底抜けラウンドテーブル われら幻の映画を見たり  RSSを登録する

スクリーンに現われては散ってゆく映画という幻を、何とかこの手に握りしめたい。そんな熱い心意気の映画狂たちがお届けする居酒屋談義(ネタバレなし)です。どうぞグラスを片手に気軽にご参加ください。映画の知識が知らぬ間に身につくことをお約束します。

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2006/05/27

第48号

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  □ |          □  第48号
    |   底抜け   |     2006年5月27日発行
  □ | ラウンドテーブル □
    |         |
  □ |   われら    □    出席者 21世紀映画発見委員会
    | 幻の映画を見たり |     代表  佐藤学
  □ |                  □  委員  ジョージ トム ジルダ
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   スクリーンに現われては、すぐに消え去ってしまう映画という幻を
   なんとかして記憶にとどめたい。そんな熱い心意気を持つ同志たち
   が集い、夜な夜な繰り広げる、居酒屋談義の延長のような円卓会議
   です。どうぞグラスを片手に、気軽におつきあいください。


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      The Contents 1 ラウンドテーブル 2 架空名画座 3 編集後記


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   ご無沙汰いたしました。
   きょうの映画はこちらです。

  『妻よ薔薇のやうに』
  (Tsuma yo bara no yo ni
   英語題名  Wife! Be like a rose!/アメリカ公開題名 Kimiko) 
  1935年 日本/P.C.L.(Japan/P.C.L.)
    74分(min/分鐘)
   
  監督 成瀬巳喜男
  (Directed by Mikio Naruse/導演 成瀬巳喜男)
  脚色 成瀬巳喜男
  原作 中野實『二人妻』
  撮影 鈴木博
  音楽監督 伊藤昇
  装置 久保一雄

  出演 千葉早智子(山本君子)/ 丸山定夫(山本俊作)
     英百合子(お雪)/ 伊藤智子(山本悦子)
     堀越節子(お雪の娘・静枝)/ 藤原釜足(悦子の兄・新吾)
     細川ちか子(新吾の妻)/ 大川平八郎(君子の恋人・精二)
     伊東薫(お雪の息子・堅一)

  35ミリ モノクロ 
  スタンダード・サイズ(1:1.37)
  モノラル(日本語発声)
  
   <ネタバレなしのあらすじ>
    君子は歌人の母・悦子と東京で二人暮らし。その父・俊作は、か
   なり前に家を飛び出したまま、芸者あがりのお雪と長野に所帯を持
   ち、砂金で一山当てようとしていた。ある日君子は、偶然、父の姿
   を街で見かける。父が家に帰ってくると考えた彼女は、ご馳走を用
   意して待っていたが、父はついに来なかった。母を思いやる君子は
   長野に向かい、父を東京に連れ戻そうとするのだが……。


     佐藤  これがもし君子の母を主人公にした映画だとした
        ら、少し暗いトーンのものになってしまっただろう
        ね。

     ジョージ  原作がどうなってるかは分からないけど、こ
        の映画は君子を主人公にして脚本が書かれている。

     ジルダ  君子という役は、丸の内あたりで働くOLなん
        だけど、モダンガールって言うのかな、いかにもは
        つらつとした都会の女性として描かれているわね。

     佐藤  妾をつくって帰ってこない父を、なんとか家に呼
        び戻そうとする。まあ、話自体は暗いよね。でも成
        瀬の演出は、湿っぽさをまったく感じさせない。ラ
        イト・コメディっぽく描かれているところがいいと
        思う。

     ジョージ  そう、妙に深刻にならないところがね。おそ
        らく成瀬は、すべてを君子の見た世界として描こう
        としたんだろうな。彼女の周囲を彩る人物たちは、
        母親もふくめて、どこかしら変というか、こっけい
        な感じに見えるでしょう。

     ジルダ  歌人という設定の君子の母が帰宅すると、娘の
        存在など眼に入らないというふうに、押し黙ったま
        ま自分の座り机へ向かうシーンがあるわね。「イン
        スピレーションがわいた」とか言って(笑)。

     ジョージ  君子の伯父や恋人の精二というキャラクター
        の描き分けもうまいと思ったな。

     佐藤  長野にいる父の妾と、その娘や息子の描き方は、
        都会の人間と対比させるように、抑え気味でまとも
        な感じに見えるけど、それでもどの役をとってみて
        もキャスティングがピタリとはまっているのは壮観
        と言っていいね。1930年代の日本映画がいかに
        すごいかということが、成瀬のこの一作を見ただけ
        で分かるよ。

     ジョージ  カットを短く割って、テンポが早い。たった
        1時間14分しかないんだよね、この映画。終って
        しまうのが惜しいくらいにあっけない。

     佐藤  最初のほうで、仕事帰りの君子と恋人の精二が出
        くわして会話するシーンは、小津安二郎の映画みた
        いなカットつなぎでしょう。仰角で二人を交互にと
        らえていて。

