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2008/11/05

●●関学先端研メールマガジン [ 第8号 ]  2008/11/5

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       関西学院大学 先端社会研究所

       http://asr.kgu-jp.com/

       関学先端研メールマガジン

      □■第8号■■(2008/11/5) ■□


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 −目 次−


■ エッセイ(8) 「学会と古書店めぐり」(荒木康代)
■ 先端研がテレビで紹介されました
■ 終了したイベントの報告
・	10/31 先端社会研究所定期研究会(第6回)
■ 今後の研究会・イベントの予定
・	11/14  先端社会研究所定期研究会(第7回)
・	11/11  先端研ゼミ(第4回)
・    先端社会講義研究II「環境と共生」
■ 先端的な社会研究を考えるためのブックガイド「日本を降りる若者たち」
                              (岩佐将志)
■ 編集後記

 
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│  ■ エッセイ(8) 「学会と古書店めぐり」
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 先週末、東京の専修大学で行われた労働社会学会に出席してきた。今回は発表なしで、
聞くだけなので気楽なものである。学会出張の目的はもちろん最新の研究動向や他の研
究者の報告を聞くことによって刺激を受けることにあるのだが、もうひとつの付随的な
目的、開催地域そのものへの期待も大きい。簡単に言えば、食べ物とか買物とかなのだ
が。

 今回は東京なので食べ物の楽しみは無いが、開催地が神田神保町だったので、古書店
めぐりという楽しみがついてきた。ひとつ残念だったのはちょうど学会最終日の翌日か
ら神田古書店まつりが始まるということで、一週間遅い開催だったらよかったのにと、
かえすがえすも残念だった(何をしに行ったのかと怒られそうだが)。

 あまり時間が無かったのでほんの一部しか回れず、目あての古書も見つけられなかっ
たが、それでも興味のある本を何冊か買って、行きは空っぽだったバッグがぎっしり、
ずっしりとなってしまった。もっとも、このことを見越して、からっぽのキャリーバッ
グを持っていったのだが。

最近は本屋に置かれる本のサイクルがとても短くなっていて、まったく目にふれずに
終ってしまう本も少なくない。そのため、関心のある領域にも係わらず見逃してしまう
ことも多い。その点で今回興味のあるテーマの本を格安の料金で手に入れることができ
たのは収穫だった。

 本好きな者にとっては、こんな古書店が集積している場所があること自体がうれしい。
神保町は、大手出版社も多くあるところだが、大阪でも戦前までは心斎橋東詰に本屋や
出版社が集積していたらしいが、今では面影もない。最後まで心斎橋に残っていた明治
時代からの老舗のS堂も数年前に倒産してしまった。東京と大阪のこの違いは何だろう
か。

 貧乏学生だった頃、道頓堀の古書店に本を持っていったら常に定価の3分の1で買い
取ってくれて、あれは学生の生活援助だったのだろうか、ということなども思い出した
古書店めぐりだった。



荒木康代(先端社会研究所特別研究員)




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│  ■ 先端研がテレビで紹介されました
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 先日放送された下記のテレビ番組で、先端社会研究所の活動が紹介されました。この
番組では、国際化の進展、産学連携の促進、より開かれた大学にする試みなど、21世
紀に入って全国の大学が取り組んでいるさまざまな改革が紹介されています。番組の中
では、先月行われた先端研ウィークにおけるアニメを用いたライブ授業、荻野昌弘先端
研所長へのインタビュー、高坂健次社会学部長へのインタビューなどの模様が紹介され
ました。



日時:10月31日(金)20:00-20:54

放送局:BSジャパン(テレビ東京系列)
    http://www.bs-j.co.jp/bangumi/html/200810312000_20318.html

番組名:「大学が変わる。現場へ〜知識基盤社会をリードせよ〜」




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│  ■ 終了したイベントの報告
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先端研第6回定期研究会(「戦争が生み出す社会」研究会第1回)

日時:2008年10月31日(金)14:00〜16:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
発表者: 一ノ瀬俊也(埼玉大学)
題目:「戦時社会における『公正』とは何か?―1942年の応召者手当統一問題を
        めぐって」

概要:
  本研究会では、講師の一ノ瀬先生により、戦時下日本の兵士の所得保障に見られるさ
まざまな不公平について報告があった。その概要は以下の通りである。

 日中戦争が勃発した1937年以降、政府は一家の働き手が出征したことにより生活が困
難になった家族・遺族に対し、「軍事扶助法」を制定して各種免税措置を行った。一方、
大企業や官庁では、軍に応召された社員や職員に対して、程度の違いこそあれ、月給の
かなりの部分を支給する応召手当の制度を整えた。このことは、自営業者、農家、商人
など、応召手当てとは縁のない帰還兵たちの羨望、怨嗟の的となっていった。

