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スクリーンに現われては散ってゆく映画という幻を、何とかこの手に握りしめたい。そんな熱い心意気の映画狂たちがお届けする居酒屋談義(ネタバレなし)です。どうぞグラスを片手に気軽にご参加ください。映画の知識が知らぬ間に身につくことをお約束します。

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2007/06/06

底抜けラウンドテーブル われら幻の映画を見たり 号外

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 底抜けラウンドテーブル われら幻の映画を見たり

 号外

 ♪2007年6月6日発行

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 ♪出席者 21世紀映画発見委員会

  代表  佐藤学

  委員  ジルダ トム ジョージ

  みなさん、お元気ですか!!?



 ♪本日の映画はこちらになります。


 『素晴しき放浪者』

  (ジャン・ルノワール監督、1932)

    主演:ミシェル・シモン シャルル・グランヴァル

     セヴリーヌ・レルシンスカ


 『キートンの船長(=キートンの蒸気船)』

  (バスター・キートン

   =チャールズ・F・リースナー監督、1928)

  主演:バスター・キートン マリオン・バイロン

     アーネスト・トーレンス



 佐藤  セーヌ河にかかる橋から、ブーデュ(ミシェ

     ル・シモン)が身投げをする。その直前に河

     沿いの舗道を彼はトボトボというか、放心状

     態で歩いているんだけど、あの映像はスゴイ

     でしょう。


 トム  舗道の脇には古本の屋台が並んでいて、通行

     人もけっこういる。隠し撮りなんだね。


 ジョージ  反対側の通りから、古本屋の主人(シャ

     ルル・グランヴァル)が望遠鏡でシモンをの

     ぞいているという設定だけど。


 ジルダ  画面が丸い形にくり抜かれた黒枠で囲まれ

     ているから、望遠レンズで撮ったような効果

     が出ているけど、あれは望遠レンズで撮った

     画面ではないと思うわ。


 佐藤  あの当時、望遠レンズというものはなかった

     んだろうか? 調べてみないと分からないけ

     ど、このシーンを見てると、当時のパリにそ

     のままタイム・スリップしたような、強烈な

     現実感に圧倒されてしまうね、ぼくは。


 ジョージ  あの撮影時に橋の付近にいた通行人たち

     は、知らない間にエキストラにされてしまっ

     ている(笑)。


 トム  このシーンの前後に挿入される、セーヌ河を

     行き交う小さな蒸気船をとらえたカットなん

     か見事だねえ。何ともいえない素晴しさ。


 ジルダ  古本屋の主人に河から助け出されたミシェ

     ル・シモンが放浪者、まあ浮浪者なんだけど

     も、彼はその古本屋の建物の中でやりたい放

     題のことをする。あの途方もなさは映画史に

     残るものよね。


 トム  あれほど変な人間が出てくる映画というのは

     まずないでしょう。


 佐藤  もしこの役をチャップリンが演じたら、その

     「変てこ」な部分が消されてしまうような気

     がするんだよ。


 ジルダ  あの女中を演じたセヴリーヌ・レルシンス

     カがチャップリンのような仕草でお菓子か何

     かを食べるカットがあるから、ルノワールは

     当然チャップリンを意識していたはずね。


 ジョージ  かたや『キートンの船長』のバスター・

     キートンだって、そうとうおかしなことを平

     気でやってるけど、どこかにチャップリンと

     同様の冷静さが見受けられるよね。


 トム  そう、彼らの演技はスゴイし、立派だと思う

     けどね。ただ、彼らはキャメラの前でお芝居

     をしながらも観客を常に意識している。とこ

     ろがミシェル・シモンは違うでしょう。


 ジルダ 『キートンの船長』は、ラストの暴風雨のシ

     ーンがものスゴイけど、じっと見てるとキー

     トンはかなり冷静よね(笑)。


 佐藤  ヘタすると大怪我してしまうからだよ(笑)。

     キートンのアクロバット的なアクションには

     見ほれてしまうね。たとえば、建物の側面が

     キートンのうしろから倒れてきても、窓枠が

     ちょうど彼の身体をすり抜けて助かってしま

     う(笑)。あれだけで、彼は映画史に残るで

     しょう。


 トム  そうだと思う。チャップリンだって『モダン・

     タイムス』(チャールズ・チャップリン監督、

     1936)で、山高帽にドタ靴を身に着けて

     唄い踊っただけで、もう映画そのものだもの

     な。


 ジョージ 『素晴しき放浪者』のプロデューサーでも

     あるミシェル・シモンのあの演技。あれはも

     はや演技を超越しているよね。本物の浮浪者

     が、上流階級の家庭をひっかき回すところを

     記録したドキュメンタリーのように生なまし

     い。


 ジルダ  役になりきるという次元すらも超えてるも

     のねえ。


 佐藤  台所をめちゃくちゃにしてしまうシーンなん

     か、ミシェル・シモンは本当に狂っているん

     じゃないかと思えるほどだね。


 トム  ルノワール映画の人物たちは、どこか「変て

     こ」でおかしい。そこがいいんだな。あの古

     本屋の主人だって、おかしいよ。お客の学生

     (ジャン・ダステ)に「持ってけ」と言って

     タダで本をくれてやるところなんか、傑作だ

     よねえ(笑)。


 ジョージ  キートンやチャップリンだって、かなり

     「変てこ」であることはたしかなんだけど、

     このルノワールの『素晴しき放浪者』に出た

     ミシェル・シモンのような映画的自由には、

     ついに至らなかったような気がするなあ。



 ♪当委員会の委員による結論:


  ジャン・ルノワール監督作品

  『素晴しき放浪者』

  バスター・キートン=

  チャールズ・F・リースナー監督作品

  『キートンの蒸気船(=キートンの船長)』

  が

  21世紀の映画に及ぼす影響度は

  100%(暫定的数字です。)



  それでは次の号外をどうぞお楽しみに!!!



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