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2008/01/15

メールでわかる最新金融事情Vol.24

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          メールでわかる最新金融事情          H20.1.15 Vol.24
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 企業評価を専門とするビバルコ・ジャパン(株)が新株予約権、優先株式、
 M&A、株式公開(IPO)などの最近の金融市場の動向を解説いたします。

 ※このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください。

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 ■ 2007年新規株式公開市場の分析(1)

1.概況 
2007年度(2007年1−12月)に新規公開した企業は121社で、昨年度を36%(67社)
下回った。募集と売り出しを含めた新規資金調達額の合計は4,991億円(発行価格
ベース、グローバルオファリング分を除き、オーバーアロットメント分を含む)で、
昨年度から62%(8,014億円)の大幅な減少となっている。また、全新規公開企業
の時価総額(発行価格ベース)の合計は2兆1,419億円で、これについても昨年度か
ら64%(3兆7,268億円)の減少となり、本年度は企業数、新規資金調達額、時価
総額ともに大幅な減少となった。IPO市場の低調を表す数字である。
資金調達額ベース、時価総額ベースともに最大規模だったのはソニーフィナンシャ
ルホールディングスであり、資金調達額は2,176億円、時価総額は8,700億円である。
それぞれ全体の44%、41%を占めており、2位以下を大きく引き離す結果となった。
 
過去3年間の新規上場の傾向を比較すると、昨年度は一旦大型化の兆しを見せたも
のの、新規公開企業数のみならず1社あたりの平均資金調達額も減少していること
が明らかであり、市場全体としては「冬の時代」をむかえつつあると言える。こう
した新規公開全般の低迷の一因として、昨今の新規公開をめぐる引受審査基準の厳
格化に加えて、上場企業に対する内部統制報告制度の2008年4月適用開始を控え、上
場を目指す企業の上場準備の負担が増加傾向にあることが挙げられる。

次に証券市場別では、新興6市場(東証マザーズ、ジャスダック、大証ヘラクレス、
名証セントレックス、福証Qボード、札証アンビシャス)への上場数が伸び悩み、
2005年度の140社、2006年度の154社に対し、今年度は103社にとどまった。中でもジ
ャスダック及び名証セントレックスの著しい地盤沈下が目立つ。ジャスダックは新
規上場数に対し全資金調達額が激減し、セントレックスは2年連続で13社の上場を
維持した昨年度までと一変、今年度は2社にとどまっている。

 (市場別資金調達額ランキングはウェブサイトをご覧下さい。
                     http://www.bevalco.com/report/)

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2.資金調達額・時価総額の傾向
本年度の市場別資金調達額の上位は、東証1部の3,065億円を筆頭に、ジャスダック
市場の750億円、東証マザーズの542億円と続いた。これら3市場が全資金調達額の
87.3%を占めており、このことは2005年度の86.9%、2006年度の87.2%に続き、IPO市
場における「東京一極集中」が継続していることを意味している。

なお、本年度ジャスダック市場において開設された新市場NEOでは、個人投資家の市
場離れが深刻化する昨今の新興市場の中で、わずか一ヶ月の間に3社(ソフト開発の
ユビキタス、電子マネー販売のウェブマネー、再生医療のジャパン・ティッシュ・エ
ンジニアリング)が上場した。第一号銘柄として11月13日に上場したユビキタスは、
任天堂のニンテンドーDS用通信ライブラリに同社開発の通信プロトコルスタックが採
用されたことで話題性の高い企業であり、同社の初値は公開価格の4倍となる40万円
に達した。また本年度の全新規公開企業121社の初値騰落率(発行価格に対する初値
の割合)の平均が47 %であり昨年度平均77%に比べて落ち込んだのに対し、NEO上場
の3社平均は177%となっていることから、NEO銘柄に対する市場の注目の高さが伺え
る(本年度の初値騰落率の分析詳細については別稿に記す)。

新設市場である故、新規公開に係る市場としての傾向は来年度以降の動きに判断を委
ねるべきではあるが、3社合計の資金調達額の総計は59億円に達し、東京以外の既存
市場の平均調達額を大きく上回っていることから、NEO市場の登場によって「東京一極
集中」は今後も加速することが予想される。