 戦争が長期化した1942年、当時の主要経済団体・日本経済連盟会が応召企業労働者に
対する応召手当てを削減する方向で統一基準を作成するための官民懇談会を開催した。
ここでは「社会的公正」の立場上、何の所得保障も受けていない農民、自営業者などが
いる以上、民間企業からの手当ても減額されるべきだとの主張が見られた。しかしこの
ことは実際には、応召手当てのコストを削減したいという大企業としての「経営の論理」
が押し出されたことの帰結だった。
 
 報告後のディスカッションでは、戦争が社会階層を平準化させるという近年見られる
議論に対し、本報告がどの程度その反証としての可能性を有するのかが話題にのぼった。
また昭和初期までの軍隊と異なり、日中戦争以降大量の兵士を動員することが必要になっ
た軍隊には、兵士内部の階層間対立など、さまざまな意味で「社会」が紛れ込むように
なったという話があった。



岩佐将志(先端社会研究所専任研究員)


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│  ■ 今後の研究会・イベントの予定
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  各情報は先端社会研究所ホームページ http://asr.kgu-jp.com/ にも掲載しています。
  問い合わせ先は、指定がなければ先端社会研究所事務室(社会学部3階、tel:0798-
54-6085、E-mail: asr@kwansei.ac.jp)です。



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■先端社会研究所定期研究会

本研究会では、共同研究「戦争が生み出す社会」に関して学内・学外の研究者をお招き
して議論を行う予定です。

一般参加:可能。但し事前に先端社会研究所事務室にお問い合わせください。



―第7回研究会(「戦争が生み出す社会」研究会第2回)―

日時:2008年11月14日(金)15:00〜17:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
発表者: 福間良明(立命館大学)
題目:「戦争体験」の変容と教養主義

概要:
 戦没学徒の手記を集めた『きけわだつみのこえ』(1951年)は、もっとも世に知られ
た遺稿集である。だが、大学生・専門学校生という当時のインテリ層の手記を集めただ
けでしかないこの書物は、なぜ、そしていかにして、国民的な「反戦の正典」となった
のか。

 そもそも、発刊当初、年長知識人はこの書物に「教養の欠如」を見出していた。『戦
没農民兵士の手紙』(岩波新書・1961年)の発刊を機に生じた「農民兵士論争」では、
しばしば『きけわだつみのこえ』から「インテリ=学徒兵」の戦争責任が想起された。
1969年5月には、立命館大学において全共闘の学生たちが、「わだつみ像」(遺稿集
『きけわだつみのこえ』を記念して建立された像)を破壊し、首に縄をかけて引きずり
回すという事件が起きた。

 にもかかわらず、今日、この遺稿集は岩波文庫の一書として、「古典」の地位を得て
いる。では、戦後の国民は、「わだつみ=戦没学徒」に何を見出し、また、それはいか
に変化したのか。本報告では、こうした問題関心に立ちながら、戦争体験論の変容と、
その背後にあった教養主義の問題について、議論したい。
 


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■先端研ゼミ


このゼミでは、主に大学院生による発表を通じて「他者問題」について考えてゆきます。


―第4回―

日時:2008年11月11日(火)11:10-12:40
場所:先端社会研究所セミナールーム
発表者: 荒木康代(先端社会研究所特別研究員)
題目:商家経営における女主人と女中の関係についての考察―1927年の商家の妻の
      日記から―

概要:
  本報告では、昭和初期の大阪船場の商家の妻の日記[1]から、商家経営における女主
人と女中をめぐる人間関係とその役割について考察する。

 商家の主婦(女主人)と女中との関係については、中野卓が、女中の「指揮」を主婦
の「重要な任務」としてあげるとともに、女中や元女中との間の「親密感ある交渉」に
ついても指摘している。しかし、その具体的なあり様については、これまでほとんど研
究されてこなかった。本報告では、商家の主婦の女中に対する「指揮」とともにその
「親密感ある交渉」についての具体的な記述を取り上げるとともに、商家の女主人と女
中との「親密感」はどのように醸成されたのかということについても分析する。

[1]対象とする「杉村久子日記」は、1997年に著者の子孫に当る方から大阪市市史編纂
   所に委託され、現在同所で保管整理中のものである。日記は1927年から1944年まで
   10年分が現存しており、その中から、今回は1927年、著者44歳の時の日記を取り上
   げる。当日記に関する研究報告は、大阪市史編纂所調査員による「史料紹介」があ
   るのみで、未だ研究対象とはされていないものである。



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■先端社会講義研究II「環境と共生」

[近日中の講義予定]

開催場所はいずれも関西学院大学先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
です。


日時:11月8日(土)13:10-16:20
講師:古川 彰
テーマ:生きられた環境と共生の思想
内容:
  一連の講義ではそれらの社会問題としての解明が試みられてきた。これらの講義から
私たちは、環境がすぐれて近代の思想に依拠しての問題化されてきたことを理解できる
だろう。この講義では人と環境の関係史をたどりながら環境問題とはなにかを考えなが
ら、21世紀初頭の社会がいかなる問題に直面しているのかについて議論する。

