2007/09/05
メールでわかる最新金融事情Vol.22
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ メールでわかる最新金融事情 H19.9.5 Vol.22 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 企業評価を専門とするビバルコ・ジャパン(株)が新株予約権、優先株式、 M&A、株式公開(IPO)などの最近の金融市場の動向を解説いたします。 ※このメールマガジンは等幅フォントでご覧ください。 ▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼ 本┃日┃の┃記┃事┃ ━┛━┛━┛━┛━┛ ■ 1円ストック・オプションの意外なメリット ---------------------------------------------------------------------- ●ストック・オプション会計の導入 皆さんご存知の通り、ストック・オプションの会計原則の変更があり、2006 年5月1日以後にストック・オプションを発行する企業は、その付与時の公正 な評価額を費用として損益計算書に計上することが義務付けられました。 従来、ストック・オプションは、無償で付与され、会社財産(特に現金)の 流出がないというメリットから、資金力の乏しいベンチャー企業などでは有力 なインセンティブプランとなっていました。しかし、この費用計上の義務化に より、当期利益への悪影響が避けられないことから、ストック・オプションの 利用は減少していくものと考えられていました。 しかしながら、その一方で、今まで税務上全く認められなかった損金が計上 されるケースも出てきたことにより、「新しいメリット」が生まれ、それを上 手く利用している企業も出てきています。 (本文をPDF形式でお読みになりたい方は、ウェブサイトをご覧下さい。 http://www.bevalco.com/report/) ●税制非適格ストック・オプションのメリット ストック・オプションは、所得税法上、税制適格と税制非適格とに分類され ています。従来、この分類は、ストック・オプションを付与される役員・従業 員等の側において、課税される所得とそのタイミングの区分を規定したもので した。結論としては、税制適格の場合には、権利行使時に発生する給与所得を、 売却時まで繰延べ、譲渡所得として課税することを規定しており、税率及び課 税時期上のメリットを認めています。 一方、1.で述べた「新しいメリット」とは、ストック・オプションの発行 法人である企業側に生まれたものであり、税制非適格の場合に認められます。 具体的には、発行側企業におけるストック・オプション費用の損金算入です。 法人税法上、ストック・オプションに関しては、その個人においてその役務 の提供につき所得税法等の規定による給与等課税事由が生じた日に、その役務 提供を受けたものとして法人税法の規定が適用される(法人税法第54条第1項 )、とあり、ここで、給与等に含める取得とは、「所得税法に規定する給与 所得、事業所得、退職所得及び雑所得」(法人税法施行令第111条の2第1項)、 としています。つまり、ストック・オプションを付与された従業員等において 給与等課税事由が生じた場合には、発行法人側で損金算入ができることになり ます。また、損金算入額は、新株予約権の発行が正常な取引条件で行われた場 合には、新株予約権の発行の時の価額に相当する金額(法人税法施行令第111 条の2第3項)、としています。 会計上、無償で付与され、会社財産の流出がないストック・オプションを費 用計上しなければならない点はデメリットと考えられます。しかしながら、無 償で付与され、会社財産の流出がないストック・オプションの費用を損金算入 できるということは、発行体企業にとって大きな税務上のメリットではないで しょうか。 ストック・オプションに関連して、給与等課税事由が生じるのは、非適格の 場合のみです。したがって、発行企業の方で損金算入するメリットは、税制適 格のストック・オプションでは享受することができないため、最近は、あえて 税制非適格のストック・オプションを発行している企業も増えてきています。 また、税制非適格の場合には、税制適格要件を考慮しない柔軟な設計が可能に なることもメリットです。今回は、権利行使価額1円ストック・オプションの 退職金としての利用を例に、そのメリットを考えてみたいと思います。 ●退職金代わりの権利行使価額1円ストック・オプション ストック・オプションは設計によって、退職金として活用することもでき、 数多くの企業でその利用が増えています。具体的には、権利行使期間を長くし たうえで、権利行使条件として退職することを加え、さらに権利行使価額を1 円としておけば、付与された従業員等は、ほぼ退職時の時価で株式をもらうこ とができます。最近、特に、役員の責任が重くなる一方で、役員退職慰労金制 度を廃止する企業が増えていますが、この方法によれば、ストック・オプショ ンを、同制度を補完するものとして機能させることができます。 また、同ストック・オプションを、実質的な退職金として機能させるために は、税務上、退職所得として認められるかどうかが問題になります。すなわち、 税制非適格ストック・オプションは、原則的には、権利行使時に権利行使価額 と時価との差額について、給与所得としての課税を受けることになります。