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スクリーンに現われては散ってゆく映画という幻を、何とかこの手に握りしめたい。そんな熱い心意気の映画狂たちがお届けする居酒屋談義(ネタバレなし)です。どうぞグラスを片手に気軽にご参加ください。映画の知識が知らぬ間に身につくことをお約束します。

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2007/05/14

底抜けラウンドテーブル われら幻の映画を見たり 号外

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 底抜けラウンドテーブル われら幻の映画を見たり

 号外

 ♪2007年5月14日発行

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 ♪出席者 21世紀映画発見委員会

  代表  佐藤学

  委員  ジルダ トム ジョージ

  みなさん、お元気ですか!!?

  ごぶさたばかりで申し訳ありません。

  どうかお許しのほどを……。


 ♪本日の映画はこちらになります。



 『流れる』(成瀬巳喜男監督、1956)

   主演:田中絹代 山田五十鈴 高峰秀子


 『祇園囃子』(溝口健二監督、1953)

   主演:木暮実千代 若尾文子 河津清三郎



 佐藤  この両作が、成瀬や溝口の作品の中で傑作か

     どうかは置くとして、彼らの演出法のちがい

     が良く分かることは確かだね。


 トム  同じ「芸者もの」でも、溝口のほうは芸者た

     ちが働く現場、つまり「お座敷」が出てくる

     のに対して、成瀬のほうは「お座敷」をいっ

     さい画面に出さない。


 ジョージ  置屋の台所事情が苦しいというのは共通

     しているね。


 ジルダ  山田五十鈴も木暮実千代も女将なのに金策

     に駆けずり回る。時代の転換点を描いている

     わけか。


 佐藤  『流れる』では、娘役の高峰秀子が、その時

     代の居心地の悪さのようなものを体現した現

     代女性を演じているんだね。


 ジョージ  まわりの芸者たちの中で、彼女は何をす

     るでもなく障子戸に背中をあずけて立ってい

     たりする。あの姿が印象に残るね。


 トム  『祇園囃子』の若尾文子のほうは、同じ現代

     女性といっても、自分から芸者を志願しに来

     る。少なくとも最初は、芸者という職業に何

     の疑問も抱いていない。


 ジルダ  それでしまいには、お客の唇を噛み切って

     しまうのね(笑)。


 佐藤  溝口映画の登場人物は、物事の変化に体ごと

     対応しなければならないから(笑)。


 トム  成瀬映画の女たちは、つねに生活のための細

     細とした動作をしながら、じっと変化が訪れ

     るのを待っている。


 ジルダ  この『流れる』の置屋って、ほとんどの日

     本人とって外国みたいなところでしょう。


 トム  そうだね。よほどのことがない限り、あんな

     場所を見られることはないわけで。


 佐藤  現代日本からはすでに失われてしまったもの

     が、たくさん映っているし。二重の意味で「

     外国」、つまり「外」が見える。


 ジョージ  『流れる』は、ほとんどキャメラが動か

     ないね。少しパンや移動があるだけで。


 トム  あれだけの人物が家の中を右往左往するわけ

     だから、キャメラを動かしたりしたら収拾が

     つかなくなる(笑)。


 佐藤  それより成瀬は、女優たちの手を使って小道

     具をひんぱんに動かしているね。うちわや三

     味線を。


 トム  動かすといえば、あの芸者たちを動かしてい

     たのは、じつは女中の田中絹代だったように

     も見えるのが面白いね。


 ジルダ  溝口のほうは誰が動かしたことになるの?

     あの浪花千栄子かしら?


 ジョージ  まあ、そうなんだろうな。でも、結局動

     かされたのは、どっちの作品でも芸者たちで

     はなくて、男たちのほうだと思う。


 佐藤  まともな男たちはけっして描かないね、溝口

     は。「お座敷」の客の描き方を見れば分かる

     ように。


 トム  男のほうは傷を負ったりして、うまくまるめ

     こまれて終わりか。女はコワイね(笑)。


 ジルダ  ヒドイ!


 佐藤  この二本はほとんど同じ時代を描いていると

     いうのに、ずいぶん時間が隔たった感じに見

     えるのは、京都と東京という空間のちがいだ

     ろうか?


 ジョージ  京都の花街は独特の雰囲気があるから。

     なんか時代劇っぽく見えてしまうときがある

     ね。あの路地を見てると、ペドロ・コスタの

     『ヴァンダの部屋』(2000)が脳裏に浮

     かんで来るのはぼくだけだろうか?そっくり

     でしょう、何か。


 トム  溝口のほうは東京も描いているじゃないか。

     列車の中のコンパートメントがうまく使われ

     ていたね。あれだけで京都から東京へとシー

     ンが移ってしまう。うまいね。


 佐藤  そうか、すっかり忘れていたよ、あの夜行列

     車のシーン。




 ♪当委員会の委員による結論:

  成瀬巳喜男監督作品

  『流れる』

  溝口健二監督作品

  『祇園囃子』

  が

  21世紀の映画に及ぼす影響度は

  95%(暫定的数字です。)



  それでは次の号外をどうぞお楽しみに!!!



 ♪【映画オリジナルタイトルQ&A】

  (号外=3月23日発行分)

   答え合わせ

  〔フランス語のアクセント記号は省略しています。〕

  ┌──────────────────────┐
  │                      │
  │ 問:                   │
  │                      │
  │  フランス語のタイトル(原題)は     │
  │                      │
  │  “Quatre Nuits D'Un Reveur”      │
  │                      │
  │   (ひとりの夢想家の四夜)        │
  │                      │
  │  英語のタイトルが            │
  │                      │
  │  “Four Nights of a Dreamer”      │
  │                      │
  │   (意味は原題と同じ)          │
  │                                            │
  │  中国語のタイトルは           │
  │                      │
  │  “一個夢者的四個晩上”         │
  │                      │
  │   (これも意味は原題と同じ)       │
  │                                            │
  │                      │
  | 答:                   |
  │                      │
  │ この映画の日本公開タイトルは       │
  |                      |
  | 『白夜』                 |
  |                      |
  |  (1971年、ロベール・ブレッソン監督、  |
  |                      |
  |   フランス=イタリア合作)       |
  |                      |
  |   イザベル・ヴェンガルテン       |
  |                      |
  |   ギヨーム・デ・フォレ  主演     |
  |                      |
  │   でした。               │
  │                      │
  └──────────────────────┘

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