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2009/09/01

メールでわかる最新金融事情Vol.29

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          メールでわかる最新金融事情     H21.09.01 Vol.29
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 企業評価を専門とするビバルコ・ジャパン(株)が新株予約権、優先株式、
 M&A、株式公開(IPO)などの最近の金融市場の動向を解説いたします。

 ※このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください。

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本┃日┃の┃記┃事┃
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 ■ のれん償却について考える
  -時代背景により変化する会計基準の優位性-
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IFRSの話題が賑やかになってきた。昨年3月、筆者が「IFRSの基礎知識」を本レ
ポートに書いた頃は、まだ注目度は低く、会計業界に身を置く専門家・実務家
の中でも限られた一部の方達が中心となり、啓蒙活動をしている印象であった。
しかしながら最近は、会計専門誌のみならず一般的なビジネス誌でIFRSに関す
る特集が組まれるようになり、IFRSの影響力は会計業界に止まらないものであ
るとの共通認識が、徐々に形成されつつあるように思える。
そんな最中、企業会計基準審議会(ASBJ:Accounting Standards Board of 
Japan)は、IFRSとのコンバージェンスプロジェクトとして、7月10日に「企業
結合会計の見直しに関する論点の整理」を公表している。ASBJは、企業結合会計
に関する会計基準の見直し作業を2段階に分けて進めている。本論点整理は平成
20年12月に完了したステップ1に続くステップ2という位置付けであり、従来か
ら企業結合会計に関する日本基準と国際的な会計基準の間での大きな差異として
語られることが多かった、のれん(正の「のれん」)の償却方法に関する検討が
行われている。のれんの償却方法の変更は、決算に与える数値的影響はもちろん、
会計実務についても重要な影響をもたらす可能性がある論点であるが、日本基準
とIFRSとの間における相違はどこにあるのか、本論点整理に基づいて、その理論
的背景を見ていきたい。

○本文をPDF形式でお読みになりたい方はこちら 
 http://bvcj.co.jp/pdf/report029.pdf
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1.日本基準とIFRSにおけるのれん償却の取扱いについて

日本基準においては、のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間
にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することとされて
いる(ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事
業年度の費用として処理することができる)。また、のれんは、「固定資産の減
損に係る会計基準(以下「減損会計基準」)」の適用対象資産となることから、
規則的な処理を行う場合においても、減損会計基準に従った減損処理が行われる
こととなる。
一方、IFRSにおいては、取得企業はのれんを取得日時点で認識し、減損損失を控
除した金額で測定するものとされている。
こうして書かれた文章だけから判断すると、日本基準は「20年以内の償却+減損
処理」であるのに対して、IFRSは「減損処理」のみであり、償却を行わないとい
うことになが、両者の差異を比較する場合、それは必ずしも正確ではない。実際
には、のれんの減損処理の方法自体に関して、日本基準とIFRSの間には相違があ
り、また、IFRSにおいても、のれん相当額に関して償却が全く行われないわけで
はなく、無形資産への取得原価の配分を通して、償却が行われる可能性がある。

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2.のれんの減損処理について

まずは、のれんの減損処理自体に関する相違点について見ていきたい。本論点整
理においては、のれんの減損処理方法について、日本基準とIFRSの間のいくつか
細かい相違点を挙げている。
わかりやすい相違点としては、減損テストの頻度がある。日本基準では、減損会
計基準に基づいた減損処理を行うため、減損の兆候がある場合に減損テストが行
われる規定となっている一方、IFRSでは、減損の兆候がある場合に加えて、毎年
減損テストを行うものとされている。この点、IFRSの頻度の方が高い。
また、減損の判定に関して、IFRSでは、資金生成単位にのれんの簿価を配分する
方法を原則とするが、日本基準では、同様の方法は容認規定であり、のれんが帰
属する事業に関する複数の資産(資金生成単位)グループにのれんを加えた、よ
り大きな単位での判定を原則としている。この点、IFRSの方が減損テストに関し
ては、よりきめ細かい扱いがされていると考えられる。
なお、のれんについて認識された減損損失について、その後の戻入れを認めない
点は両者に共通であり、日本基準はのれんの規則的な償却を認めているせいもあ
ってか、減損処理に関する基準だけを見ると、IFRSと比較して、緩い規定になっ
ていると考えられる。