し かしながら、給与所得として課税されるのであれば、役員退職慰労金として支 給し、退職所得として課税される場合と比べて、従業員等の側で多額の所得税 を課せられることになり、税制上のメリットを受けることができません。 ●伊藤園の事例 この税務上の扱いについては、伊藤園の事例が参考になります。伊藤園は、 2004年9月1日に役員退職慰労金廃止の精算のために、ストック・オプション 目的の新株予約権を以下の条件で発行しました。 名称:株式会社伊藤園第2回新株予約権 割当先:取締役19名、監査役3名、子会社の取締役3名 発行日:2004年9月1日 権利行使時の発行株式数:146,000株 新株予約権の発行価格:無償 権利行使価格:1株につき1円 新株予約権の権利行使期間:2004年9月1日〜2034年8月31日 行使条件(抜粋):新株予約権を割り当てられた時に就任していた会社の役員 を退任した翌日から10日以内のみ権利行使可能 当該新株予約権は、権利行使期間が30年を超えており、適格要件を満たして いない税制不適格ストック・オプションに該当します。伊藤園は、当該ストッ ク・オプションの権利行使時の課税関係を退職所得として差し支えないかどう かについて、事前照会を行い、東京国税局から差し支えない旨の文書回答を得 ています。 この場合、ポイントとなるのは、ストック・オプションが実質的に退職金と 同様と認められるかどうか、であると考えられます。本照会では、ストック・ オプションの行使条件が、役員退任後10日間に限定されており、また、権利行 使価格は1株につき1円とほぼ無償であるため、ほぼ退職時に、その時点の株 価で退職金を受領したのと同様であることを伊藤園が主張し、その主張が認め られたものです。 この照会では、発行側企業の税務上の取扱いについては触れられていません が、「給与等課税事由」の給与等に退職所得が含まれることから、発行側企業 におけるストック・オプション費用の損金算入は可能であると考えられます。 また、本件のように1円ストック・オプションの場合には、ストック・オプシ ョン費用の総額は、ストック・オプション付与時の時価とあまり変わらない金 額となり、損金算入メリットも無視できないものとなります。 東京国税局の回答は、具体的にどのような場合に、退職所得として扱われる かどうかについて規定したものではありません。しかしながら、伊藤園のケー スのようなストック・オプションの設計ができれば、ストック・オプション会 計による費用計上を行った場合でも、発行側企業、受領した従業員等の双方に とって、メリットとなるのではないかと思われます。 以 上 (文責 小林 憲司) ------------------------------------------------------------------------ ■セミナーのご案内 弊社出版の『新株予約権・種類株式の実務』(第一法規刊)に関連して、以下 のセミナーを行います。ご興味のある方は、是非ご参加ください。 「新株予約権・種類株式の実務セミナー」 開催日時:2007年10月5日 13:30−17:00 主催:第一法規株式会社 詳しくはこちら↓ http://www.daiichihoki.co.jp/dh/branch_event/detail/F093301101.do 「新株予約権・種類株式の戦略的活用と法務、会計、税務からの留意事項」 開催日時:2007年10月10日 13:30−16:30 主催:株式会社ストック・リサーチ 詳しくはこちら↓ http://www.stockresearch.jp/071010.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼▼▼▼▼ ビバルコ・ジャパンでは以下の業務を行っております ▼▼▼▼  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ○企業評価 ○非公開株式の評価 ○ストックオプションの評価 ○新株予約権・優先株式の評価 ○無形資産の評価 ○デューディリジェンス ○企業再生・事業再生アドバイス ○M&Aアドバイザリー業務 ○M&A・エクイティファイナンスに伴う第三者意見の表明 ○株式公開の助言 ____________________ ▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲ お問い合わせは info@bevalco.com まで ▲▲  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■免責事項 このメールマガジンに掲載されております情報は、内容及び正確さに細心の 注意をはらい、万全を期しておりますが、人為的なミスや機械的なミス、調 査過程におけるミスなどで誤りがある可能性があります。 ビバルコ・ジャパン株式会社では、当該情報に基づいて被ったいかなる損害 についても一切の責任を負うものではありません。 ■配 信 元 ビバルコ・ジャパン株式会社 配信担当:新井康友(公認会計士) 東京都千代田区三番町14番地MLC三番町ビル http://www.bevalco.com/ 本メールマガジンおよび当社が提供するすべての情報について、当社の許 可なく転用・販売することを禁じます。 2007(C) BVCJ All rights reserved. ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



