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2009/06/30

メールでわかる最新金融事情Vol.28

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          メールでわかる最新金融事情     H21.06.30 Vol.28
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 企業評価を専門とするビバルコ・ジャパン(株)が新株予約権、優先株式、
 M&A、株式公開(IPO)などの最近の金融市場の動向を解説いたします。

 ※このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください。

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本┃日┃の┃記┃事┃
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 ■ 資本コストについて考える
  −エクイティ・リスク・プレミアムの設定について−
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 企業評価においてDCF法は最も有力な評価アプローチの一つであるという考え
方は、企業評価に携わる専門家の一致した見解であっても、将来キャッシュ・
フローを割り引く割引率をどのように設定するかは専門家の中でも意見の分か
れるところである。そこで本レポートでは、割引率の設定において重要なファ
クターであるエクイティ・リスク・プレミアム(資本リスクプレミアム)をど
う理解すべきかについて私見も踏まえつつ解説したい:

○本文をPDF形式でお読みになりたい方はこちら 
 http://bvcj.co.jp/pdf/report028.pdf
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1.資本コストの計算式

現在の企業価値評価業務において、資本コストの計算式として最もよく利用され
ているのが、修正資本資産評価モデル( Modified Capital Asset Pricing Model)
であり、その計算式は以下の通りである:

期待収益率(Er)=(A)rf + (B)β × (C)(rm−rf) + (D)rs + (E)rp  

(A) rf    :無リスク利子率(リスクフリー・レート)
(B) β(Beta) :ベータ係数
(C) (rm−rf):エクイティ・リスク・プレミアム
(D) rs        :規模のリスクプレミアム
(E) rp	    :特有のリスク

(A)から(E)までのファクターには様々な論点があるが、本レポートで議論するのは
(C)のエクイティ・リスク・プレミアムである。

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2.エクイティ・リスク・プレミアムとは

【エクイティ・リスク・プレミアム(Equity Risk Premium)とは、投資家がリス
クの無い資産ではなくリスクのある株式に投資するとした場合に、どの程度の追
加収益率を期待するかを示したものであり、「リスクを反映するために、無リス
ク利子率に加算された収益率」と定義される。
エクイティ・リスク・プレミアムは、株式市場の平均合計収益から同一期間の無
リスク資産の平均収益を差し引くことにより算出されるが、実務上は、イボット
ソン・アソシエイツ社が公表する「Long-Horizon Equity Risk Premia Report」
の数字等を利用することが多いと思われる。】(「ケースで分かる株式評価の実
務(中央経済社)」より引用)。
イボットソン・アソシエイツ社のJapanese Equity Risk Premia Reportでは、
1952年から現在にいたるまでの東証1部加重平均指数が、長期あるいは短期のリス
クフリー・レートのリターンと比較して、どれ程超過リターンが生じていたかを
計算開始年次と計算期間によってマトリックスとして示している。企業評価の教
科書では、将来の株式市場のリターンがリスクフリー・レートをどれ程上回るか
を予測することは不可能であり、過去の株式市場の超過リターンを参考に将来を
予測するしかないため、出来るだけ長期の過去の株式市場の超過リターンを使用
することが合理的であるとされる。また、カネボウの株式買取価格決定申請事件」
において東京地裁から委嘱を受けた鑑定人は、DCF法を適用する際に日本市場にお
ける「エクイティ・リスク・プレミアム」として、より長い期間のヒストリカル
データを用いることが相応しいことから、1955年から2005年の統計データ8.5%を
採用している。

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3.我が国における長期ヒストリカルデータの合理性

しかし、考慮すべきは将来の適切な株式市場の超過リターンを検討する際に日本
株式の過去の超過リターンをそのまま利用することは誤った結果を導くことにな
ることがあり得るということである。
例えば、日本の1955年から2005年には、高度経済成長の時期(1955年から1973年)
あるいはバブル経済期(1980年後半)が丸々含まれている。高度経済成長の時期
のエクイティ・リスク・プレミアムは16.2%であり、1983年から1989年(バブル
期)のエクイティ・リスク・プレミアムは20.8%となっている。しかし、高齢化
が進み、低成長期に入った日本経済の今後10年−20年を考える際に、このような
株式市場の高騰はあり得るのであろうか。中国やインド企業の株式価値算定とし
て日本の1955年から2005年の株式市場に見られるエクイティ・リスク・プレミア
ムを利用することは合理的と思えても、成熟した日本企業の評価において、日本
の株式市場の過去50年間の実績をそのまま利用するのはミスリーディングな結果
をもたらす可能性が高いと言わざるを得ない。

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4.ヒストリカルデータ採用がもたらす誤謬

また、イボットソン・アソシエイツ社のJapanese Equity Risk Premia Reportは
毎年の株式市場のリターンと国債等のリスクフリー・レートの比較でエクイティ
・リスク・プレミアムを計算するために、実際のM&A市場における価格形成とず
れが生ずることにも注意が必要であろう。例えば、2008年から2009年にかけてサ
ブプライム問題を契機として株式市場の大暴落が起こり、M&A市場においても極
端な買い手不足より企業価値及び株式価値の大幅な下落が起きている。一方、イ
ボットソン・アソシエイツ社のJapanese Equity Risk Premia Reportでは1952年
を起点とする長期エクイティ・リスク・プレミアムは2007年12月が9.5%である
のに対して2008年12月は8.6%に下落している。これは2008年の株式市場が年率
40%超のマイナスであったための結果でしかないのであるが、もしエクイティ・
リスク・プレミアムを直近時点までの株式市場のパフォーマンスを自動的に参照
するだけであれば、同じ将来キャッシュ・フローを対象としても、2007年12月の
エクイティ・リスク・プレミアムを利用して計算される株式評価額が2008年12月
のエクイティ・リスク・プレミアムを利用して計算される株式評価額を下回るこ
とになってしまう(何故なら、割引率が低くなるほど企業価値及び株式価値は高
くなるため)。これは、2007年末と2008年末のM&A市場の実態とは明らかに異な
る結論である。
理論的には、エクイティ・リスク・プレミアムは将来の株式市場の超過リターン
として何パーセントが適切であるかということであるので、過去の株式市場のパ
フォーマンスはどうであったのかということは一判断材料とはなっても、それが
全てではないといえる。ハイリスク投資家の状況、事業会社の業績、経済全体の
見通しなどが、エクイティ・リスク・プレミアムに多大な影響を与えていると考
えられる。特に低成長期の日本企業の評価にあっては、企業の存続性がいつ何時
覆るか分からない状態であるため、より高いリスクを企業は負担せざるを得ず、
投資家はそれに見合うリターンを要求していると考えられる。

                                 以 上

                        (文責 CPA/ABV小林憲司)

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  ○企業評価
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