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2006/07/05

メールでわかる最新金融事情 Vol.12-新株予約権の評価方法について考える(3)

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          メールでわかる最新金融事情     H18.7.5  Vol.12
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 このメールマガジンでは、企業価値総合研究所が新株予約権、優先株式、
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 ■ 新株予約権の評価方法について考える(3)

 今回はBS式に代入した行使期間について考察する。

 TRN判決は、BS式に代入する権利行使期間を、発行要項では約1年10ヶ月と
する定めがあるにもかかわらず、任意消却特約の存在を考慮して行使可能開始日
の1日間だけとの想定を、不合理な前提であると判示している。その上でTRNが提
出した評価書で使用した以下の数値と裁判所が考える行使期間をBS式に代入しオ
プションプレミアムを144,665円と算定し、これを大幅に下げる合理的な理由を
みいだすことはできないとしている。

 (BS式に代入したパラメータはウェブサイトをご覧ください。
                     http://www.cvri.co.jp/report/)

 TRNが発行を予定していた新株予約権が原則的なコールオプションであれば、
裁判所が行った評価結果が妥当なのであろう。しかしTRNが発行を予定していた
新株予約権は、消却条項が付され、更に譲渡禁止条項を付されており、BS式で
あれ2項モデルであれオプションプレミアム計算式に単純に数値を代入しての計
算できるものではない。

 問題は消却条項をどのように評価に織り込むかであろう。
 以下は私見であるがTRN事件(消却条項付)の新株予約権のプレミアムを計算
する場合に使用する行使期間は1日から30日が適当であろう。理由は以下のとお
りである。

 TRN事件の新株予約権の行使価格は、新株予約権発行決定日直前の1ヶ月終値
平均の90%であり、判決が述べているとおり、12月26日の終値、1ヵ月終値平均、
3ヶ月終値平均、6ヶ月終値平均のうち最も安い価格で設定されている。新株予約
権付与日から権利行使開始日の間に発行体が合理的に行動するとすれば、新株を
発行することによって調達できる金額は新株予約権を行使されることによって調
達できる金額より多額であるため、新株発行による資金調達を選択し、新株予約
権を消却すると予測できる。ならばそもそもなぜ新株予約権を発行するのかとい
う問題に戻ってしまう。従って、消却の決議をいつ行うかによって最短1日、最
長30日間が権利行使可能期間となる。

 仮に行使開始日に10%ディスカウントされるような新株予約権であれば、以上
で述べた理由により、行使開始日に消却されると予想され、この場合行使期間を
1日としてBS式でオプションプレミアムを計算してもなんら問題はないと思われる。

 また、そもそもオプションとは何ぞやという観点から考えると、消却条項付の
新株予約権はコールオプションとは言えず、プレミアムという概念は成立しない
と言える。

 オプションはオプション権利者が当該オプションを行使するか否かを自己の自
由な判断によって決定することができるものである。オプションプレミアムは、
その権利に対する対価である。この権利が権利所有権者の意思に関係なく突然消
滅してしまうのであれば、これはもうオプションとは言えない。
 TRN事件の新株予約権は、権利行使可能開始日から消却日の前営業日までに新
株予約権者に通知することによって、発行体が当該新株予約権をいつでも消却で
きるという特約が付されている。従ってTRN事件の新株予約権は、そもそもコー
ルオプションではなくプレミアムという概念が成立しないと考えることも可能で
ある。

 以上の考え方を前提に、上表の数値を使用してオプションプレミアムをBS式、
2項モデルで計算した結果は以下のとおりであり、原資産価格の約10%から13%で
あり過去発行させたオプションプレミアムが原資産価格の約1%であるのに比較し
て高めとなっている。しかし消却条項を評価に織り込んでいない判決で示された
オプションプレミアム144,665円より大幅に低い価格となる。

 (行使期間の違いによるオプション評価額の試算
                    http://www.cvri.co.jp/report/)

 投資家が投資家の意思に係りなく消却される可能性がある新株予約権に投資し
ようとするインセンティブは極めて低いと思われる。しかし消却されなければ売
却益を得られる機会が大きいため、発行体との価格での交渉の余地が残る。

 たとえば、TRN事件の新株予約権に付されている譲渡禁止条項をどのように評
価に織り込むのか。譲渡が禁止されているため時間的価値を100%織り込んだ価格
(オプション評価モデルでの算出額)での取引は当然に考えられない。オプショ
ンプレミアムのうちの時間的価値を抽出する方法はないため、オプションプレミ
アムはオプション評価式で計算したプレミアムの額を参考に、発行体と投資家が
交渉によって決めることになり、交渉を経て決まったオプションプレミアムは、
オプション評価式で計算された価格より低くなるだろう。

 公正なオプションプレミアムとは、オプションプレミアム計算式で計算された
価額を参考に、交渉過程を経て発行体と投資家で決定した価格である。判決が示
したようなオプション評価式で算出した価格が公正な価額では決してありえない。

 3回にわたってTRN事件について感想を述べてきたが、判決についてまず疑問に
思うのは、と言うよりも間違いであると思うのは、BS式での評価を認めたことで
ある。
 原則的には2項モデルを使うべきである。TRN事件でBS式を使ったのは行使可
能開始日のみ転換可能という前提を置いたからである。判決のように行使可能期
間中いつでも権利行使可能と言うのであれば2項モデルでの評価が原則であろう。
またアービトラージフリーな状況を想定できないにもかかわらず時間的な価値を
100%認めるのも間違いである。
判決は大幅に下げる合理的な理由は認められないというが、大幅に下げる合理的
な理由を判決は見落としている。
 このようにTRN判決は疑問の多い判決である。これが判例として重要視され
ないことを望む。
 
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