     ジルダ  君子と母が会話する家のなかのシーンも、小津
        ふうのカット割りに見えるところがあったわね。

     ジョージ  まあ、成瀬は小津の真似をしたのではないん
        だと思うけど。いかにしてシーンを生き生きと描く
        かを模索した結果、ああなったんだよ。

     佐藤  成瀬の映画は、たとえば人物が並んで歩くといっ
        たような、何でもないようなカットが決まっている
        んだよね。風景と登場人物が見事に融合している。

     ジルダ  台詞にあまり頼らずに画(え)で見せる人なの
        ね、成瀬は。君子がネクタイをつけているというだ
        けで、彼女のキャラクターが分かるものね。

     ジョージ  ところで、ぎくしゃくした関係の父と母を連
        れて東京見物する様子を、君子が恋人の精二に語っ
        て聞かせる回想シーンがあるね。あそこで、タクシ
        ーを拾うために君子が、ヒッチハイクをするように
        片手を振る。「映画で見たのよ」と彼女は言うんだ
        けど、その映画って『或る夜の出来事』(1934
        年)だね、完璧に。

     ジルダ  クローデット・コルベールのようにスカートを
        たくし上げて、片脚を露出したりはしなかったけど
        ね(笑)。

     佐藤  日本公開年もアメリカと同じだから、成瀬は見て
        いるに違いないね。そういえば、この『妻よ薔薇の
        やうに』には、どこかしらフランク・キャプラ的な
        雰囲気が漂っている感じがしない?


     三人が出した結論
     『妻よ薔薇のやうに』が
     映画史に残る確率(21世紀の映画に及ぼす影響度)は
         97%


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      《架空名画座》  きょうの二本立てはこちらです。
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               □ |                   □
                 | 妻よ薔薇のやうに |
               □ |                   □
                 |    ×     |
                □ |                   □
                  |     山の音      |
                □ |                  □
                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       『山の音』も、成瀬巳喜男監督作品(1954年・東宝)。
    原節子が「ビスタ」という言葉が入った台詞を言うのですが、
    どこに出てくるのかは、まだ見ていない方のために言わない
    でおきます。
     1954年はビスタビジョン第一作の『ホワイト・クリス
    マス』(マイケル・カーティス監督、1954年)が日本公
    開された年ですが、映画人としての成瀬は当然「ビスタ」と
    いう言葉を知っていたはずなので、意識的な映画への言及だ
    といってもいいでしょう。
     共演は、山村聰、上原謙、杉葉子です。


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   《編集後記》

    登録を解除せずにいてくださった読者のみなさん。お久しぶり
   です。かなり発行が遅れてしまい、このメルマガの存在自体忘れ
   てしまわれたことと思いますが、お詫びと感謝の気持ちを込めて
   第48号をお届けいたします。
    当分、不定期発行が続きますが、できるだけ号と号との間隔を
   詰めて発行していきたいと考えています。
    今後ともどうぞ、ごひいきのほどお願いいたします。

                           代表 佐藤


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    いつもこのメルマガをお読みいただき、ありがとうございます。


  ■新たにメールマガジンを創刊いたします。題して、


    【《週刊》地球映画遺産 そのシーンに気をつけろ 】。


   ご関心がおありの方は、こちらをご覧ください。

  ★「まぐまぐプレミアム」
    マガジン個別ページ
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    ホームページ
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  ★「地球映画遺産 編集日記」
    ブログ
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  ■映画雑誌‘FLIX’で「第2回FLIX新人賞・佳作」
   (審査員=映画評論家の山根貞男氏および品田雄吉氏、
   1993年5月号発表)を受賞した評論文です。
   当時、‘FLIX’誌上には掲載されませんでした。
   ぜひお読みください。


    【 邊走邊唱する映画眼(キャメラ・アイ)―陳凱歌 】


   ご興味がおありの方は、こちらにサンプルがございます。

  ★「でじたる書房」
    http://www.digbook.jp/product_info.php/products_id/6106

  ★「ポケットの中にシネマを握りしめて」
    http://www17.ocn.ne.jp/~pocket-c/newpage4-1.html


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     お知らせ
    すでに発行済みの号に間違いがありましたので、訂正します。
   *第25/26号 『突貫小僧』『和製喧嘩友達』は、フィル
    ムセンターの資料によると、両作品とも14分とのことです。
   *第25号 「阪本武」は「坂本武」という表記が正しいよう
    です。 
   *第32号 佐藤による発言内の《「おれは、がんばるぞ」と
    という》は《「おれは、がんばるぞ」という》です。
   *第36号 ジョージによる発言内の《「キャロル・ロンバー
    ドの夫役を別の俳優で取り直す」》は《「キャロル・ロンバ
    ードの夫役を別の俳優で撮り直す」》です。
   *第43号 『結婚の夜』。モノラル(米語・ポーランド語発
    声)は、モノラル(米語・日本語・ポーランド語発声)です。
    以上、お詫びいたします。


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