月の末には、ついに頭の中に大学に通っ
ている鮮明な映像がいつも浮かぶようになった。
うしは、合格を確信していた。
そして、やはり合格していた。
のちに友達がうしにいった。
「お前、xの3乗のカーブやな」
昭和52年4月8日、うしは神戸大学教養部のグランドの入口
に立っていた。
教養部は校門を入ると比較的幅の広い通路が真っ直ぐに体育館
まで続き、左手が校舎、右手がグランドになっている。
その通路の右手から、一段高く盛られたグランドに続く階段を
上ると、グランドの入口に金網で作られた大きな扉がある。
うしはその扉の前にいた。
そして、その扉には、申し訳程度に上端だけがセロテープで留
められた、一枚の手書きのポスターが貼ってあった。
「アメリカンフットボール同好会。作って間もない素人集団。
入部希望者求む」
生まれたばかりの春風が、うしの頬をそっとかすめてポスター
をゆらした。
完
■2年にわたり、お読みいただきまして本当にありがとうござい
ました。
次の物語の構想ができるまで、物語の連載はしばらくお休みさ
ていただきます。
■ 「うしのフットボール」について
mag@knowledge-store.jp 宛に
皆様の感想をいただけましたら幸いです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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岩崎吉男 mag@knowledge-store.jp
技術士(電気・電子)
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