東証1部の資金調達額3,065億円は、1,000億円を超える資金調達が3社あった昨年度
の8,669億円と比べると大幅な減少となったが、他の上位2市場(ジャスダック、東証
マザーズ)が2005年度と比しても減少著しい中で、唯一2005年度に近い数値を維持し、
全体の61%を占めた。ただし、調達額3,065億円の71%にあたる2,176億円は、前掲の
ソニーフィナンシャルホールディングスによるものである。過去3年間の内訳の推移
を辿ると、1,000億円超規模の平均調達額について、2005年度が1,109億円(SUMCOの
1,109億円)、2006年度が1,626億円(あおぞら銀行の1,992億円、野村不動産ホールデ
ィングスの1,645億円、アコーディア・ゴルフの1,240億円)、2007年度が2,176億円(
ソニーフィナンシャルグループの2,176億円)と増加しているのに対し、1,000億円超
規模を除いた平均調達額は、2005年度が294億円、2006年度が345億円、2007年度が178
億円と著しく減少している。以上より、東証1部への新規上場に係る傾向として上場
規模の二極化の進展が指摘できるだろう。

 (東証1部の平均調達額内訳はウェブサイトをご覧下さい。
                      http://www.bevalco.com/report/)

次に新興3市場(東証マザーズ・ジャスダック・大証ヘラクレス)を比較したい。新
規上場121社のうち、上場企業数の市場別上位3位は例年通りこれら新興市場が占めて
おり、1位がジャスダック46社、これに大証ヘラクレスの25社、東証マザーズの23社
が続いた。

3市場ともに企業数は減少しているものの、3市場の占める割合は2005年度の社数シ
ェアと同じ78%となった(2006年は71%)。一方、平均調達額については、2005年の
29億円、2006年の24億円を大きく下回る17億円であり、100億円以上調達した会社につ
いても、2005年度の6社(合計調達額1673億円、平均調達額279億円)、2006年度の6
社(合計915億円、平均153億円)に対して、今年度はユー・エス・ジェー(マザーズ、
196億円)、藤商事(ジャスダック、117億円)、サムティ(ヘラクレス、110億円)、
アートネイチャー(ジャスダック、106億円)の4社(合計529億円、平均132億円)に
とどまるなど、新興3市場における新規公開のさらなる縮小が見られる。

中でも先述のとおりジャスダック市場の低迷は著しく、全調達額を昨年度と比較する
と、44%減少の東証マザーズ、34%減少の大証ヘラクレスに対して、昨年度から56%
減少(940億円減少)の750億円であった。さらに平均調達額を比較すると、昨年度に
比べほぼ変化の見られなかった他の2市場に対して、14億円という大幅減少(47%減
少)の16億円となった。その背景として考えられるのは、100億円超の調達の減少であ
り、2005年度の2社(合計952億円、平均476億円)、2006年度の4社(合計705億円、
平均176億円)に対し、今年度は2社(合計223億円、平均112億円)にとどまっている。

(新興3市場の新規上場銘柄数推移、資金調達額推移、平均調達額推移、100億超
 平均調達額推移はウェブサイトをご覧下さい。http://www.bevalco.com/report/)

企業別資金調達額上位は、ソニーフィナンシャルホールディグスの2,176億円を筆頭に、
2位China Boqi Environmental Solutions Technology (Holding) Co.Ltd.の221億円、
3位キトーの219億円、4位ユー・エス・ジェイの196億円、5位テイ・エス・テック
の158億円が続いた。
特筆すべきは、概況でも述べたとおり、1位のソニーフィナンシャルホールディング
スが調達額シェアの43.6%を占めている点である。調達額1000億円未満9社の平均調達
額は、この3ヵ年で最も低い158億円であり(2005年度は9社平均360億円、2006年度は
7社平均485億円)、過去2ヶ年の同順位と比較しても、今年度は2位以下を大きく引き
離していることが明らかである。