キーワード:生きられた環境、人と環境の関係史、生活環境主義



日時:11月15日(土)13:10-16:20
講師:武田 丈
テーマ:クロスボーダー環境が生み出す課題とその支援
内容:
  フィリピンの出稼ぎを奨励する環境、帰国者を待ち受ける環境に焦点を当てつつ、こ
うしたクロスボーダー環境が生み出すフィリピン女性や日比国際児の抱える課題、その
課題に対する当事者組織の活動を検証していく。

キーワード:移住労働者、エンパワーメント、当事者組織



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│  ■ 先端的な社会研究を考えるためのブックガイド
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本コーナーでは毎回、新たな社会現象を取り扱った文献、斬新な視点が見られる文献
など、研究対象や視点に先端性が見られる社会科学系の文献を紹介してゆきます。


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下川裕治『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書、2007年)


 通常の社会学関連の学会では、移民やエスニシティについて議論する部会と引きこも
りに関する部会とは別々に開催される。両者は基本的に性格の異なる社会現象を扱うも
のと考えられているからである。しかし今日、この区分を超越した両義的な存在が出現
している−そのことを実感させるのが、フリージャーナリストの手になる本書である。

 本書が主な対象とするのは、バンコクのカオサンという安宿が集中している地区に長
期滞在する、20代から40代までの日本人である。日本の労働環境に不安や生きにくさを
感じて脱出してきた人、留学やワーキングホリデーという形で英語圏にしばらく暮らし
た後にここに行き着いた人、死ぬつもりでやってきたが居心地が良くなって住み着いて
しまった人など、理由はそれぞれだが日本に馴染めないという点では共通している人々
がここには集まってくる。彼らは時々日本に戻って短期労働でひたすら金を稼ぎ、貯金
が出来たらすぐにバンコクに舞い戻るというライフスタイルを、何年にも渡って続けて
いる。

 本書を通じて登場する「外こもり」という絶妙の表現が示す通り、彼らは海外で暮ら
しているという意味では外向きのように見えるが、その精神構造は日本国内の引きこも
り者とそう変わらない。彼らはカオサンの周囲を離れず、ひたすら何もせずに過ごすこ
とを好んでいる。また外の世界との交流を極力避け、携帯電話も持たないかほとんど使
わない。

 彼ら日本人の「外こもり」を可能にする重要な条件は、タイという国の社会・文化的
背景である。著者によれば、真面目に働かないと社会から認められない日本と違い、タ
イ人は引きこもり者に対して特に何も言わない。この国では仕事をしなくてもなんとか
生きてゆけるし、金がなくても結婚できる。物価は日本よりはるかに安いし、日本食の
デリバリーサービスまである。日本に嫌気が差した日本人が自ずと居心地の良さを感じ
る条件が揃っているようである。

 もっとも彼ら「外こもり」にしても、こうした生き方を主体的に選択したわけでもな
ければ、そこに明確な幸福を見出しているわけでもない。「なぜ、いまもバンコクにい
るのか、と聞かれてもよくわからない」と彼らの1人が言うように、彼らにはいつの間
に日本から押し流され、バンコクに漂着した漂流民のような印象がある。彼らより前の
世代に属するバックパッカーたちとは、この点で大きな違いがある。

 彼らのような存在の出現を、日本の若者の堕落と嘆くか、低収入かつボーダーレスの
時代をしたたかに生き抜く術を知っている新世代と捉えるかは、人それぞれだろう。い
ずれにせよ、彼ら自身にとって何が幸福なのかを考えるには、日本社会の人生観や労働
観を「標準」とみなし、そこからの「逸脱」として彼らを捉えるだけでは不十分である。
本書は労働の流動化や国際移動が以前にも増して進展している現代社会において人々が
抱く多様な価値観を考える上で、きわめて興味深い事例を提供している。



岩佐将志(先端社会研究所専任研究員)




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│  ■ 編集後記
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 関学では先週末から今週初めにかけて、文化祭が開催されていました。「戦争が生み
出す社会」の定期研究会は、ちょうどその真っ只中に行われることになりましたが、そ
れでも学部生が数名顔を出していました。彼らの目には、戦時中の日本はどのように
写っているのでしょうか。


岩佐将志(関西学院大学先端社会研究所専任研究員)



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□発行 関西学院大学先端社会研究所
 

所長 荻野昌弘(関西学院大学社会学部)
事務室 関西学院大学先端社会研究所事務室
〒662-8501 西宮市上ヶ原一番町1-155
Tel:0798-54-6085   Fax:0798-54-6089
HP:http://asr.kgu-jp.com/

□メールアドレスの変更、その他のお問い合せ、配信停止の希望は
 → kgcoemm@gmail.com (担当 岡本)まで。
 

□尚,このメールマガジンの最初あるいは最後に挿入されている広告と
 本研究所は一切関係がありません。

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