2006/06/21
メールでわかる最新金融事情 Vol.11-新株予約権の評価方法について考える(2)
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メールでわかる最新金融事情 H18.6.21 Vol.11
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■ 新株予約権の評価方法について考える(2)
前回は事件の概要、有利発行に当たるかについて判決での4つの論点を挙げ
た。今回は評価に関しての考え方を述べ、それぞれの論点に関して書きたいと
思う。
1.「いわゆる評価」について
TRN判決(以下「判決」という。)は、オプション評価理論(ブラック・ショ
ールズ・モデル)に基づいて算定された新株予約権発行時点の価額を「公正な
オプション価額」と考えていると推測される。
しかし、現実の取引においては、市場で決定される価格がある場合であっても、
取引者間で合意した価額で取引が行われ(阪急HDと村上ファンドとの阪神株の
取引はその典型であろう。)その価額が公正な取引価額又は時価とされる。この
価額は取引者間で交渉を経て合意に至った価額であり、ある評価手法を使用して
算定された評価額ではない。結果として評価額と同額で取引価格が決定されるこ
とはあるだろうが、評価額が取引価額になることはない。評価額はあくまでも交
渉の出発点としての機能を果たすのみである。
一般的に評価は、評価依頼者と評価受託者の間で合意された前提の下で、また
その時点で入手可能な情報だけで計算されるのでフェアーバリューとはなりえな
い。あくまでも評価依頼者と評価受託者との間で合意された仮定の下での参考価
格でしかないからである。
オプションプレミアムの決定に際しても、同様に評価額を前提にした発行者と
引受者間での交渉を経て価格が決定する。従って、オプション評価理論に基づい
て算定された価額自体が公正なオプション価額であるとは言いがたい。
2.採用したオプション評価モデル
判決は、TRNの新株予約権の評価においてブラック・ショールズ・モデル(以
下「BS式」という。)を採用したことを妥当と認め、BS式でのオプションプレミ
アムの計算を容認している。その理由としては、BS式が実務において一般的に用
いられているものであることや企業会計基準委員会作成の「ストック・オプショ
ン等に関する会計基準の適用指針」において譲渡制限があるストック・オプショ
ンの公正な価額の算定にもBS式の適用を認めていることなどが挙げられるであろ
う。
しかし、新株予約権のように行使期間中のどの時点でオプションが行使される
か予測できない場合のオプションプレミアムの計算にBS式は適していない。この
ような場合のオプションプレミアムの計算には2項モデル又は3項モデルが使用さ
れるのが一般的である。にもかかわらずTRNの新株予約権のオプションプレミア
ムの計算に敢えてBS式を使用したのは、何らかの理由があったのではないかと推
測されるが、その点を考慮せずなぜBS式によるオプションプレミアムの計算を容
認したのか疑問が残る。
3.原資産価格の適否について
判決は、取締役会決議直前の株価が急騰していることを認め、日本証券業協会
が定めるいわゆる自主ルールに従い、一ヶ月の終値平均を基準としたことは不合
理ではないと判示している。ある判決では急騰しているとは認めがたいから自主
ルールの適用は不合理といい、何をもって急騰した、しないの基準とするのか判
然としない。
4.原資産価格に希薄化を考慮することの相当性
判決は、一連の新株発行や新株予約権の発行による希薄化を考慮して現資産価
値の評価を算定していることについて、希薄化を当然に考慮することの相当性に
疑問が残るとしている。
新株発行や新株予約権の発行によって株価が下がることは、市場が示すとおり
であろう。
それをどのような方法で評価に織り込んでいくかは今後の課題として残るとし
ても、判示のようにまったく無視するのは、評価としては真摯な姿であるとはい
えないのではないか。
次回は評価で使用した行使期間について、消却条項がついた新株予約権の評価
方法に絡めて述べようと思う。
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