同社は、ソニーを親会社に、ソニー生命・ソニー損保・ソニー銀行等を傘下にもつ金
融中間持株会社として、2004年4月に設立された。上場予備申請時より、資金調達額が
グローバルオファリング分を含むと3,000億円前後であること、時価総額が1兆円前後
であることから、2006年11月上場のあおぞら銀行(グローバルオファリング分含み約
3,800億円)以来の大型案件として世間の注目を浴びていた。発行価格は40万円であり、
全公開株式数87万株の内訳は、新規に発行する募集株式が7万5,000株、売出株式が72
万5,000株(うちグローバルオファリング分が32万6,000株)、これにオーバーアロッ
トメントによる売出株式7万株が加わる。これによって、ソニーフィナンシャルホール
ディングスは約300億円、また売出株式を保有するソニーは過去最大規模の約3,140億
円をそれぞれ調達した計算になる。親会社であるソニー本体にとって、当該金融子会
社の上場は、低迷が続く本業のエレクトロニクス部門建て直しのための有力な切り札
の一つであったことが伺える。

2位のChina Boqi Environmental Solutions Technology (Holding) Co.Ltd.は、中国
企業として初めて東証1部へ上場し 、ソニーフィナンシャルホールディングスと同じ
く注目を浴びた。同社は、中国国内における石炭火力発電所で用いられる排煙脱硫・
脱硝システム及び水処理システムの設置や管理等の環境ソリューション業務を行って
いる。成長性が期待できる一方で、発行価格は16万円、発行価格PERが18.7倍と比較的
低く設定され、他の上位9社の平均初値騰落率が−5.1%と伸び悩んだのに対し、同社
は発行価格を大きく上回る27万6,000円の初値(騰落率72.5%)がついた。

(資金調達額上位10社はウェブサイトをご覧下さい。
                       http://www.bevalco.com/report/)

時価総額の上位10社は、資金調達額の上位10社と全く同じ顔ぶれとなっている。資金
調達額と同じく時価総額1位のソニーフィナンシャルホールディングス(8,700億円)
に続くのは、大阪でユニバーサル・スタジオ・ジャパンTMを運営するユー・ユー・
エス・ジェイで、時価総額は1,000億円を超えた。
ユー・エス・ジェイは、2001年の開業以来続く赤字に対し財務体質の改善を目指し、
2005年に米ゴールドマン・サックスグループを引受先とした250億円の増資を実施して
いる。上場時(公募新株発行後)のゴールドマン・サックスグループの保有株式は発
行済株式の41.52% であり、したがって保有株式の時価は436億円、当該上場による上
場益はおよそ185億円にのぼる。

(時価総額上位10社はウェブサイトをご覧下さい。
                       http://www.bevalco.com/report/)
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3.まとめ
今年度のIPO市場は、2005年度以降の3ヵ年で最低水準となった。特に新興市場につい
て、2006年のライブドア事件以降の低迷の構図から脱する兆しは今なお見えない。しか
しその一方で、長期化する低迷は「新規上場ブームの沈静化」という新たな様相を帯び
つつあり、例えば今年度はこれら新興市場に対し、改革を迫る動きが内外から浮上した。
ジャスダックにおいては8月に新技術系企業を対象とした新市場「NEO」を開設する一方
で、年末には大阪証券取引所による買収提案に応じる方針を公表し、今後は大証ヘラク
レスとの統合も囁かれ始めている。またセントレックスにおいては、昨今の新規上場企
業の業績が上場時に承認した計画を大幅に下回るケースが多く、これに対し、証券取引
等監視委員会が上場審査不十分を理由とした異例の行政処分を金融庁に勧告する見通し
との声も聞かれる。

昨年度の弊社レポートで予見したように、今後も証券市場―特に新興市場において再編
等が進む可能性は高い。市場がこうした低迷期・変革期を迎える中で、上場する企業の
側にも取引所の上場審査基準の緩厳に惑わされることのない慎重な判断が求められ、こ
れにより、今後は新規上場企業と市場の質の向上が確保されることが期待できよう。

                                    以 上

                              (文責 福田 裕美)

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