※「日本基準とIFRSにおける「のれんの減損処理」に関する相違点」の図表はレ
ポートをご覧ください。

http://bvcj.co.jp/pdf/report029.pdf

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3.無形資産への配分について

もう一つの主要な相違点は、無形資産への配分になる。「無形資産への配分」と
いう言葉は、耳慣れずにわかり難い方も多いと思われるが、日本基準とIFRSの差
異を理解するうえでは、この論点を避けて通ることはできない。会計基準は、企
業結合に際して識別可能な無形資産が存在する場合に、のれんとは区別して、無
形資産を資産計上し、一定の年数で償却する手続を求めている。この手続により、
企業の取得に要した対価の一部が、無形固定資産に配分されることになるため、
「無形資産への配分」と言われており、結果的には、「のれん」として計上された
金額の一部が無形資産へ配分され、その分だけ「のれん」として計上される金額
が少なくなることになる。
この論点に関していうと、日本基準と比較して、IFRSにおいては、無形資産の識
別の要件が広く定められている。
したがって、IFRSにおいては、確かに、「のれん」の償却は行わないが、日本基
準であれば「のれん」として認識した金額について、のれん以外の「無形資産」
として識別して資産計上し、償却を行う可能性が出てくるのである。
ただし、この無形資産の識別手続について、理論的合理性は存在するものの、客
観的に正しい認識・測定を行うことは容易ではない。この点、本論点整理におい
ては、無形資産の識別には多くのコスト(時間・費用)を要するため、実務上の
負担を考慮する必要があるとされている。仮に、識別の要件を変更せずに、日本
基準において、のれんの償却を行わないとした場合、保守主義の思想とは相反す
る会計処理になるため、特に、償却処理を廃止する場合には、この要件改正も併
せて行われる可能性が高いと思われる。

※「日本基準とIFRSにおける「無形資産の識別」に関する相違点」の図表はレ
ポートをご覧ください。

http://bvcj.co.jp/pdf/report029.pdf

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4.変化する会計基準の優位性

こうしてみると、のれん償却のみを一つ選んでも、日本基準とIFRSのどちらが優
れた基準であるかどうか、結論付けるのは難しい。
特に、保守主義を重視する立場を取った場合、日本基準が支持する規則的な償却
は、恣意性を排除している点で、合理性があると思われる。ただし、この場合も
20年以内という償却年数を決定する際に、恣意性が介入する余地はあり、償却を
行えば、必ずしも保守的な会計処理となっているとは限らない。
一方、経済的実態を重視する立場を取った場合、IFRSが支持する取得原価の無形
資産への配分の着眼点は、日本基準と比較して、理論的に優れている面もある。
しかしながら、現実的には、無形資産の識別について、客観的に正しい認識・測
定ができるかどうか、という問題点があり、この点、償却年数の決定と同様、恣
意性が入り込む可能性は残されている。その合理性を保証することは容易ではな
く、コストも必要になる。
会計はビジネスのためのインフラであり、ビジネスが常に変化する以上、会計基
準も変化を求められる宿命にある。しかしながら一方で、歴史は繰り返すもので
ある。歴史上、絶対的に正しい会計基準というものは存在したことはないし、時
代背景に合わせて変化を繰り返していくことが、やはり会計基準の宿命であると
考える。
そう考えると重要なことは、どうしてそのような会計基準を選択すべきなのか、
その背後にある思想・根拠を示すことであろう。本レポートの最後には、のれん
の償却・非償却説のそれぞれの根拠の図表を付している。このような作業こそコ
ンバージェンス・プロジェクトの意義であり、のれんの会計処理について、日本
基準がIFRSを含む国際的な会計基準に対して、主張を譲らなかった理由も見えて
くると思われるため、ご興味のある方には、是非、一読をお薦めしたい。

                                 以 上

                      (文責 公認会計士 新井康友)

※「のれん「償却説」「非償却説」の根拠比較表」の図表はレポートをご覧くだ
さい。

http://bvcj.co.jp/pdf/report029.pdf

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